■ アメリカのモバイルはPalmを中心に回る
11月15日~19日までアメリカ・ラスベガスで開催されていたCOMDEX/Fall'99。世界最大級のコンピュータ展示会として知られるCOMDEXも今年は20回目という節目に当たる。筆者も取材に出かけていたため、先週の連載をお休みさせていただいた。
さて、アメリカと日本のモバイル環境は、他の筆者の方々の連載をご覧になってもわかる通り、雲泥の差がある。ある人に言わせれば「アメリカは3年遅れている」、またある人は「日本が異常なだけだ」とも言う。筆者も毎年、COMDEX/Fallの取材に出かけ、海外の最新の通信機器をレポートしてきたが、例年にも増して、日米の通信事情、モバイル環境の違いを痛感させられた。
COMDEXで最も人気が高いモバイル機器と言えば、とにかくPalm Computing Platfom、つまりPalmシリーズを置いて他にない。ほんの数年前までは当時のU.S.Robotics(現在は3Comに吸収合併)のブースで見かける程度だったが、今や会場のあちこちでPalmシリーズを見つけられる。本体はもちろんのこと、ソフトウェアから周辺機器、サービス、企業向けから個人ユーザー向けなど、とにかく多岐に渡っている。ありとあらゆる企業がPalmシリーズを応用したビジネスを模索しており、来場者の注目度もたいへん高い。周辺機器メーカーやソフトウェアベンダーの参入があまり多くない日本とは、大きく異なる点と言えるだろう。
たとえば、米PocketScience社のPocketmailというメールサービスもそのひとつだ。昨年の「COMDEX/Fall'98 Telecomレポート/モバイル・電話編」で、同社のメールサービスに対応したシャープの「TelMail」とJVC(ビクター)の「HC-E100」というメール端末を紹介したが、今年はPalmシリーズに合体させる「PocketMail BackFlip」が展示されていた。
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Palmシリーズ用のPocketMail対応デバイス『PocketMail BackFlip』。日本のSnap Connectや外付けモデムよりもやや大きい |
背面にはPocketMail端末おなじみのデバイスを装備。この部分を受話器に押しつけて通信を行なう。 |
PocketMail対応端末は、受話器に端末を押しつけるという強引な手法が印象的だったが、Palm版のPocketMail BackFlipにもその構造はしっかりと受け継がれている。日本のように、携帯電話やPHSのような手軽な通信手段がない(地域によって異なるが……)アメリカらしい製品と言えるだろう。こうしたものもPalmシリーズに対応してしまう(せざる得ない?)ところでも、いかにアメリカでPalmシリーズが受け入れられているかを垣間見ることができる。
■ 007最新作にも登場のJornada430se
一方、Windows CEというか、Palm-size PCはどうなっているかというと、OSのメジャーバージョンアップがないためか、これという目新しいニュースはなかった。アプリケーションソフトもハードウェアもいくつか新しいものが登場しているのだが、今ひとつ話題性に欠けるといったところだろうか。
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Palm-Size PCで最も話題作りに熱心だったHP Jornada430se。画面には007最新作『The World Is Not Enough』のポスター画像を表示 |
話題性ということで、強いて挙げるとするなら、既発表のHP Jornada430seだ。11月19日から全米で公開される007の最新作「The World Is Not Enough」に登場することもあり、007のポスターデザインとJornada430seを組み合わせ、『Bond Approved』(ボンド公認)と書かれた袋を配布したり、デモに参加した人に抽選で11月17日に催された特別上映会への招待券をプレゼントするなど、熱心に話題作りをしている。ただ、実際の映画でJornada430seが登場するのは、ほんの数分で、しかも敵が設置した爆弾をコントロールするためのデバイスという設定になっている。前作のEricssonの携帯電話のように、James Bondの持ち物ではないのは残念だが、こういうところにPalm-Size PCが登場するようになったのも面白いことではある。
Jornada430seは国内での販売は残念ながら予定がないそうだが、IBMのマイクロドライブを装着すれば、340MBの携帯型MP3プレーヤーとしても活用できるので、ある程度は売れるような気もする。いっそのこと、英語版のままでも発売するという手はないだろうか。
■ 携帯電話の静かな台頭
COMDEX/Fallそのものがパソコンを中心とした展示会であるため、これまで携帯電話をはじめとするモバイル通信機器をあまり会場で見かけることはなかった。来場者を見ていても携帯電話を使っている人はあまり多くなかったのだが、今年は少し増えている。展示会場の方もNOKIAやEricssonといった大手メーカーが出展し、携帯電話の台頭が少しずつ始まりつつあるようだ。日本の2~3年前の展示会といったところだろうか。
