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ノートでプレゼン!
セカンダリ用マルチモニタPCカード「CBMLX」

正雪
正雪
 普段は愛機ThinkPad 600を肌身離さず持ち歩く、「どこでも同じ環境でパソコンを」を信念としているヘビーキャリアーのモバイラー。あとはThinkPadでゲームができれば、というのが現在の願い。最近はパソコンでのDVD環境構築を楽しんでいる。


 最近は、ノートパソコンを常時持ち歩くビジネスマンも多いようである。またそのパソコン自体をプレゼンテーションマシンとして使うユーザーも徐々にではあるが増えている。筆者も昔はチャンドラなぞを持ち歩いて、客先で講習会などを開いた。そういった時にはパソコン側でのVGA出力が必須で、状況に応じてパソコン用ディスプレイを接続したり、NTSCコンバーターを付けてテレビに表示したりしていた。

 面白いことに、パソコンでプレゼンテーションを行なうツール自体は、一昔前も現在もあまり変わっていない。ソフトは相変わらずPowerPointだし、出力を外部のモニター(テレビ・プロジェクター)に映すという事も変わっていない。テレビ出力用のNTSCコンバーターに関しては画質・解像度の向上など、かなり性能は良くなっているものの、プレゼンテーション手法自体はほとんど変化がない状況である。



■ 話題のスリムノートにはディスプレイカードは必須

プレゼンの為の秘密兵器
アイ・オー・データ機器「CBMLX」
標準価格3万4800円。セカンダリ用マルチモニタPCカード

 さて、ノートパソコンも購入して、「ちょっとプレゼンテーションをやってみようかな」と思った時に「あれっ?」と感じることがある。流行の銀パソ・スリムノートにはVGAの出力端子が無い。ちょっと考えてみればわかることだが、VGAコネクタなどあの薄い筐体に装備できるわけがない。オプションのポートリプリケータ―などを使えば良いのだが、持ち運びが煩わしいしスマートさに欠ける。

 重量・大きさに制限を受けるサブノートパソコンであれこれやろうと思うと、意外に制約が多いことを実感する。このような意味では、頑固に全てのI/Oポートを本体に付けているThinkPadには、ポリシーを感じる。

 それでも、スリムサブノートでスマートにプレゼンをやりたい! そんなビジネスマンにとって、ちょっと耳寄りなツールがこのI・Oデータ製の「マルチディスプレイカード CBMLX」である。Windows 98の登場で、マルチディスプレイの利用が正式に可能にはなったが、実際の製品はデスクトップ用だけ。ノートパソコン用の製品が今まで全くなかったなのは実に不思議だ。



■ アプリケーションの対応が必須

 「CBLMX」はWindows 98のマルチディスプレイの機能を利用し、セカンダリーのビデオボードとして動作する。出力はアナログとデジタルポートを持っており、その先にケーブルを取り付ける仕組みになっている。デジタルは最近ぼちぼち出てきたデジタル入力付きの液晶モニターに、アナログはVGAと他にTVへの出力も可能である。

CBMLXはセカンダリーのディスプレイとして機能
アナログとデジタルのコネクタは別

 「CBMLX」本体には2.5MBのVRAMが搭載されている。このためそれ自体で1280×1024の16ビットカラーまでの出力が可能になっている。最近のNM2200のビデオチップ搭載のThinkPadなどは単体でマルチディスプレイが可能だが、VRAMの制限により解像度と色数に制限が生じるためあまり実用的ではない。「CBMLX」では、今まで使用できなかった画面モードも使えるようになり、通常のマルチディスプレイの画面と同様に連続した2画面として表示される。

 さて、「CBMLX」でプレゼンテーションをしてみることにする。接続したディスプレイでPowerPointのスライドショーを実行しようとしたが、これがなぜかうまくいかない。なんと全画面表示がプライマリーディスプレイでしか実行されない。調べてみると、そのためには「PowerPoint 2000が必要」で「セカンダリーディスプレイの出力を指定して使うように」ということがわかった。アプリケーション側でセカンダリーディスプレイの認識が必要というのは、よく考えればもっともな話ではあるのだが……となるとサポートしているアプリケーションってPowerPoint 2000以外は……ほとんど皆無状態である。マルチディスプレイの認知度の低さはこんな所に表われている。

 ちなみにDirectXの全画面モードも同様の理由からサポートされていない。これでは「CBMLX」の3Dビデオエンジンもちょっと宝の持ち腐れかな、と思ってしまう。ノートパソコンのビデオチップは3Dの機能が無いものが多いので、これで解決できることが多いかなと思ったのだが……ゲーム好きの筆者にとってはちょっと残念である。また筆者の大好きなDVD再生においても、セカンダリーディスプレイではピンクの画面が出て再生が不能になってしまうという問題があった。このあたりは、アプリケーションの対応に期待したいところだ。

 ただし、最近バージョンアップされた「CBMLX用機能拡張ツールディスプレイセレクト」を使うと、「CBMLX」の出力をプライマリーディスプレイと同じ画面にしたり、プライマリーとセカンダリーを切り替えられることができるようになった。まだメーカー正式サポートは無い段階なので詳細な評価はできかねるが、かなり期待が持てそうな感じだ。

コネクタを切り替えれば様々なディスプレイに接続可能。上からVGA、S端子(TV)、ピン端子(TV)
使用にはセカンダリーディスプレイの設定が必須



■ ノートパソコンでのマルチディスプレイの実際

 ノートパソコンでマルチディスプレイ環境ができるとなると、次は複数のディスプレイを接続できないかという疑問がわいてくる。これができれば、省スペースのノートパソコンと液晶ディスプレイの組み合わせで、少ないスペースに多くの画面を並べての使用が可能となる。

