こどもとIT

新学期から使えるTeams! 教員が語る、1人1台環境ならではの活用方法とは

~Microsoft Teams for Education ハンズオンセッション動画も必見

GIGAスクール構想によって、学校現場は児童生徒が1人1台の端末を日常的に“文具”として使う学びが始まる

1人1台環境の効果を発揮するためには、いつでも、どこでもICTを使って学べる学習環境が重要であるが、Microsoft 365 Educationが導入されている学校は、「Microsoft Teams for Education(以下、Teams)」を使わない手はない。Teamsは簡単に言えば、「コミュニケーションのハブ(中心)」となるツールで、校種や教科、学年に関係なく、授業や学校生活で幅広く活用できる。

Teamsでは、どのようなことができるのか。どのように使えば、上手く活用できるのか。Teamsを日常的に活用する森村学園中等部・高等部 髙田昌輝教諭と千葉大学教育学部附属小学校 小池翔太教諭の2名に、実践事例や活用を進めるポイントを語ってもらった。なお、本稿の最後には、両教諭の実践を読んで自分も始めてみたいという教育者の方向けに、初めてでもわかりやすい「Teams for Education 模擬授業体験セミナー」のリンクも掲載した。ぜひ活用の役に立ててほしい。

(写真左)森村学園中等部・高等部 髙田昌輝教諭、(写真右)千葉大学教育学部附属小学校 ICT活用教育 兼 校務ICT化実行委員会 主任。小池翔太教諭。どちらもマイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)になる

Teamsは日常で使う、学習や学校生活のインフラ

――お二人がTeamsを使い始めたきっかけは何ですか。また、現在はどのようにTeamsを使われていますか。

髙田: 私は2020年度から森村学園に着任したのですが、前任校の時からTeamsはかなり活用していました。着任当初からコロナの休校期間でしたので、学びを継続する手段として森村学園でもTeamsを活用しようと。幸い、本校は中1から高1まで1人1台環境で、高2と高3についても端末は持っていませんでしたが、Microsoft 365 Educationのアカウントは教職員と生徒全員が持っているという状況でしたので、Teamsはすぐに活用できましたね。休校中の4月に、3日間くらいかけて先生方に研修して、森村学園でもTeamsの活用が始まったという感じですね。

森村学園は中1~高1まで1人1台環境を実施。中1~中3は「Surface Go 2」、高1は「Surface Go」を利用

小池: 私も2年くらい前から、個人的に担任をしていたクラスで使っていたのですが、学校全体としてTeamsを使い始めたのは、コロナの休校がきっかけでした。休校に入る直前に1年生から6年生まで、全児童分のMicrosoft 365 Educationのアカウントを作成して、各家庭の端末からアクセスしてもらってオンライン学習を実施しました。

ただ休校が明けてからは、学校全体で使っているのは面談や学年懇談会くらいで、あとはクラスによって異なりますね。研究校というのもあって、1人1台環境のクラスは、Teamsで授業の感想を共有したり、少人数のクラスでは日記をアップしたり。専科教員は1週間の計画をアップしたりしていますね。また連絡帳代わりに、黒板に書いた連絡を写真に撮ってTeamsにアップする使い方も多いです。まだGIGAスクール構想の端末が整備されていないので(※)、家庭の端末からTeamsにアクセスしてもらうことが多いですね。

※本稿の取材時点(2021年3月上旬)の状況

小池教諭が受け持つ帰国児童のクラス。Teamsを連絡帳に活用

髙田: いろいろな端末からアクセスできるのが、Teamsの良さですよね。本校の場合は、学校全体でTeamsを活用しているので、ホームルームや授業、部活動の連絡、課題の配信、小テスト、朝の検温チェック、保護者面談など、成績関連以外、ほとんどの場面で使っているといってもいいくらい。私自身は「Teamsは最強のハブ」と考えています。

