こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

オンライン学習って安全なの?子どもが利用するときは何に気をつけたらいい?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには保護者の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

リアルタイムにやり取りする「同時双方向型」のオンライン学習に注意!

コロナ禍の今、オンライン学習を利用する子どもたちも多いのではないでしょうか。オンライン学習は大きく分けると2種類あり、録画された授業動画を好きな時間に視聴する「オンデマンド型」と、指導者と学習者がZoomなどのオンライン会議サービスを使ってリアルタイムにやり取りする「同時双方向型」があります。

オンライン学習で特に注意が必要なのは、学習塾や友人同士で自宅学習を行なう場合にZoomやWebexなどのオンライン会議サービスを使い同時双方向型のやりとりをする場合です。具体的には「マルウェア感染」「フィッシング詐欺」「脆弱性」「第三者による妨害」の4つのポイントに注意が必要で、どのような危険があるのか紹介しましょう。

① マルウェア感染
テレワークや在宅勤務の急増に伴い、オンライン会議サービスに便乗したサイバー攻撃が発生しています。実際、マルウェア(ウイルスなどの不正なプログラムの総称)付きのZoomのインストーラをダウンロードさせる事案を確認しています。もし、このインストーラを起動してしまうと、端末内に正規のZoomアプリだけでなく、マルウェアも入り込んでしまいます。オンライン学習に必要なツールをダウンロードする際は、各サービスの正規サイトや公式アプリストアを利用しましょう。

② フィッシング詐欺
フィッシング詐欺は、実在する企業やサービスなどを装った偽のWebサイトに利用者を誘導し、情報を詐取するネット詐欺です。人気のビデオ会議サービスWebexやZoomなどの利用者を狙うフィッシングサイトも出現しています。サイバー犯罪者は子どもの関心を惹き、認証情報や個人情報の搾取やマルウェア拡散を目的とした不正サイトへ誘導する可能性があります。

「Zoom」の認証情報を狙うフィッシングサイトの画面例

③ 脆弱性
オンライン会議アプリにも脆弱性が確認されています。脆弱性は、プログラムの設計ミスなどが原因で生じるセキュリティの欠陥で、どんなソフトやアプリにもつきものです。脆弱性を放っておくと、予期しない不具合が生じたり、サイバー攻撃に悪用されたりする危険性があります。たとえば、ZoomのWindows版アプリでも認証情報を窃取されたり、任意の実行可能ファイルを起動されたりする脆弱性が見つかりましたが、いずれの脆弱性もすでに修正されています。

④ 第三者による妨害
オンライン会議に招かれていない第三者が勝手に会議に参加し、不適切な画像や動画を画面共有するなど、参加者に嫌がらせをする迷惑行為が行なわれる可能性があります。パスワードが設定されたミーティングでも、パスワードを含む会議のURLが不必要に公開されてしまった場合、招かれていない第三者が参加する可能性があります。単なる嫌がらせ行為だけではなく、潜伏して会議の内容を盗み聞きして情報漏えいさせる、参考資料などに偽装したマルウェアを他の参加者に送付するなど、より悪質な行為を行なう場合もあります。

子どもが安全にオンライン学習を利用するために

学校や学習塾、習い事で普及してきたオンライン学習。子どもたちが安全に利用できるよう、保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:正規サイトを利用し、オンライン会議へのアクセス情報は公開・共有しない

利用するオンライン会議サービスは、予め正規サイトをブックマークに追加しておき、アカウントへのログインは必ずブックマークに登録した正規サイトや公式アプリからアクセスするよう子どもに教えましょう。新たに利用を開始する場合は、メールやSMS、SNS、ネット広告などのリンクをクリックするのでなく、Googleなどの検索エンジンを利用して正規サイトにアクセスさせましょう。

オンライン会議サービスにアクセスするために必要なURLやID、パスワードなどをネット上に公開したり、授業に参加する権利のない人と共有しないよう、子どもに教えましょう。部外者に授業を妨害されたり、通信内容を盗み見されるリスクがあるためです。また、授業で使われた教材や資料の内容、参加者の画像や映像を勝手に取得、公開してはいけません。著作権や肖像権の侵害などにあたる可能性があり、オンラインであっても、相手への配慮やマナーを忘れないように教えましょう。

ほかにも、オンライン学習では相手が無断で録画や画面コピーを行なう可能性もあるため、対面時と同じようにモラルをもって自分の発言や行動に注意することが必要です。また相手の顔や容姿が映り込んだ動画やスクリーンショット(画面コピー)を本人の承諾なしにインターネット上に公開したり、仲間内で共有したりする行為は重大なマナー違反です。無断で撮影しないよう、相手への配慮を忘れないようにしましょう。

技術的対策: オンライン会議サービスは最新バージョンを利用し、セキュリティソフトやアプリを導入する

脆弱性のアップデートを含め、最新版のオンライン会議サービスは様々なセキュリティ対策がされています。アプリの開発元から脆弱性を修正済みの最新バージョンが提供された場合、速やかに適用しましょう。また、子どもが利用しているオンライン会議サービスが最新版かどうか、保護者も適宜確認しましょう。

学習するためのパソコンやスマホにもセキュリティソフトは必要です。有害サイトへのアクセスや不適切なアプリをブロックするセキュリティソフトは、さまざまなネット上の脅威によるリスクを下げることができます。セキュリティソフトもビデオ会議サービス同様に最新の状態で利用することが大切です。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。