こどもとIT

全国ではじまる「タミヤロボットスクール」で、⼩学⽣と⼀緒にロボットプログラミングを体験してきた

この2018年4月から全国各地で「タミヤロボットスクール」が開講される。これに先だち、3月24日、25日の2日間に渡って、小学生を対象にした体験イベントが東京・新橋で開催された。今回、運営事務局のご厚意で、小学生達に交じって「ロボットプログラミングコース」を体験させていただいた。1人1台のロボットを使った本格的な内容だ。当日の様子を中心にレポートをお届けする。

1人1台の完成済みロボットを使用した体験会

タミヤと言えば、プラモデル、ラジコン、ミニ四駆のトップブランドとして知られる。そのタミヤのロボット製品を使った「ロボットスクール」がこの4月から全国各地で始まろうとしている。主にメカトロニクスについて学ぶ「メカニックコース」と、プログラミングに重点が置かれた「ロボットプログラミングコース」の2つがあり、筆者が体験したのは、このうちの「ロボットプログラミングコース」だ。

会場は「タミヤプラモデルファクトリー新橋店」のイベントフロア「モデラーズスクエア」。明るいフロアには、体験会で使われるロボット達がテーブルに並べられ、参加する子ども達を待っていた。ちなみにこの場所は、タミヤの約6000アイテムが揃ったフラッグシップ店でもある。店舗エリアには、子どもの頃に手が出せなかった大きなプラモデルが並んでおり、新橋というビジネス街の近くにあるせいか、会社帰りに立ち寄る大人も少なくないそうだ。当日も親子連れの姿が目立っていた。

タミヤのフラッグシップ店プラモデルファクトリー新橋店
テーブルに並べられたロボット達

ここで、体験会で利用するロボットについて見ておこう。

ベースは、タミヤの「カムプログラムロボット工作セット(以下、カムロボ)」。昨年のグッドデザイン賞を受賞した人気の商品だ。カムバーと呼ばれるパーツを利用することで、コンピューターを使わずにロボット制御を体験できる仕組みになっている。

本来はプラモデルのように自分で組み立てるロボットなのだが、体験会ということもありすでに組み立て済み。さらに、こどもパソコン「IchigoJam」とモーター制御用の基板や電池ボックスなども搭載済みだ。実際のロボットスクールのカリキュラムでは、組み立ても子ども達自身が行うそうだ。

すでに組み立てが完成した状態のカムロボ、背負っている電池ボックスがなかなかかっこいい

取り付けられているIchigoJamには、キーボードと車載用の小型モニターも接続されており、直接カムロボ用のプログラムを入力してすぐに実行できるようになっている。

コンピューターが入っている身近なものはなんだろう

当日は全3回の体験会が行われ、いずれも盛況。筆者が混ぜて頂いたのは最後の回で、子ども達は早々と会場入りしてロボットを興味深そうに眺めている。4つのテーブルに分かれて、参加するのは基本子ども達だけだ。同伴した保護者はまわりでそれを見守るスタイルである。

体験会の冒頭、子ども達に「キーボードに触ったことがある人?」「プログラミングをしたことがある人?」と問いかけがあった。なんと驚いたことにほとんどの子ども達が実はどちらも経験済み。元々関心の高い子ども達が集まってきたようだ。

講師の質問に元気よく手をあげる子ども達

さらに聞いてみると、キーボードは「マインクラフト」で使っているということらしい。「なるほどそういう時代か」と筆者も含めスタッフの大人達も妙に納得してしまった。

話題は目の前のカムロボに移った。子ども達は、この小さなロボットにはすでにコンピューター(IchigoJam)が搭載されていることや、身の回りの様々な物の多くに、やはりコンピューターが内蔵されているという説明を受け、続いて身の回りでコンピューターが入っている物をテキストの記入欄に書き出してみるように促された。

今の子ども達にとって「コンピューター」という言葉からどんなものが連想されるのだろうか。あれこれと考えながら記入しているようだ。

もちろん、パソコンはコンピューターの代表格なわけだが、それ以外にいったいどのような答えがあったのか。

大人としては、炊飯器とか液晶テレビや自動車といった回答をつい期待してしまうのだが、短い発表タイムであがった答えは、なんと「Nintendo Switch」を代表としたゲーム機である。言われてみれば、間違いなくコンピューターが入っているなあと逆に感心してしまった。

コンピューターが入っている身近な物を考える子ども達

BASICでロボットを動かそう

場が和んできたところで、子ども達はいよいよロボットプログラミングに挑戦する。利用する言語は、IchigoJamに搭載されているBASICだ。

まずは、カムロボの電源スイッチを入れて起動を確認する。モニターにIchigoJamの画面が表示されればOKだ。

続いて、キーボードから「A」のキーを押してみる。画面に「A」と表示されることを確認して、続いて「Enter」を押す。画面上には「Syntax Error」というメッセージが表示される。BASICには「A」という命令はないからだ。

コンピューターは命令されたことがわからないとエラーを出して黙ってしまうということを、冒頭にまず経験してもらうわけだ。

Syntax Errorを冒頭でわざと経験してもらう

それでは、カムロボを動かすためのプログラムを入力してみようということで、次の1行の短いプログラムをキーボードから入力してみる。

OUT 33:WAIT 60:OUT 0

カムロボを動かすには、この「OUT」という命令を利用する。OUTのあとに数字を指定することで、前進、後退、右旋回、左旋回、停止といった動作を行う仕組みになっている。また、「:」をつけることで、複数の命令を連続して指示することができる。

