こどもとIT
氷山を復活させ海面上昇を防ぐロボットで世界に挑戦
WRO 2017コスタリカ国際大会オープンカテゴリー出場チームインタビュー
2017年11月27日 11:47
前回までは、WRO 2017コスタリカ国際大会のオープンカテゴリーに出場する高校生チーム、中学生チームを紹介した。今回は、小学生として国際大会のオープンカテゴリーに出場したチームを紹介する。
チーム名は「Frozen Blizzard」、メンバーは、別々の小学校に通う片岡嗣葉君(世田谷区立中丸小学校、4年生)と、小助川晴大君(横浜国立大学教育学部付属横浜小学校、3年生)の2人のチームである。2年連続でWRO日本決勝大会に出場している片岡君が、昨年までのパートナーが今年から中学生になってしまい、新しくメンバーを探したのがきっかけであったという。片岡君が通っている「ITものづくり塾」の校舎には組むことができるパートナーが見つからず、横浜の校舎に通う小助川君とチームを結成した。小助川君は今回のWROが初挑戦であり、いきなりの国際大会出場となった。
この2人、同じ目線の子ども同士がペアを組んだので、良いライバル関係が生まれたようである。喧嘩しつつも、仲よく互いを高めることができた。急造チームであるが、ほぼ毎日のように共同作業をしたため、今では息がピッタリである。
この小学生チームが開発したロボットは、地球温暖化による氷山の溶解によって引き起こる海面上昇をくいとめるためのロボットである。外国の小さな島が海面上昇によって生活が困難になっている様子はニュースなどで見たことがあった。これは対岸の火事ではなく、東京にも危機が迫っているという。この課題を解決するために、氷山に水を吹きかけ、溶けた水を氷山に戻す自立型ロボットを開発した。
このロボットは、3つのロボットから構成され、Bluetoothで通信し連携動作する。探査ロボ(Patrolling Robot)、水くみ上げロボ(Pumping Robot)、噴射ロボ(Freezing & Delivery Robot)が、それぞれ連携することで氷山を復活させる。こだわりポイントは、実際に氷山に弾を吹き付ける演出だという。
ポンプのハードウェアは、レゴの規格ではない部品をつかって実現している。ポンプの部品が円形であり、レゴのパーツに固定するのが大変苦労したそうだ。ソフトウェア的にはBluetooth接続によって3台のロボットが連携する仕組みをつくり、氷山の探査から氷の噴射まで自律・自動運転を実現している。WRO日本決勝大会では、プレゼンテーションの最初から最後までを自動でリレーするソフトウェアをつくったが、WRO国際大会では、さらにそれをループさせ、ずっと動き続けるプログラミングにチャレンジしている。
WRO日本決勝大会当日、審査員へのプレゼンテーションではノーミスでロボットが演技をしていたが、実は直前まで細かなミスが続いており、とても不安であったという。点検の抜け漏れが多く、何度も同じミスの繰り返しだった。しかし、着実にミスしやすいポイントを再確認し、2人で点検することを覚えていったおかげで、本番の成功につながったようである。このように、プレゼンテーションは本人たちも上手にできたと満足していたが、そこはまだ小学校3年生と4年生、質疑応答は難しかったと語っていた。
片岡君にとっては3度目の正直がついにかなった大会であり、はじめての英語プレゼンテーションと質疑応答に四苦八苦しながらも、毎日録音した英語をヒアリング、シャドウイングし練習してきた。2人は、世界各国から国際大会に来場する沢山の人にプレゼンテーションを聞いてもらいたいと意気込んでいた。こうして手にした結果は、堂々の国際大会7位入賞である。
以上で、WRO 2017コスタリカ国際大会のオープンカテゴリーに日本代表として出場する3チームの紹介は終了となる。オープンカテゴリーは、企画力とプレゼンテーション力が求められる競技である。日本人が苦手といわれる領域でのチャレンジは、これから社会にでる子どもたちにとって必ず有意義なものであると信じている。