高速モバイル通信+VoIPアプリで
「好きなだけ無料通話」を実現しよう
1家に1台という存在だった固定電話に対し、「1人に1台」が当たり前となった携帯電話の普及により、電話というコミュニケーションは非常に身近な存在となった。最近ではスマートフォンをはじめとするモバイルデバイス、そして高速モバイル通信の普及により、新たな電話のスタイルが確立されつつある。それがVoIPアプリだ。今回は、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスで利用可能なVoIPアプリの魅力を紹介する。
音声をデータでやり取りする「VoIP」
「VoIP」とは、「Voice Over Internet Protocol」の略で、インターネットで標準的に用いられているIP(Internet Protocol)を利用することで、音声をデータとして処理し、パケットとしてネットワークで伝送する技術のこと。
その「VoIP」を用いて、IP上での「通話」を実現するのがVoIPサービスであり、VoIPサービスをPCやスマートフォン、タブレットで利用するためのアプリが「VoIPアプリ」だ。
固定電話や携帯電話の場合、電話専用のネットワークで通話するため、電話を使うときは時間単位での料金が発生する。携帯電話キャリアの場合、同じキャリア同士であれば通話料が無料になるプランを提供しているが、他のキャリアに通話する場合には通話料金が必要。どこへ通話しても定額となるプランを提供しているウィルコムの場合でも、通話は1回10分まで、回数は月500回までの制限が設けられている。
一方、VoIPアプリの場合、音声のやり取りはメールや画像ファイルと同じデータとして扱われる。同一事業者のVoIPアプリ同士で通話する場合は通話料金が無料になる場合が多く、料金を節約できるのがユーザーにとっての最大のメリットだ。
IPで音声をやりとりするため、生じたデータ通信はパケット通信として課金対象となるものの、自宅の光ファイバーや携帯電話キャリアのパケット定額プランに加入していれば、通話時間を気にすることなく通話できる。
通常の電話と比べて多機能なのもVoIPアプリの魅力。電話のような単なる音声のやりとりだけでなく、通話しながらテキストチャットを行なったり、カメラを使ってビデオチャットを楽しんだりすることもできる。携帯電話でもテレビ電話サービスは提供されていたが、画質がさほど高くなかったり、通話料金が非常に高かったためにあまり普及はしなかった。VoIPアプリであれば料金を気にすることなく、高品質のビデオチャットを楽しめるなど、今までの電話とは違った音声コミュニケーションを体験できる。
主要なVoIPアプリを紹介
では、現在よく使われている代表的なVoIPアプリを紹介していこう。
その前に基本的な部分として、VoIPアプリは大きく2つの種類があることを知っておこう。1つは050電話番号を持ち、携帯電話や固定電話とも通話できるVoIPアプリで、一般的に「IP電話」と呼ばれるサービス。同じアプリ間であれば無料で通話でき、電話番号を使えば固定電話や携帯電話へ格安料金で通話できる。ただし、050電話番号を得るには所定の料金が必要なため、維持費が発生する。
もう1つは、固有の電話番号を持たず、通話は同一アプリ間でのみ可能なタイプのアプリ。基本料金が完全無料のサービスが多い。固定電話や携帯電話とは通話できないが、同じアプリの利用者同士は無料で通話できるだけでなく、ビデオチャットや複数人数でのグループ通話といった様々な機能が利用できるのが特徴だ。
また、基本料金は無料で電話番号がオプションであるSkypeのように、両者の特徴をあわせもつサービスもある。
ユーザー同士は無料で通話できるチャット的アプリ
手軽なのは、やはり月額の維持費なしで無料で始められる、電話番号なしのアプリ。中でもおすすめなのが、すでに国内で4000万人以上ものユーザーを抱えるLINE株式会社の「LINE」だ。
スタンプを使ったテキストチャットや、「LINE POP」といったゲームアプリが人気のLINEだが、ユーザー同士であれば無料で通話できる。通話アプリは相手が同じアプリを利用している必要があるが、スマートフォンユーザーの実に9割が利用しているとも言われるLINEであれば、相手もLINEを使っている可能性が高く、無料通話を始めやすい環境にあると言える。
- ■無料通話・メールアプリ LINE(ライン)
- http://line.naver.jp/ja/
LINEは電話と同様に1対1でしか通話できないが、複数の人数で同時に通話できるグループ通話を備えているのがカカオジャパンの「カカオトーク」だ。LINE同様スタンプを使ったテキストチャットに加え、最大5人まで同時に通話を楽しむことができる。
