ゲーム用のPC選びはここに注目せよ!
普通のPCと“ゲーミングPC”の違いを全方位で解説

(2013年3月 4日)

 オンラインゲームで新規ユーザーが最も増えるタイミングは、新生活の始まる4月だそうだ。新生活を始めるにあたって、今まで遊べなかったハイクオリティな3Dゲームを遊ぶために、高性能なPCを購入しようという人はかなり多い。

 しかしここに1つ、落とし穴がある。ゲームを遊ぶための“高性能なPC”とは何か、という質問に答えられるかどうかだ。ショップに行って、予算が許す範囲で一番高いものを買えばいいのか? それとも発売されたばかりの最新モデルがいいのか? そこが曖昧だと、せっかく高いお金を払って買ったPCなのに、ゲームを快適に遊べないということにもなりかねない。

 その答えとして、“ゲーミングPC”と呼ばれる商品がある。名前のとおり、ゲームを遊ぶために作られたPCだ。ゲーミングPCは普通のPCとどこが違うのか。そしてゲームを遊ぶのに適したPCとは何か。今回はそれらをご説明したい。

ゲーム向けPCの大黒柱はビデオカード!

PCゲームの快適さは、3Dの描画性能で決まる。ビデオカードは最重要項目だ(写真は「ZOTAC GeForce GTX 660 AMP! Edition」)

 まず最初に、PCでゲームを遊ぶのと、Webブラウジングや動画鑑賞、オフィスソフトの利用といった一般用途とでは、明確に異なる点が1つあるということを知っていただきたい。それは、ゲームでは3Dグラフィックス機能が多用されるということだ。

 多くのPCゲームは3Dグラフィックスを使用している。多数のプレーヤーが登場するMMOタイプのゲームや、激しく素早い動きが求められるアクションゲームでは、3Dの描画性能が低いと、映像がカクカクしたコマ送りのようになってしまう。ゲーム側の設定で3Dの画質を下げることで改善できることもあるが、今度はグラフィックスが貧相に見えてしまう。

 PCはコンソールゲーム機のように一様な性能ではないので、3Dの描画性能が低いPCでは、このような問題が起きてしまう。そうならないようにするには、3Dの描画性能が高いPCを選べばいい。そしてPCにおいて、3Dの描画性能を司るパーツは、ビデオカードだ。

 ゲーミングPCと一般向けのPCの違いは、このビデオカードにある。一般的に高性能なPCというと、処理が高速なCPUや、大容量のHDDといった辺りに注目される。しかしゲーム用途に限れば、3D描画を担当するビデオカードこそが最も重要なパーツとなる。ここを見誤ると、“高いPCなのにゲームは不快”ということになりかねない。

 PCのバランスとして、ビデオカードを高性能なものにすればするほど、ゲーム向けに寄る、と言って差し支えない。PCの購入予算が決まっているなら、ゲームを遊ぶ割合が高いほどビデオカードに割く予算割合を上げる(高性能なビデオカードを選ぶ)という考え方でいれば間違いない。

 ビデオカードの性能は、基本的に搭載されているチップによって決まる。GeForceやRadeonといったブランド名に続いてモデルナンバーが付けられているので、購入を考えているPCに搭載されているビデオカードのチップを確認し、性能を参照していただきたい。性能に関してざっくり言うと、同じチップを搭載した単体ビデオカード製品のその時点での価格が、性能とおよそ比例している。

 最近のPCでは、CPUに内蔵されたグラフィックス機能を使っているものも多い。一般用途ならば概ね事足りるが、3D描画性能は単体のビデオカードよりも劣るものが多い。ゲームを遊ぶつもりなら、別途ビデオカードを搭載したPCを選ぶことを前提にした方がいいだろう。

 ちなみにデスクトップPCであれば、大抵は後からビデオカードを追加することも可能だ。ノートPCの場合はほぼ不可能なので、購入時には特に搭載されているチップをよく確認することをおすすめする。

ゲーミングPCに求められるPCパーツは?

