WiMAXモバイルルーター買うならどっち!?
「AtermWM3800R」と「URoad-Aero」を用途で選ぶ
新生活にあると便利なWiMAXモバイルルーター
スマートフォンのテザリングではバッテリーが不安。家でも、外出先でも、バッテリーや速度を気にすることなく、手軽に使えるネット回線が欲しい・・・・・・。そんな人に、ぜひ検討してみて欲しいのが「WiMAX」だ。
LTE対応のスマートフォンなど、最近では高速な回線をテザリングで使える製品が増えてきたが、一時的に使うには不満はないものの、学校の授業が何コマも続いたり、外回りの仕事で外出が続いたりすると、バッテリーの消費が激しく、長時間の利用には適していない。
必要に迫られ、何時間もPCやタブレットの通信回線として利用したおかげで、バッテリーを多く消費し、スマートフォン本体でメールを受信したり、電話できなくなってしまっては、それこそ本末転倒だろう。
そんな中、注目を集めているのが、WiMAXを利用するモバイルルーターだ。モバイル向けの高速通信環境の元祖であるWiMAXは、通信速度こそ下り最大40Mbps/上り最大15.4Mbpsと、今では大きなアドバンテージはなくなってしまったものの、通信容量や通信可能なポートに制限がないなど自由度が高いうえ、地下鉄など通信可能なエリアも着実に広げてきた。
そして、何より、通信に使う端末を格段に進化させてきた。WiMAXでは、実用性に直結するモバイルルーター端末の軽量化、小型化、長時間駆動化を大幅に進めてきたことで、現在では、名刺程度のコンパクトなサイズでありながら、8~12時間の連続通信が可能な製品も入手できるようになっている。これなら、何時間も学校で過ごしたり、会社に戻ることなく長時間外出しても、バッテリーを気にせず通信ができるというわけだ。
中でも、NECアクセステクニカの「AtermWM3800R」とシンセイコーポレーションの「URoad-Aero」は、このような進化が著しいWiMAXモバイルルーターの中でも筆頭格とも言える存在だ。どちらもそれぞれに他に負けない特長を備えた高い完成度で、甲乙付けがたい製品となっている。
どのような用途で、どちらを選べばいいのか、利用シーンを考えながら具体的に検討していこう。
持ち運びに便利なのはどっち?
まずは携帯性を比べてみよう。同じ持ち歩くとしても、どこに入れるかによって、選び方が変わってくる。
たとえば、カバンに入れる場合を考えてみよう。無造作にカバンの中に入れるとすれば、AtermWM3800Rのコンパクトさは魅力だ。名刺よりもわずかに小さい幅89.6×奥行き52×高さ12.8mmのサイズは、本当に場所を取らないため、カバンの大きさや形を問わず、気軽にしまっておくことができる。
同じカバンに入れる場合でも、カバンの表面などにあるポケットを使うなら、URoad-Aeroがオススメだ。サイズは幅63.8×奥行き106×高さ8.4mmとAtermWM3800Rより少し大きいが、厚さがわずか8.4mmと非常に薄い。このため、ポケットに入れても無駄に膨らむことがなく、カバンのシルエットを損ねることがない。これは、スーツの胸ポケットなど、衣服のポケットに入れる場合も同じだ。
重量は、AtermWM3800Rの80gに対して、URoad-Aeroは74gとほぼ同じなので、全体的なコンパクトさを重視するか、薄さを重視するか、持ち運ぶスタイルによって決めるといいだろう。
AtermWM3800R(左)とURoad-Aero(右)の正面 | 薄さはURoad-Aero(左)が一枚上手 |
サイズはAtermWM3800Rが一回り小さい | 手に持った感じはどちらもコンパクト |
カバンや服のポケットに入れておくなら断然薄いURoad-Aeroが有利 | カバンの中に無造作に入れておくなら、フットプリントがコンパクトなAtermWM3800Rが便利 |
長時間利用に適しているのはどっち?
