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KADUHI
趣味で「パチもん」ばかり発明しているシリコンバレー在住のエンジニア。HP 200LX日本語化やPalm用キーボードThumbTypeなど、時にはまともなものも。過去の発明品はこちら(の第5回)をご覧ください。
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「重さ170g、待ち受け60時間のデジタル携帯電話(ニッケル水素電池)が、1年契約すると今ならタダで」
「ウルトラスリム(厚さ19mm、重さ120g)な携帯電話、月1060円の追加料金でインターネットアクセス(テキストのみ)も可能」
「ノキアの動物柄携帯電話カバーを買って、地域の動物園に寄付しよう!」
これらの広告、実はある発展途上国の新聞に掲載されている、携帯電話の広告なのです……と言われても何の違和感もなくナルホドと納得してしまった方。驚くなかれ、実はコレ、「世界のハイテク中心地」として名高い、アメリカ・カリフォルニアはシリコンバレーの本日の新聞広告からの抜粋なのです。
■ まだ人口の半数にはほど遠い普及率
こうした広告を見ていただければわかる通り、いまや端末は80gを切るのが当たり前の日本と比べると、実はここシリコンバレーは、こと携帯電話に関しては「後進国」なのではないだろうか。
いや、日本の携帯電話事情と比べてしまうと、もう世界で右に出る国はないだろう。確かに日本よりも普及率の高い国はいくつかあるが、端末のコンパクトさや「iモード」を代表とする付加機能でいえば、もうダントツではないだろうか。
なので日本と比較しただけでは、シリコンバレーが一概に「遅れている」とは言い難い。しかしそれにしても日本で高校生がケータイでもってメールしてるのを見て、こちらに戻ってくると、あぁなんでこの地にあーいうサービスがないんだろうか、と思わずにはいられない。2年前にPCSサービス(日本でいうCDMA)が開始してから、携帯電話普及の勢いは以前と比べて確かに加速したのであるが、依然として「人口の半数近く」の人が持つような状況にはほど遠いものがある。
■ まだまだ現役の「アナログ方式」
携帯電話の方式だが、日本と同じようにアナログ方式とデジタル方式とに大別される。日本ではすでに新規加入すら難しくなってしまったアナログ方式であるが、こちらではいまだに現役のサービスである。
それどころか、まだまだデジタル方式のサービスエリアが十分でないため、「アナログ」と「デジタル」の2つのモードを1台で兼ね備えた携帯電話(デュアルバンドと呼ぶ)が用意されている。日本の「ドッチーモ」も同じように2つのサービスを使い分けるものであるが、ドッチーモでは「経済性」「音質」「データ通信速度」などでモードを使い分けるのに対し、こちらのデュアルバンド携帯電話は、車で30分走るともうそこは「デジタル圏外」という実情に沿った「必要にせまられた」仕様といえよう。
彼女を連れて、街から少し離れた場所へ夜景を見に行った先でのカートラブル。「携帯電話があるから大丈夫。すぐAAA(日本でのJAF)呼ぶからネ」と取り出した携帯電話がデジタルオンリー。当然圏外でアウト!――なんて悲しいことにならないためにも、デキる人は少々高くてもデュアルバンドを選ぶのだ。ちなみにドッチーモは基本料金設定でモメてましたが、こちらのデュアルバンドはデジタルオンリーの機種と基本料金は同じである。
日本で流行りの「iモード」のような「携帯電話でインターネット」サービスだが、こちらではようやくこの10月から、Sprint PCSがサービスを開始した(下の写真2点はその対応端末)。残念ながら今回はどの店でもインターネットに接続したデモを見ることができなかったため、詳しいレポートは次回以降となるが、興味のある方はSprint PCSのページ( http://www.sprintpcs.com/wireless/index.html )をご参照ください。
■ 安い?高い? シリコンバレーの携帯電話料金
日本との料金体系で大きく違う部分は、日本では携帯電話で着信した場合、着信側は一切料金はかからないが、こちらではちゃっかり料金を取られることである。つまり、向こうからかかってきたからと言って安心して長電話していると、請求書を受け取った時エラい目に合うわけだ。
では、もし間違い電話が頻繁にかかってきてしまうとどうなるのか? そうです、それも請求されてしまうのです!
