こどもとIT
村田製作所が横浜・みなとみらいに「Mulabo!」をオープン
小学校高学年向けの「科学」の不思議と面白さを体験できるSTEM施設
2020年12月15日 13:30
株式会社村田製作所(以下、村田製作所)が横浜のみなとみらい21地区に、STEM教育を取り入れた子ども向け科学体験施設「Mulabo!」(ムラーボ)を2020年12月16日に開館する。「エンジニアの卵が生まれるきっかけの場」をコンセプトに小学校高学年を主な対象として作られた施設で、科学好きな子どもたちの「サードプレイス」をイメージさせる場所だ。開館に先だってメディア公開された館内の様子をレポートしたい。
エレクトロニクスに関する充実の体験展示と、自由に閲覧できるブックエリア
村田製作所は12月、神奈川県横浜市のみなとみらい21地区に地上18階、地下2階の「村田製作所 みなとみらいイノベーションセンター」を竣工。本社を京都に置く村田製作所が、首都圏にはじめて設置する研究開発拠点だ。今回オープンした子ども向け科学体験施設の「Mulabo!」(ムラーボ)は、その「村田製作所 みなとみらいイノベーションセンター」の1・2階に設置された施設だ。
Mulabo!は主に「HISTORY(ヒストリーゾーン)」、「SYMBOL(シンボルゾーン)」、「DISCOVER(ディスカバーゾーン)」、「THINK(シンクゾーン)」の4つのエリアに分けられており、施設自体は予約なしでも入館できる。入館料も無料で時間制限もないが、サイエンス体験展示である「ディスカバーゾーン」は事前予約した参加者のみ入場可能だ。感染対策が必要な現在は、1時間ごとに6名に限定して受け入れている。
1階のエントランスに入ると広がるのが、「ヒストリーゾーン」。入り口のすぐそばには、全体の案内図やロッカーが設置されている。ロッカーは無料で利用できるので、ここで荷物や衣類を預けてしまうと体験展示の際に動きやすい。
オリジナル映像が流れる大型スクリーンに続き、階段沿いには1940年代から2020年代までのエレクトロニクス製品と村田製作所の電子部品の歴史が紹介されている。ラジオやテレビ、パソコンやケータイといった、時代を作ってきた情報機器に村田製作所の電子部品が役立ってきた歴史が分かる。
らせん階段で2階に上がり、手の消毒や体温チェックを行ったら、広々とした「シンボルゾーン」へ。中央には受付カウンターがあり、左側に体験展示のある「ディスカバーゾーン」、右側には科学に関する本が並ぶ「シンクゾーン」が広がっている。
シンボルゾーンの中央には「アナトミーテーブル」と名付けられた円形のテーブルがあり、星座のように広がる身近なエレクトロニクス製品にタッチパネルで電気を送りながら学んでいける。
床には「エンジョイステップ」と名付けられたブロック模様の部分もあり、「?」の部分を踏んで反応を楽しめる。小さい子どもも楽しめそうな仕掛けだ。「ディスカバーゾーン」の予約がない場合も、この「シンボルゾーン」やSTEM関連の本が揃う「シンクゾーン」は利用可能だ。
科学の面白さを発見できるサイエンス体験展示エリア「ディスカバーゾーン」
シンボルゾーンの左に設置されているのが、サイエンス体験展示エリアのディスカバーゾーンだ。受付で貸し出される「Mulabo!ガイド」を使ってクイズに答えたり、体験展示に参加したりすることで科学の面白さを発見できる。このエリア全体のプログラムは70分間ほどで体験できるという。
ディスカバーゾーン内では、このMulabo!ガイドに従って各エリアにあるQRコードを読み込んでクイズに回答していく。各エリアでクイズに回答し終わると、3つの体験展示に参加できるしくみだ。クイズの正解数に合わせて体験展示が有利に進められる特典もあるので、各エリアのヒントを熟読して回答しよう。Mulabo!は小学校高学年向けの施設だが、解説にはふりがなもしっかりふられているので、科学好きな子なら小学校低学年でもある程度理解できるだろう。
