こどもとIT
iPadで学びを⾃⾛する、Appleの認定校で学ぶ⽣徒たちの多様な姿
――東京成徳⼤学中学・⾼等学校の取り組み①
- 提供:
- 東京成徳大学中学・高等学校
2021年5月7日 06:45
GIGAスクール構想により、小学生が1人1台のコンピューターを使って学ぶ時代になった。AIとクラウドテクノロジーが社会を変革する今、ICTスキルの重要性もますます高まり、保護者は我が子の進学先でどのようなICT教育が受けられるかも考えねばならない。
ICTは子どもたちの学びや成長にどのように寄与するのか。その一つの事例として、Appleの先進的教育機関「Apple Distinguished School(以下、ADS)」にも選ばれている、東京成徳大学中学・高等学校の取り組みを紹介しよう。
Appleが認めた学校は、生徒の多様性を伸ばす学習環境が充実
東京成徳大学中学・高等学校(以下、東京成徳中高 / 東京都北区)は、都内でも下町エリアにある共学の私立完全中高一貫校。多様な未来を自分で切り拓ける人物の育成をめざして、高入生を入れず6年一貫で、学力・グローバル力・人間力を伸ばす教育を重視している。2022年度からは新カリキュラムを導入し、海外と国内で選べるグローバル教育プログラムや、STEAM教育をベースにした探究学習など、新しい学びをスタート。時代に合わせて変化できる学校をめざす。
同校では、2016年からiPadによる1人1台環境を導入し、ICTスキルの育成に力を入れている。生徒たちが活躍する未来の社会では、単にコンピューターを操作するスキルではなく、テクノロジーを活用した課題解決や新たな価値の創造が求められる。自己表現が求められるグローバル力の育成においても、汎用性が高くクリエイティブな学習にも適したiPadが有効だと判断した。
とはいえ、iPadを導入しただけで、学校のICT活用が進むわけではない。そこで東京成徳中高では、学校全体のICT活用レベルを向上させるために、「Apple Distinguished School(以下、ADS)」の認定を受けた。ADSは、Appleがグローバルな観点で学校のICT活用を評価するもので、ICT活用が学校全体の取り組みとして定着しているかなど、さまざまな基準をクリアしなければならない。そのためADSとして認定されている学校は、日本国内でわずか10校のみとなっている。
東京成徳中高では、2016年に1人1台環境をスタートした当初から、ADSの認定をめざしてICT活用を強化。テクノロジーの得意な教員だけがICTに取り組む学校現場も多いが、同校では学校全体でICT活用に取り組み、2018年にADSに認定された。
このようにICT活用に力を入れる東京成徳中高であるが、一方で、STEAM関連の施設が充実している点にも注目したい。実験設備がそろった理科室やプログラミングも学べるコンピューター教室、さらに日本文化を体験できる茶室やアートへの興味を感化する陶芸室など、デジタルだけでなく理系分野や教養を高める学習環境にもこだわっている。また部活動や学校行事も盛んで生徒と教員の距離も近く、アットホームな校風の中で、生徒たちはのびのびと学んでいる。
一人ひとりに合った活用を重視し、多様な方法で学びのゴールに向かう
このようにADSに選ばれ、ICT活用に力を入れる東京成徳中高。さぞや先進的でテクノロジーを駆使した授業をしているのかと思いきや、意外にそうではない。たとえば、中3公民の授業では、iPadは完全な脇役として授業を支えているのが印象的だ。
この日は「国際連合のしくみ」を学ぶ授業。担当する福島祥雅教諭は、授業の冒頭で自身が訪れて撮影した国連本部の写真をクイズ形式で紹介し、生徒たちの興味・関心を高めた。その後、生徒たちは国連がどのような活動や役割を担っているのか、ウェブ検索で日本語の国連のページにアクセスし、情報収集して内容をデジタルのポスターにまとめる。こうした調べ学習は、昨今、多くの学校で実施されており、特にめずらしいわけでもない。
しかし驚かされるのは、ここからだ。福島教諭が生徒たちに出したレポート作成の指示は、まるで大人がビジネスシーンでするような、とても中学校の授業の一場面とは思えないものだった。
「サイトで調べた内容をPages(文書作成アプリ)でポスターにまとめて、PDFファイルにしてGoogle Classroomで提出してください。これは先生の採点用です。もうひとつ、みんなが作ってくれたポスターをクラス全員で見たいので、共有用として、スクショしたポスターをPadlet(掲示板アプリ)にアップしておいてください」。生徒たちは、これだけの指示で内容を理解できたのか、質問もあがらず、各々の作業に取り掛かった。
