モバイルコンピューティングにはいろいろなスタイルがあり、それに合わせて製品のバリエーションも増えているが、昨年あたりから筆者が個人的に最も注目しているのが『お手軽携帯情報端末』だ。
お手軽携帯情報端末の元祖と言えば、やはりNTTドコモのポケットボードだが、今回はその兄貴分(姉貴分?)とも言えるシャープの『コミュニケーションパル MT-300』、NTTドコモの『ブラウザボード』を紹介しよう。いずれも本体内蔵のケーブルで携帯電話やPHSを接続し、メールの送受信、WWWページ閲覧などができるのが特徴だ。もちろん、スケジュール帳、アドレス帳、手書きメモ、電卓、世界時計といったPDAとしての機能も搭載されている。
この2つの製品は昨年末に発売された『コミュニケーションパル MT-200』をベースにした製品(元祖はザウルスシリーズ)だが、コミュニケーションパル MT-300はその後継モデル、ブラウザボードはNTTドコモ向けの兄弟モデルという位置付けになる。ちなみに、コミュニケーションパル MT-200は、発売以来、すでに15万台を超える販売台数を記録しており、モバイルユーザーのエントリーモデルとして確固たる地位を築いている。
■ パワーユーザーにもうれしい手軽さ
こうしたお手軽携帯情報端末と言うと、PCのユーザーは「機能的に足らないんじゃないの?」「使いにくいのでは?」と敬遠してしまいがちだ。しかし、最近のお手軽携帯情報端末は機能的にPCを上回る部分もあるほど、使いやすくなっている。
たとえば、インターネット接続の設定は、ともに「インターネット接続設定アシスタント」というソフトが用意されている。Windows 95/98と同じウィザード形式で、質問に答えるだけで接続設定ができてしまう。しかも、国内の大手プロバイダやインターネット接続サービス23社(ブラウザボードは16社)の設定が登録済みのため、DNSサーバのアドレスやメールサーバ名は最小限の入力で設定できる。
また、筆者が非常に気に入っているのがメールの選択受信機能だ。これは元々、ザウルスシリーズで実現されていた機能だが、メールを受信するとき、いったんメールサーバからヘッダ情報だけを受信し、必要なメールを画面上で選んで受信できるというものだ。1日に数十通のメールが届くようなユーザーでも、この機能を活用すれば、モバイル環境で効率よくメールが使えるはずだ。コミュニケーションパルやブラウザボードではメールサーバに保存されたメールは削除しない設定にしておき、自宅やオフィスに戻ってからPCでまとめてメールを受信すれば、より確実だろう。「モバイルはしたいけど、外出先でたくさんメールは受信したくないし……」と躊躇していたユーザーにもおすすめだ。ちなみに、PCのメール環境でこれと同等の機能をサポートしているメーラーは、それほど多くない。
一方、WWWページ閲覧についてはどうだろうか。両製品に採用されているWWWブラウザはHTML3.2準拠だが、フレーム表示に一部対応していないのが難点だ。ただ、Cookie/SSLには対応しており、オンラインショッピングなどのWWWページは利用可能だ。モバイル環境でオンラインショッピングをするかどうかは疑問だが、WWWページを見られるパーソナルな端末がこれしかないユーザーにはありがたい機能だ。ちなみに、コミュニケーションパル MT-200のCookie/SSL対応は、「MT-200A*」の型番の後期モデル以降となっているので注意したい。
■ 実はこんなものも接続できる?
ブラウザボードとコミュニケーションパル MT-300は、ともにデジタル携帯電話とPHSが接続できるが、実は細かい部分に違いがある。
まず、ブラウザボードはNTTドコモのデジタル携帯電話、64K/32Kデータ通信対応PHS、ドッチーモを接続でき、接続ケーブルは携帯電話用(ドッチーモにも利用可)、PHS用ともに別売だ。本体とケーブルの接続部分は着脱式のコネクタになっており、コネクタは可倒式のツメで固定される。
一方、コミュニケーションパル MT-300は各社のデジタル携帯電話(cdmaOneを除く)、NTTドコモのドッチーモ(現時点ではSH811のみ)、DDIポケット/NTTドコモ/アステルのPHSが接続できる。PHSの64Kデータ通信サービスは、NTTドコモのドッチーモとPHSのみで利用でき、DDIポケットのPIAFS 2.1による64Kデータ通信には未対応だ。接続ケーブルはデジタル携帯電話用を標準で装備し、NTTドコモ/アステル用とDDIポケット用はそれぞれ別売となっている。本体とケーブルの接続部分はネジ止め式になっており、コネクタはブラウザボードとはまったく異なるものを採用している。
コミュニケーションパル MT-300で、非常に気になるのは、「本体接続端子の取り付け/取り外しの寿命は30回です」というマニュアルの記述だ。コネクタ部分が非常に小さいため、耐久性に不安があるのかもしれないが、さすがに「ちょっと冗談はやめてくれ」と言いたくなる。モバイルユーザーには、携帯電話とPHSを併用するユーザーも多いことを考えると、今後、ぜひ改善を望みたい点だ。
また、両機種とも保証外ということなら、実はこの他にも接続できる端末がある。ただし、メーカーや通信事業者はもちろん、筆者も編集部も一切保証はしないし、問い合わせもご遠慮いただきたい。
たとえば、事業所コードレスシステム対応(通常OSモード)PHSをAtermIW50などのワイヤレス対応ISDNターミナルアダプタの子機として収容すれば、ISDN回線経由でインターネット接続することも可能だ。現在契約中のPHSでも構わないし、機種変更や解約で電話番号がなくなったPHS、いわゆる白ROM端末でも問題ない。ちなみに、筆者はアステルのAP-15が機種変更で手元に余っており、これをブラウザボードに接続してテストしたが、何ら問題なく使うことができた。この組み合わせなら、家庭内モバイル端末としても活用することができそうだ。
また、ブラウザボードについては、NTTドコモ以外のデジタル携帯電話やPHSを接続することも可能だ。ただし、DDIポケット向けPHSはコネクタ形状が異なるため、PHSはアステルに限られる。筆者が試した範囲では、J-PHONE、ツーカーセルラー東京、アステルの端末で動作を確認した。全機種対応とは言えないが、ほとんどの端末が接続できるはずなので、他の通信事業者の端末を持つ人も試してみる価値はあるだろう。
この他にも両機種には細かい部分に違いがあるが、筆者としてはブラウザボードをおすすめしたい。その理由は搭載メモリがコミュニケーションパル(MT-200/300)の4MB(ユーザーエリア1.45MB)に対し、6MB(ユーザーエリア3.4MB)と大きいからだ。メールの保存件数だけでなく、スケジュール帳やアドレス帳の記憶領域としても使われるため、コミュニケーションパルではいずれいっぱいになってしまう可能性が高い。もちろん、そのときにはさらに魅力的な新機種が出ているかもしれないが……。
◎関連URL
■ブラウザボード製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/browserboard/index.html
■コミュニケーションパルMT-300製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/sc/eihon/mt300/text/index.html
(法林岳之)
1999/10/05