ディスカバーゾーンは、大きな樹木の形をした電気について学べる「キホンノキ」を中心に、全体がおおまかに3つのエリアに分かれている。入口には「ハジマリノマチ」の棟があり、当日の参加者のランキングを表示されている。科学の偉人について学ぶ「イジンノヤカタ」や、電気の回路について学ぶ「カイロノメイキュウ」のクイズに回答すると体験展示の「エレクトロニクスサーキット」に参加が可能になる。
「エレクトロニクスサーキット」は電子回路のサーキットを「コイル」や「コンデンサ」などのアイテムを使いながら、ほかの参加者とレースでバトルするゲーム。使えるアイテムが実際の回路内での働きにリンクしていて面白い。全部で3種類ある体験展示は1人1回ずつ、合計3回参加できる。ゲーム性のある体験展示なので思わず何度もトライしたくなるが、次回またMulabo!を予約して参加しよう。
続いてエレクトロニクス関連の単位について学ぶ「キゴウノトウ」や、センサの不思議を学ぶ「センサノドウクツ」でクイズに回答すると、体験展示の「シンクロセンシング」に参加できるようになる。床に描かれたスポットに立ち、モーションキャプチャで画面の中に入った自分と動きをシンクロ。全身をうまく使って指示通りの声やポーズを成功させて、高得点をねらおう。
さらに電池について学ぶ「デンチノイズミ」や電波について学ぶ「デンパノトリデ」でクイズに参加すると、砲台のような装置が備えられた体験展示「シグナルキャッチャー」に参加できる。“空中に飛び交う電磁波ボールをキャッチする”というAR技術を使ったゲームで、「キホンノキ」のまわりに漂う電波をキャッチしていく。「ミリ波」「マイクロ波」「VHF/UHF」など電波の性質と捕まえやすさ、点数などがリンクしていて面白い。すばしっこい電磁波ボールをどんどんキャッチして高得点をねらおう。
ディスカバーゾーン内はスタッフが常駐し、Mulabo!ガイドの操作や体験展示の利用をサポートしてくれるので、小学校中学年以上であれば子どもたちだけで体験展示に参加してもまったく問題ない。しかし、大人でも知らなかった知識や驚きであふれているので、親も「付き添い」の感覚以上に楽しめそうだ。
例えば、エリアの一部にある、村田製作所の技術が体感できる「M's マジックサーカス」は、Mulabo!ガイドがなくても体験できる。
「魔法のねじり棒」は、棒状のコントローラーをねじって、画面にCGで表示される氷が割れる感覚や、風船が割れる感覚のフィードバックが体感できるゲーム。コントローラーに透明の圧電フィルムが埋め込まれており、そこに村田製作所の“ねじり”を感知するセンサ「Picoleaf(ピコリーフ)」が使われている。
もうひとつの「かざしてメロディ」は、手をかざす高さで「かえるの合唱」を演奏するゲーム。物体までの距離を検知する村田製作所の「超音波センサ」を使用している。発信部で超音波を発信し、受信部で手のひらから跳ね返ってきた超音波を受信するしくみだ。
STEM関連の書籍が閲覧できる「シンクゾーン」は、科学好きな子どもの「サードプレイス」
シンボルゾーンの右側に設置されているのは、STEM関連の書籍が閲覧できる「シンクゾーン」だ。村田製作所の社員の意見も取り入れてセレクトされたという科学やエレクトロニクス関連の書籍がずらりと並ぶ。「1 身の回りのふしぎ」「2 オモシロ電気」から「6 プログラミングって何だろう?」「7 もっと知りたい!」まで7つのカテゴリーに分けられている。本はこのシンクゾーン内でのみ閲覧できる。読み終わったら棚に戻すのを忘れないようにしよう。
また、この棚には村田製作所の製作した、自転車に乗ったまま平均台走行ができ、倒れず止まれるロボット「ムラタセイサク君」や、一輪車に乗ってS字平均台走行もできる「ムラタセイコちゃん」、ホイールに乗って集団行動できる「村田製作所チアリーディング部」の実物も展示されている。どれもかわいい見た目だが、体の中には村田製作所のジャイロやセンサー、通信モジュールが数多く使われたロボットたちだ。展示会ではおなじみだが、実物を近くで見る機会は少ないのでぜひ大きさや細部を見て見よう。
