こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

オンラインゲームを悪用した犯罪から子どもを守るにはどうしたらいいの?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには保護者の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

オンラインゲームの人気に便乗するサイバー犯罪

オンラインゲーム(略称:ネットゲーム、ネトゲ)は、インターネットを介して複数のプレイヤーが同時に楽しめるゲームの総称で、老若男女を問わず、幅広い層に親しまれています。近年では、eスポーツの認知も広がり、将来の職業としてプロのeスポーツプレイヤーを夢見る子どもたちも少なくないでしょう。

一方で、利用者の多いインターネット上のサービスは、サイバー犯罪者に目をつけられやすく、オンラインゲームも犯罪者の標的になっています。

よくあるのが、正規サービスのログインページを装った偽サイト(フィッシングサイト)へ利用者を誘導し、そこで入力された認証情報(IDとパスワード)や個人情報、クレジットカード情報などを盗み出す、フィッシング詐欺の手口です。サイバー犯罪者は、メールやSNS、ダイレクトメッセージ機能や不正広告などを使って標的となる利用者に接近します。たとえば、オンラインゲームのプレイヤーを標的とした手口では「無償でゲーム内通貨を得られるツール」などと称して不正サイトに誘導する手口を確認しています。

誘導先の偽サイトで認証情報や個人情報などを入力してしまった場合、それらの情報を詐取されるだけではなく、アカウントに不正アクセスされ、ゲーム内のアイテムや、ポイント、登録済みの情報などを盗み取られたり、アカウント自体を奪われてなりすまし、アカウントが売買されてしまう可能性もあります。また、同じ認証情報を複数のオンラインサービスで使い回していた場合、それらまで不正ログインの被害に遭う可能性があります。

ゲーム内通貨の無償生成ツールを装った不正サイト(2019年4月確認)

スマホで利用するゲームアプリにも注意が必要です。人気アプリに偽装した偽アプリや、ゲームアプリを装う不正アプリがこれまでも見つかっています。また、不正アプリは正規のアプリストアに紛れ込んでいる場合もあります。

さらに、本来はプレイヤー同士が情報交換やコミュニケーションを行なうゲームチャットやSNSなどの場が、マルウェア(ウイルスなど不正なソフトウェアの総称)を配布する不正サイトの誘導経路にもなっている場合があります。サイバー犯罪者は、ゲームを有利に進められるチートツールだと称してマルウェアのインストールを促します。このように、プレイヤーの心理につけ込み、マルウェアをインストールさせるのは常とう手段です。

また利用者の中には、メールやSNS、チャット経由で魅力的な条件を提示するトレード話を持ちかけ、アイテムや金銭をだまし取る詐欺師も潜んでいることもあり、事業者側でも注意を呼び掛けています。トレード方法によっては利用規約違反となる場合もあり、その結果、被害を被っても補償されません。好条件に惑わされず、トレードを行なう場合は各サービスが推奨する方法で行なう必要があります。

子どもが安全にオンラインゲームを利用するために

大勢の利用者を抱え、市場規模が拡大傾向にあるオンラインゲーム市場はサイバー犯罪者に狙われやすい側面があります。子どもが安全にオンラインゲームを利用するために、保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:危険に巻き込まれるポイントを知り、アカウント管理やクレジットカード情報の扱いに注意する

① 年齢に応じたオンラインゲームを保護者の管理下で利用させる
オンラインゲームやアプリには年齢規程があります。子どもの年齢に応じて利用させるゲームを選択し、保護者の管理下で利用することを約束させましょう。

② 保護者がアカウントを厳重に管理する
オンラインゲームのアカウントを作成する際は、第三者に推測されにくいパスワードを指定するとともに、サービスごとに異なるIDとパスワードを設定しましょう。ゲーム事業者から提供されている二要素認証など、セキュリティを強化する認証方法を利用することもアカウントの不正アクセス対策として有効です。

③ 保護者が利用者情報を正しく登録する
オンラインゲームでは、保護者のクレジットカードやキャリア決済を無断使用したことによる未成年者の高額課金に注意が必要です。主要なオンラインゲーム事業者は、利用者に応じて課金上限額を設ける仕組みを導入しています。利用を開始する前に、課金の仕組みを確認し、適切に管理しましょう。

④ メールやSNS、チャット内のURLリンクを不用意に開かない
メールやSNS、チャット、ゲームのレビューサイトなどを経由してたどり着いたサイトはフィッシングサイトかもしれません。ゲームアカウントへのログインは、必ずブックマークに登録した公式サイトや公式アプリから行なうように子どもに教えましょう。スマホにアプリを入れる際もGoogle PlayやAppStore、携帯電話会社などが運営する公式のアプリストアを利用させましょう。

ただし、公式アプリストアであっても過信は禁物です。インストール前にアプリの提供元や利用者の評価などのポイントを子どもと一緒に確認しましょう。アプリをインストールする際に確認するポイントの詳細は、こちらの記事をお読みください。

⑤ 個人情報をチャットやSNSでやり取りしない、
ネット上での見知らぬ人とのやり取りが、犯罪被害やトラブルのきっかけになることもあります。危険に巻き込まれないにするためにも、個人情報を含むやり取りを行なわないよう指導するとともに、オンラインゲームやSNSなど、利用規定に満たないサービスを子どもが勝手に利用しないよう保護者が管理しましょう。

技術的対策:OSやファームウェアを最新に保ち、セキュリティソフトを導入する

① セキュリティソフトを利用する
ゲームを楽しむためのパソコンやスマホにもセキュリティソフトは必要です。有害サイトへのアクセスや不適切なアプリの利用をブロックしてくれるセキュリティソフトは、不正サイトへのアクセスやマルウェアへの感染リスク、不正アプリの侵入など、ネット上の脅威によるリスクを下げることができます。

また、保護者が何らかの理由で、十分に目が届かない恐れがあるなら、利用時間の制限機能を使うことも有効です。ただし、利用時間などのルールは保護者が一方的に決めるのではなく、話し合って決めることが大切です。

② OSやファームウェアを正しく更新する
保護者は、パソコンやスマホの各メーカーからOSやファームウェアの更新プログラムの提供があれば、速やかに適用しましょう。また、今や家庭用ゲーム機もネットにつながり、ダウンロードコンテンツ購入のために決済情報などもやりとりされます。パソコンやスマホと同様に、ゲーム機もファームウェアの更新を怠らないようにしましょう。更新方法については、取扱説明書や公式サイトを確認してください。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。