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開発中の新アプリやさまざまなプログラミングツールが集結!「GPリーグプログラミング・ラーニングスタジオ」イベントレポート

2018年1月14日、GPリーグ主催の、小学生を対象に、遊びながらプログラミングの基礎が学べるイベント「GPリーグプログラミング・ラーニングスタジオ」がモラージュ柏(千葉県柏市)にて開催された。

フジテレビKIDS主催の「P-Kiesプログラミングワークショップ IchigoJamでカムロボを動かそう」と、G7プログラミングラーニングサミット実行委員会主催の「G7プログラミングラーニングサミット2018」も同時に開催され、多くの家族連れで賑わっていた。その様子をレポートする。

GPリーグプログラミング・ラーニングスタジオ会場の様子。オープンスペースで開催されており、親子連れの買い物客も多数訪れていた

9種類のプログラミングツールを無料で体験

会場では、無料で9種類のプログラミングツールの体験ができ、子供達が熱心に取り組んでいた。そのプログラミングツールとは、GPリーグの「トレーニングジム」、ディー・エヌ・エーの「プログラミングゼミ」、タカラトミーの「COZMO(コズモ)」、Edisonの「Edisonプログラミングロボ」、JEITAの「アルゴロジック」、ヴイストンの「プログラムマスター」、ORSOの「DRONE STAR(ドローンスター)」、ピコソフトの「ORANGE pico(オレンジピコ)」、フィッシャーテクニック・エデュケーションの「フィッシャーテクニック」の9種類である。順番に紹介していこう。

「トレーニングジム」は、GPリーグが開発したスマートフォン向けアプリで、iOS/Android版が無料で提供されている(イベント開催時はまだ未公開だった)。プログラミングの基礎をゲーム感覚で学べるもので、一人で遊ぶ「レッスン」と、ネットワーク経由で仲間と対戦できる「バトルモード」が用意されている(現在公開済みのアプリではバトルモードは非実装)。ルールは簡単で、ブロックを並べてキャラクターの動きを制御し、ゴールまで到達させるというものだ。バトルモードでは、かかった時間やリトライ数、ステップ数を総合的に判断して勝ち負けが決まる。今後は、GPリーグ公式戦の予選を、このトレーニングジムを使って行いたいとのことだ。

GPリーグが開発中の「トレーニングジム」アプリ。スマホやタブレットで動作する。「レッスン」と「バトル」の2つのモードがある
下に並んでいる命令ブロックを上のエリアに並べて、主人公のキャラクターの動きを制御する
バトルモードでは、コンピューター相手に対戦を行うことができ、スピードとリトライ、ステップの3項目で評価が行われる
シンプルで分かりやすいので小学校低学年でも楽しめる

ディ・エヌ・エーが開発した「プログラミングゼミ」は、小学校低学年から利用できるプログラミング学習アプリで、Windows/iOS/Android版が用意されており、無料でダウンロードできる。Scratchと似たブロックプログラミングを採用しており、キャラクターを動かして遊ぶことができる。また、自分で描いた絵や撮影した写真をキャラクターとして利用することもできる。与えられた課題をクリアしていくパズルモードや、丁寧な解説動画も用意されているので、小学校低学年でも自分でプログラミングの基礎を学べる。完成した作品は広く公開することも可能だ。

ディー・エヌ・エーは、同社が開発したプログラミング学習アプリ「プログラミングゼミ」の体験デモを行っていた
プログラミングゼミでは、ブロックを並べてプログラミングを行う
地球をタッチすると、赤いボールが飛び出してくるプログラムを実行したところ
与えられた課題をクリアするパズルモードも用意されている

タカラトミーの「COZMO(コズモ)」は、プログラミングをしなくてもさまざまな自律動作を行える人工知能搭載ロボットだが、タブレットに専用アプリをダウンロードすることで、ブロックを用いたプログラミングが可能になる。COZMOの動きやLEDの制御などを自由に行うことができ、付属のキューブを動作のきっかけとして使ったり、笑顔やしかめ面を認識してアクションを行うこともできる。