最初は、ウェブ検索で日本語の国連のページにアクセスするところからスタート。続いて、日本にある国連の組織について情報収集し、その後Pagesを使ってポスターにまとめていく。福島教諭からはポスターのまとめ方について指示はない。生徒たちは見出しをつけたり、重要部分の色を変えたり、写真やマークを添えたりと自分で工夫を重ねていく。
さらに生徒たちを見ていると、キーボード入力やマウスを使う生徒もいれば、ソフトキーボードを使う生徒がいるなど、十人十色で面白い。なかには、iPadの画面をスプリットビューで2画面分割して作業を進めるなど、どうすれば学習のパフォーマンスが向上するかを工夫している生徒もいる。生徒たちはそれぞれに合った方法を見つけ、多様なカタチで学習のゴールに向かっている姿が印象的だ。
一方で福島教諭は、iPadを使う学習ばかりを重視しているのではない。同教諭は週に1回、生徒全員に新聞一冊を配り、その中から気になる記事を選んで要約し、感想を書く活動を取り入れている。生徒たちは自分が選んだ記事がSDGsのどのテーマと関係があるのかを考え、自分の価値観の尺度を広げていく。福島教諭は「デジタルとアナログ、両方のメリットを体験しながら、社会を見る目を養い、道徳観や国語力を育んでいきたいと考えています」と述べた。
主体的にICTを活用できる生徒たちは、いかに育つのか
教員が細かく指示をしなくても、自主的にツールやデバイスを使いこなして、自分なりのアウトプットができる東京成徳中高の生徒たち。どうすれば、学びの中で主体的にICTを活用できる生徒たちが育つのか。
授業を担当した福島教諭によると、中1の最初でこそアプリの名称やICT関連の用語が分からず、生徒たちも慣れるのに時間がかかるようだが、毎日iPadを使い続けていくと、教師の簡単な指示で使えるようになっていくという。
「iPadを使って何か特別なことをしようとは考えていません。毎日使っていけば、PDFファイルで提出する方が形も崩れなくて良いことや、メールを送るときの『to』と『CC』の違いなど知る場面があったりと、生徒たちは体験を通してICTスキルを身につけています。もちろん、中学生なので失敗したり、不適切な使い方をしてしまうこともありますが、そうした経験も学びのひとつと捉えて、生徒たちと向き合っています」(福島教諭)。
さらに興味深いのは、中学1年生からiPadを活用していくと、生徒それぞれの得意分野がでてくることだと福島教諭。写真を撮るのが得意な生徒、編集が得意な生徒、また映像やゲーム、イラストが得意な生徒など、それぞれの個性がテクノロジーの領域においても発揮されるという。そうした中で、生徒たちは互いに教え合ったりしながらICTスキルを伸ばし、課題解決できる力を身につけていくようだ。「iPadは生徒の発想に合わせて使えるのがメリットであり、本校がめざす教育理念にも合っている」と福島教諭は語る。
こうした生徒たちの姿は、まさに多様性を重んじる東京成徳中高がめざす学びのカタチであり、そのためにiPadやICTを活かしているのがわかる。「本校は生徒を型にはめず、生徒のやりたいことを大切にしながら、自分で進路を切り開く力を伸ばしています。そのためにICT活用は欠かせず、自分の考えを伝えたり、課題解決や創造性を発揮するためにICTが活用できるという、ポジティブなマインドを育てることが何より大切だと思っています」と福島教諭は語る。
中学校・高校の6年間は、これから長い人生を駆け抜ける原動力を身につける場である。ゆえに、子どもたちの未来にICTスキルが必要であるなら、自分で考えてICTを活用できる力を身につけていかねばならない。これこそが、東京成徳中高が6年間で育むICT活用の力であり、その力を身につけた先に多様な学び、多様な未来が広がっていることも教えてくれる。
これからICTで学ぶ子どもたちが当たり前になる今、保護者は我が子がどのようにICTスキルを身につけていくのか、改めて考えなければならない。世の中はますますテクノロジーが普及し、社会の課題解決も、新たな価値の創造も、ICTなくして達成することはむずかしい。子どもたちが未来でたくましく生き抜くために、中学・高校のうちに身につけたい資質は何か。今の保護者は、ICTという新たな視点を持って、子どもたちの未来を考えることが大切だ。
※東京成徳中高では、コロナ禍の緊急事態宣言を受け、オンラインでの学校説明会を開催しています。Zoomを通じて、同校の学びにも活用しているオンライン教材「Kahoot!」も用いた説明会は保護者からもわかりやすいと好評です。同校の学びにご興味をもたれた保護者の方は是非ご参加ください。