こどもとIT
高校GIGAはどの端末がベスト?EDIXに出展されたPC一挙公開!
――第12回教育総合展「EDIX東京」展示会場レポート⑦
2021年5月31日 06:45
多くの自治体でGIGAスクール端末の整備も終わりを迎えた今、第12回教育総合展「EDIX東京」(主催:リード エグジビジョン ジャパン株式会社)は、高校の1人1台環境に向けたICT環境整備に注目だ。
高校では2022年度からプログラミングが盛り込まれた「情報I」が必履修科目となるほか、2025年には大学入学共通テストに「情報」が追加される。また探究学習も重視されるため、ICT活用も今以上に求められるだろう。何より、1人1台環境で学んだ中学生が高校に進学し、アナログな環境に戻るようではGIGAスクールのめざす未来は描けない。
高校生はどのような端末が望ましいだろうか。本稿では、EDIXで展示されたPCの紹介を中心に、高校のICT環境に関連する製品やソリューションを紹介しよう。
Google for Educationパートナーパビリオン:Chromebookの活用を後押し
EDIXの会場を入ると、真っ先に見えたのがNTTドコモ、サテライトオフィス、シネックスジャパン、スキャネット、すららネット、チエル、電算システムといった企業が名を連ねた「Google for Educationパートナーパビリオン」。残念ながら、緊急事態宣言期間が延長してしまい、出展を見送った企業や、簡易な展示に留めた企業もあったが、Chromebookで利活用できるソリューションやChromebookの端末を見ることができた。
チエルは、授業支援や学習指導支援、運用支援やフィルタリングなどのツールがセットになった「Chromebook活用パック」を展示。同パックは、低学年の児童に嬉しいQRコードを使ったログイン機能や、Google Classroomのクラスを一括管理できる「InterCLASS Console Support」が魅力で、端末管理の負担軽減につながる。また日本HPのGIGAスクール対応PC「HP Chromebook x360 11 G3 EE」ではInterCLASS Console Supportが無償提供されている。
スキャネットは、普通紙でも使えるデジタル採点システム「デジらく採点2」を展示。普通紙で作成した解答用紙をスキャナで読み取り自動採点。採点後、Google Classroomのボタンをクリックするだけで採点結果を生徒に送ることができる。
サテライトオフィスはChromebook導入校やGoogle Workspace for Educationのユーザーに対して、文教向けに特化したソリューションを提供している。そのひとつが「サテライトオフィス・シングルサインオン for Education」。教育現場でニーズの高いシングルサインオンを実装するとともに、細かなアクセス制御やパスワードの強化機能、ログイン履歴の管理など、大量の端末管理・運用に欠かせないソリューションでサポート。学校現場のきめ細やかな要望に応えている。
また同社のブースではASUSとAcer、Dell やdynabookのChromebookも展示。今年3月に発売して品薄状態だと言われるASUSの人気機種「ASUS Chromebook Detachable CM3」も手に取ることができた。同製品の魅力はタブレットとして使用する際に、横でも、縦でも画面を表示できること。またスタイラスペンが本体に収納できるのも、教育現場としてはありがたい。
ほかにもGoogle for Educationパートナーパビリオンのブースには、NTTドコモが提供するプログラミング教材「embot」や、無学年式のAIアダプティブラーニング教材「すらら」を手掛けるすららネットもブースを展示。今年は教育関係者らの関心も、GIGAスクールで整備された端末をいかに利活用していくか、という方向にシフトしており、各パートナー企業のソリューションも選択肢のひとつとして参考にされたい。
レノボ・ジャパン:利活用を促進するコンテンツにも注力。高校はワークステーションも提供
