こどもとIT
Wi-Fi付シングルボードコンピューター「Halocode」を子どもたちと一緒にいじってみた
2019年8月24日 06:00
この5月、豊富なSTEM教材を提供するMakeblock(メイクブロック)社は、一般社団法人CoderDojo Japanと提携。希望した中から選ばれた日本各地のDojo(道場)に対して、新製品のWi-Fi付シングルボードコンピューター「Makeblock Halocode」(以下、Halocode)200台が提供された。今回、幸運にも筆者が主宰するCoderDojoひばりヶ丘にも2台のHalocodeを提供していただき、実際に子どもたちと何回か一緒に触ってみる機会を得た。そのうえで、筆者が気にいったポイントを中心にレポートをお届けしたい。
そもそもCoderDojoとは何か?
普段は外出して、身体を張った取材レポートを信条(?)としている筆者だが、今回はウチのDojoが舞台である、ありがたや。CoderDojo(コーダー道場)には馴染みがない読者もいると思うので、少しだけその活動について紹介しておきたい。
そもそも、CoderDojoとは、2011年にはじまったアイルランド発祥の世界的な活動である。CoderDojoのベースになっているのは、IT業界を広く支えるオープンソースの思想だ。参加する子どもたちからは参加費を取らず、非営利で子どもたちにプログラミングやテクノロジーに親しむ場を地域で提供している。この考えに共感した人々によって、世界約100カ国、2,000カ所以上のDojoが各地で活動している。
日本でも2012年にはじめて東京の下北沢で「CoderDojo Tokyo(現在は下北沢に名称が変わっている)」として活動がはじまり、2019年7月現在180カ所以上のDojoが活動中だ。各Dojoの規模、やっていることはさまざまで、基本的にそれぞれは独立した存在である。筆者が主宰するCoderDojoひばりヶ丘は、西武池袋線ひばりヶ丘駅周辺地域を対象に2012年から月2回の定期的な活動を続けている。
一般社団法人CoderDojo Japanは、世界的なCoderDojoの活動の日本における公式な組織であり、今回のMakeblock社との提携のように、CoderDojoの活動に関心や共感を持つ多くの企業と提携し、日本各地のDojoの活動を支えている。CoderDojoの活動全般や、今回のMakeblock社との提携については、関連リンクから詳細をご覧いただくとして、興味のある方は近くのDojoに足を運んでみて欲しい。
ちなみにお気づきとは思うが、この「Dojo」という言葉は日本語の「道場」に由来している。創始者の1人、Bill Liao氏が剣道の道場に通っており、活動の名前を決めあぐねていたときに、ひらめいたのだそうだ。
Wi-Fi付きシングルボードHalocodeとは
さて、今回Makeblock社からご提供いただいたHalocode。まず驚いたのは、手元に届いたパッケージのコンパクトさだった。ボードそのものの画像はWebなどで見ていたのだが、イメージしていた以上に小さかったのだ。手元にあったmicro:bit〔ネコカバー仕様)と並べてみたが、さらに一回り小さいサイズ。パッケージの中には、小さく畳まれた使用上の注意と始め方(Quick Start Guide)のマニュアルというシンプルさ。USBケーブルなどは含まれていないが、これは一般的なmicro USBケーブルが流用できる。
初めて見るデバイスということもあり、子どもたちの手前、おとなしくクイックスタートガイドの指示通りに動作確認していく。ガイドの字がとても小さかったため、その場にいた目のいい小学生に読んでもらった。もっとも、英語だったので読んでもらえたのは、Makeblock社の「mBlock」ソフトウェアのダウンロード用アドレスだけだったのだが(苦笑)。
mBlockは、WindowsとMacOSに対応したダウンロード版と、ブラウザーで動作するオンライン版がある。今回は、執筆時点の最新版であるmBlock5.1のダウンロード版を利用している。mBlockを起動してみると、パンダ君のスプライトが表示されたScratchによく似た画面が表示された。mBlockはScratchをベースに開発されており、プログラムの互換性もあるようだ。ただ、最新版のScratch 3.0とはレイアウトが異なっている。まだ、一番の違いは「デバイス」管理の機能も内包されている点だ。Makeblock社は、Halocode以外にもプログラミングロボットmBotに代表される豊富なSTEM教材を提供しており、1つのアプリでさまざまなデバイス用のプログラミングが可能なようだ。デフォルトでは、同社の「Codey」がデバイスとして登録されていた。