小池: 髙田先生は森村学園に移られて1年目なのに、Teamsの活用がかなり学校内で広がっていますね。

髙田: Teamsを知らない先生から見れば、最初は取っつきにくいかもしれませんが、「Teamsは、Windows版のLINEです」って説明したら、みなさん使えるようになっていきました。

小池: あ、私も校内研修で全く同じことを言いました(笑)。「TeamsはLINEと同じです。LINEは生活のインフラですよね。Teamsは学校生活のインフラとして使えるものですよ」って。

髙田: そう話すとイメージしてもらいやすいですよね。ただ逆に、先生方の中にはLINEのように使えることに対して抵抗感を持たれる方もいらっしゃるので、本校では最初、チャット機能や、生徒がグループを作れる機能を止めてTeamsの活用を始めました。

小池: たしかに、新しいインフラとして使っていくためには、多くの先生方が使えるようにハードルを下げることも必要ですよね。

最初は「Forms」でアンケートや小テストの利用がお勧め!

――Teamsを初めて使う先生や、Teamsをどのように使っていいか分からないという先生は、どこから始めるのが良いですか。

小池: 私の経験ですが、最初は「Forms」を使ってアンケートをするのがお勧めです。Teamsの研修会で講師をさせていただくこともあるのですが、この機能が先生方にはとても喜ばれますね。授業の最後にFormsでアンケートを取ったり、振り返りの感想を書いてもらったり、子どもの声を瞬時に収集できて可視化できるので、学習インフラとして有効です。アンケートの結果も記録に残るのが良いですね。

髙田: 私も同じですね。Formsは先生にとってかなり使えるので、ここから始めるのが良いと思います。授業の最後に理解できたかどうかアンケートに答えてもらって、その場ですぐに集計を取って。あまり理解できていないようなら、もう一度説明することもできますからね。

小池: そうですね。研修会では、「Formsで小テストもできますよ」って教えると、さらに盛り上がるんですよ。先生が自分で問題や選択肢を作ったり、正解がない問題も作れますって。Formsでは、答えを自由記述にして、子ども同士がお互いに「いいね」を押せたりもできるので、Teamsの良さを簡単に体験できるのではないでしょうか。

Teamsの「Forms」を活用した小テストの画面
回答も瞬時に集計され、結果は円グラフで表示。一人ひとりの回答も確認できる

高田: あと最初の入り口としてお勧めしたいのは、ホームルームの連絡ツールとしてTeamsを活用する方法ですね。明日の授業や持ち物の連絡などを共有するだけですが、毎日使うので慣れますね。また、部活動で使うのもいいですよ。部員に連絡を伝えるのはもちろんですが、練習の動画を撮って共有したり、試合の作戦をPowerPointにまとめて意見交換をしたり。コロナ禍では、部活動の時間も制限されていたのでTeamsは考える場として機能していたように思います。

森村学園は部活動の連絡や意見交換にもTeamsを活用

その後、Teamsの活用も進んでいったら、私は「課題機能」を使ってみるのがいいと思います。この機能は課題の配信や提出ができるものですが、教科を問わず、すべての教科で使えるのでTeamsの活用がさらに広がりますよ。操作もむずかしくありません。

簡単な使い方として、宿題のノート、授業のノートを写真に撮って課題機能で送ってもらうという使い方が便利ですね。宿題をやったかどうか、授業のノートを取ったかどうか、一覧ですぐに提出した結果がわかるので、やっていない生徒に早い段階で声かけができるようになります。オンライン授業やオンデマンド学習のときも課題機能を使って学習を進めることができたので、本当に便利でした。

「課題機能」で生徒の提出状況をチェック

小池: 私は「プライベートチャネル」がとても便利だと思っています。Teamsではトピックごとに会話ができる「チャネル」という機能がありますが、プライベートチャネルでは、先生と児童、1対1のクローズドな会話が可能です。私は今、帰国子女の学級を受け持っているので、プライベートチャネルを通して、私にちょっと分からないことを質問したり、相談ごとを話しかけてくれたりして、個別対応がしやすく助かっています。