このプログラムの場合、カムロボに前進を指示、一定時間たってから停止を指示という内容になる。

アルファベットや数字はともかく、「:」のような特殊記号は子ども達にはあまり馴染みがない。Shiftキーを使う必要もあり、入力方法は特に丁寧に説明されていた。また、どうしても入力の間違いはあるので、画面上でどう修正すればいいのかといった基本操作を子ども達は練習していった。

はじめてのプログラミングに挑戦中、慎重にキーボードで入力していく

プログラムを入力したところで、Enterキーで実行してみる。カムロボのモーター音がして無事に前進して止まってくれた。

周りの子ども達も目の前で動いたカムロボに嬉しそうな表情を見せている。プログラムは動かして何かが起きることが楽しいもの。それがロボットという目に見えるものなのだからなおさらだろうと思った。

先ほどのわずか1行のプログラムも、数字を変えることでロボットの動作を変えたり、移動する距離を伸ばしたりすることができる。子ども達は試行錯誤をして、楽しんでいる様子だった。

筆者は、調子にのっていじりすぎ、カムロボが止まらずに暴走してしまい、スタッフの方に緊急停止してもらうという恥ずかしい事態を招いてしまった。このような場合のためか、ファンクションキーに「OUT 0(停止)」が設定されているそうだ。

じゃんけんプログラムに挑戦する子ども達

はじめてのプログラムで、カムロボを無事前進させることができた子ども達は、続いてもう少し複雑な「じゃんけんプログラム」に挑戦。

テキストに掲載されているプログラムは、次の画像にある5行ほどのもので、IchigoJamについているボタンを押すと自動的にロボットがランダムな時間右旋回するという内容である。じゃんけんシートの上にカムロボを置いてこのプログラムを実行するのだ。

ロボットじゃんけんのプログラムテキストとじゃんけんシート

これは少々荷が重いのではなかろうか?と、見回してみたが、子ども達は特に動じる様子もなく入力に挑戦している。BASICのプログラムを見るのは久しぶりな筆者も目を皿のようにして、プログラムを1行ずつ打ち込んでみた。

実行してみると哀しいかな「Syntax Error」が2回ほど出てしまった。記号の入力ミスや、「GOTO」をつい「GO(空白)TO」のように入力しているという初心者(?)にありがちなミスであった。

子ども達はというと、早々と打ち込み終わって無事動作確認まで済んでいる子がちらほらいる一方で、筆者と同じようにエラーが出てしまい、どこがおかしいのかスタッフの方と一緒に真剣に見直している子もいるようだった。ただ、すぐにエラーの修正もできて、ほとんどの子は無事に動作確認まで進んでいるようだった。

入力したプログラムを真剣に見直し、動作確認する子ども達

ところで、カムロボにはキーボードとモニターがつながったままである。これでは、何回も旋回させるときにケーブルが邪魔になってしまう。そこで、作ったプログラムをIchigoJamの「メモリ0番」に保存する。IchigoJamを起動したときに、プログラムを自動で実行できる仕組みが用意されているのだ。

ここまで済んだところで、カムロボからケーブルをはずして、じゃんけんシートの中央に置きスタンバイさせる。IchigoJamのボタンを押して、カムロボが右旋回して止まったときの向きに書いてある絵がじゃんけんの手になる。

ケーブルをはずしてじゃんけんプログラムを試してみる

実際にカムロボがくるくる旋回して止まる様子は面白く、周りの子ども達もじゃんけんに興じていた。

一通り動くようになったところで、同じテーブルの中でロボット同士のじゃんけん大会がはじまり、周りで見守っていた保護者の方も参加してあちこちで歓声があがっていた。

ロボットとのじゃんけんに興じる参加者達

こうして時間にして1時間ほどの濃密な体験会は終了した。子ども達はロボットやコンピューターが本当に好きな様子で、目の前でそれを触り、動かしてみる体験そのもがとても貴重だったようで、会場を後にするのがとても名残惜しそうだった。

全国展開がはじまるタミヤロボットスクールの狙いとは

タミヤロボットスクールは、この4月から全国のフランチャイズ約70カ所で始まる。具体的な年間スケジュールは各会場によって異なるようだが、約1年の長期的なカリキュラムが用意されているようだ。

先に触れたように、子ども達は自分が使うロボットを組み立て、プログラミングの基礎を身につけながらの仲間同士の学び合いや競技会への参加といった目標も設けられるそうだ。

いったいどのような教室がいち早くこの取り組みに参加しているのだろうか? ロボットプログラミングコース運営事務局の安中氏によると、学習塾やパソコン教室などの他に、タミヤらしく模型店なども含まれているそうである。

タミヤロボットスクールが掲げるのは単にロボット作り、プログラミングだけではなく「思いを具体化する力」すなわち「生きる力」を育むことである。この考えに共感したオーナーが地域の学び場としてスクールを開講したケースも少なくないようだ。

2020年からの新しい学習指導要領の移行期間もまさに同じタイミングではじまっており、学校と地域における学びの1つの形として、どう共存/提携していけるのか今後の広がりに注目したい。

体験会は各地の会場で4月以降も定期的に行われているので、興味をお持ちの方は、ぜひ検索してみて欲しい。

当日子ども達以上に筆者がお世話になったスタッフの皆さん

新妻正夫

ライター/ITコンサルタント、サイボウズ公認kintoneエバンジェリスト。2012年よりCoderDojoひばりヶ丘を主催。自らが運営する首都圏ベッドタウンの一軒家型コワーキングスペースを拠点として、幅広い分野で活動中。 他にコワーキング協同組合理事、ペライチ公式埼玉県代表サポーターも勤める。