- ■カカオトーク - KakaoTalk
- http://www.kakao.co.jp/
LINEとカカオトークに対し、後発ながら注目の存在がDeNAの「comm」。こちらもLINEやカカオトークと同様スタンプを使ったテキストチャットに加えて通話機能を備えており、音質の高さに注力している点が特徴だ。また、同じアプリ同士のテキストチャットだけでなく、アプリからメールを送ることができるなど、アプリを利用していないユーザーとのコミュニケーションも配慮されている。
- ■comm(コム)/もっとつながる、高音質な無料通話アプリ
- https://ssl.co-mm.com/pc/
チャット機能や無料通話、電話機能など多彩な機能を備えた「Skype」
無料の通話アプリは非常に便利だが、固定電話や携帯電話に電話したい時もあるだろう。そうした時に役に立つのが電話機能も備えたVoIPアプリだ。
マイクロソフトのSkypeは、基本料金無料ながらオプションで普通の電話との通話も可能なアプリ。テキストチャット機能、Skype同士の無料通話機能に加えて、通常の電話番号との電話機能もオプションで搭載している。
無料通話アプリとしても機能が充実しており、スマートフォン同士だけでなくパソコンとも通話が可能。カメラ搭載のスマートフォンやパソコンであればビデオチャットも楽しめるほか、有料オプションながら複数人で無料通話や音声通話を楽しむこともできる。
電話機能については、Skypeクレジットを購入することで利用できる。Skypeクレジットを購入してアカウントにチャージしておけば、国内の固定電話へ1分3.22円で電話できる。(1回の通話につき接続料金として9.90円が追加で必要)。スマートフォンの通話料金として主流になっている、30秒あたり21円と比較すると、大幅に通話料金を下げることができる。国際電話の場合は、たとえば米国や中国なら1分2.66円+接続料金5.9円で、1時間通話しても166円。「月額プラン」に加入すればさらに安くなるほか、接続料金も不要となる。
SkypeクレジットはSkype公式サイトでは1500円単位で購入できるが、公式サイト以外から、より細かい単位で買うこともできる。たとえば、@nifty経由なら500円分から手軽に購入することが可能だ。
電話をかけるだけでなく、050で始まる電話番号「Skype番号」を契約することで着信を受けることも可能になる。Skype番号の料金は3カ月の月額プラン2,250円から。1年契約プランは7,500円だが、別途「月額プラン」に加入していれば3,750円となり、1カ月あたり312.5円で番号を維持することができる。
- ■無料のSkypeインターネット通話と電話への格安オンライン通話 - Skype
- http://www.skype.com/ja/
- ■@nifty & Skype
- http://skype.nifty.com/
050番号で発着信できる「050 plus」
無料通話やビデオチャット、固定電話や携帯電話への通話など多彩な機能を持つSkypeだが、電話機能については発信時に番号通知できないという課題もある。
番号通知といった電話機能を重視するのであれば、NTTコミュニケーションズの「050 plus」がおすすめだ。月額315円を支払うことでSkypeと同様050番号が取得できるが、Skypeと異なり050番号を使って発信できるため、不在時に電話番号を残せたり、相手が電話帳に登録しておけば名前も表示される。
通話料金は固定電話が3分8.4円、携帯電話は1分16.8円と格安で通話可能。また、050 plusユーザー同士や、NTTコミュニケーションズの固定電話向けIP電話サービス「ONCドットフォン」などであれば無料での通話も可能。通常の電話に近い使い方をするなら、050 plusがおすすめだ。
- ■スマートフォン向け無料通話アプリ・IP電話なら050 plus
- http://050plus.com/pc/index.html
通話時間の長いユーザーはデータ使用量に注意
スマートフォンからも携帯電話感覚で利用でき、ユーザー同士の通話料は無料、携帯電話や固定電話へも格安へ電話できるなど魅力の多いVoIPアプリ。ただし気をつけなければいけないのが、通信時のデータ使用量だ。
最近主流となっているLTEを利用したスマートフォンは、1カ月に利用できるデータ容量に上限が定められているプランが主流となっている。詳細は別記事を参照して欲しいが、多くのプランは月内は7GBを上限とし、上限を超えた場合は通信速度が128kbpsに下がる。128kbpsだとVoIPによる通話に支障をきたすおそれがあるが、追加料金を支払うことで高速通信可能なデータ容量を増やすことは可能になっている。
