■ PHSのイメージを変える(エッジ)
各社のエッジ端末 |
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東芝DL-S200 |
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三洋電機PHS-J80 |
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松下KX-PH33S |
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松下KX-PH23F |
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4000万契約を突破する携帯電話に対し、苦戦が伝えられるPHSだが、最近の契約者数の推移を見ると、減少傾向にやや歯止めが掛かりつつあり、回復の兆しを見せている。特に、データ通信に関しては、NTTドコモとDDIポケットが64kbpsPIAFSによるサービスを開始したことにより、モバイルユーザーにも普及が進んでいるようだ。
こうしたPHSの回復基調に合わせ、各社から魅力的な端末やサービスが相次いで登場している。たとえば、10月7日に東芝から発表されたDDIポケットのエッジ対応端末「HYPER Carrots DL-S200」もそのひとつだ。DDIポケット向けエッジ対応端末としては、三洋電機のPHS-J80、九州松下電器の「KX-PH23F」「KX-PH33S」に続く、第4弾となる。
エッジそのものについては後述するが、DL-S200は通話中にトンネルや建物に入り、一時圏外になったときでも再び基地局をサーチする「ワープサーチ」やハンドオーバー時に回りの基地局の数に合わせてハンドオーバーの方法を検索する「フレックストライ」など、東芝独自の工夫が施されている。また、メール部分についてもメールボックスを4種類に分けて保存できるようにしたり、センターメールを2回のボタン操作で受信できるようにした「ツータッチEメール」などの機能も搭載されている。
さて、DL-S200などが対応するDDIポケットの「エッジ」というサービスだが、これは大きく分けて3つのサービス及び機能から構成されている。ひとつはPIAFS2.1準拠の『64kbpsデータ通信サービス』、もうひとつが昨年来、サービスを提供している『PメールDX』、そして3つめがエッジの要とも言える『高速ハンドオーバー』だ。エッジ対応として発売される端末は、基本的にこの3つをサポートしていることになる。
PHSの64kbpsデータ通信サービスはすでにNTTドコモが今年4月からサービスを提供しているが、NTTドコモの64kbpsデータ通信サービスがPIAFS2.0準拠のギャランティ型で提供されているのに対し、DDIポケットの64kbpsデータ通信サービスはPIAFS2.1準拠のベストエフォート型で提供されている。
両方式の違いは、ギャランティ型が32kbpsの無線チャンネルを発信時に必ず2本確保しようとするのに対し、ベストエフォート型は無線チャンネルに空きがあるときは2本、空きがないときは1本で通信をする。また、ベストエフォート型では64kbps通信中、同じ基地局のエリア内のPHSに発着信があると、通信速度を32kbpsに減速し、空きができれば、再び64kbpsに戻すという仕組みも持ち合わせている。
単純に考えれば、ギャランティ型の方が常に64kbpsで使うことができるため、有利なようにも見えるが、無線チャンネルを効率よく利用し、通話/通信に限らず、つながるチャンスが少しでも多いのはベストエフォート型ということになる。
PメールDXは文字電話などでもおなじみだが、全角で約1000文字のメールや画像(JPEG形式)を送受信できるというものだ。PHS同士だけでなく、インターネットとのメールの送受信も可能で、「(任意の文字列)@pdx.ne.jp」というメールアドレスが取得できる。文字電話のサービス開始時に指摘していた1回10円という高価なメール着信通知も11回目以降が無料となり、最高100円までの負担で済むようになった。
そして、エッジ最大のセールスポイントとも言えるのが高速ハンドオーバーだ。携帯電話やPHSは常に基地局と交信しているが、基地局と基地局をまたぐ移動をするときは、交信する基地局を切り替えなければならない。この切り替え動作をハンドオーバーと呼んでいる。エッジではハンドオーバー時に、次の基地局をサーチすることで通話を途切れにくくし、ハンドオーバーに必要な時間も従来のPHSの1/4~1/20に短縮している。ちなみに、筆者は首都高速道路の約10km強の区間、途切れることなく、通話ができた経験がある。エリアによって差はあるが、デジタル携帯電話と十分、互角に渡り合えるだけの性能を持つと言っても過言ではないだろう。