しかし最近では、さすがにこのテの苦情が殺到したのか、「着信時の最初の1分間は無料」というのがプランに含まれている場合が多い。なぜ私がいつも1分以内の通話にこだわってきたのかが、これで説明がついた訳だ。
ちなみに気になる通話料金であるが、下表を見ていただければわかるように、各社それぞれ色々なプランを用意しており、選ぶ側としてはかなり大変である。
電話会社 |
プラン例 |
月額基本料金 |
含まれている通話時間(分) |
それ以降の料金(毎分) |
備考 |
CELLULARONE (デュアルバンド対応) | A | $29.99 | 125 | $0.35 | 市内通話時の料金 |
B | $49.99 | 300 | $0.30 | カリフォルニア州内からの長距離通話料込み |
Sprint PCS (デュアルバンド対応) | A | $29.99 | 120 | $0.35 | 長距離通話料込み・着信最初の一分間は無料 |
B | $50.00 | 500 | $0.30 |
Pacific Bell PCS | A | $29.95 | 125 | $0.35 | カリフォルニア・ネバダ州内からの長距離通話料込み。プランAは週末分別途1000分が込み、プランBは週末分別途500分が込み |
B | $49.95 | 250 | $0.30 |
大抵のプランは、基本料金の中にあらかじめ何時間分かの通話料金が含まれている。一見おトクに見えるこの料金体系だが、これがまた実はクセモノだったりする。
例えば、月々30ドルで120分(2時間分)の通話時間が含まれているプランを例にとった場合、確かに120分までは追加料金ナシなハズなのだが、実はその120分というのは「市内通話のみ」だったり、「相手が同じ電話会社の携帯電話」だったりと、色々と制約が付いた上での120分なのである。
さらに、電話機に内蔵されている「通話時間積算タイマー」が「今月はまだ100分しか使ってないよ」と表示しているからといって、信用して長電話してはいけない。当然、「一回の通話時間」に満たない場合は繰り上げとなっていたりするからである。そして当然のことながら、基本料金が安いプランほど、この含まれている通話時間が少なく、その上それを超過した場合の通話料金が高くなるのである。このカラクリのお蔭で、私は過去何度かエラい高い通話料、そして何度か「くっそー、あと100分も余ってたやんけ」という目に遭ってきたのである。
■ Mail-in-Rebateのカラクリ
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米国ではまだ400ドルもしたりするインターネット対応携帯電話。手がすごく小さく見えるが子供の手というわけではない
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電話機本体は、日本と同じように契約時に買うことになるのであるが、これがまた高い。私の場合は、同じ機種を同時に2台購入したので、メーカーからの『Mail-in-Rebate』と称した100ドルバックが適用され、実際の値段はかなりお安くなった。しかしWebが見られる「iMode Phone」みたいな最新機種になると400ドルもするものもある。
このMail-in-Rebateであるが、商品を作ったメーカーが「商品を買ったレシートといっしょにこのクーポン券を、必要事項をご記入の上ご返送下さい。こちらからおり返し、XXドル分の金額に相当するチェック(小切手)をお送りいたします」というサービスのことである。
こういった庶民的な「今買うと現金100ドルをバックします」という、わかりやすいシステムがこちらではかなり普及していて、それは携帯電話から食料品まで、ありとあらゆる商品に及んでいる。
中には、こないだ私が買ったフロッピーディスクのように、10ドルの商品に10ドルのMail-in-Rebateが付いているという、究極の「これ、どうやって儲けてんの?」商品まで存在する始末である。――そういえば、あの10ドルはまだ回収できていないではないか。しかしこうやって忘れていた頃届くチェック(小切手のこと)というのも、なにかこう、すごくトクした気分になって、また同じブランドを買ってあげようじゃないのという気分にさせられる。こうやって庶民は、まんまと「その手」に乗せられてゆくのだ。
そういえば、登場したときは大きな話題になった「Free PC」のさらに上をゆく「買ったらお金あげますPC」というのも、このMail-in-Rebateのカラクリを使っていた(店頭価格399ドル99セント、インターネットプロバイダを2年間契約すると400ドルのMail-in-Rebateがもらえて差し引きFree PC+1セントをゲット)。ただし、消費税(シリコンバレーでは8.25%)を払う必要はあるが。
■ 若者の合言葉は「Page Me」
現在でも若者のモバイル通信手段というと、やはりページャ(日本でいうポケベル、ビーパーとも言うが語感が悪いのでページャと書く)が主流である。日本では、ポケベル会社が倒産するほど、すでに「過去のサービス」となってしまった感があるそうだが、こちらではいまだに現役バリバリのサービスである。
使い方は日本と同様、相手のページャの電話番号に電話して、メッセージの後に自分の電話番号を入れておけば、相手のページャにその番号が表示されるというのがベーシックな使い方であるが、こちらのページャのサービスには、通常ボイスメール機能(日本で言うところの留守録機能)が付いているので、例えば「今晩オヒマ?」とかいった、どうしても肉声で伝える必要のある用件であっても、相手のページャのボイスメイルに直接ナマ声で録音しておけば事足りてしまう。当然それを聞いた相手もまた、その気があれば相手のページャのボイスメールに入れておけばいいのである。
ちなみにページャ本体であるが、通常は買い取りとなる。日本の携帯電話やPHSのように「タダ」でくれる所はそうザラにはないのである。もしあなたがこちらに旅行に来て、新聞や雑誌で「Free Pager」といった「ページャ無料」広告が氾濫しているのを見ても、私をウソツキだなどと思わないでいただきたい。当然そういうのには「ウラ」があり、2年間の契約を前払いでやれだの、1年間は契約破棄できません、つきましては契約破棄した場合には多大なる解約料をご請求させていただく権利を我々は有しているという事をあなたは理解しました、などと小さい字で印刷された契約書にサインさせられたりするのである。
■ストラップ仏教文化起源説
不思議に思うのが、こちらで販売されている携帯電話にはストラップが全く付いていないことだ。
そもそもこちらの携帯電話は大きいし重いので、ヤワなストラップではすぐブチ切れてしまい使い物にならないとか、中にはゼロ・ハリ氏のように「これは仏教的な思想から来るものであり、キリスト教を主体とする西欧諸国では……」などという「ストラップ仏教文化起源説」まで唱える人もいるが、いまだもって真実は定かではない。
しかし、さすがは人種のルツボ、シリコンバレーのことだけあって、行く所に行けばちゃんと販売されていました。中華系のショッピングモールには必ずある、CDからポケモンカードまで何でも売ってる雑貨屋さん。あるわあるわ、ウルトラマンやドラえもんのストラップやらアンテナのアクセサリまで。しかし疑問なのは、私の携帯電話を見ても、どこにもストラップ用の「穴」が見当たらないのですが。彼らはどうやってあのストラップを取りつけているのであろうか?
今回は「シリコンバレーの携帯電話事情」と題して色々な話をしてきたが、次回はもう少し楽しい「シリコンバレー ワイアレスデータ通信事情」を予定しているのでお楽しみに。
(KADUHI)
1999/10/21
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