こどもとIT
「勉強しないでゲームや動画ばかり」在宅で親のストレスは限界、どうすればいい?
――すららネット主催「休校中の親子の関わり方講座」レポート
2020年6月11日 08:00
コロナ禍での休校や分散登校で、共に家で過ごすことの多くなった子どもに対して、多くの保護者がストレスを募らせていることだろう。「勉強をしない」「ゲームをだらだらやっている」「動画を遅くまで見ていて寝ない」など、子どもに関する悩みは後を絶たず、親子でさまざまなトラブルが発生した例も少なくない。
そんな中、「休校中の親子の関わり方講座」と題した保護者向けのオンライン講座が2020年5月16日に開催された。小学校から高校までの家庭向けに無学年式デジタル教材サービス「すらら」を提供する株式会社すららネットが主催し、同社で子どもの発達相談室の室長を務める佐々木章太氏と、臨床心理士である道地真喜氏が登壇。事前に保護者から募ったアンケートをもとに、それぞれのケースの対応策などを紹介した。
子育てのコツは“行動分析”
最初に佐々木氏が、保護者向けに行ったアンケート調査から代表的な悩みを取り上げ、子どもへの適切な関わり方について行動分析学などを元に解説を行った。
「子どもとの過ごし方での悩み」というテーマで行われたアンケートには、小学生から中学生までの保護者144名から回答があった。その中で多く寄せられたのが、「テレビ、ゲーム時間の長さ」や「規則正しい生活ができない」といった、時間の使い方の問題だ。また、「子どもに怒るようになった」ことを挙げた保護者も多かった。
佐々木氏は、「子どもに怒ってしまう」ときの対処法として、行動分析学を軸にした関わり方がよいと話す。「怒りたくないのに、つい子どもに怒ってしまうのは、何かが起きてから反応してしまう“リアクティブ”な動きが原因」であるという。リアクティブとは、物事が差し迫ってきてから行動を起こすことで、「子どもに対処する場合は“プロアクティブ”、つまり先を見越して行動することが大切」だ。
余裕がないときでも、「子どもがこういった行動をとったら、こうしよう」というプランをあらかじめ持っておくことで、いざ事が起きても、冷静に対応できるようになると、佐々木氏は解説した。
行動分析学に基づく子どもヘの声がけについては、小学生の母である筆者も「なるほど!」と感心した。日常的に、ついつい子どもへ「〇〇は、やったの?」と声がけしてしまうが、結果として高確率でケンカになってしまう。親としては確認のつもりで聞いただけなのに、子どもは「頑張って勉強しているのに、それについて褒めないで、文句ばかり言う」と受け取ってしまうという解説に、そうだったのかと大いに反省した。
声がけを少し変えるだけで、親子関係がうまくまわるようになるのであれば、ぜひ今日から実行したい関わり方のひとつだ。
ポイントシステムでモチベーションを持続させる
ほかにも、アンケートで多く挙がっていたのが「勉強の仕方」や「やる気」といった、休校時でなくても気になってしまう勉強についての悩みだ。
佐々木氏によると、「動機には、自分の内側からわいてくる興味や達成感から生まれる『内発的な動機付け』と、何か他の目的で動く『外発的な動機付け』がある。やる気がないときの関わり方としては、まず外発的な動機付けできっかけを作り、行動をほめることで肯定的な注目が生まれ、いつの間にか内発的な動機付けになっていく」のだという。
集中力持続や苦手分野克服のコツとは
いざ勉強を始めたものの、集中力が続かないということも、多くの保護者の抱えている悩みだ。その際の関わり方としては、「ページを全部終わらせることを目標にせず、集中できる『10分間』などと決めて時間制限方式にする」のもひとつの方法だ。その際、気が散りそうな音や物を近くに置かない環境づくりをしたり、子どもがイライラしてきたら気分転換をするといった工夫が効果的だという。