こうしたエッジの特徴を伝えるため、DDIポケットも今まで異なった販促に努めている。俳優の江口洋介とウルフルズのトータス松本が出演するテレビCMが放映されているのをご覧になったことがあるだろうが、実はエッジに関する一連のテレビCMや広告に『PHS』という単語はほとんど登場しない。キャッチフレーズも『ハイブリッド携帯』という言葉が与えられている。携帯電話に比べ、エリアが狭い、途切れるといったPHSのマイナスイメージを払拭しようという考えだ。
この作戦が功を奏するか否かは、これからの市場の反響を見るしかないが、少なくとも筆者が利用した限り、都市圏で著しく通話品質の落ちてしまった携帯電話よりもエッジの方が『使える』という印象が強い。モバイル環境については、PIAFS2.1準拠のアクセスポイントが少ないという指摘もあるが、DIONがすでにPIAFS2.1対応アクセスポイントを設置し、モバイルユーザー向けの安価な料金プランも提供しており、利用しやすい環境は徐々に整いつつある。今後、端末のバリエーションがさらに増えてくれば、さらに購入しやすい状況になるだろう。
◎関連URL
■『エッジ』サービス情報(DDIポケット)
http://www.ddipocket.co.jp/h/ejji.html
■エッジ端末:東芝DL-S200製品情報
http://www.toshiba.co.jp/about/press/1999_10/pr_j0702.htm
■エッジ端末:三洋電機PHS-J80製品情報
http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_phs-j80.html(DDIポケット)
http://www.sanyo.co.jp/AV/J80/(三洋電機)
■エッジ端末:松下KX-PH33S製品情報(DDIポケット)
http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_kx-ph33s.html
■エッジ端末:松下KX-PH23F製品情報
http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_kx-ph23f.html(DDIポケット)
http://www.d1.dion.ne.jp/~kme_pana/ph23f/ph23F.htm(九州松下)
■ ようやく始まったアステルのEメールサービス
また、同じPHSをサービスするアステルは、従来から提供していた情報サービスの『MOZIOサービス』を拡張し、インターネットとのメールのやり取りを可能にした『MOZIO eメール』というサービスを10月15日から開始した。携帯電話やPHS事業者が提供する端末のみのEメールサービスは各社が提供しているが、アステルがサービスを開始したことにより、携帯電話・PHSの全事業者がEメールサービスを提供したことになる。
アステルのMOZIO eメールサービスは、最大1024byte(漢字最大512文字)を送信でき、料金体系も30秒9円となかなか割安だ。サービス面でもメールが届いたときの『着信通知』、メール内の電話番号に直接電話が掛けられる『Phone To』、MOZIOサーバー上に最大100人までのアドレスを登録できる『アドレス帳』、『シグネチャ登録』、『自動返信』など、かなり充実している。対応端末は現在、販売ざれているMOZIOサービス対応端末ということになるのだが、端末へのメニュー登録方法を機種別にWebページやパンフレットで紹介するなど、情報提供の面もしっかりしている。
しかし、筆者がそれ以上に注目したのがドメイン名だ。MOZIO eメールでは2つのメールアドレスを取得できるが、その内のひとつは「(任意の文字列)@phone.ne.jp」というメールアドレスになっている。携帯電話やPHSのEメールサービスでは、各社がいろいろなドメイン名を利用しているが、おそらく最もわかりやすいドメイン名と言えるだろう。今後、こうしたEメールサービスの覚えやすさや利用しやすさなども、携帯電話やPHSを選ぶ上での基準になってくるかもしれない。余談だが、今や誰もが当たり前に『着メロ』という言葉を利用しているが、実は着メロはアステル東京(現在の東京通信ネットワーク)の登録商標になっている。ドメイン名と言い、着メロの登録商標と言い、誰かよく気の回るスタッフがいるということなのだろう。
◎関連URL
■MOZIO eメールサービス情報(東京通信ネットワーク・アステル東京サービス)
http://www.astel.co.jp/tokyo/service/mzo05.html
(法林岳之)
1999/10/18
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