家庭でプログラミング教育にトライ
教えやすさ抜群! 「プログラミングゼミ」にトライ
2017年12月1日 06:00
公立小向けに生まれた「プログラミングゼミ」
「プログラミングゼミ」は、DeNAが開発した公立小学校1~3年生向けの授業から生まれたプログラミングアプリだ。子どもや現場の先生方の意見を反映させて作られただけあり、教えやすく使いやすいという点では群を抜いている。
以前ご紹介した「プログル」と同様、児童が自分で進めれば自然とプログラミング力が身に付けられる仕組みだ。渋谷モデルに採用され、渋谷区が区立学校の教員や生徒に配布するタブレット7000台にも導入されるという。
日本語のプログラムブロックを組み替えればプログラムが組めるようになっているので、小学校低学年でも抵抗なく使えるだろう。紙に描いた絵をカメラで撮影して取り込み動かすこともできるので、自由度も高い。
「日本語のブロック型プログラミングアプリ」と聞いて、「それならScratchでいいのでは」と思う方もいるかもしれない。私も使う前はそう感じたが、実際に使ってみて違いに驚いた。Scratchは自由の幅が広すぎ、どこから手を付けたらいいのか分からないと感じる方も多いだろう。Scratchでできることを増やすためには、書籍などで学んだり誰かに教えてもらったりなどが必要で、若干敷居が高いところがある。
一方、プログラミングゼミはできること一つ一つがすべて課題となっている。つまり課題をクリアする度に、プログラミングの技が学べるようになっているのだ。すべてのメニューをこなせばこのツールでできることを一通りマスターできるので、本やネットなどでやり方を調べる必要がないのだ。
今回は、小学2年生の息子と「プログラミングゼミ」にトライしたい。
時間制限やレベル設定も可能
アプリをダウンロードして立ち上げると、ユーザー登録画面となる。複数のユーザーが登録できるので、兄弟で利用したり、先に保護者が登録して試してみたりすることもできる。
「設定を確認しますか?」で「はい」に進むと、使用時間を制限したり、作品公開の有無、難易度のレベルを設定したりできる画面となる。子どもが夢中になりすぎて使いすぎることが心配な場合は、ここで使用時間を制限しよう。
プログラミングゼミでは、難易度のレベルを上げると使えるブロックが増えていく仕組みとなっている。初期は使えるブロックが少ない方が子どもが迷わずに使えるだろうという配慮だ。既にプログラミングに精通している場合など、すぐに使えるブロックを増やしたい時は、最大レベル30にするといいだろう。レベルを999以上にすると、配列などの試験的なブロックも使えるようになる。設定は後で変えることもできる。
アプリには様々なコンテンツが用意されているが、「あつめよう」をすべてクリアすると、自然と主要なプログラミングの技が身につくようになっている。自分でプログラムが組めるようになったら、「あたらしくつくる」で新規作成し、公開もできる。「みんなのさくひん」からは公開されている作品が閲覧できる。まずは「パズル」で基本操作について学ぶか、「あつめよう」を一つずつこなしていこう。
「あつめよう」には、「やってみる」から始まって、「くりかえし」「じょうけん」「メッセージ」「へんすう」「データ」「にゅうしゅつりょく」というコースがある。それぞれのコース内にはいくつかの課題があり、クリアする度に宝石が手に入る。チュートリアルの位置付けなので、「やってみる」からスタートしよう。
それぞれの課題を開くと、下部にやるべきことが表示される。右上のヒントをタップすると、何をすればいいのかが分かる。ヒントの中にある動画を再生すればブロックの使い方や解決法が分かるので、ヒントの次は動画を見てみよう。やるべきことに合わせてブロックを並べると、宝石が入手できる。
手を動かしてプログラミングする大切さ
小学2年生の息子(7歳10ヶ月)と「プログラミングゼミ」をやってみることにした。息子は既に「プログラミング=ゲームのような楽しいもの」という認識なので、アプリを見せて「これかわいいでしょ。やってみない?」と言ったら「やってみる」と乗ってきた。
「前、Scratchをやったでしょ。あれと大体同じだよ」と言って進める。Scratchも楽しんでやっていたが、基本は『Why!?プログラミング』などのお手本を参考に改造するなどして楽しむことが多かった。今回はズバリお手本とやり方の解説動画があるので、その通り順番に進めていくことにする。