VoIPアプリの通話料金は無料または格安ではあるものの、通話に必要なデータはWebサイトの閲覧やメッセージの送受信よりも大きい。たとえばSkypeの場合、Skype同士の電話は1分間で3MBのデータを使用する。スマートフォンの電話機能を使えば通話料金は必要なもののこうしたデータ使用料が発生しないのに対し、VoIPアプリを積極的に使う場合は通話がすべてデータ容量として加算されることになる。
普段あまり電話を使わないユーザーであればさほど気にならない程度の数値ではあるが、毎日長時間に渡って通話するユーザーであれば、スマートフォンのデータ通信とあわせて月内のデータ通信量上限に達してしまう可能性もある。電話の場合は着信であれば通話料金自体は発生しないのに対し、VoIPではデータ通信が行なわれるため、着信数が多ければ同様に上限を気にする必要がある。
根本的な対策として、そもそもこうした容量制限のないサービスを利用するという手がある。NTTドコモやau、ソフトバンクモバイルなどのキャリアで利用しているLTEはほぼすべて上限が設けられているが、WiMAXの場合は上限が設けられていないため、データ容量の制限を気にせず利用できる。パソコンで通信するとスマートフォンよりもデータを多く消費するが、上限がそもそも存在しないWiMAXであればパソコンでも安心して利用できるため、一人暮らしなどの場合はUQ WiMAXを自宅のブロードバンド回線として使うこともできる。
パソコンとも通話できるVoIPアプリ
VoIPアプリはスマートフォンだけでなくパソコンでも利用可能だ。Skypeはもともとパソコン向けに展開されていたアプリということもあり、パソコンで利用する機能も充実している。また、LINEもパソコン向けにアプリを提供しており、テキストチャットだけでなく音声通話もパソコンから利用可能だ。
自宅に光ファイバやADSLといった固定のブロードバンド回線があれば、あるいはWiMAXを自宅回線として利用していれば、データ容量を気にせず好きなだけ通話を楽しむことができる。また、スマートフォンよりもスペックが高いパソコンであれば、高画質のビデオチャットを楽しむことも可能だ。
ただし、そもそも通話機能を備えているスマートフォンと異なり、パソコンでVoIPアプリを利用する場合はマイク機能を備えているかの確認が必要。また、ビデオチャットを利用するためにはWebカメラも必要になる。ノートパソコンであればマイクやWebカメラを備えていることも多いが、標準のマイクでは音をうまく拾えず声が聞こえにくい場合もある。VoIPを積極的に利用するのであれば、外付けのマイクやカメラの利用も検討したい。
音声もビデオチャットも利用したいという場合、おすすめなのはWebカメラ。Webカメラは基本的にマイクを内蔵しており、パソコンに標準搭載しているマイクよりも性能が高いため、音声メインでも十分に利用できる。最近ではHD画質の高性能Webカメラも値段が下がっており、数千円程度で購入が可能だ。ビデオチャットの画質は自分だけでなく相手側にも影響する要素のため、利用頻度が高いのであれば購入しておくといいだろう。
最近のノートPCや一体型デスクトップPCならたいていWebカメラが装備されている | もしPCにWebカメラがついていない場合は、別途購入すればよい。写真は「Logicool C270」で、実勢価格は1200円ほど |
ビデオチャットは使わず音声メインという場合はヘッドセットがおすすめだ。音声に特化している分、ノイズキャンセリングなど音声品質を高める機能も搭載しており、ヘッドフォンで音を聴くことでより音声に集中できる。こちらも数千円程度で十分品質の高いヘッドセットが購入可能だ。
マイクにノイズキャンセリング機能を搭載した「ゼンハイザーコミュニケーションズ PC 131 500912」。実勢価格3500円ほど | ワイヤレスタイプなら長時間の通話も快適。こちらはBluetoothでワイヤレス対応の「プラネックス BT-07HS-EZ」。Bluetoothならたいていのスマートフォンやタブレットにも使用できる |
VoIPアプリの活用で電話がより便利に
長電話すると通話料金が高くなる、という常識を一変させたVoIPアプリ。通話料を気にせず好きなだけ電話できるだけでなく、ビデオチャットで相手を見ながら話したり、複数の人数で同時に話したりと、単に安いだけではなく今までの電話にはできなかった電話の新しい使い方が可能になる。
利用頻度が高ければデータ使用量も増えてしまうが、上限内であれば定額であることは変わりないため、月のデータ使用量を確認しながら使えばいい。また、そうした制限を気にせず使いたいのであればWiMAXが有力となる。自分の使い方に合ったVoIPアプリとモバイル通信サービスを探してみるとよいだろう。
(甲斐祐樹)