NOKIA、Ericssonともに、今回はWAP対応端末とサービスをアピールしていたが、来場者の関心はまだ今ひとつというレベル。数週間前に国内で開催されたCOM JAPANで、「cdmaOneパケット通信対応端末」「カラー液晶搭載携帯電話」「キーボード付き一体型端末」などを見てしまった日本人にとっては、まったく食い足りない(笑)。
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EricssonのChatboardは、携帯電話の底面に装着する文字入力キーボード。かなり小さいが、これでもテンキーよりはマシ!? |
そんな中で目についたものをご紹介すると、たとえば、Ericssonでは「chatboard」という携帯電話にドッキングさせる外付けキーボードを展示していた。日本でもiモード端末用外付けキーボードが話題になったが、海外でもメール端末での文字入力はひとつの課題となっている。現実的に、これが解決策になるかどうかはわからないが、小型軽量であれば、ちょっと試してみたい(あくまでも試すだけ)気もしなくはない。
一方、NOKIAと言えば、海外でも赤外線付き端末とPalmシリーズの組み合わせも紹介していた。注目している来場者はそれほど多くなかったが、このあたりの活用もこれからということなのだろうか。ちなみに、NOKIAのブースではカラフルな交換用ボディも展示されている。日本では端末の改造になるため、基本的にボディ交換は許されていないが、メーカー側がボディ交換ができることを前提に作れば、こうした楽しみも増えてくるかもしれない。NOKIAは斬新なアイデアで、国内でも人気を集めているので、ぜひこの路線も開拓して欲しいところだ。
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NOKIAおなじみの赤外線通信ポートのデモ。来場者の反応はまだ今ひとつ。でも、それはPalmやNOKIAのせいではなく、携帯電話が十分に普及していないからかも |
NOKIA端末の交換用ボディ。海外でもマイケータイ自己主張は流行るのだろうか |
■自宅やオフィスでのモバイルユーザー
モバイルコンピューティングは、自宅やオフィス以外の場所でPCを使うという意味。とは言え、最終的に自宅やオフィスにも戻り、仕事や遊びにPCを使うはずだ。
そんなときに便利なのが米Mobility Electronics社のEasiDockシリーズだ。他のレポートにも掲載されている通り、PCカード経由などでさまざまなデバイスを接続でき、なかにはタワー型マシンにも相当するものも含まれているのだが、筆者が注目したのは『EasiDock200』という製品だ。
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米Mobility Electronics社の『EasiDock200』。高さ、奥行とも約14cm程度なので、思ったほど大きくない。本体前面の最下部にはPCと接続するUSB Type-Bポート、周辺機器を接続するUSB Type-Aポートを装備 |
背面にはずらりとポート類が並ぶ。Ethernetポートが使えるのは『EasiDock200E』というモデル。これだけ接続できれば、まず困ることはないはず |
EasiDock200はPCのUSBポートに接続するポートリプリケータのようなもので、USBポート接続で、PS/2マウス、シリアル、パラレル、USBハブが増設できる。Ethernetポートを備えた製品もラインアップされており、Windows98/2000環境で動作するそうだ。外部電源は必要になるが、これだけ接続できて、座りのいいデザインであれば、モバイルユーザーの自宅/オフィス用としてもなかなか活用できるのではないだろうか。最近、VAIO C1-XEを愛用している筆者としてもぜひ使ってみたい製品だ。ただ、Mobility Electronics社はまだ日本国内に代理店などがないため、すぐに国内で流通する可能性は低そうだ。どこかのメーカーさんが取り扱ってくれませんかねぇ……。
◎関連URL
■PocketScience
http://www.pocketscience.com/
■Hewlette Packard Jornada430se
http://www.hp.com/jornada/products/430se/overview.html
■007James Bond公式ページ
http://www.jamesbond.com/
■Ericsson
http://www.ericsson.com/
■NOKIA
http://www.nokia.com/main.html
■Mobility Electronics
http://www.mobilityelectronics.com/
(法林岳之)
1999/11/24
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