こどもとIT
4万4990円でWindowsもChromebookも選べる「GIGAスクールパック」
――“文鎮化”を改善すべく、レノボ、NTT Com、東京書籍、アドビ、日本マイクロソフト、グーグルが共同で発表
2020年3月12日 08:23
コロナウイルス感染拡大の脅威と、安倍総理の要請による全国規模の休校に教育現場が翻弄されていた3月3日、この春から始まる小中学校1人1台PC施策「GIGAスクール構想」に関する新たな発表があった。NTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTT Com)とレノボ・ジャパン株式会社(以下レノボ)が、GIGAスクール構想に準拠したパソコンと教育プラットフォームをセットにした「GIGAスクールパック」である。
具体的には、レノボが提供するChromebook、Windows PCの計4モデルから1つを選択し、NTT Comが提供するクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」、端末管理ツール、東京書籍株式会社(以下東書)とレノボが共同開発したプログラミング教材、アドビ・システムズ株式会社(以下アドビ)が提供する無償プレゼンテーションツールをパッケージ化し4万4990円。補助金の上限である4万5000円を強く意識した価格設定だ。
レノボの執行役員副社長 安田稔氏は、「1人1台実現に向けた低価格の端末、クラウド活用による教職員の負担軽減、導入後のパソコン利活用向上のための教育コンテンツの3つを揃えて提供することで、GIGAスクール構想加速を、レノボとしてコミットする」と戦略的なパッケージであることをアピールした。
しかし、実際に学校現場でChromebookとWindows PCのどちらを選んだ方がよいのか、そして果たして選ぶことができるのだろうか? これについてレノボの安田氏は、「どちらのOSが搭載されているハードを選ぶかは、既存のWindows教材があるのであればWindows、簡便な運用が希望であればChromebookなど、利用される学校の環境にディペンドする」と説明。提供される教育プラットフォームはWebベースであり、どちらのOSからでも同じように利用することができるため、導入する教育現場の実態に合わせてOS搭載ハードを決定するのがよいという考えだ。
GIGAスクールパックは、インドで1四半期中に150万台導入実績を持ち、小・中・高市場の世界シェア21.6%とワールドワイドシェアトップという実績をもつレノボが端末を提供。Chrome OSを搭載したマルチモード2 in 1「Lenovo 300e Chromebook 2nd Gen」、Windows 10を搭載したデタッチャブル2 in 1「Lenovo IdeaPad D330」の2モデルから選択できる。それぞれのモデルの特徴について、レノボの教育ビジネス開発部 マネージャー 武者超氏は、「Windows 10を搭載したIdeaPad D330は豊富な導入実績を持つ。330eはコストパフォーマンスの高いモデルとなっている」と説明した。
中国での生産が多いレノボ、新型コロナウイルスの影響について聞くと、「グローバルに工場を持っているので、製品供給体制には問題ない」(レノボ 安田氏)と豪語。CPU供給不足への懸念についても、「CPUバリエーションを増やし、安定供給できる体制となっている」(レノボ 武者氏)と説明している。
教育向けコンテンツとして教科書で多くの実績をもつ東書とレノボが共同で、プログラミング教育を始める学校現場に向けたリーフレット、プログラミング学習用Webサイト、オリジナルWebアプリを開発。さらに、クリエイター向けツールを提供するアドビが、ポスターの作成、旅行記や調べ学習などに利用できるWebページ作成、スライドショームービー作成という3つの形式を利用できるWebツール「Adobe Spark」を学校向けに無償で提供する。
そこに創立以来20年にわたって教育ICT化を支援してきたというNTT Comが、「まなびポケット」によって教育プラットフォームとシングルサインオン環境を提供する。まなびポケットは、「導入された端末が文鎮化してしまうことをなんとか改善したい」(NTT Com スマートエデュケーション推進室 担当課長 稲田友氏)という意図で、学校現場を支援するために開発された授業支援システム。企業での利用に比べパソコン活用に対して“基本的に慎重”な教員が多いことを意識し、レポートなどの課題管理が可能なポータル、どの学年、強化でも活用することが可能な授業支援システムなどをセットにした。
端末の設定、セキュリティ管理などシステム管理者的なノウハウが必要な部分は、遠隔設定することも可能。教育委員会など含めて学校側で担当することも、外部のシステム管理会社が請け負って設定することもできる。
端末の活用状況については、学校単位でのアプリの利用ログ、先生やクラス別活用状況、月次や週次など期間に応じた利用環境を可視化したレポートを出すことができる。
現場の教員は、授業支援システムは、例えば夏休みなど長期休み中に子どもたちとコミュニケーションをとることも可能。まなびポケットを試験導入している小学校では、子どもが家からアクセスしてコミュニケーションをとることで、不登校だった子どもが復学することにつながった例もあるという。
それ意外にも子ども一人ひとりのつまずきをサポートする個別学習教材、授業を記録することで他の先生の授業を見ることができる仕組みなど、これまでには実現できていなかったことを実現するツールが含まれている。
これら全てをセットに、さらにクラウドをフル活用することで、学校現場の教職員の負担を軽減する運用まで考えたパッケージとなっている。結果として「大量に製品を導入することを前提に、コンシューマー向け製品の価格よりも大幅に割安な価格で提供する」(レノボ 安田氏)というのが、冒頭の価格設定を実現できた理由だ。
また、今回のパッケージには含まれないが、クラウド利用には必須となるネットワーク整備についても、ネットワーク専門であるNTT Comは「800人規模の学校でChromebookを利用したが全く問題なかった。最適なネットワーク構築についてのノウハウは、パートナー企業の皆さんと共有していきたい」(NTT Com 稲田氏)と前向きに取り組む。
NTT Com 菅原氏は「GIGAスクール構想は、教育を変えるひとつのトリガーになる。そのために現場で利用されることが重要になるが、その点でレノボと考える方向が一致し、今回是非一緒にやろうということになった」とこの取り組みに至った背景を説明する。最後に、GIGAスクールパックのような展開はレノボのみかを質問したところ、「レノボ製品以外は販売しないということではない」と横展開の可能性も否定はしなかった。
理想は、どのようなデバイスを選んでも、学校現場の導入担当者にも現場の教員にも扱いやすく、児童生徒が学びを継続できるICT環境だ。GIGAスクールパックは、その1つの試金石と言えるだろう。