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教育関係者の9割が「創造的問題解決能力」育成の重要性を認識も、研修やツール不足が足かせに――アドビ調査
2018年1月16日 06:00
アドビシステムズは2018年1月11日、日本の初等、中等、高等教育機関の教員と教育政策関係者を対象とした「学校現場における『創造的問題解決能力』育成に関する調査」を発表した。
本調査は、2017年10月に米国・英国・ドイツ・日本で実施されたもの。日本では、教員400人、教育政策関係者100人を対象に、オンラインで実施された。レポートでは、日本の結果を中心に、部分的に国際比較を行っている。
アドビは、本調査のテーマである「創造的問題解決」について、創造性に富んだ革新的な方法で問題や課題に取り組む手法だとして、「分析的思考と抽象的思考」、「コラボレーションとコミュニケーション」、「臨機応変な対処」、「デザイン」の4つのカテゴリーとスキルを「創造的問題解決能力」と定義している。
9割以上の教育関係者が「創造的問題解決能力」の重要性を認識
調査によると、「生徒や学生が創造的問題解決を学校で学ぶことは重要である」と考えている教員は93%、教育政策関係者は90%と、創造的問題解決を学ぶ重要性は、教育関係者に広く認識されている。また、「創造的問題解決能力が高い生徒は将来、高収入の仕事を得やすいと思う」と考える教員は72%、教育政策関係者は76%となった。
また、教育政策関係者の71%、教員の66%が「創造的問題解決能力を必要とされる職業は、人口知能(AI)などによる自動化の影響を受けにくいと思う」と考えている。
育成すべき創造的問題解決能力としては、「成功/失敗からの学習」や「自律的学習」が上位となり、加えて日本では「自己表現と他社との対話」が重要視されている。
現在の教育課程では創造的問題解決能力が重視されていない
一方で、教育政策関係者の53%、教員の49%が、「現在の教育課程では、創造的問題解決能力の育成があまり重視されていない」と考えているようだ。時間のなさや数値的評価が難しいことが理由としてあげられている。
また、教育政策関係者の63%、教員の74%が、創造的問題解決能力の育成は教科横断的に導入すべきだと感じている。しかし、創造的問題解決能力のアプローチ法が現在の学校のカリキュラムにおいて頻繁に使われていると感じているのは教育政策関係者の10%、教員の8%にすぎないという。
教員の時間のなさ、研修不足、ツールの不足などが妨げに
創造的問題解決能力の育成を妨げる要因としては、「創造的に考える、行動する、制作するという時間がない」が72%、「教員に対するソフトウェアに関する研修の機会が不足している」が69%、「授業で使用できるソフトウェアの不足」と「授業で使用できるハードウェア/機器類の不足」がともに67%となり、時間の不足や教員に対する研修の不足、ツールへのアクセス不足などの現状が浮き彫りになった。
ツールや研修、知識習得の機会が十分でないと感じている教員は、米国・英国・ドイツでは5割前後であるのに、日本では7~8割と、他国と比べて多い。
また、「授業で使えるソフトウェアやツールが全くない教員」の割合は、米国の3%、英国の5%、ドイツの15%に比べて、日本は40%と圧倒的に高い。
「創造的問題解決能力の育成を授業に取り入れる方法の検討が必要である」と考えている教育政策関係者は87%、教員は84%に、「教育課程の改定の検討が必要である」と考える教育政策関係者は90%、教員は82%にのぼった。
また、現場の教員が、創造的問題解決能力を育成できる学校現場作りのために影響力があると思うものについては、「学校/教育機関の経営陣」が66%、「国」が64%、「大学入試」が48%、「都道府県」が43%と、学校経営陣や国・都道府県による改革や、大学入試制度の改革などが期待されている結果となった。