ゲーム用途には特に有効なSSD。かなり安価になってきたので積極的に使ってほしい(写真は「PLDS PX-128M3P」)

 ゲーミングPCにおいてビデオカード以外のパーツとなると、詳しい人でも意見が分かれるところだ。私としては、SSDの利用を強く推したい。SSDを一度使った人は、「もうHDDの環境には戻れない」と口をそろえて言うほどの劇的な変化を味わえる。

 SSDはHDDに比べて、データの読み書きが格段に早い。最大の利点はPCの起動時間の短縮だ。ゲームを遊びたいと思ってPCの電源を入れてから、起動するまで長く待たされるというのは、ゲーム機として考えれば大きな弱点。またゲーム中に発生するデータの読み込み時間も大幅に短縮できるなど、はっきり体感できるメリットがある。

 SSDの弱点は、HDDよりも容量が小さい(容量に対する価格が高い)という点。これもゲーム用に限って考えると、OSとよく遊ぶゲームを入れるだけなら、せいぜい数十GBで収まる。小容量なSSDだけでも、ゲーム専用機と割り切れば十分に使える。それ以外のデータや時々使うソフトは、別途HDDを組み込んでそちらに入れておく、という使い分けができれば、どんな環境においてもリーズナブルにSSDを導入できる。

 それ以外のパーツについても見ていく。CPUは最近のゲームにおいては、ビデオカードほど大きな影響は与えない。ただ高性能なものほどゲームも快適になるのは確かだし、ゲーム以外の用途が増えるならその分だけ重要度が増す。ゲーム専用機として考えるなら、CPUは安いものを選び、予算をビデオカードに回すのがいい。ビデオカードとのバランスで考えていただきたい。

 メインメモリについては、実はそれほど大容量でなくても構わない。ゲームを遊ぶ時は大抵の場合、ゲームだけが動いているはずなので、ゲーム中にメモリ不足に陥らない程度にあれば不都合はない。どちらかというと量より質が大切で、ゲーム中の発熱や経年劣化によるエラーで、ゲームが強制終了するといったトラブルのほうが不安。快適に遊び続けたいなら、素性の知れない激安品は避けた方がいいだろう。

 もう1つ、ゲーミングPCにおいて気になるのが、騒音だ。ビデオカードやCPUは、使用中に熱を発するため、ヒートシンクやファンが取り付けられている。この発熱は高性能な製品ほど多くなるため、熱を逃がすファンも高回転になり、風切り音も大きくなる。また発生した熱をケースの外に出すため、ゲーミングPC向けのケースは排気口が大きく取られているものがある。この方がPCは安定動作するものの、内部の騒音はどうしても漏れやすくなる。

 PCは高性能になればなるほど騒音も大きくなるという、トレードオフの関係にある。ただ市販のPCの中には、性能を保ちつつも騒音対策を施したことを売りにしている製品もある。なるべく静かなPCでゲームに集中したい、家族に迷惑をかけないようにしたいといった人は、そういった製品も検討するといいだろう。

こだわって選びたいゲーミングデバイス

快適なゲームプレイには、高品質なデバイスも重要になる(写真は「ロジクール ゲーミングマウス G300」)

 ゲーミングPCにおいては、PC本体だけでなく、周辺機器も重要になってくる。デバイスの性能の違いがゲームの実力差でないことを見せてやりたいところだが、残念ながらここには埋められない差が存在するので、いくつか紹介しておきたい。

 まずはマウス。ゲーミングPCと同様に“ゲーミングマウス”として売られている製品がある。ゲーミングマウスの特徴は、高感度なセンサーを搭載していることと、細かな設定ができること。高感度なセンサーは不要という人もいるが、ゲーミングマウスは感度の切り替えが可能なので、好みにチューニングできるのが利点だ。

 設定においては、マウスのボタンにキーボードなどの操作を記憶させ、ワンタッチで使えるマクロ機能を持つものもある。特定の操作を頻繁に使うゲームではとても便利な機能だ(オンラインゲームでは使用を禁じているものもあるので注意)。他にもスイッチなどに高耐久な部品を使っているものが多いため、長持ちしやすい。価格は数千円から1万円強と比較的高めになるが、耐久性を考えるとお得なこともある。

