こどもとIT
N高、教務事務を補助する100%在宅勤務が可能なリモートワーカーの採用を開始
――当初はシングルマザーを対象
2019年2月4日 18:35
学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校(以下、N高)は2月4日、教員の働き方改革の一環としてインターネットを使ったリモートワーク雇用制度を導入すると発表した。同日に開かれた発表会では、まず同学園理事の川上氏が今回の取り組みの背景について語った。
川上氏は、最初にN高設立時からやりたかったことを挙げた。不登校の子がプライドを持って通える場所にすることと、教師もリモートで教えられるようにし、今まで働く場所のなかったシングルマザーに働く場所を提供することの2つである。
設立から丸3年が経ち、リモートで担任が生徒を管理する実績もできて、生徒や保護者の信頼やノウハウを蓄積してきた。リモートワークについても検討を重ね、今年の4月から教職員の1割程度であればリモートワークすることが十分可能という結論に達したという。とはいえ、全員がいきなりリモートワークは難しい。実際の担任そのものをリモートワークにするのではなく、担任の補助業務なら、担任の負担も軽減できてリモートワークも十分成立する。また、リモートワークをどう管理するかという課題もある。そこで、専門のプロジェクトチームで管理体制を作り、チームで業務を行なうという体制作りも行なったとのことだ。
N高の教員数は現時点で62名おり、今年の4月に120人と倍増する。そのうち1割をリモートワーカーにし、割合は順次増やしていきたいと語る。リモートワークは恵まれている人の特権としてではなく、リモートでしか働けない人たちにまずは優先して割り当てたいとして、当初はシングルマザーを対象とするという。
続いて、同学園常務理事 N高校長 奥平氏が教員の働き方の現状とN高での具体的な実施内容について説明した。
文部科学省による2016年の教員の勤務実態調査の結果から、教員の勤務時間の削減とともに、勤務内容の見直しや負担軽減が学校現場での喫緊の課題となっている。これを受けN高でも、担任連絡補助、学習計画作成補助、学習システム設定・利用説明補助及びその他事務作業などの教務事務補助について分析を行ない、出勤の困難な在宅勤務希望者に限定し、リモートワーカーの採用を開始することにしたという。
N高では設立当初からインターネットを活用した学習管理システムを導入しており、ネット部活動や職業体験などの課外活動を運営する専門セクションによって、教員は生徒とのコミュニケーションや進路指導に集中できる環境がある。生徒は教科学習にオンライン教材を、部活や同好会のコミュニケーションにSlackやG Suite for Educationを活用。教員同士も同様にICTツールを活用して業務を行なっており、本制度では、これらの働き方のノウハウを活かすという。本制度の導入により、今まで以上に教員が生徒一人一人に寄り添い、目標達成を支援する時間が捻出できるとしている。本制度で採用するリモートワーカーは100%在宅勤務が可能であり、ネットコースの教員と連携して事務作業等を分掌するという。
最後に同学園人事企画課課長 荻野氏から雇用形態について説明があった。
雇用形態には契約社員とアルバイトの2種類があり、契約社員採用は教員免許取得者のみとしている。初年度は6~12名を採用したいという。
契約社員は勤務時間が1日最大8時間。リモートワークでは勤務時間管理が難しいため、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働したとみなす「みなし労働時間制」とする。休日が土日祝日、給与は21万(賞与無し)。夏季休暇と年末年始休暇のほか、年次有給休暇、慶弔休暇、育児休業と介護休業といった休暇制度に、社会保険や健康診断、休日勤務手当、振替休日制度、育児手当などの福利厚生もある。アルバイトは9:00~18:00の勤務時間内で応相談とし、休日が土日祝日、時給1000円から。夏季休暇と年末年始休暇があり、週30時間以上勤務の場合は社会保険も完備する。アルバイトは教員免許取得後の契約社員登用もあり、教員免許状取得支援として年間最大15万円(最大4年まで)が支給されるという。
採用時には通常の教員と同様にSlackやG SuiteなどのWebサービスやトレーニングが提供されるが、リモートワークのためのインターネット接続回線などのインフラは自分で用意する必要がある。