■パケット通信をサポートしたNTTドコモ 208シリーズ
先週、NTTドコモから800MHz用デジタル携帯電話の新ラインアップ「ムーバ208シリーズ」が発表された。ムーバシリーズを当初から手がけるパナソニック、NEC、三菱電機、富士通の4社がそれぞれに独自の工夫を凝らし、なかなか意欲的な製品を投入してきた。サービス開始からわずか半年でiモードが急速に普及したとは言え、NTTドコモにとって、まだまだ主力が20xシリーズであることに変わりはない。
ただ、モバイルという観点で見た場合、例年の20xシリーズ、特に206~207シリーズは今ひとつと言わざるを得なかった。各社が携帯電話やPHSのみで利用できるメールサービスや情報サービスを提供し、それをサポートする端末を次々と発表する中、本体の軽量化やバッテリー駆動時間の延長、デザインなどに工夫が凝らされてきた。機能面で言えば、ショートメールと着信メロディなどが強化されたに過ぎず、モバイルユーザーから見れば、「音声通話をするためだけの携帯電話」という印象が強かった。
しかし、今回の208シリーズは違う。パケット通信に対応することにより、モバイル環境にも適した携帯電話として進化を遂げている。従来、音声通話とパケット通信を利用するには、201シリーズ世代と同等のボディで、機能的にもやや貧弱な301/302シリーズを利用しなければならなかった。しかし、今回の208シリーズは重量が57~67gと軽く、機能的にも主力モデルに相応しいものが最新機能が搭載されている。もちろん、301/302シリーズとは通信速度が大きく違うが、新しい料金プランも発表され、ユーザーが手軽にパケット通信を導入できる環境が整ってきている(ただし、別途契約が必要)。
おそらく、NTTドコモは急成長中のiモードやDoPaなどで利用されているパケット通信を武器に、他の携帯電話事業者との差別化を図りたいということなのだろう。ちなみに、PDC方式でのパケット通信は、現時点ではNTTドコモのみが提供しているが、他の携帯電話事業者も導入を検討しており、来年後半にはデータ通信をパケット通信で行なうのが当たり前になってくるかもしれない。
■新スカイウェブに期待のJ-フォン
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J-フォンのJ-SkyWebに対応したメッセージサービス「ララメール」の画面の例 |
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一方、10月1日に全国統一ブランドとしてのサービスを開始したJ-フォンも新端末、新サービスを次々と発表している。端末では全面液晶でおなじみのパイオニア製端末「J-PE02」を皮切りに、メロディをメッセージに添付してやり取りできるパナソニック製「J-P01 III」、3Dジョグダイヤルを装備した「J-SY01」、エンハンスト・フルレート対応のケンウッド製「J-K02」と東芝製「J-T03」などを順次、発売する予定だ。
新端末のうち、すでに出荷されているのは、J-PE02のみだが、この端末にはJ-フォンが12月にサービス開始を予定している「スカイウェブ・ニューサービス(仮称)」を利用するための「MML対応マイクロブラウザ」らしきものが搭載されている。ただし、スカイウェブ・ニューサービスに正式に対応しているものは、これから発売されるカラー液晶を搭載した機種になるので、公式に対応といってよいかどうかははっきりしない。
このスカイウェブ・ニューサービスは、1回のアクセスでダウンロードできる情報量を最大半角約6000文字相当まで増大させ、画像データなども扱えるようにする。MMLはHTMLとほぼ同じタグを利用するサブセット版で、iモードで採用されているコンパクトHTMLなどと同じ位置付けのものになる。MML対応マイクロブラウザを搭載した端末ではJ-フォンが設置するゲートウェイを介して、インターネット上のリソースを利用できるようになる予定だ。もしかすると、すでにインターネット上にあるiモード対応ページなども見られるようになるかもしれない。
■64kbpsパケット通信が待ち遠しいセルラー/IDO
一方、cdmaOneでNTTドコモを急追するセルラー/IDO陣営だが、そろそろ『約束の時期』が近づいてきた。そう、64kbpsパケット通信サービスだ。インテルのPentium IIIの発表会でデモが行なわれたのはちょっと意外だったが、9月から実験は行なわれており、間もなく正式なサービスが発表される予定だ。端末は10種類近くがラインアップされる予定で、型番は「C30xシリーズ」になるようだ。おそらく11月2日から始まる『COM JAPAN 1999』で何らかのデモンストレーションやアナウンスが行なわれることになるだろう。
cdmaOneのパケット通信サービスで期待されていることは、大きく分けて2つある。ひとつはISDNなみのパフォーマンスが得られるデータ通信サービス、もうひとつはWAPサービスの扱いやすさの向上だ。データ通信サービスはPentium III発表会の記事にもあるように、上り14.4kbps、下り64kbpsのベストエフォート型で提供される。WAPサービスはiモードと同じようにパケット通信で送受信できるようになるが、世界中のWAP対応コンテンツが見られるというメリットもある。
ちなみに、セルラーグループ(ツーカー三社を含む)は、PDC方式によるデジタル携帯電話でもWAPサービスを提供する。セルラーでは「DIGITALセルラーホンD301SA」、ツーカーでは「TS01」というWAP対応端末がすでに発表され、セルラーは11月1日から、ツーカーは11月25日からサービスが開始される。ともに、三洋電機製の端末だ。PDC方式でのWAPサービスは、現在のcdmaOneのWAP同様、回線交換で接続されるが、三洋電機製端末ではオフラインの状態でメールを書いて送信できるようにしたり、WAPサービスの最低通話料金を3円(60秒以内)に設定するなど、できるだけユーザーが安く利用できるようにする工夫をしている。おそらくセルラーとしては、cdmaOne/WAPをビジネスマンやOL、PDC/WAPを若年層を中心に展開したいようだ。
IDOのデジタル携帯電話の動向については定かではないが、サービスエリアが一部重なるツーカーのPDC/WAPサービスが順調に展開されれば、IDOとしても何らかのアクションを起こさなければならなくなるだろう。
■どの携帯電話に買い換えるか
昨年は電話番号の11桁化という特需があったが、今年の携帯電話の年末商戦はどちらかと言えば、新サービス対応端末の購入という意味合いが強い。原稿執筆時点ではまだ正式に発表されていないサービスや端末があるが、いずれも11月中には何らかのアナウンスがあるはずだ。もし、この年末に携帯電話の買い換えを検討しているのであれば、11月末まで各社の発表を待ち、じっくりと選んでもらいたい。
また、新サービスや新端末の動向については、前述のように11月2日から東京ビッグサイトで開催される予定のCOM JAPAN 1999が見逃せない。もし、東京近郊にお住まいで、時間的に余裕のある人は、ぜひとも会場に足を運んで、新サービスや新端末をじっくりと見てもらいたい。
◎関連URL
■NTTドコモ 208シリーズ情報
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/99/whatnew1025c.html
■J-フォン東京 J-PE02情報
http://www.j-phone-tokyo.com/company/n/991022_a.htm
■J-フォン東京 「スカイウェブ・ニューサービス」の導入について
http://www.j-phone-tokyo.com/company/n/990920.htm
■セルラー デジタル(PDC)方式による「EZweb」導入
http://www.ddi.co.jp/cellular/release/1999/991020a/index.html
■ツーカーグループ3社の「EZweb」導入について
http://www.tu-ka-kansai.co.jp/release/99102101.htm
(法林岳之)
1999/11/02
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