こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

子どもがスマホゲームを勝手に課金したとき、どうすればいい?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには親の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

知っておくべき課金の仕組みと落とし穴

ある日の子どもと保護者のやりとり。

子ども:「人気のゲームの最新バージョンがでた!ママ、インストールして」
保護者:「お誕生日だからプレゼントね。クレジットカード情報を入力して完了っと!」

数日後・・・
子ども:「みんなが持っていないアイテムもどんどん増やして遊ぶぞ」

数週間後・・
保護者:「4000円のゲームだったのに80万円の支払いになっている!なんで!?」

スマホなどのアプリを利用する場合、課金されるパターンはいくつかあります。例えば「アプリをダウンロードする際に課金が発生するもの」「アプリを利用するために、継続して一定の金額(月額〇〇円など)を支払うもの」「アプリのダウンロード自体は無料であるが、新たな機能やプレイをするために課金が必要なもの」です。

子どもの場合は、ゲームアプリなどで、新たなステージをプレイしたり、新たなキャラクターを使ったり、強い装備を入手したりする際に課金する場面に遭遇することが多いでしょう。保護者は子どもにスマホやアプリを利用させる際、費用が発生する可能性があることを子どもに説明しましょう。また、課金をする際のルールを子どもと話し合うことが重要です。

一方で、子どもと課金に関するルールを決めて管理したつもりでも、請求が発生してしまうケースもあります。端末に保護者が以前使用したクレジットカードやパスワード情報の履歴が残っていて、子ども自身が決裁方法を設定できたり、無断で保護者のクレジットカードやキャリア決済を設定できると、保護者の知らない間に子どもが高額な課金をしてしまうケースが発生しています。中には、数十万円の請求書が届いてしまった事例もあります。

ひとつ、具体的な事例を紹介しましょう。親のスマホを借りて、ゲームを楽しんでいた子どもが、アイテムが欲しい時は親に相談し、パスワードを入力してもらって購入していました。しかしある月、十数万円の請求が届きました。スマホの認証方法を確認すると、パスワードを入力後30分間は、課金アイテムを購入する際に再認証不要の設定になっていたため、子どもが勝手に購入していたという事例があります。

子どもが勝手に課金アイテムを購入していた事例(出典:総務省 インターネットトラブル事例集 2018年版

アプリ内課金を制限・禁止するために保護者がすべきこと

アプリの利用は語学力を高めたり、趣味を広げたりなど良い点もある一方で、保護者が意図しない課金が発生してしまうこともあります。保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:課金をする前に、必ず保護者に相談することとする
子どもは、ネット上の課金に対して、実際のお金を支払う必要があることを理解していない場合があります。まずはネット上での買い物やアプリの利用も本当のお金を支払う必要があることを教えましょう。

また、アプリを購入するなど支払いが発生する際は「必ず保護者に相談する」といったルールを事前に話し合っておくことが、課金トラブルを防ぐのに有効な方法です。子どもに保護者のスマホを貸し出している場合はクレジットカード情報の管理、パスワードの扱いなどを定期的に見直すことも大切です。ほかにも、アプリの利用規約をよく読み、どこまでが無料でどこからどのような操作をすると料金が発生するのかについても親子で事前に確認しておきましょう。

技術的対策:課金が発生する場合は、保護者の承認を必須とする
App StoreでのApp内課金を防ぐ方法
「承認と購入のリクエスト」を使って、子どもからの購入リクエストを選別し、承認できます。また、スクリーンタイムを使い、App内課金そのものを無効にもできます。

Google Playで保護者の承認を必須にする方法
ファミリーグループの保護者は、ファミリーメンバーがGoogle Playでコンテンツを購入、ダウンロードする際に保護者の承認を得ることを必須にできます。

子どもが利用するスマホはもちろんのこと、保護者の端末であっても、子どもが利用する場合は必ずフィルタリングの設定をしましょう。スマホで利用できるアプリや機能を制限することにより、保護者が意図しない課金の防止にもつながります。

気づいた時には遅かった。万が一、請求が来てしまった場合はどうすべきか

保護者が同意をしていない未成年者による契約は、「未成年者契約の取り消し」という法律に当てはめて、返金の交渉ができる可能性があります。しかし、どのような状況でも返金が可能ではなく、ゲーム設定、利用状況、クレジットカードの管理状況などに応じてケースバイケースとなります。消費生活センターにこれまでの経緯を詳しく話して、今後の対処方法を相談してください。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。