タカラトミーの人工知能搭載ロボット「COZMO」。タブレットを使ってプログラミングが可能
ブロックを並べてプログラミングを行う
COZMOをプログラミングで動かしている様子

GPリーグオンラインショップで販売されている「Edisonプログラミングロボット」は、5,980円(税抜)と手頃な価格だが、ライントレーサー用センサーや赤外線センサーなどを搭載しており、タブレットやPCを使ってブロックプログラミングが可能だ。ロボットへのプログラムの転送は、ヘッドホン端子経由で行う。

GPリーグオンラインショップで販売されている「Edisonプログラミングロボット」。オーストラリア製で、価格も5,980円(税抜)と手頃だ
タブレットやPCでブロックを並べてプログラミングが可能。ロボットへのプログラムの転送はヘッドホン端子経由で行う

JEITAは、アルゴリズム学習パズルゲーム「アルゴロジック」の体験デモを行っていた。アルゴロジックはWebアプリとして動作するため、Webブラウザーが動作すればタブレットでも利用できる。プログラミングの基礎となるアルゴリズム(論理的思考)をパズル感覚で学ぶことができる定番のアプリだ。

JEITAは、アルゴリズム学習パズルゲーム「アルゴロジック」の体験デモを行っていた
アルゴロジックは、タブレットでも利用できる

ヴイストンは、仮想ロボットをブロックによってプログラミングする「プログラムマスター」の体験デモを行っていた。こちらもWebアプリとして動作し、無料で利用できる。Scratchなどに似たブロックプログラミング環境だが、仮想ロボットをプログラミングで動かすようになっていることが特徴だ。

仮想ロボットをブロックによってプログラミングする「プログラムマスター」の体験デモ

ORSOは、ドローン操縦教育アプリ「DRONE STAR(ドローンスター)」によるドローンの体験操縦を行っていた。小型ドローンでいくつかのミッションをクリアしていくことで、ドローンの操縦が上達するアプリである。DRONE STAR自体にはプログラミング要素はないが、近日中にプログラミングでドローンを操れるアプリも追加される予定とのことだ。

ORSOは、ドローン操縦教育アプリ「DRONE STAR」によるドローンの体験操縦を行っていた
DRONE STARによる体験操縦の様子。一定時間その場でホバリングすればクリアだが、機体が小さく安定性が低いのでなかなか難しい

ピコソフトは、BASICが動く教育用コンピューター「ORANGE pico(オレンジピコ)」の体験デモを行っていた。ORANGE picoの「ORANGE BASIC」は、多次元配列やスプライト、タートルグラフィックスなどが可能である高機能なプログラミング言語であり、上位のORANGE pico type Dでは、USBキーボードやUSBメモリを利用できることが特徴だ。

ピコソフトはBASICが動く教育用コンピューター「ORANGE pico」の体験デモを行っていた
ORANGE picoで筆者が作成したプログラム。いわゆるタートルグラフィックスを利用できる
プログラムを実行したところ
ORANGE BASICの特長一覧。多次元配列やスプライト、タートルグラフィックスなどが可能で、上位のORANGE pico type Dでは、USBキーボードやUSBメモリを使用できる

フィッシャーテクニック・エデュケーションは、ドイツ生まれのSTEM教材「フィッシャーテクニック」の体験デモを行っていた。フィッシャーテクニックは、歯車などのメカの仕組みを理解するための教材であるが、タブレットを使ってプログラミングができるモデルも用意されている。

フィッシャーテクニックエデュケーションは、ドイツ生まれのSTEM教材「フィッシャーテクニック」の体験デモを行っていた
タブレットを使ってフローチャートによるプログラミングが可能

G7プログラミングラーニングサミットでは4つのワークショップを実施

同時開催されたG7プログラミングラーニングサミットでは、あらかじめ申し込んだ人を対象とした4つのワークショップが実施された。ここでは、そのうちの2つのワークショップの様子を紹介する。

まずは、「Greenfoot」のワークショップである。Greenfootは、英・ケント大学のMicheal Kolling教授が開発した初心者向けのJava学習環境であり、プログラミングの重要な考え方であるオブジェクト指向の概念を理解しやすいように作られている。もともとは14歳以上を対象にしたものであり、小学生にはややハードルが高いが、ワークショップに参加した小学生達は熱心にGreenfootに取り組んでいた。

