こどもとIT
プログラミングだけでなく、分解ワークショップやボルダリング体験など新企画も人気
――Maker Faire Tokyo 2018レポート
2018年10月9日 08:00
2018年8月4日~5日、東京ビッグサイトで「Maker Faire Tokyo 2018」(以下、MFT2018)が開催された。Maker Faireは、世界各地で開催されているものづくりを趣味とする個人やサークル「Maker」たちのお祭りで、東京での開催はその前身であった「Make: Tokyo Meeting」から数えると10回を超える。ここでは、MFT2018で見つけた展示やワークショップの中から、特に子供へのプログラミング教育に関連の深いものや、主に子どもを対象にしたワークショップを中心に紹介する。
アフレルがマインドストーム20周年を記念して大規模なブースを展開
アフレルのブースでは、レゴマインドストーム20周年を記念して、歴代のマインドストーム関連製品やレゴマインドストームを使う国際的なロボット大会「WRO」(World Robot Olympiad)に関する展示を行っていた。レゴマインドストームを活用した作品も多数展示されており、ルービックキューブを自動的に完成させる装置やボーリングロボットなど、高度な作品に注目が集まっていた。また、白色のレゴを使って自由にものを作れるコーナーもあり、子ども達が楽しそうにブロックで遊んでいた。
IchigoJamの新OS「IchigonQuest」や子ども達が作ったゲームのデモを行っていたPCN
PCNは、独自のこどもパソコン「IchigoJam」用の新OS「IchigonQuest」のデモを行っていた。IchigonQuestは、名前からも想像できるようにドラクエ風のUIで、矢印キーとEnterキー、ESCキーだけの簡単操作でプログラミングできることが特徴だ。IchigoJam本体や拡張基板、ソフトなども販売されていたほか、各地のPCNに通う子ども達がIchigoJamで作ったゲームのデモも行われていた。
また、PCNやスイッチ・エデュケーション、TENTO、インプレス、OtOMO、DFRobotなど多くの企業の協力による、「子どもプログラミング喫茶」も人気を集めていた。子どもプログラミング喫茶では、さまざまな子ども向けのプログラミング体験メニューが用意されており、喫茶店のようにメニューを見ながらやりたいプログラミングを注文できるようになっており、子ども達は、Scratchやマインクラフト、mBotなど、さまざまなプログラミング体験に取り組んでいた。
未踏ジュニアのプロジェクトやこどもエンジニアコンテストの結果が展示
未踏ジュニアのブースでは、2017年度の未踏ジュニアに選ばれた、矢野礼伊さんと中筋絢香さんのプロジェクトが展示されており、本人達が説明を行っていた。未踏ジュニアとは、独創的なアイデア、卓越した技術を持つ17歳以下の小中高生及び高専生を対象とした、人材発掘・育成を目的としたプログラムであり、2017年度は、11プロジェクト17人が採択された。矢野礼伊さんの「見守りフォトスタンド」は、カメラや各種センサーを搭載しており、老人宅などに設置することで、サーバーを介して随時様子を知ることができるというものだ。液晶はフォトスタンドとしても利用できるようになっていることが特徴だ。中筋絢香さんの「暗記クッキー」は、スマホアプリの漢字クイズで覚えた漢字をクッキーにレーザーカッターで焼き、暗記のモチベーションを高めるというシステムだ。
また、ヴィリングとオライリー・ジャパンが主催した「こどもエンジニアもんだいかいけつアイデアコンテスト」の優秀作品の展示も行われていた。このコンテストは、家族など身近な人や学校、地域から、世界の問題への関心を高め、自分たちでも解決できるという視点と自信を子どもたちに身につけてもらうことを目的として行われたものだ。小学生の柔軟な発想は、とても素晴らしかった。
micro:bitを使ったロボットサッカーワークショップが人気
「Make: Classroom」では、さまざまなワークショップやセミナーが行われていたが、中でも人気を集めていたのだが、スイッチ・エデュケーションによるワークショップ「micro:bitでロボットサッカーをしよう」である。micro:bitは、最近注目が集まっている教育向けのマイコンボードだが、Bluetoothに対応しており、micro:bitを2台使うことで、1台をリモコン、1台を受信機として利用できる。このワークショップは、micro:bitベースのロボットカーを組み立て、プログラムを転送し、外装を作って、2台1組でチームを作り、サッカーの試合を行うというものだ。ボールをうまくキープしてドリブルできるように、外装を作ることがポイントだ。参加者は12名であり、6チームに分かれて試合を行ったが、試合はなかなか白熱した勝負になり、盛り上がった。優勝チームやデザインが優れていたチームには賞品が贈られた。
