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日本版グローバルティーチャー賞の設立を、文部科学大臣にGlobal Teacher Prizeファイナリスト教員らが報告
2019年6月4日 11:00
2019年6月3日、教育のノーベル賞といわれる「グローバルティーチャー賞(Global Teacher Prize)」のTop10ファイナリストを含む教育者らが、柴山昌彦文部科学大臣ならびに浮島智子副大臣に、国内の優れた教育者を表彰する「日本版グローバルティーチャー賞(仮称)」の設立を報告した。
グローバルティーチャー賞とは、英国Varkey財団が運営する世界的な教育賞。教育分野でインパクトを与えた教育者らを表彰する「Global Teacher Prize」を毎年3月に開催し、教育者の質の向上をめざしている。2019年で5回目を迎えた同賞は、世界150カ国から3万人もの教育者らが応募、毎年ドバイで開催される表彰式にも、世界中から多くの取材陣が詰めかける権威のある賞だ。
そんなグローバルティーチャー賞に、日本人として2019年トップ10に入選した立命館小学校 教諭 正頭英和氏、2018年トップ50に入選した滋賀県立米原高等学校 教諭 堀尾美央氏、2016年トップ10に入選した工学院大学附属中学校・高等学校 中学校教頭 髙橋一也氏の3名がいる。このファイナリスト3名が、柴山文部科学大臣を訪問し、それぞれの教育に対する取り組みとともに、グローバルティーチャー賞がめざす教育ミッションを引き継いだ日本版の設立について報告した。
同賞設立の背景について髙橋氏は、「学校の先生は大変で、成り手が減ってきている日本の現状を変えたい。子供たちの教育に関わる先生の仕事は素晴らしく、グローバルティーチャー賞のような教育者の価値を高める賞を日本国内でも作りたい」と柴山文部科学大臣に説明した。
また、正頭氏は「先生の社会的立場が厳しいのは日本だけに限った話ではなく、世界的な傾向だ」と説明。英国Varkey財団も教育者の価値を高める活動に注力しており、今回設立した日本版のグローバルティーチャー賞も同財団から正式な認可を受け、全面的にバックアップを得た取り組みだという。
ドバイで開催されるグローバルティーチャー賞で最終選考の審査員を務めるユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事 小林りん氏は「このような賞を作ることで、日本の先生たちに光をあてたい。30代くらいの若い先生がチャレンジし、教育者をめざす人が増えてほしい」と語った。
これを受け、柴山文部科学大臣は「若手で柔軟な発想を持った人、社会人の経験がある人など、多様な人材を表彰の対象にしてほしい。時代に合った教育を実践している先生が報われるように支援していきたい」と述べた。
続けて一同は浮島智子文部科学副大臣を訪問し、同様の内容を説明。
正頭氏は、1年間かけて取り組んだ6年生の課題解決型学習の実践を浮島副大臣に報告。ICTを活用した英語教育、教育版マインクラフトを用いたプログラミング教育、そして、それらの授業を実現するためのカリキュラム・マネジメントなど、文部科学省が力を入れている教育について話した。
堀尾氏は、「地方の田舎にある高校でも都市部と変わらない教育を実現するために、ICTを活用した英語の授業を実践している」と報告。海外の学校とSkypeでつなぎ、さまざまな国と遠隔授業を実施、生徒たちにリアルな英語に触れる機会と、英語を話す必要性を実感できる授業について説明した。
また、日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター事業本部 業務執行役員 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏は、同社の取り組む教育プログラム「マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)」を通して、正頭氏や堀尾氏をはじめ、多くの教員へのICT活用支援を続けてきたと報告。「ICT活用を推進する先生方への継続的な支援が、グローバルティーチャー賞につながったことが嬉しい。今後も先生方が新しい取り組みに専念できるように、テクノロジーで教育を支援していきたい」と述べた。
浮島副大臣はこうした報告を受け、「若い先生たちが頑張ってくれて嬉しい、日本版のグローバルティーチャー賞の取り組みを支援していきたい」と応じた。