G7プログラミングラーニングサミットのワークショップは、開始時と終了時にそれぞれ受講者に問題を解かせ、ワークショップによって論理的思考力などが向上したかどうかをチェックすることが特徴であり、それによってプログラミングツールの効果を数値化することを目指している。

「Greenfoot」を使ったワークショップの様子
Greenfootは、Javaを学ぶためのプログラミング学習環境であり、やや高学年向けである
キーボードを使ってプログラミングを行う
ワークショップの開始時と終了時にそれぞれ問題を解かせ、ワークショップによって論理的思考力などが向上したかどうかをチェックする

また、教育用コンピューター「IchigoJam」を使ったワークショップも行われた。IchigoJamは日本生まれのコンピューターであり、IchigoJam BASICと呼ばれるBASIC言語を用いてプログラミングを行う。柏市の登録ボランティアの方がワークショップを手伝っており、子供達をサポートしていた。こちらも、キーボードからプログラムを入力する必要があるので、キーボードに慣れていない子供達はやや苦戦していたようだが、自分でゲームのプログラムを入力し、無事に動くと喜びの声を上げていた。

教育用コンピューター「IchigoJam」を使ったワークショップの様子
柏市のボランティアの方がワークショップを手伝っていた
IchigoJamでは、IchigoJam BASICと呼ばれるBASIC言語を使ってプログラミングを行う。これは何かボタンが押されたらLEDの点滅が終了するプログラム
先ほどのプログラムを実行したところ。IchigoJamの基板上のLEDが点滅する
最後はかわくだりゲームのプログラムを入力し、改造にもチャレンジしていた

この他、ビジュアルプログラミング言語「Alice3」と、アンプラグドツール「Cubetto」のワークショップも開催されていた。

BASICでカムプログラムロボットを動かすワークショップ

また、フジテレビKIDS主催の「P-kiesプログラミングワークショップ IchigoJamでカムロボを動かそう!」も人気を集めていた。こちらは、タミヤのカムプログラムロボットにIchigoJamを搭載した特別仕様のロボットを用いて、BASICによるプログラミングでロボットを操るというものだ。

このIchigoJam搭載カムプログラムロボットは、子供向けプログラミング事業を展開するナチュラルスタイルとタミヤが共同でカリキュラムを開発した「タミヤロボットスクール」のプログラミングコースで使われているものと同じである。タミヤロボットスクールは、2017年から全国で展開を開始しており、今回もそのカリキュラムの一部が使われていた。

ワークショップでは、乱数を用いて、ロボットとじゃんけんをするプログラムを作成した。ボタンを押すと、ロボットがランダムで向きを変え、そのロボットの向きでグー、チョキ、パーを示すというものだ。

フジテレビKIDS主催の「P-kiesプログラミングワークショップ IchigoJamでカムロボを動かそう!」の様子
IchigoJmaが搭載されたタミヤの「カムプログラムロボット」。BASICによるプログラミングで操ることができる
じゃんけんゲームのプログラム。ボタンを押すと、ロボットがランダムで向きを変える。ロボットの向きで、グー、チョキ、パーを示す
120度ずつ円を3等分したシートの上にロボットを置いて、じゃんけんゲームのプログラムを実行している様子

ショッピングモールのオープンスペースでのイベントということで、たまたま通りかかった親子連れも気軽に参加しており、みな楽しそうに取り組んでいたのが印象に残った。柏市は、全国に先駆けて積極的に子供へのプログラミング教育に取り組んでおり、今後もさまざまなプログラミング教育関連イベントを行っていきたいとのことだ。

石井英男

PC/IT系フリーライター。ノートPCやモバイル機器などのハードウェア系記事が得意。最近は3DプリンターやVR/AR、ドローンなどに関心を持ち、取材・執筆を行っている。小中学生の子どもを持つ父親として、子どもへのプログラミング教育やSTEM教育にも興味があり、CoderDojo守谷のメンターとして子どもたちにプログラミングを教えている。