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【99/10/14】
発想の転換! 貼って剥がせるキーボード“ThumbType”
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発想の転換! 貼って剥がせるキーボード「ThumbType」

 最近、Palm系ユーザの間で話題のキーボード“ThumbType”……実はBitMap Familyメンバーも開発に加わっていた製品だったのだ! そこで、アイデア段階のプロトタイプの写真も掲載しつつ、手前味噌ながら製品紹介を行なってみよう。

王子
AKIプ王子
来週登場予定のかづひ氏と発明品を作る(ThumbTypeもそのひとつ)かたわら、いろいろな仕事に手を染める謎の買い物王子。詳しくはこちら(の第4回)をご覧ください。

■ ThumbTypeってなに?

ThumbType
ThumbType
希望小売価格6,800円。対応機種はWorkPad、Palm III、Palm IIIx、Palm IIIe

 ThumbTypeとは、Palm OS上で動作するハードウェアとソフトウェアを組み合わせたキーボードシステムだ。もっともこれだけでは、いくつか製品化されているPalm S向け外付けキーボードとドコが違うの? と思われることだろう。しかし、ThumbTypeを見たもの触ったものならその斬新なアイデアに圧倒されること確実だ。写真を見てわかる通り、ThumbTypeはPalm上のGraffitiエリアに取りつけて使用する構造を取っている。

 PDAなど手帳感覚で持ち歩く情報機器は、小型軽量化の過程においてハードウェアデバイスが外されていった。これは機能の割り切りによるところが多い。
 Palm OS系PDAもその流れの中、入力手段としてのキーボードが排除され、液晶にタッチパネルを組み合わせたペン入力方式が採用されている。Palmシリーズの場合、出先でのデータビューワー的な要素が大きく、入力に対してはGraffitiと呼ばれる手書き認識システムが採用されている。

 PC上で管理されるスケジュール、電話帳などの情報を外出時に利用するのがPalmシリーズの基本的な使用方法だろう。そして、補助的な入力手段としてペン入力によるGraffitiが採用されている。Graffitiは独自のジェスチャを使用することで、高効率なペンによる文字入力を可能としているが、そのぶん若干の訓練が必要となる。敷居が高いと感じる方も多いようで、「欲しいけどPalmにはキーボードがないから」という声を耳にする。

 そうした市場の声をもとに、Palmシリーズ用のシリアルインターフェイスを利用した外付キーボードが登場してきた。しかし、これらは快適な入力手段を提供する代わりに、Palmシリーズが目指した小型軽量といったモビリティを犠牲にせざるをえない。そこで登場してきたキーボードシステムが“ThumbType”と言っても過言ではないだろう。

■ ThumbTypeってどーなってるの?

 初めてThumbTypeを見た人の感想は「ど~なってるの?」、「改造が大変そう」……ここで“ペロッ”とThumbTypeを剥がしてみると、まさに“アメージング!”ほとんどの方が唖然とする。実は筆者自身、ThumbTypeを人に見せる時も、この瞬間が結構楽しみだったりする(笑)。

 Palmのもつ、小型軽量といったモビリティを犠牲にせず、製品化されたハードウェアキーボードのひとつの到達点がThumbTypeといえる。ThumbTypeはシート状のハードウェアキーボードとソフトウェアドライバから構成されているわけだが、見た目のシンプルさ、ローテク加減とは裏腹に、かなりのハイテクが隠されている。

 特許出願中というのも、そのアイデアの新しさは理解できよう。特に注目されるのは、そのフレキシビリティの高さだろう……Palm OS向けだけでなく、感圧式のタッチパネルを持つシステム向けに容易に応用できる。また、シート状キーボードのキーレイアウトも自由自在。フルキータイプからアプリケーションに特化したキーボードなど、ゲームから特定の業務用まで、ユーザの要求に対して、ローコストでどのようにも対応できる。

■ ThumbTypeの仕組み

ThumbType
ThumbTypeのキー
ThumbType
ThumbTypeの背面
ThumbType
アイデア当初の検証サンプル
ThumbType
サンプル単体。もちろん全部手作り

 この画期的なキーボードであるThumbTypeはどのような仕組みでキー入力を可能にしているのだろう? また、シート上のキーボードで本当に入力ができるの?といった疑問をもたれる方が多いことだろう。ここではその疑問を解決しつつ構造を見てみよう。

 ThumbTypeの表面には半球状の突起があり、いわゆるキートップを形成している。突起の高さはコンマ数ミリであるが、その形状・高さを決定するまでには数々の試作が繰り返された。試作途中での驚き――それは人の指先がもつ感覚の鋭さである。突起の高さを調整する際に、0.1mm刻みで試作を繰り返していたが触ってるうちに“これコンマ5mmだね”とか“これコンマ6mmじゃないと”……と1mm以下の世界もわかる様になってきたのだ(笑)。このような試行錯誤と人間工学的な要素を取り入れ、ThumbTypeは最適化されたキーの形状・配置を実現するに至った。

 ThumbType裏面、タッチパネルへキー入力を伝える重要な部分である。シートの裏側には、スタイラスペンと同様な働きをする樹脂突起とThumbTypeをGraffityエリアのガラス面に固定する役目を果たす特殊弾性シートから構成されている。
 入力の仕組みはいたって簡単で、キートップが押されると弾性シートが変形し、樹脂突起が沈下してタッチパネルの特定ポイントをタップする。
 この当たり前の仕組みを、いかにシンプルで確実な構造によって実現するか――これがThumbType開発にあたって時間がかけられたところでもある。さらに、ThumbTypeの特徴である“貼って剥がせる”という点に関しても、さまざまな条件を満たしつつ粘着性を持った素材を探すことから始まった。

 これらの試行錯誤、最適な構造・素材の決定により入力効率に関してもかなり期待できるものとなった。こればかりは実際に試して頂く必要があるのだが、指先の疲れを感じることなくある程度まとまった文章もストレス無く入力できる。WorkPadがPHSなどの無線インフラに対応した時には、最適な周辺機器の一つになると確信している。


■ 進化するThumbType

ThumbType
ソフトウエアGraffiti

 ThumbTypeを実現するにあたり、構造部分、いわゆるハードウェアだけでなくドライバとして提供されるソフトウェアが重要な役割を果たす。タッチされたポイント検出のアルゴリズムなど、処理速度を考慮しつつユーザーにとってストレスのない使用感を目指している。
 特徴的な動作として、ThumbTypeが貼られることによって使用できなくなるGraffitiエリアの動作をソフトウエア処理により使用可能にしていることが挙げられる。ワンステップの操作でGraffitiエリアを表示エリアに表示、使用できるようにしている。

 これは、GraffitiをThumbTypeが否定するわけでない事を示すと同時にペンオペレーションの良さも活かしたい、という考えに基づく。ドライバは一つであるが、Palm OSが日本語版か英語版かを自動認識することでソフト表示させるGraffityエリアも自動的に合わせる……という細かなサポートもなされている。こうした機能は、常にユーザビリティを念頭に置いて開発した結果、備えられたものだ。
 なお、このGraffitiエリアのソフト表示に関しては、3Comとの版権の確認、契約も交わされている。ThumbTypeを購入されたユーザは安心して利用していただきたい。

 ThumbTypeは、よりユーザ寄りの立場に立った開発手法を導入することで、ドライバのバージョンアップによりさらに使いやすく進化していくことだろう……日本発のPalm系周辺として世界へ!?

◎関連URL
■ThumbType製品情報(オカヤ・システムウェア)
http://www.osw.co.jp/products/mobile/thumb.htm

(AKIプ王子)
1999/10/14


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