 次にキーボード。ゲームの操作にキーボードを使うゲームには言うまでもなく重要だが、オンラインゲームではチャットも非常に多くなるので、キーボードにこだわる理由は多い。こちらも“ゲーミングキーボード”が存在し、マウスと同様のマクロ機能を専用キーで搭載した高機能なものがある。

 またキースイッチにこだわった製品もある。「茶軸」、「青軸」といった名前が書かれているものは、独「Cherry」製のキースイッチを採用したもので、高耐久性が売り。また東プレ製の静電容量無接点方式のキースイッチを採用したものも耐久性が高く人気が高い。価格は数千円から2万円強と、一般的なキーボードからするとかなり高価だが、キーがひっかかるような不快な故障も激減し、長く使えるメリットがある。

モニターは、低遅延をうたうモデルを選びたい(写真は「三菱電機 Diamondcrysta WIDE RDT234WX(BK)/RDT234WX-S(BK)」)

 そして重要なのがモニターだ。液晶モニターはその仕組み上、映像が表示されるまでに遅延が発生する。1/100秒単位の遅れではあるが、一瞬の遅れが命取りになる対戦ゲームにおいては不利を生む要素となる。

 液晶モニターの遅延は、液晶パネルの表示による遅延と、液晶モニターの内部での高画質化処理などによる遅延の2つがある。前者はスペックに書かれていることが多いものの、後者はほとんど明かされていない(というより調べられていない)。この点については、内部処理も含めて低遅延をうたうゲーミングモデルのモニターがあるので、それを選ぶのが無難だ。

 モニターはどんな使用環境であれ常に見ているものだし、普通はPC本体より長く使うことになる。ゲーミングPCの環境にこだわるのであれば、良質なモニターを選ぶのはとても重要だ。

“ゲーム推奨PC”を選ぶ利点

特定のゲームで動作確認が取られたゲーム推奨PCも売られている(写真は「フェイス DmC Devil May Cry 推奨パソコン」)

 ゲーミングPCを選ぶ上でのポイントを語ってきたが、ここでもう1つのカテゴリを紹介したい。特定のゲームの名前を冠した“ゲーム推奨PC”だ。PCそのものは、ビデオカードにも気を配ったゲーミングPCがベースになっているが、それに加えて3つの利点がある。

 まず1つ目に、推奨されたゲームの動作が保証されていること。スペックが十分なPCでも、ドライバとの相性などでゲームが正常に動かないということは稀にある。特に最新のパーツを使ったPCだと、ドライバ周りの未整備や、ゲーム側での検証不足により、不具合が発生することがある。推奨PCであれば、そのゲームの動作テストが行なわれた製品なので間違いない。

 2つ目は、そのゲームを快適に遊べるということ。求められるPCのスペックはゲームごとに異なるが、ゲーム推奨PCはゲームプレイに十分な性能があることが確認されているので、一定の快適さが保証されている。ただし推奨PCにも性能に幅があり、どこまで快適に動くかはスペック次第。それでも、あまりPCに詳しくない人が購入する際には安心できる。

 3つ目は、特典がついている場合があること。そのゲームのPC用壁紙データなどのアクセサリもあれば、オンラインゲームではゲーム内アイテムが付属するものもある。アイテムだけで数千円相当になるものもあるので、特定のゲームを遊ぶ前提なら、かなりお得になるものもある。

 ゲーム推奨PCは先述のとおり、ゲーミングPCをベースにしているので、BTOでカスタマイズできるものも多い。カスタマイズしてもゲームの動作保証がなくなるわけではないので、選べる範囲でビデオカードを強化したりSSDを追加したりもできる。特定のゲームを遊ぶ前提ならこの点も踏まえて、ゲーム推奨PCも選択肢に入れておくといいだろう。

新生活にはゲーミングPCで快適なゲームライフを!

 今回の話をまとめると、「ゲーム用PCで一番大事なのはビデオカード」、「より快適さを求めるならSSDも」、「長く使うデバイスにはこだわりを」、「ゲーム推奨PCもお忘れなく」といったところ。

 せっかくの新生活に、店でPCの値段を見て何となくで買って、後で後悔するのは避けたいところ。ポイントを押さえて自分に合ったゲーミングPCを選び、ぜひとも快適なゲームライフを始めてほしい。

(石田賀津男)