また、思春期の子どもは苦手なものを投げだしがちなので、「物事の優先順位については、親の責任と捉えて行動する必要がある」と、佐々木氏は話す。その際も、「スケジュールを一方的に決めない」ことが大切だ。しかし、子どもがなかなか話を聞いてくれない場合、試験後などが話し合いのきっかけになるという。「試験がうまくいかなかったときは、まず子どもの気持ちに共感し、話し合いの時間をつくってみるといいでしょう」とアドバイスした。
健康からコミュニケーションまで臨床心理士の視点からアドバイス
続いて、臨床心理士の道地真喜氏が「コロナに伴うストレス対処法」について、こちらも保護者からの寄せられた質問を織り交ぜながら、親も子のストレスにどう向き合うかを解説した。
道地氏は、家にこもりがちな休校期間中のストレスの対処法として「日常生活のリズム整える」、「オンとオフの切り替えをする」という2点が大切だとして、「朝起きる時間と夜寝る時間を決め、スケジュールを書き出してみましょう。仕事を書き出す方が多いですが、同時に自分だけの時間を書き出して、休息時間を取るように心がけてください」と話した。
また、保護者からは生活全般や気持ちを主とした多くの悩みが寄せられた。
道地氏は、「休校でいちばん忙しくなったのは、保護者。この状況で子ども達にすべての時間をさけず、テレビやゲームの時間が増えるのはやむを得ない」としたうえで、「楽しいことの前に課題に取り組む時間を設定し、『これをやったらゲームしよう』とスケジュールを可視化するとよいでしょう」とアドバイスした。
「癒しボックス」でイライラを解消
道地氏は、保護者のさまざまな悩みごとに的確なアドバイスを紹介してくれたが、早速自分でもやってみようと思ったのが、「癒しボックス」だ。
「癒しボックス」は、ストレスボールやよい香りのキャンドル、写真、日記帳など、自分にとって大切なもの、イライラした時に見て落ち着くものなどを入れておく箱だ。箱は空き箱でよいので、きれいにデコレーションしたり、子どもといっしょにそれぞれの癒しボックスを作ったりしてみるのもおススメだ。
さらに道地氏は「毎日決まった時間に学校に行っている子どもたちは、大人以上にルーティンワークを必要としている」として、「この時期に新しく厳しいルールを導入することは避けてほしい」と参加者に訴えた。
また、保護者への注意点として、「新型コロナウイルスについてのメディアの情報に制限かける」ことも必要だと話す。「この時期のメディアの情報の中には主観的なものが多く、警戒心をあたえてしまう。子どもは、保護者が見ているものを想像以上に吸収している」と道地氏は警告した。
講座修了後も保護者からのやまない質問
講座の最後に、参加した保護者からの質問タイムを設けたところ、Zoomのチャット画面に次々と質問や家庭の悩みが投稿された。
その中でも多くの保護者が関心を寄せていたのが知能検査のひとつである「KABC-II」についてだ。「KABC-II」とは、2歳から18歳までを対象とした認知能力や基礎学力を測定する検査で、子どもの得意・不得意を数値化できる。すららでは、KABC-IIの検査サービスも提供しており、事前に相談をすることも可能だ(本稿執筆時点では受付を一時的に休止中)。
道地氏は、「こういう状況だからできることは沢山あります。型にはまらない生活、学校の勉強にはまらない方法を、今だからこそ試すことができます。新型コロナウイルスの脅威に直面しているという現実は変えられなくても、この状況をどう捉えるかということは、自分で変えることができるのです。今、自分との向き合い方が試されています」と話し、ぜひ自分と向き合ってほしいと講座を締めくくった。
今回の「休校中の親子の関わり方講座」は、質問の時間をあわせて2時間のオンライン講座だったが、最後まで参加した保護者が真剣に耳を傾けている様子が伝わってきた。筆者も保護者の一人として、耳が痛い話も多く、同時に「これなら我が家でも実践できそう」という気づきをたくさん受け取ることができる時間だった。
全国の学校は徐々に再開しているものの、しばらくは分散登校を行うところも多く、保護者たちはまだ気は抜けない。こうした緊張が続く中、子どものためにも、そして自分のためにも、この記事を参考に子どもとの関わり方、自分や家族のストレスへの対処法を考えてみてほしい。