Mobile Centricな家をつくろう! その1
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鈴木英雄(すずき ひでお)
使い道のなさそうな安物ジャンク品を衝動買いする悪癖の持ち主。ゼロ・ハリ氏が遊び飽きたガジェットの下取り担当係と噂の、AMD386を積んだ自作互換機が最初のPCというハードヲタク。最近は200LX倍速6MB仕様かCE機を物色中らしい。 |
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前回掲載週からはや1カ月が経ち、そのあいだに自宅の建て直しについてはずいぶん進んでしまった。設計士さんや大工さん、電設会社の人たちといろいろ相談したりなどして、ここ数日でなんとか形にすることができそうなところまでこぎつけた次第である。
基本は「PCが快適に使える家」。特にノートPCをもって帰宅して、サッと自宅内のLANにつないでリソースをつかったり、Webを見たりメールをやりとりしたり……。ノートPCを使っている分にはACも含めてワイヤレスでの運用を基本にして、そして外出するときもスムーズにPCを持ち出せるように。
まずはこういったコンセプトをまとめて、建設会社や大工さんとどうやって実際の工事を進めてゆくかをまとめてみようと思う。
■ 利用環境を想定する
筆者の自宅は2階建てになる。まずは、各階でのPCを使うスタイル、目的を考えてPC利用環境として求められる条件というものを考えてみた。
1階 |
のんびりくつろぎながら。手の空いた時間に。気軽に。
ユーザーは主に妻(ごちゃごちゃしたケーブル類は嫌い)。
メールや家計簿ソフトが主。
PCを使う場所は不特定(リビングやダイニングなど)。
PCを固定的におく場所はほとんどない。
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2階 |
じっくり座って。本格的にお仕事モード。長時間の運用。
ユーザーは主に筆者(出来るだけ快適な速い環境が欲しい)。
ややこしい作業が多い。扱うファイルも大きく重い。
妻も本格的に仕事をするときには同様。
資料や書類を見ながらの作業も多い。
場所は固定。広い机と大きな画面で作業したい。
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ざっと拾い出してみるとこんな所だろうか。
こうやってまとめてみると、2階は比較的オフィス的な使い方でシステム要件もそれっぽいモノになり、1階の方はより柔軟性に重きを置いた操作環境の実現が必要だということになった。
まあ、リビングやダイニングといえば生活用品満載で、PCのようなものが大いばりで占有できるような場所など(雰囲気ということも含めて)無いのが当たり前であるし、電源ケーブルや電話回線のようなヒモのたぐいは邪魔などころか怪我の原因にすらなりかねない。
特に我が家では筆者が妻のノートPCのケーブルを引っかけて通信切断やら、PCを落っことすやらするなどすでに実証済みですらあるから、こいつの解消は結構な命題ですらある。
ちなみに、趣味を理解してもらうために家族にもその世界を適度に知ってもらうことは大事なことだ、と筆者は思う。平穏なPCライフを送るためには家族持ちにとってこのあたり結構重要ではないだろうか。家族にもPCを使うことの便利さやコミュニケーションツールとして使うことの楽しさを少しでも知ってもらう。そのための環境整備というやつもしっかりやっておくべきだと、最近では痛感する次第である(理解できないことには財布の紐も緩まない、というわけだ。大きい声では言えないが……)。
■ 図面に落とし込む
と、いうことで我が家の場合、PCを快適に使うためのバックボーンとしてのLAN環境を、2階は100Base-TXの高速Ethernetで、1階を無線LANで実現することにした。