タイピング検定合格の喜びをプライベートチャネルで先生に報告

髙田: いいですね。Teamsを通してコミュニケーションが広がっていますね。

小池: そうですね。個別最適化が求められるGIGAスクールには、プライベートチャネルはとても有効な機能だと思いますね。

その他の使い方としては、本校ではTeams上でPowerPointを使う活用も増えてきました。係活動のポスターや、探究学習の発表スライドをTeams上で作成すると、家に帰ってからも、自宅のPCからアクセスしやすくて作業の続きが簡単にできます。WordやPowerPointで何かを作り、プライベートチャネルで「印刷をお願いします」といったやり取りが増えていますね。

Teamsのメリットは、すべての情報やリソース、アプリが1ヵ所に集約できるところ。子どもたちはアプリを探す手間なく、Teams上にアクセスすれば、PowerPointやWordも使用可能。効率的に学習に取り組める

髙田: その使い方は、本校でもよく使っていますよ。高校1年生がSDGsの探究学習に取り組んでいますが、先生が招待されたチャットグループの中で生徒同士が活発に意見交換して、家に帰っても作業の続きをしています。ひとつのPowerPointをグループで共有しながら、役割分担してスライドを作っていますね。

あと「OneNote Class Notebook(以下、クラスノートブック)」も非常に便利ですよ。日直日誌をつけたり、生徒のポートフォリオとして、記録をつけるのに向いています。大学入試では在学中に、何をやってきたかが問われる試験もありますが、クラスノートブックに自分が取り組んだ探究の内容をまとめておくと、後で簡単に見返すことができます。

クラスノートブックの機能を活用した日直日誌

子どもも、教員も、デジタルコミュニケーションが大事な時代

――Teamsを使うようになってから、児童生徒の変化について教えてください。またTeamsを使う上で苦労した点や工夫した点があれば教えてください。

Teamsのコミュニケーションは、子ども同士に新しい気づきがうまれると小池教諭

小池: 自分からは積極的に意見が言えない子も、文字でやり取りするTeamsは参加しやすいようで、発言できるようになってきました。教員がそうした児童の違う一面に気づくのはもちろんですが、子ども同士も“あの子、本当はこんなことを考えていたんだ”と気づけるのが大きな変化ですね。保護者世代は、まだデジタルなコミュニケーションについて冷たいと思う人がいるかもしれませんが、子どもは全くそんなことはありません。

髙田: 私も全く同じことを感じますね。他の子の意見をTeams上で読んだり、コミュニケーションすることで、普段はあまり話さない生徒の意見を聞くことができるようになりました。子どもたちにとっても、よい刺激になっていると感じます。ただ、テキストのコミュニケーションだからこそ、会話をするとき、説明するときなど、言葉のニュアンスに気をつけようという話もします。「可愛くない」と「可愛くない?」は伝わるニュアンスは違いますからね。

Teamsでは、生徒たちがテキストのコミュニケーションについて学ぶ機会にもなっていると髙田教諭

Teamsを始めるときは、生徒たちが自由にコメントを書き込めることについて心配や不安があるかと思います。本校も最初、チャット機能は禁止にしていました。しかし、使っていくうちに、チャット機能を使える方が便利だと気づくことがあり、先生方には優位性を伝えるようにしてチャット機能の禁止を辞めました。ただ、それだけでは不十分なので、子どもたちのITリテラシーを伸ばすために、こういう指導をしますと同時に伝えましたね。

小池: なるほど。こういうデジタルコミュニケーションってこれからの時代は必要なので、教員が学びとして捉えて、小学生のうちから体験できる機会を与えてほしいと思いますね。中学生で初めてスマホを持って、トラブルに遭う子もいるわけですし。あとは、子どもだけでなく、教員もTeamsのようなコミュニケーション手段に慣れていくことが大切だと思います。