続いて、パソコンとHalocodeをUSBケーブルで接続してみる。ちなみにUSBケーブルは100円ショップで売っている物で十分だが、micro USBかつデータ通信に対応したケーブルを用意しよう。接続すると電源が供給され、Halocodeの特徴でもある12個のカラーLEDが色を変えながら点滅をはじめた。点滅の仕方もなかなか面白く、これどうなるんだろうとしばらく子どもたちと眺めてしまった。中央のボタンを押すと点滅の仕方が変わったりと、なかなか凝っている。
一番最初のHalocodeプログラミング
それでは、Halocodeをプログラミングしてみよう。ガイドに従って、「デバイス」タブからHalocodeを追加し、mBlockとHalocodeを接続してみた。
これでmBlockでプログラミングし、接続済みのHalocodeをリアルタイムで操作することができる。表示されているHalocode用のブロックを選んでクリックしてみると、LEDを光らせることができた。さらに、Halocodeの中央についているボタンを押すと、LEDが光るようにプログラミングしてみた。
プログラムのコードとしては、実に単純極まりないのだが、手タレ(?)をしてもらった女の子は実に嬉しそうだった。この他にも、mBlockに用意されているHaclocode用のプロックの中でもLED関連は実に豊富。
例えば、12個のLED1つずつの配色をデザインして表示するブロックなどは、繰り返しのブロックと組み合わせて使うだけで、いろいろな表現が楽しめそうである。Scratchをベースにしているだけあって、経験がある子なら、デバイス独自のプログラミングもすぐに習得できそうだ。
Wi-Fi接続やクラウド連携などの豊富な機能も愉しい
ここまで、mBlockとHalocodeを接続してリアルタイムでプログラミングしてきたが、Halocodeでは、作成したプログラムをアップロード(インストール)して、単独で動作させることも可能だ。
このアップロードのモードの違いによって、プログラミングで利用できるブロックも若干変わってくる。Halocodeの売りの1つであるWi-Fi接続ブロックを利用するには、アップロードモードが「オン」、さらにmBlockのアカウントにサインインしている必要がある。mBlockにアカウントを作ってサインインすることで、Scratchと同じようにプログラムのオンラインでの保存や、共有といったことが、アプリからも行えるようになっている。
HalocodeをWi-Fi接続すると利用できる機能の1つが、音声認識ブロックだ。Halocodeに内蔵されているマイクから拾った音声を、言語認識のサービスを通すことで、認識結果をもとにプログラミングすることができる。本稿執筆時点で、認識できる言語は英語と中国語の2種類のみだが、提供されていたサンプルプログラムを使って試してみた。筆者の英語の発音のせいか、はたまた認識サービスやネットワーク状況によるのか、何回かに1回しかうまく認識してもらえなかったのだが、1回でも通ると思わずガッツポーズが出てしまうのは人のサガであろうか。
少し、Halocodeから話がそれるが、mBlockにはいろいろと面白い機能が提供されている。例えば、機械学習のモデルを作る拡張機能。これを使えば、機械学習とデバイスを組み合わせたプログラミングを始めることができるようになっているのだ。
はじめるのに便利な「Makeblock Halocodeスタンダードキット」も発売中
Halocodeの機能のほんの一部をピックアップして見てきたが、この他にも、モーションセンサーや4つのタッチセンサー、機能拡張用のコネクターなども備えており、小さいながらハードウェアとしてはかなり魅力的である。これに、標準開発ツールであるmBlockを組み合せることで、本体だけでもかなりいろいろなものが作れそうだ。
さらにMakeblock社は、この6月に「Makeblock Halocodeスタンダードキット」を発売開始している。Halocode本体に加えて、外付け電池パックと電池、わに口クリップ、マジックバンドなどがセットになっている。印刷済みの冊子もついており、Halocodeを使ったいろいろなものづくり体験を始めるのによさそうだ。
今回CoderDojoにHalocodeを配布いただいたことで、日本各地のDojoで多くの子どもたちが実機を体験することができた。今後も子どもたちになるべく自由にいじってもらえるように環境を整えていきたいものだ。このような機会を提供して頂いたMakeblock社とCoderDojo Japanには、この場を借りてお礼を申し上げたい。