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正雪
普段は愛機ThinkPad 600を肌身離さず持ち歩く、「どこでも同じ環境でパソコンを」を信念としているヘビーキャリアーのモバイラー。あとはThinkPadでゲームができれば、というのが現在の願い。最近はパソコンでのDVD環境構築を楽しんでいる。
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モバイル・モバイルと世間は騒いでいるものの、日常の生活で実際にどの程度の人がパソコンでモバイルを楽しんでいるのだろう。通勤電車や喫茶店などで携帯電話を片手に一生懸命メールを打っている人はいるものの、パソコンを使っている人はほとんど皆無に等しい。
また電車の中ではこのところ、パソコン用の鞄を持っているサラリーマンをよく見かけるようになった。日常パソコンを持ち歩いている人は結構多いのではないかという感じは受ける。しかし、彼らの多くはオフィスと自宅との移動の際にパソコンを持ち運び、それぞれの場所だけでパソコンを使用しているのだろう。モバイルの時代到来といっても、公共の場所でパソコンを広げてというのは、まだちょっと勇気がいるものである。そんな場所でパソコンを広げて喜んでいるのは、我々のようにまだまだ一握りの人々だけのようだ。「モバイル」という言葉は一般的になったが、パソコンのモバイラーはまだまだ一般には認知されていない。
ただし、これが出張という状況となると、じゃっかん様子が異なってくる。以前に比べると、新幹線の中や航空会社のラウンジなどで、パソコンを使っているサラリーマンをかなり見かけるようになってきた。ちょっとした時間を使ってレポートをまとめたり、日本のサラリーマンもようやく米国のビジネスマンなみになってきたようだ。
■ バッテリーは重要なのだがメーカーの方針はちょっと違う
こうしたユーザーにとって、悩みの種はバッテリーの持ち時間である。最近のノートパソコンは、小型・スリム化の傾向が強い。なるべく薄く、なるべく軽くを考えてデザインを追求している。その結果、バッテリーにしわ寄せが来るのである。実際のところ、標準のバッテリーで1時間持てば御の字といったところではないだろうか。それでもあまり問題にならないのは、コンセントのない所で長時間ノートパソコン使うユーザーがまださほど多くないためだろう。
雑誌の評価でバッテリーの持ちが重要視されるのは、筆者を含めライターは外で原稿を書くことが結構多いためという事情もある。ただ一般的なユーザーから見れば、使用時間は長いに越したことはないが、1時間も使えれば全く問題ないというのが本音であろう。バッテリーを長く持たせるためには当然本体が重くなる。売るためには、持ち運びの重量が少しでも軽いことが重要だ。カタログ上の重量の数値を少しでも削りたいメーカーにとっては、バッテリーの持ちは多少犠牲にしても軽さを取るといったところだろう。実際某メーカーのサブノートでは、買ってからあまりのバッテリーの持ちの短さに、大容量のサブバッテリーを後から買い求めるユーザーが多いという。
薄型のノートパソコンはデザイン的にも結構そそられるものがあるのだが、バッテリーの持ちという実用面からは、ちょっと考えさせられてしまう。
■ モバイラーにとってバッテリーは永遠の課題なのか
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ノートパソコンモバイラーには必須の予備のバッテリーと予備のACアダプタ。愛機のThinkPad 600用のもの |
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ちょっとモバイルを始めると、予備バッテリーの必要性が認識される。これは本体のバッテリーが持つ持たないとはあまり関係はないようである。使いこなせば必然的に予備のバッテリーと予備のACアダプターの必要性を実感することになる。その方が便利だからだ。バッテリーは万一の際に必要だし、ACはオフィスなど自宅以外でノートパソコンを使用する場所に置いておくと持ち歩かなくても良くなるので非常に重宝する。