たとえば教員同士でTeamsを使っていくと、最初のうちは、それなりに盛り上がるのですが、だんだん使っていくと落ち着いてくるのか、コミュニケーションも減って、スタンプひとつ、面倒になりがちです。逆に、Teamsにアップさえすれば誰でも見てくれると思ってしまったり、毎回の投稿に重要マークをつけたりするなど、教員の使い方、情報の伝え方も課題があります。デジタルでは、過剰に期待しすぎず、“ゆるさ”を持って使うことも大切で、教員が違う一面を出したり、遊び心のある投稿したりなど、Teamsが楽しく使えるツールであるように工夫することも大事だと思います。

スタンプや絵文字なども使って、ゆるいコミュニケーションができるのもTeamsの魅力
先生もTeams内でいっぱい失敗しながら使っていくことが大事と髙田教諭

髙田: そういう教員の状況、分かりますよ。本校でも最初のうちは、どのメッセージにもメンション(返信)が付いてしまうという状況になりました。そのため、全体に伝えたいものだけメンションを付けるようにしました。最初から、この場合はこうとルールにすればいいかもしれませんが、そうすると身動きが取れなくなってしまうので、先生方には「Teamsのいいところは閉じた環境なので、いっぱい失敗しながら使ってください」と話しています。

ちなみに、本校で先生方が困っているのは、Teamsが頻繁にアップデートされてしまうことですね。先生方はFormsのコピーの仕方が変わるなど、使い方や見た目が変わると不安になることがあります。でも、これはTeamsに限らず、クラウドサービス全般に起きていることなので、使いながら慣れていって、そういうものだと理解してほしいですね。

Teamsの最新機能、AIを用いた機能「Digital Insight」でTeamsの中の活動を分析

――最後に、Teamsには「Digital Insight」と呼ばれるAIを用いた分析機能があります。このような機能について、今後、どのような活用が期待されますか?

髙田: 1人1台環境になったので、これからは教育分野も、さまざまな学習データを活用してDXを進めていくことが求められていると思います。ただ、一方でこのような機能は、生徒を管理することにもつながるので、使い方には注意が必要ですね。たとえば使うとしたら、生徒の学習リズムが乱れていると気づいたとき、原因を探るためにデータを見るなど、そんなイメージでしょうか。

「Digital Insight」の画面。どの生徒が、いつ、何を Teams上で行なったかが可視化されるデジタル活動履歴

小池: 私も、同じですね。何か子どもにトラブルがあったときに、原因追求として使うことはあると思います。またTeamsのコミュニティを運営していくうえで、コミュニケーションの量を見ながら、少ないようであれば何か打つ手を考えることもできると思います。しかし、こうした機能を活かせるようになるためには、学校現場はもっとICTを活用していく必要があります。特に、クラウドの活用は重要で、これから先はクラウド環境が当たり前の学級運営、学校運営に変えていかなければと思います。

「Digital Insight」ではコミュニケーション量を分析する機能も

髙田: そうですね。それに加えて、教員が教えるスタイルも変えていく必要がありますよね。せっかくTeamsのようなツールを入れても、授業スタイルが変わらないと効果はありません。これからは生徒と共に学ぶ時代で、いかに社会の変化に学校がついていけるか、また自分たちで変化を作っていけるかが大切だと思います。そのためにも学校、教員はもっと世の中がどうなっているかを学びたいものです。

※本稿の対談でも話題になった「Forms」の小テスト、「課題機能」「クラスノートブック」などの説明が盛り込まれたTeamsの使い方や、これから始める教育関係者にお勧めの動画「Teams for Education 模擬授業体験セミナー」が日本マイクロソフトから公開されています。Teamsでどのようなことができるか、わかりやすくまとめられていますので、ご興味ある方はこちらも是非ご覧ください。

神谷加代

こどもとIT編集記者。「教育×IT」をテーマに教育分野におけるIT活用やプログラミング教育、EdTech関連の話題を多数取材。著書に『子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く』(共著、インプレス)、『マインクラフトで身につく5つの力』(共著、学研プラス)など。