 しかし「CBMLX」を見ると「2枚挿しは出来ません」との注意書きが、確かに2枚挿してみるとうまく動かない。ドライバの問題か? それならば違うカードを2枚挿してみたらと考え、同様のディスプレイカードMargi社の「Display-to-Go」を用意してみた。Margi社というと聞き慣れない人も多いかも知れないが「DVD-to-Go」というDVDのハードウェアデコーダーを扱っている会社である。日本でも何社かOEM契約をしているので、その筋では結構有名なメーカーだ。

 2枚差しに関しては、「CBMLX」と「Display-to-Go」を1枚ずつ使用した場合に稼働が確認できた。3面ディスプレイの迫力はなかなかのものである。さらに「Display-to-Go」の2枚差しも試してみた。一瞬動きがぎこちなくなるものの、なんとか表示は可能だった。ただしユーティリティを含め複数枚の使用は想定していないようだ。それにしても、デスクトップがマルチディスプレイの使用にあたって同じ製品の使用を推奨していることを考えると、これはちょっと不思議に感じることではある。

MargiのDisplay-to-Goは本体のコネクタは1個だけ
オプションのデジタルディスプレイ用ケーブル(上)と付属のVGAケーブル(下)

これで2枚挿しも可能になる
3画面は結構魅力だ



■ 省スペースを活用するノートでの3面鏡

 実際に3面を使用して表示した場合、かなり机上のスペース的な問題が発生する。ブラウン管ディスプレイなどはとんでもないという話となってくる。パソコンがThinkPadということもあり、やはり液晶ディスプレイがバランスもとれよく似合う。またキーボードの位置もちょうど良い。見た目はまさしく3面鏡といったところだ。

 液晶ディスプレイは、筆者は最近T・ZONEで格安販売していた16.1インチのTFTを使用している。これはIBMのOEM品で発表当時は79万円と、ちょっと手の出ない物であったが、結構魅力的な価格で売りに出ていたので思わず購入してしまった。色も黒でThinkPadとバランスが良く取れている。ただし、この液晶の解像度は1280×1024のSXGAである。両方のカードとも問題なく表示はできるのだが、「CBMLX」は16ビットカラー「Display-to-Go」は256色になってしまった。これは単純に搭載しているVRAMのサイズでもある。2.5MBのVRAMを積んでいる「CBMLX」はこのあたりよく考えているというか、さすがといったところである。

 このTFTを左右に置くと中央のThinkPad 600が寂しく見えてくる。やはりSXGA搭載のThinkPad 770などでないと解像度の点からもちょっとバランスが取りにくくなってしまう。また、3面鏡の場合かなりスピードが遅くなってしまう。筆者のThinkPad 600(Pentium II 233MHz)ではじゃっかん苦しい。普段はあまり感じないのではあるが、もっとパワーのあるThinkPadが欲しくなる一瞬である(そのうち出そうなThinkPad 600Xでも買おうかな?)。
 余談になるが3面鏡ご使用の際は、マウスの利用がベストである。どうしても横の動きが多くなるため、トラックポイントなどちょっとは使いづらい。



■ 2種類のPCカードを比較する

 今回、2種類のディスプレイカードを評価したが、それぞれに特徴がある。総合的には「CBMLX」がじゃっかん上かなと感じるものの、現在2つしかないこれらの製品がこれほど仕様が異なるというのも珍しい。特に、ドライバの作りやコントロールパネルの仕様など、かなり違いがある。個人的には、比較的完成された「CBMLX」とまだまだ改良されていくだろうと思われる「Display-to-Go」という印象を受けた。

【CBMLXとDisplay-to-Goの比較表】
製品名CBMLXDisplay-to-Go
販売元I/OデータMargi
グラフィックチップSilicon Motion Lynx3DChips&Technology F69000(?)
VRAM2.5MB2MB
対応OSWindows 98Windows 98
PCカードCardBusCardBus
ケーブルVGA(付属)
デジタル(オプション)
ビデオ(付属)
Sビデオ(付属)
VGA(付属)
デジタル(オプション)
価格34,800円249ドル

CBMLXのコントロールパネルのメニューは非常に豊富だ
Display-to-Goのコントロールパネル



■ ディスプレイカードの今後

CBMLXの機能拡張ツールはディスプレイカードの将来に期待が持てる

 今回紹介した、ディスプレイカードはまだ出たばかりのこれからの製品といえるだろう。スリムサブノートが主流の我が国では、ビジネスマンを中心にかなり広まっていく製品と思われる。「CBMLX」は実際その方面に良く売れているようである。今後、できるモバイル・ビジネスマンの必須アイテムになる可能性も秘めている。

 今後は、特にマルチディスプレイに特化したドライバの強化を期待したい。また、実用面ではむしろこちらが問題といえる、アプリケーション側の対応にも期待したい。特にノートパソコンはグラフィック系が貧弱なので、ディスプレイカードの強力なグラフィックチップの機能を充分に使いこなせるアプリケーションが出てくれば、さらにノートパソコンの活用法が広がっていくであろう。個人的には先にも述べたが、ゲームのフルスクリーンモードとDVD再生が出来れば幸せ、といったところである。

 また、β版のレベルではあるが、「CBMLX」の「CBMLX用機能拡張ツールディスプレイセレクト」は面白く、ディスプレイカードを使いこなせば使いこなすほど有用性が出てくるツールである(それにしてもI・Oデータはいつからこのような製品を出せるようになったのだろう)。完成版を期待している。

■アイ・オー・データ機器「CBMLX」製品情報
http://www.iodata.co.jp/products/graphics/cbmlx/index.htm
■Margiのホームページ
http://www.margi.com/

(正雪)
1999/11/25


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