予備のバッテリーを使い始めると、安心してノートパソコンをがんがん使えるようになる。がしかし、たいていのノートパソコンは専用の充電器はなく、直接本体から充電する。これが結構時間もかかるし面倒くさい。ThinkPadなど、専用の充電器が販売されている機種もあるが、それだけのために買うのもためらわれる。
そんなバッテリーに対しての悩みを解消するべく出てきたのが、エナックスから発売された「パワーバッテリー」である。
■ 外付け用の汎用バッテリー
パワーバッテリー自体は一言でいうと、ノートパソコン用の外付け用バッテリーである。形状は細長い板のような形をしており、この中にリチウムイオン電池と種々の回路が入っている。あとはACとノートパソコンとの接続ケーブルだけというシンプルな構成だ。
バッテリーというとどうしてもその機種専用というイメージがあるが、パワーバッテリーはユニークな方法でそれを解決している。ノートパソコンのAC用のプラグ差し込み口に接続し、そこからノートパソコンに電力を供給する仕組みだ。ノートパソコンは機種によりACのコネクタ形状が違うため、「パワーバッテリー」はあらかじめ3種類のコネクタケーブルを用意している。またオプションでさらに2種類のコネクターケーブルも販売している。ケーブルの種類を以下に挙げておこう。
・IBMタイプ
・ソニー、松下、富士通タイプ
・東芝タイプ
・三菱アミティタイプ(別売品)
・東芝ダイナブック、リブレットタイプ(別売品)
なお、コネクタは条件によって特注もしてくれる。
パワーバッテリーは、本体と同梱のACアダプタを接続して充電する。ただ、現行モデルはこのACアダプタが異様に大きい。しかもコンセント部が折り畳みにならないので収納・持ち運びに不便だった。これを改善したのが、一般にはあまり知られていない「オプションのACアダプター」だ。しかし、オプションといっても一般売りしている物ではなくパーツとしてのみ入手可能な品である。そんなことから、一般のショップでは取り扱っておらず、実際に購入できるのは秋葉原の「チチブデンキ」のみという状況である。実際に購入してみたが、マニュアルもパッケージもない。確かに部品扱いであった。このオプションのACアダプタは非常に小型でしかもコンセント部も折り畳めるため、持ち運びに便利だ。「パワーバッテリー」を頻繁に使っているユーザーには必須だろう。
「パワーバッテリー」は、前述のようにシンプルな構造でノートパソコンの使用時間が2倍から6倍に伸びる。派手さはないが、モバイラーにとってはあると非常にありがたい製品である。
■ そしてパワーバッテリーPlusが発売
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コンパクトになって海外における使用にも対応したACアダプタ |
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「パワーバッテリー」が世に出て早くも1年以上経過した。その間にPowerBook用やデジカメ用など兄弟製品が発売されている。そして「パワーバッテリープラス」として強化されて再登場した。初代機の反省を生かし、この「プラス」はかなり性能が向上した。従来品からの強化点を以下に挙げておこう。
またデザインも流行を取り入れてかスケルトンになった。これは従来品と容易に区別がつくのでそれなりに便利である。
・3段階の残量表示インジケーターランプ付き
・回路の改善による充電時間の短縮(約1/2)
・ACアダプタがワールドワイド仕様のAC100-240V対応に
・容量が3000mAhから3300mAhと一割アップ
インジケーターランプは以前の「色による表示」から「3段階のランプ」になり、残量の目安がよりわかりやすくなった。しかも、少しでもノートパソコン用に電力を廻すため、横のスイッチを押したときだけランプがつき確認できるという仕様になっている。
またACアダプタも持ち運びやすいスリム型で、240Vまでの対応となった。海外での使用が多いユーザーは重宝するだろう。もっとも筆者の場合、現行モデルが国内仕様というのはあまり気にしてはいなかった。
このように、現行モデルでのちょっと気になっていた点が改善されているのは嬉しい限りだ。製造元の株式会社エナックスでは、自社のホームページにユーザー書き込み用の掲示板を持っている。そこでのユーザーの声を直接反映させていくメーカーの方針には好感が持てる。なお、今回紹介した3種類のACアダプタは全て互換だそうである。
