こどもとIT
定番教材から、新参ロボット、最新電子工作まで、EDIXのプログラミング・STEM教材見てある記
――第10回 教育ITソリューション EXPO(EDIX)レポート③
2019年7月16日 06:00
今回お届けするのは、会場が国際展示場から青海へと変わった「第10回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」(2019年6月19日~21日開催)。念のため言っておくが、「青梅」ではなくて「青海」である。そういえば、そんな名前の駅もあったっけ、と初めて行ったような気がする場所だ。EDIXで展示されている内容は実に幅広いが、今回はその中でも特設の「プログラミング・STEMゾーン 学びNEXT」を中心に、筆者が気になったものをピックアップしてお届けする。
(編注:今回のEDIXは、筆者ごとにそれぞれ異なる視点で教材をピックアップしていただきました。本稿と併せて、狩野さやか氏の『欲しくなる! やる気になる! EDIXで見つけたこだわりデザインのプログラミングツールをピックアップ』もご参照ください。)
グーグルとマイクロソフトを横目に、学びNEXTゾーンへ
取材当日、前日に会場を偵察をしていた、我らが敏腕S編集長から指令メッセージが届いた。
「いいですか、会場入るとすぐ賑やかなグーグルさんのブースがありますが、そこを脇目もふらずに進んで左の奥です!」
展示会場に入ってみると、確かに人だかりがすぐ目についた。グーグルの広めのブースでは、同社の学校・教育向けソリューションやChromebookに関心を寄せる人達が集まっているようだ。
後ろ髪をひかれつつ、脇目もふらず(というか人が多すぎて覗くことも困難だったのだが)に直進し、会場の左奥に向かうと、ここにも賑わっている広めのブースがあったので覗いてみた。
体験コーナーがあり、micro:bitのハンズオンをしている様子。使っているのは、「みんなのコード」の小学校理科の教材のようだ。さらに、飾られているパネルにはマインクラフトの画面が。「いったいここはどこの展示!?」と思ってよくよく見れば、「Microsoft」の文字が。これに限らず、マイクロソフトの教育に対する取り組みは非常に幅広く、詳しい記事が既に公開済みなので、興味がある方はご覧いただきたい(詳細は『マイクロソフトが描く「Future-ready skills」の育成に必要な学びとは?』を参照)。
マイクロソフトがmicro:bitとMinecraftとか、世の中変わったなあ……などとつぶやきながら進むと、何やら愉しそうな物が並んでいる場所にたどり着いた。ここが特設の「学びNEXTゾーン」らしい。
定番から新参まで、ロボット教材が多数お出迎え
見渡すと、各社のロボット教材がいっぱいだ。プログラミング・STEM教材というと、やはり実際に動いてくれるロボットは関心を寄せやすいのだろう、低年齢向けから工業用ロボットのような物まで、実にさまざまな教材が各ブースに展示されていた。
なかには、表情のデザインや色使い、素材が工夫されていて、男女問わず手に取ってみたくなるものもちらほら。まるで、量販店のオモチャ売り場に足を踏み入れたかのようだ。定番のmBotやOzobot、micro:bitを使うタイプと、バリエーションは実に豊か。
ロボット用プログラミングツールとしては、Scratchをベースにしたものが多く展示されていた。本家のScratch3.0でも拡張ブロックという形でLEGO社の製品と連携することができるが、各社独自の開発環境を用意しているようだった。他にも、タブレットやスマホ用にプログラミングアプリが提供されている場合も多い。また、ライントレースや、積み木状のリアルなブロックを並べることで、アンプラグドな方法で低年齢でも愉しくロボット制御を体験できる、デザインが可愛いロボットたちも多数展示されていた。
親しみやすいデザインのパーツを組み合わせていろいろ作れるMabot
ロボットというと自走するタイプが多い中、まるで組み立て遊具のようなモジュール型の製品も、いくつか展示されていた。組み立て方を変えることでいろいろなタイプのロボットや動く工作作りを愉しめる。まず作ってみることからはじめて、発展的にプログラミングにつなげていくこともできそうだ。
中でも、この7月から一部店舗で先行発売がはじまる予定だという「Mabot」は、各部品のデザインが親しみやすく、幅広い年齢で遊べそうで、公民館や児童館のような子供達が集まる場所にあると喜ばれそうだ。
ロボットから習うという発想、コミュニケーションロボット「ユニボ」の活用
プログラミング教材として動き回るロボット達が沢山並んでいる中で、じっと座っている可愛げなロボットの姿が目についた。「ユニボ」という名前のコミュニケーションロボット。教材というよりは、各種施設で既に実際に利用されているロボットの1つである。
このブースは、教材制作のソリューションゲート。展示されていた例の1つが、群馬県の人ならみんな知ってると聞く「上毛かるた」をユニボに習うというもの。大人や先生が忙しくても、ユニボが補助してくれる。教室での指導者不足、働き方改革が求められる現場の一助になるかもしれない。他にも分数を習うなど、教材を変えることでいろいろ広がりができそうだ。
ユニボには、「スキル」と呼ばれる一種のアプリケーションを開発する仕組みも提供されており、条件が整えば子供達にこのスキルの開発を学んで貰うというパスも考えられそうだ。
Maker(メイカー)を意識した、豊富なパーツのDFRobot
このエリアの一角に、ひときわ多彩な展示が並んでいるブースがあった。いい感じの「ごちゃごちゃ」感がとても愉しそうだ。ここは、上海発の電子部品メーカーでSTEM教材ベンダーとしても知られる「DFRobot」社のブース。実際、展示されていた物も、micro:bitをコントローラーとして利用する電子ピアノや、段ボールを使ったロボットなど、実にさまざま。
これを支えるのが同社の「BOSON」シリーズ。入出力から各種演算に電源供給までできる、豊富なブロックをケーブルでつなぎ、実装していくことができる。このブロック、レゴのブロックにそのままはめ込んだり、両面テープで段ボールにくっつけたりといったこともできるようにデザインされているのだとか。
このBOSONのベースにあるのは、同社の豊富なボード、センサーなどのモジュールからなる「Gravity Series」。STEM学習から、子供達自身が身近にある物に電子回路、コンピューターを組み合わせて、新しい何かを作り出す「Maker」育成視点の製品体系と言えそうだ。BOSONは電子ブロック世代のお父さん達に受け入れられそうな気がした。子供と一緒にあれこれ作れたら愉しいだろう。
今年のmonaca(もなか)は一味違った!ビニールハウスの計測から制御まで実習で作ったIoT
学びNEXTのディープなゾーンのまさに一番奥のあたりに、去年のEDIXでも見かけた御菓子の最中(もなか)の山があった。「あー、またアシアルさん、monaca(もなか)、やってるなー」と通りすぎようかと思ったそのとき、和菓子の最中とはとても関係なさそうな機材が筆者の目に飛び込んできた。
念のため言っておくが、そもそも「monaca」は、クラウドベースでHTML5を使ってスマホアプリを開発できるサービスだ。今回展示されていたお手製のシステムは、宮崎県の農業高校で、実習用のビニールハウスの温度/湿度の遠隔計測とそこから発展した遠隔制御用のシステム。クラウドサービスをで現場を接続し連携するスマホアプリを開発したのだそうだ。
アシアルの岡本氏によると、monacaは高校で「地域の課題をプログラミングで解決する」授業として利用が進んでいるとか。今回の展示は一例だが、一般企業にひけをとらないような内容のものまで生徒達が取り組んでいるのだ。
今年も最中、美味しく頂きました。