アニメのステッカーを貼った「痛車」が登場しはじめてから10年近くになろうとしている。全国各地で開催されるアニメ関係のイベントでは、会場近辺の駐車場に痛車が集まり、それを見に来るギャラリーが駐車場に集まるという負のスパイラルが発生している。
またすでにアニメの広告として公共交通機関のバスや電車などがアニメの絵でラッピングされた痛バスや痛電(電車)なども登場し、通勤で乗車をはばかられた乗客も多い。さらに昨年は、とあるアニメの舞台となった浜松で、アニメのラッピングを施したタクシーまで現れ、ほぼ予約配車しないと乗れないというほど人気を博していた。
これまで大手エアラインは痛車とは一線を隠した「マリリンジャンボ」や「出銭ー」「パチモン」といったスペシャルマーキング機を飛ばし人気を博していた。しかし今回参入を表明したLCCは、大手とは異なり、健全そうに見えつつも不健全な香のするアニメの女の子をモチーフにした航空機、通称「痛ジェット」を就航させるということだ。LCCにとってはアニメの舞台となっている「聖地」の地方自治体からの袖の下と、機体に掲載する広告やグッズの物販で、航空運賃以外での収入を得る構えだ。
痛ジェットで最大の課題となっていたのは、FAA(アメリカ連邦航空局)の勧告により保安上の問題から航空機は塗料でペイントするとことなっていたことだ。しかし強力に張り付くのに再はく離可能で、曲面にも密着するステッカーを帝入とLCC共同体が合同で開発。エソプンの超大型インクジェットプリンタで印刷したもので機体や主翼をラッピングする。また最も広告の見込まれる尾翼部分は、視野角の広い薄型IPS液晶パネルを埋め込み動画再生を行えるほか、数社の広告を切り換えて表示できるという。
利用者側からすると、この手のスペシャルマーキング機は、乗ってしまうとフツーの飛行機と揶揄されていたが、LCC各社はキャビンアテンダント全員がコスプレをして機内サービスを行うほか、フィギュアをはじめとしたオリジナルグッズの販売なども販売することで、旅客の士気を高めるとしている。とあるLCCの広報によれば、飛行前に避難経路などを説明するエマージェンシーデモもすべてアニメ化し、OVA(テレビ放映せず販売のみのアニメーション)全26話として販売を予定しているとこのことだ。
一方痛ジェットの広告代理店業務を一手に引き受ける電痛によると、アニメ会社だけでなく美少女ゲームメーカーの掲載依頼も多く、すでに1年先まで予約が埋まっているという。ただアニメに比べ美少女ゲーム会社は広告宣伝費に限りがあるため、スポーツ新聞の3行広告のような各社共同広告を予定しているとのこと。
さらに格安航空券の大手販売店H.I.P.Sは、すでに夏のコミックマーケット(同人誌即売会)に向けて、独自のプランを用意している。全国各地からのコミックマーケット便は羽田空港に朝3時に到着、タラップから降りてそのまま東京ビッグサイト行きのバスで会場まで直通運行。旅客は入場待機列に並ぶが、朝食の差し入れサービスをはじめ、トイレに行く際の交代要員も用意するという徹底ぶりだ。また帰りの便では、東京ビッグサイトに特設チェックインカウンターを設けて、トランクいっぱいに詰め込んだ同人誌やグッズなどの戦利品で預かり荷物としてチェックイン。会場から目的空港まで手ぶらで移動できるだけでなく、花火開催日と当たった場合でも周辺地区の交通渋滞が起きても、チェックインした旅客を待っての出発となる。このようなサービスがマニアに受けてか、コミケ開催中の主要都市から羽田発着便はすでに満席となっているという。
しかし就航前から一部団体などからは、エアラインの記載がない航空機は運行や旅客のアナウンスに支障が出るという運行・管理上の問題や、都の青少年保護育成条例に抵触するデザインにならないかという声があがっている。専門家はこれについて「アニメファンは役所などにも数多く潜んでいるので、イザとなればうやむやにできる。デザインについても“水着”だと言い張ればどうにでもなる」とコメントしている。
またこれに触発されたかどうは定かでないが、国際海洋航路を運行する有線クルーズも同社の「惣流・飛鳥II・ラングレー」号にアニメラッピングを行った「痛船」就航を示唆している。詳細は未定だが「航空機より大きな船体をラッピングすることで、より作品をアピールできるだけでなく、国際航路に就航させるのでインターナショナルな展開を狙うアニメビジネスにうってつけ」と痛船準備企画室担当者は鼻息を荒くしていた。就航日などは未定だが、第1弾は美少女ゲームメーカーNull Pointerの「School Times」のラッピングが施され、放送中止の聖地となったフィヨルドをNice boat.する見込みだ。されにオプションでは、スポーツバッグの中に頭のようなものを入れた単独ヨットクルーズも用意するとの噂もある。
(2012年4月1日)
[萌え Watch編集部]
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