GIGAスクールで約200万台のPCを出荷したというレノボ・ジャパン。ブースではWindows PCとChromebookの生徒向け端末が展示されたほか、ICT活用を促進するプログラミング教育のコンテンツや、参考展示ではあるがVR教材も披露された。レノボ・ジャパンではこれから本格的なICT活用に向けて、端末だけでなくコンテンツの提供にも注力していくという。
プログラミング教材「#みんなでプログラミング」は、単元ごとに設定された課題をクリアしていくタイプで、レノボ・ジャパンと東京書籍、エンジンズの3社が協業してコンテンツを開発。今後はデータ分析、AIプログラミング、情報モラルといった教材も拡充予定だ。参考出展のVR教材「バーチャルスクールVR」では、アバターを使った仮想空間を構築。生徒全員が身体、空間、時間の制約から解放され、平等な教育が受けられるインクルーシブな世界をめざすという。
さらにレノボ・ジャパンのブースで注⽬したいのが、専門性の高い高校向けのワークステーション提案だ。国は令和2年度の第3次補正予算で、⼯業や農業など職業教育を主とする専⾨学科等を設置する⾼校に対し、「スマート専門高校」としてICT環境整備の⽀援を実施している。⾼校⽣ともなると、⼤⼈以上に3Dモデリングや動画編集、プログラミングなど、極めて⾼いスキルを持つ生徒も多い。今後は専⾨⾼校以外にも、⾼性能なPC環境を必要とする普通科の学校も出てくるかもしれない。
デル・テクノロジーズ:学校現場では堅牢性がやっぱり大切
デル・テクノロジーズのブースでは、昨年に続きMIL-STD規格で堅牢性に優れた教育向けモデル「Chromebook 3100 2-in-1」と「Chromebook 3100」、そしてWindows 10が搭載された「Latitude 3190」が展示された。GIGA端末の活用が本格的に始まっている今、学校現場では子どもたちが端末を雑に扱ってしまい破損や故障の原因になるケースも出てきている。やはり、堅牢性の高い端末を選ぶ方が教師たちの安心にもつながるだろう。またデル・テクノロジーズは高校GIGAを視野にいれた上位機種や、これからの需要が期待できる高価格のChromebookも展示した。
シネックスジャパン:高校GIGAに向けて、各PCメーカーの端末を展示
外資系ITディストリビューターのシネックスジャパンのブースでは、PCメーカー各社の端末が展示されていた。傾向としては、高校GIGAを意識した端末が並べられており、小中学校のGIGAスクール端末と比べれば、高性能なマシンが並ぶ。これからの高校生はプログラミングや探究学習などICT活用も増え、小中学校と同じGIGA端末で良いはずがない。どのような端末がふさわしいか、関係者は視野を広くして情報収集してほしい。
さらにシネックスジャパンのブースを占領していたのが、85インチのホワイトボード「Surface Hub 2S」だ。マルチタッチディスプレイを採用し、複数人で同時書き込みも可能。4Kカメラと高性能マイクが内蔵され、クオリティの高い遠隔授業や協働学習に最適だ。
dynabook:高性能PCとして13.3型 5 in 1プレミアムpenノート「dynabook V83」
dynabookからは3機種を紹介しよう。GIGAスクール端末として提供されていたのは、10.1型2 in 1デタッチャブルPC「dynabook K50」と「dynabook K60」であるが、それに加えて今回は、教育現場に適した高性能PCとして13.3型 5 in 1プレミアムpenノート「dynabook V83」を展示。第11世代インテルCore i7/i5 プロセッサー搭載、Wi-Fi 6に対応、Thunderbolt 4を実装するなどスペックは十分。おまけに、重量が979gという軽量で、非常に持ち運びしやすい。値段は高めであったが、高校で購入して大学まで使用できるなら、コスパも悪くないかもしれない。
以上、今年のEDIXで展示されたPCを中心にレポートをお届けした。高校の1人1台環境については、自治体ごとの取り組みが異なり、「まだまだ、これから……」と話す教育関係者もいる一方で、先進的な自治体は、今年から保護者負担で1人1台環境を実施するなど取り組みを始めている。GIGAスクールで学んだ中学生が高校に行って、ICT教育を受けられないのは、生徒たちにとって大きな損失であり、将来の可能性にも影響する。高校でも1人1台環境が急ピッチで進むことを願っている。