ちなみに、2階には寝室、クローゼット、夫婦の仕事部屋、客間の3部屋+1部屋があるが、全ての部屋にケーブルを敷設することに、この段階で決めていた。幸運なことにこれから家を建てるわけであるから、ケーブルを壁に埋め込むことが可能だ。目立たせずに済むのならどの部屋でもLANに接続できるようにしてしまおうと思ったわけだ。将来このケーブルをどのような使い方に転用するかもわからないし、出来うる限りの柔軟性を確保するということも考えての決断である(敷設の仕方さえ工夫しておけば、後々光ケーブルなどに更新することも可能だ)。
1階は見通しのよいリビングの高い位置に無線LANの基地局を設置し、1階全域+αで受信できるようにと計画した。
実は隣家が妻の実家であるため、そちらのPCも無線LANのなかに取り込んでしまえばそちらのPCをサポートする時にも楽になるのではないか、と考えたのがここでいう「α」である。(実際可能であるかどうかは現物で確認するしかないだろうが。「マスオさん」はそれなりに気も使うのである。(^^;
これで、1階では家族が「家庭内モービル」し、2階では本格的な高速LANにどこの部屋からでも接続できる環境になるはずである。ついでに庭や隣家、電波さえ届けば近所の公園ですら自宅LANに接続したまま「お出かけ」可能になるはずだ。この公園は春になれば桜が満開になる。「お花見モバイル」ができるかもしれない。
すでにできあがっていた家の完成図面とにらめっこしながら、これらLANケーブルの敷設位置、コネクターの配置、ハブの設置場所などをどうするかなどについて設計士さんと大工さん、電設会社さんと相談した結果が以下の図である。
外部からの通信回線(ISDN)を外壁から1階階段下収納に引き込み、ここにルーターを設置。ルーターを中心としてデジタル回線(RJ-45)とアナログ回線(RJ-11)を2階の各部屋に引く。Ethernetケーブルについては、ルーターから1階リビングと2階仕事部屋に各1回線ずつ引き込み、それぞれ無線LANのハブ(1階LANのハブ)とスイッチングハブ(2階LANのハブ)に接続する。
2階は仕事部屋に隣接する屋根裏収納の一部をハブ収納として、電源と各部屋からのEthernetケーブルを集中させた。LANポートは仕事部屋に8、客間に4、寝室とクローゼットに各1を配置することで将来的な拡張……はするかどうかわからないが、この際ということで、対応可能ということにした。
コンセントは仕事部屋、客間はポート脇にPC専用として6個ずつ、寝室、クローゼットには2個ずつ配置している。ちなみにVHF/BS用同軸、CS用同軸も2階の各部屋と1階のリビングに配置した。
また、これら通信インフラのハブとなる2階仕事部屋脇の屋根裏収納と、1階の階段下収納には、通信機材用に4個ずつのコンセントも配置した。
■次回はいよいよ実践編。自分で作業すれば理解も深まる?
いろいろ書いているうちに長くなってしまったので、残りは次回へ続けたいと思う。ここまで決めたらあとは自分で描いた画をいかにして実際の図面に落とし込んで現場の人たちに工事してもらえるようにするかの「お願いと説明」になるだろう。
結果として筆者の場合には設計士さんが理解ある方だったため、大工さんへの追加作業のお願いもうまくいったし、電設会社さんにも若干の経験があったため説明事態はスムーズに事は運んだほうのようである。
筆者の友人の場合は、間に立つ不動産会社の営業が全く理解出来なかったか面倒くさかったのか、「そんなことはできない」の一点張りだったそうだ(大工さんと電設会社さんに直にお願いしたら問題なく工事できるとのことで、結果的にはできたらしいが)。
そういった面倒こそ無かった筆者のケースではあるが、それでもこちらの思惑通りに意図が伝わっておらず、何度かの打ち合わせや再作業は発生しているのも事実である。結局のところこまめに現場に顔を出し、チェックして、違っているところを見つけたら丁寧に説明して修正をお願いしてゆくことが必須ということだ。「コミュニケーションは密接に、丁寧に、根気よく。」これにつきるだろう。
次回は作業がどのような感じで進んだか、また、部材の手配とEthernetの配線作業は筆者自身の手で進めるハメになったのでそのあたりの経緯と作業の実際手順などをご説明したいと思う。
(鈴木英雄)
1999/12/02
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