シンクゾーンは小学生が興味を持ちそうなSTEM関連の書籍ばかりで、科学好きな子どもにとっては夢のようなスペースだ。このシンクゾーンには予約が必要なく、利用に制限時間もない。繰り返し訪れて満足いくまで科学の本を楽しめそうだ。
また、館内に飲食物の持ち込みはできないが、シンクゾーンにカフェが併設されているので、飲料や軽食は購入できる。電源が使える席もあり、引率の大人に非常にありがたいスペースだ。子どもたちが本に夢中になっている間も大人が余裕を持って待っていられそうだ。
科学の面白さや不思議さを知るきっかけの場作りを目指して
Mulabo!の企画は、2017年に村田製作所のみなとみらいイノベーションセンターの設立の計画と同時に立ち上がったものだという。R&D(研究開発)拠点をみなとみらいに設立するにあたり、1・2階に地域に開かれたパブリックスペースを作ってほしいという自治体からの要請に賛同し、STEM教育に貢献できる施設にしようと考えられたものとのこと。
村田製作所 広報部 ブランド・コミュニケーション課の竹田祥彦氏は、「これまでも東京や横浜に支社はありましたが、こうしたパブリックスペースをオープンするのは全国ではじめてです。みなとみらい21地区という、東京にも近い良い立地に設立できましたので、関東エリアの皆さんや旅行で来られた方にもMulabo!を楽しんでいただきたいと思います」と気軽に立ち寄れる場所をアピール。
村田製作所 みなとみらいイノベーションセンター 管理部 人事総務課 エキスパートの関口晴巳氏は「Mulabo!は、子どもたちに電気科学の面白さや不思議さを知ってもらう場づくりを目指して作りました。ここですべてが分からなくても、何かに気が付いたり、面白そうだなと思うきっかけになってほしい。その子どもたちが村田製作所に親近感を持って、長くつきあってくれたらさらに良いですね。いつかエンジニアになって村田製作所で働きたいと思ってくれたらという期待もあります」とMulabo!設立の想いを語ってくれた。
Mulabo!は小学校5・6年生をターゲットに一般に向けて作られたものだが、開館時間が火曜日~土曜日の10時から17時。小学校の社会見学や校外活動の場所としての利用の要望も出そうだ。関口氏によると、現在はコロナ禍もあり学校単位など団体の申し込みは受け入れていないが、年内の来場者の反応や感染症の状況なども見ながら、運用については今後も調整していくという。
また、村田製作所では2006年から全国の小学校に出向いて出前授業を実施しており、2019年からは体験型プログラミング教育の出前授業「動け!! せんせいロボット」にも取り組んでいるという。これについて関口氏は「出前授業の場合は対象とできる人数に限りがありますが、施設でお迎えできればより多くの子どもたちに体験いただける、という思いもあります。コロナ禍が落ち着けば、ここで工作教室やプログラミング学習などのイベントも検討していきたいですね」とコメント。出前授業の「動け!! せんせいロボット」も並行して実施し、村田製作所として今後もSTEM教育に貢献していく方針だという。
今後イベントなどが開催される場合は、Mulabo!のホームページで公開されるとのこと。エレクトロニクスや科学に関する濃い内容がコンパクトにまとまったMulabo!。みなとみらい地区で同様にパブリックスペースとして開かれている施設と合わせて組み合わせて体験しても面白そうだ。科学好きな子どもの好奇心を刺激する、最新の体験展示を楽しもう。
Mulabo!(ムラーボ)
開館時間: 10時~17時
入館料: 無料(一部予約制)
休館日: 日曜日、月曜日、村田製作所の休業日(2020年12月26日~2021年1月4日は休業)
※ディスカバーゾーン(サイエンス体験展示)予約方法は、Mulabo!ホームページの「体験予約」を前日までに予約し、当日10分前までに受け付けカウンターで端末を受け取る。予約開始は30日前の午前0時。