課題は飛ばさずに順番に進めていくのがおすすめだ。最初の方の課題は一見地味なので、息子は勝手に面白そうな先の問題を覗いてトライしようとしていることがあった。しかし歯が立たず、結局おとなしく順番にやり直していた。
Scratchとの一番の違いは、プログラムのお手本があって、できることが具体的に示されている点だ。真似して再現すればいいので、できることが非常にわかりやすくなっている。
たとえば、課題のとおりにキャラクターを動かすためのプログラムブロックはあらかじめ示されている。バラバラにして自分で組み立て直す課題が用意されているのだが、これがなかなか良かった。
最初はろくに並べられなかったので、私が正解を撮影して示しておき、真似して並べるところから始めた。課題を幾つか解いていくと、「あ、もう分かった」と息子。ブロックを見て、大体並べられるようになってきたのだ。課題をクリアするためには自分で手を動かして作る必要があるので、自然にプログラミングの法則性が分かってくるのだ。
これまで当連載では様々なプログラミングゲームやツールを使ってきたが、本職ではない私は、子どもに分からないところを聞かれてもすぐに答えられず、一度調べてから教えることがあった。しかし、「プログラミングゼミ」ではそのようなことは一切必要ない。レクチャー動画がとてもわかりやすいので、見れば解決できてしまうのだ。
既に述べたとおり、課題をクリアすると宝石が手に入る。宝石を集めても現状では何かあるわけではないのだが、きれいなので十分にモチベーションになるらしい。「もう◯個集まった」などと言っていた。
一つ一つプログラムブロックを組み立てる必要があるので、課題をクリアするのはある程度の時間がかかる。しかし本人は楽しかったようで、終わりにする時に「もっとやりたい」と言っていた。一部の機能を使って、作品を作ったりもしていた。
公立小学校に最適なプログラミングアプリ
「プログラミングゼミ」は、元教員の視点から見ても、公立小学校で使いやすいように徹底的に考えられたアプリだ。
公立小学校では、プログラミング教育に費やせる授業時間や指導教員数などが限られる上、ネットワーク環境、端末などが十分揃っていないことが多い。しかし、このアプリなら問題なく授業で活用できるだろう。
担任教諭がプログラミングについてよく分かっていないという場合でも、動画を再生すれば必要十分な情報が得られる。また、オフラインでも使えたり、様々な端末で使えたりすることもありがたいはずだ。使用時間の制限、作品の公開設定、スキルレベルの設定もできるので管理もしやすいだろう。
授業のパターンとしては、課題を決めて「あつめよう」に取り組ませるか、自由に作らせて発表・公開させたりすることが考えられるだろう。後者は班で作るものを考えさせ、イラストを描いて取り込み、プログラミングを組み立てさせ、発表させて友だちに遊んでもらい感想をもらうという授業ができそうだ。
しかし、子どもがまっさらの状態からいきなり何かを作り出すことは難しい。実は、「あたらしくつくる」という課題にも、「はじめてのストーリー」という初心者向けのステップが用意されている。
「はじめてのストーリー」には、「■が●をなげるストーリー」の作り方が用意されている。■や●をオリジナルキャラなどに変えると、「怪獣が火の玉をなげる」「お店の人がケーキを渡す」などのシンプルなストーリーが作れるというわけだ。
プログラミングアプリは子どもが使いやすいことが一番大切だ。まだ登場したばかりだが、教える側が使いやすく子どもも学びやすいアプリなので、家庭や学校でぜひ試してみてほしい。
教材名 | プログラミングゼミ(https://programmingzemi.com/) |
利用料 | 無料 |
対象 | 小学校低学年向けだがそれより低年齢でもやる気があれば可能 |
環境 | iOS、Android、Windowsを搭載したスマートフォンまたはタブレット、Windows搭載パソコン(オフラインでも利用可能) |
保護者に求められる知識とスキル | 動画を見て使い方をマスターしたり、子どもにアドバイスできる |
学習効果 | プログラミングに興味を持つ、論理的思考力、表現力 |
学習時間のめやす | 数時間以上 |
※学習効果や学習時間は個人差があります