こどもとIT
現役N高2年生からのエール、「楽しんで触れることからプログラミングの世界を広げてほしい」
2020年7月16日 08:00
2020年4月より、小学校で必修化が始まったプログラミング教育。近年はプログラミングスクールに通う子どもたちも増え、書店には子ども向けのプログラミング書籍も数多く並ぶようになった。しかし、保護者の中には、何から始めてよいのか分からない、という人も多くいるだろう。
そんな方には、2020年7月13日に刊行したばかりの「できるキッズ スクラッチでゲームをつくろう! 楽しく学べるプログラミング」(インプレス刊)を手に取っていただきたい。現役高校2年生の三橋優希さんが執筆した本書は、子どもの頃から遊びの中でスクラッチを楽しんだ経験を元に、子どもたちが楽しめるプログラミング作品を紹介している。そんな三橋さんだからこそ伝えられる、子どもの頃からプログラミングに親しむメリットについて緊急寄稿いただいた。
はじめまして、N高等学校2年生の三橋優希です。N高で学びながら、N Code LaboでScratchやUnityの講師を勤めています。
このたび、書籍『できるキッズ スクラッチでゲームをつくろう! 楽しく学べるプログラミング』を執筆しました。これまでも本を自主制作し、技術書イベントで頒布するなどの経験はありましたが、書店で販売される本を作ったのは、今回が初めてです。この本を出せたのは、私がプログラミングと出会ったおかげでもあります。今回は、これから小学校や中学校でプログラミングを学ぶ皆さんに、プログラミングが広げてくれる世界についてお話ししたいと思います。
スクラッチとの出会い
私は小さい頃から絵を描くことが好きで、小学校1年生の時からパソコンの描画ツールで遊んでいました。小学校から中学校まではホームスクーリング(自宅学習)で育ったので、自分の興味分野に時間を割くことができ、自分の学び方にも合っていたと思います。
小学校高学年のときに、父親にプログラミング学習ツール「Scratch (以下、スクラッチ)」を紹介してもらいました。スクラッチは、アメリカのMITメディアラボの研究チームが開発しているプログラミング学習のツールです。「好きな世界を自由に表現できるのが楽しい!」という理由で夢中になっていきました。日本語で書かれたブロックを読みながらすぐに操作を身につけ、簡単なプログラムを作れるようになっていきました。スクラッチは、動かすための設定や複雑なキーボード入力に手間がかかりません。そのため、既存のプログラミング言語に比べて実行する段階に早く到達できます。その親しみやすさから、アニメーションやパズルゲームなど多様なジャンルの作品をつくるようになりました。
スクラッチが広げた世界
スクラッチにはプログラミングだけではなく、SNSの機能もあります。他の人の作品や自分の作品を閲覧・共有でき、コメントをしたりすることができます。作品作りに加えて、他の作者とのコミュニケーションも楽しいと気づき、世界各所で随時開催される「ScratchDay」というイベントの運営スタッフや、プログラミング道場「CoderDojo」のメンターなどの活動を始めました。CoderDojoではものづくりなどの好きなことを楽しむ様々な人と出会い、その中で未踏ジュニアや各種のプログラミングコンテストを知りました。
CoderDojoに参加したころ、NHKのプログラミング番組にゲーム作品を取材してもらって「私の作品を多くの人に見てもらえるんだ」と知り、ものづくりに熱中していきました。その後はいくつかのプログラミングコンテストに挑戦し、数々の賞を受賞しました。
中学3年生になり、未踏ジュニアという小中高生クリエイター向け支援プログラムに採択され、「UTIPS - 家事の情報共有サービス」というWebサービスでスーパークリエータに認定されました。全てうまくいくわけではなくつまづきながらも、フィードバックを得て成長することができ、今はその過程で学んだことを日々の活動で活かしています。
プログラミングをやってみて思うこと
中学校の卒業後、N高等学校というインターネットで学ぶ通信制の高校に入学しました。好きなペースで学びを進められるので、自分の好きなことややりたいことを突き進められます。入学して2カ月後には高校を通して知ったプログラミング教室での講師を始め、プログラミングを楽しんで学べるような環境づくりに取り組むようになりました。現在はWebデザインやサービス開発などに興味があり、Webデザイナーとして働き学びながら、友人とサービス開発をしています。
プログラミングをきっかけに活動範囲が広がっていく中で、自分の興味分野に気づき、さまざまなな人との出会いもありました。今はWebデザイナーとしての活動や、ものづくりの楽しさを伝える取り組みが主になりました。しかし、プログラミングと出会い楽しんだことは、私には大きな影響がありました。私にとってのプログラミングとは、自分の思い描く世界を実現する手段のひとつです。
私は、プログラミングを単に知識として覚えるのではなく、"楽しむ"という付き合い方もひとつの選択肢だと考えています。人によって、プログラミングの意味は異なるでしょう。プログラミング自体が好きだという方もいれば、問題解決の道具だという方もいます。どれが正解かではなく、それぞれが思うやり方で好きに取り組むのが良いのではないでしょうか。
まずは楽しんでプログラミングに触れることから始め、少しでも子どもたちの世界が広がれば嬉しいです。