■ 「パワーバッテリー」使用上の考慮点
「パワーバッテリー」を使う上で注意する点は、「パワーバッテリー」接続時に、パソコン側ではACアダプタが接続しているように見えてしまう事である。これがこの製品の特徴でもあるのだが、ACアダプタと認識してしまうことにより、たいていのノートパソコンは省電力モードにはならずフルパワーで動いてしまうことになる。思ったより「パワーバッテリー」の使用時間が短いなとお感じの方は、ノートパソコン側の省電力設定をAC電源使用時でも省電力モードに設定するだけでもかなり使用時間が違ってくる。HDD周りや液晶の明るさの設定を変えても持続時間はかなり違ってくるだろう。
また、本体のバッテリーの容量にも要注意である。通常、本体のバッテリーはACアダプタが接続されると自動的に充電を開始する仕組みになっているものが多い。本体のバッテリーが満充電ではない場合、「パワーバッテリー」の電力を使って本体バッテリーに充電するという、非常によろしくない状態になってしまう。「パワーバッテリー」のエネルギーを有効利用するためには、ノートパソコン本体のバッテリーが満タンなのを確認してから使用したい。
■ 「パワーバッテリー」実際の活用
「パワーバッテリー」をうまく使いこなせば、外出先での使用環境がかなり変わることは間違いないだろう。筆者のまわりでも自宅で原稿が書けず、ファミレスなどで休日これを1本持っていって、のんびりとお代わり自由のコーヒーを飲みながら原稿を書いている友人もいる。ファミレスから見ればイヤな客だろうが、落ち着いて長時間仕事が出来る環境としては、なかなかのものである。
長時間の移動中で使用するといえば、やはり新幹線中の使用が考えられる。そんなモバイラーを対象にしてか、新大阪駅構内の「ウェンズタウン」ではこの「パワーバッテリー」を販売している。しかもすぐに使えるようにとフル充電されているという気の使いようである。これならちょっとした時に便利かなと思ったりする(しかし売れているんだろうか?)。まあ出来れば車内レンタルにしてくれれば緊急の場合など便利かな、などと思ったりするのですが。
レンタルといえば、この「パワーバッテリー」は日本航空の国際線で利用できるようだ。お堅いと思っていたJALにしてはなかなかやるなあと思うサービスである。基本的にはファーストクラスとエグゼクティブクラスのお客が対象だが、そんなに認知されていないため、数に余裕があると思われる。エコノミーでも頼んでみれば案外貸してくれるかもしれない。まあエコノミーのあの狭い席で、パソコンを広げて仕事するのはちょっと、という感じもするのですが。
実際筆者も、国際線の機内で原稿を書いたり、米国で買ったDVDを見たりなど、結構機内で独特の楽しみをしている。うまく使えば「パワーバッテリー」1本で、映画2本見られるかなというくらい、バッテリー持続時間は非常にありがたいものだ。機内の映画がつまらないときなどはこれで結構楽しめる(ちなみにその際はヘッドホンは必須でしょう)。
■ モバイラーの世界が変わる
モバイラーにとって大きな弱点であったバッテリーの問題が「パワーバッテリー」によってかなり改善されるというのは嬉しい限り。毎日は使わないものの、外出先での長時間使用という状況下では至極便利である。バッテリーは鞄に入れ、ケーブルだけ伸ばしていれば結構見た目もスマートだ(逆にバッテリーを見せると周りからは「怪しいやつ」と思われるだろう)。場所に依存せず、バッテリー残量を気にせずノートパソコンが使用できる環境は、モバイラーの外でのパソコン利用に大きな変化を与えていくだろう。
価格 | パワーバッテリー | 24,800円 |
パワーバッテリープラス | オープン価格 |
発売時期 | パワーバッテリー | 発売中 |
パワーバッテリープラス | 11月発売予定 |
■エナックスのホームページ
http://www.enax.co.jp/
■JALの紹介ページ
http://www.jal.co.jp/ife/i_ife/topics/battery/
(正雪)
1999/10/28
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