恒例のNerdy Derbyに加え、分解ワークショップやナイフワークショップも
ホール外のアトリウム特設会場では、毎年恒例のミニチュアカーレース大会「Nerdy Derby」が行われており、子ども達が列をなしていた。Nerdy Derbyは、ワッシャーをタイヤに使ったミニチュアカーを自分達で作り、車体に思い思いの装飾を施して、さまざまなコースで走らせるというものだ。今回は、遅くゴールしたほうが勝ち(途中で止まったらダメ)というルールの大会も行われ、子ども達が歓声を上げていた。
今年初めて行われたのが、家電製品を分解するワークショップとアウトドアナイフの使い方を学ぶワークショップだ。分解ワークショップは親子連れに人気で、自分達で選んだプリンターやラジカセなどを、用意された工具でどんどん分解していた。分解されたパーツは、スピーカーや基板など、種類毎に分類され、自由に持ち帰れるようになっていた。ブッシュクラフトスペシャリスト川口拓氏による、ナイフワークショップは、伐採した木の枝を二つに切り、表面の皮を剥いで先端をとがらせ、ペグを作るというもので、こちらは子どもから大人までさまざまな年齢の方が参加していた。講師の川口氏は、本格的なナイフを用いるので、正しいナイフの使い方を丁寧に指導していた。
また、ボルダリング体験も今年初めて行われた。こちらも子どもに人気で、参加者にはMaker Faireオリジナル絆創膏が配られていた。今回は、ナイフワークショップやボルダリングなど、より身体をアクティブに使うワークショップが増えた印象だ。
その他、例年通り、ハンダ付け体験やストロークラフトなども行われており、子ども達が喜んでものづくりに挑戦していた。
micro:bitコンテストの優秀作品の展示やmicro:bitを使った教材など
micro:bit関連では、スイッチサイエンスが主催していた「micro:bitでつくってみよう!コンテスト」の優秀作品が展示されていた。グランプリを獲得した「マイクロビット・メイズ」は、迷路を傾けてビー玉を脱出させるゲームで、ロボットサッカーと同じように2台のmicro:bitを活用していた。micro:bitに搭載されている加速度センサーを利用して、コントローラーの傾きを検知し、コントローラーを傾けた方向に迷路が傾くというものだ。優秀賞の「Kaze-Con 綿毛の旅立ち」は、Scratchとmicro:bitを連携させており、風車型コントローラーのKaze-Conに息を吹きかけると、パソコンの画面の綿毛が飛ぶというものである。他にも、「自動組紐製造機」など、素晴らしい作品が多数展示されており、実際に触って遊ぶこともできた。
また、磁力で壁に貼り付いて動く「うおーるぼっと」シリーズを開発している“じぇーけーそふとのこーなー”のブースでは、新型の「うおーるぼっとG」のデモが行われていた。うおーるぼっとは、micro:bitを搭載できることが特徴であり、もう1台のmicro:bitからの操縦やプログラミングでの動作が可能だ。Seeedのブースでは、micro:bitに対応した「Car Shield for micro:bit」や日本未発売のSTEM教材「Grove Zeroスターターキット」などが展示されていた。
ハリー・ポッターの世界観のほうき型モビリティや自動クレープ生地焼きロボットなど
その他、筆者が興味を持った展示をいくつか紹介する。MONO Creator's Labの「ext-broom」は、ハリー・ポッターに出てくる架空の競技「クィディッチ」を実現するために作られたほうき型モビリティであり、インラインスケートを履いて、腰掛けることで自由に移動が可能だ。MFT2018の会場では動かしていなかったが、ドローンを使って空を飛び回る「スニッチ」も実現した。
モリロボのブースでは、自動クレープ生地焼きロボット「クレプ」のデモを行っており、多くの来場者を集めていた。今年は3色の生地を使ってクレープを焼いており、焼けたクレープは希望者に振る舞われていた。
Scratch界の大御所である阿部和広氏が個人で出展しているブースでは、ニンテンドーラボのToy-ConガレージとScratchをいぬボード経由で連携させるデモを行っていた。Toy-Conの釣り竿を動かして、Scratchの画面の中の魚を釣り上げるというデモだが、アイデア次第でいろんなことができそうだ。
e-worksが展示していた「ぴらめきパズル」は、六角形のピースの中にLEDや電池が入っており、正しく組み合わせることで回路が繋がり、LEDが点灯するというものだ。ルールはシンプルだが、使うピースの数によって難易度が変わるので、子どもから大人まで楽しめる。