続いては、WiMAXモバイルルーターならではのメリットとも言える駆動時間を比べてみよう。
スペック上の連続通信時間は、AtermWM3800Rの最大約8時間に対して、URoad-Aeroは最大約12時間と、URoad-Aeroに軍配が上がる。
AtermWM3800R | URoad-Aero | |
連続通信時間 | 約8時間 | 約12時間 |
待機待受時間 | 最大約20時間 | 最大約20時間 |
待受時間 | 最大約250時間 | 最大約1000時間 |
しかし、通信のオン/オフを繰り返すような実際の使い方を考えると、数値ほどの差はないと考えていい。
なぜなら、AtermWM3800Rには非常にカシコイ休止機能が搭載されているからだ。AtermWM3800Rには、「Aterm WiMAX Tool」というスマートフォン向けの無料アプリが提供されており、このアプリを利用して、リモートでAtermWM3800Rを休止状態にしたり、復帰させることができるようになっている(Android版のみ)。
このため、基本的には休止状態のままカバンなどに入れておき、使いたいときにスマートフォンから復帰させて通信を開始し、使い終わったら、再び休止させておくということが手軽にできる。つまり、無駄に電源が入っている時間を極力減らすことができるため、8時間という連続通信時間をフルに使えるわけだ。
また、休止状態からの復帰もわずか6秒という速さで、使いたいときに、電源が入るまで待たされる感じもほとんどない。朝、カバンに入れたら、家に帰るまで、本体にまったく触らずに使うことも可能という、使い勝手の良さもAtermWM3800Rならではのメリットだ。
一方、URoad-Aeroも工夫次第で、本体を操作せずに利用することが可能だ。Uroad-Aeroには、タイマー機能が搭載されており、スマートフォン向けアプリの「URoad-Magic」から時刻を設定することで、休止からの起動と起動状態からの休止を自動的に制御することができる。
タイマーは1パターンのみの設定のため、その日のライフスタイルに合わせて時間を設定し直す必要はあるが、出勤時間に併せて休止から復帰させ、帰宅時間に併せて休止させるようにすれば、こちらもカバンに入れたまま、本体に触れることなく運用することが可能だ。
なお、URoad-Aeroは、バッテリーが交換可能となっているため、予備のバッテリーを持ち歩けば、さらに長時間の利用も可能となっている。
つまり、利用時間のパターンがある程度決まっている人や長時間の連続通信が必要な場合はURoad-Aero、特に利用時間が定まっておらず、不規則にオン/オフを繰り返す可能性がある人はAtermWM3800Rが向いているということになる。どのような使い方をするかを事前によく検討して選ぶといいだろう。
使いやすいのはどっち?
使いやすさを比べた場合、どちらも十分に使いやすいと言えるが、若干有利なのはAtermWM3800Rと言えるだろうか。初期設定に関しては、どちらもWPSによるボタン設定が可能なため、大きな差はないが、AtermWM3800RはQRコードによる設定も可能なため、iPhoneなどのWPS非対応の端末でも設定がしやすい。
また、本体に有機ELディスプレイを搭載しているため、バッテリー残量やWiMAXの通信状態などを把握しやすいように工夫されている。
もちろん、URoad-Aeroも本体のLEDでこれらの情報を確認できるので、慣れてしまえば情報の確認は苦にならない。慣れるまでの時間に違いがあるという程度と考えればいいだろう。
機能的には、どちらも、WiMAXに加えて公衆無線LANサービスの利用にも対応しているうえ、WiMAXハイパワーに対応しているため電波状況があまり良くない環境での接続性を高めることができるようになっている。
また、別売りのクレードルを利用することで、自宅のブロードバンド回線用の無線LANルーターとして利用したり(アクセスポイントモード)、有線LANで接続したPCをWiMAXでインターネットに接続したり(ルーターモード)することも可能となっている。
新生活で一人暮らしを始める場合など、固定のインターネット回線を敷設するのが負担になる場合があるが、AtermWM3800RやURoad-Aeroなら、その代わりとして自宅で使うこともできるというわけだ。
このあたりは、さすがに最新のWiMAXモバイルルーターということもあり、どちらも不満を感じることはないだろう。
URoad-Aeroを別売りのクレードルにセットした状態 | AtermWM3800Rを別売りのクレードルにセットした状態 |
利用スタイルや性格によって選ぼう
以上、NECアクセステクニカの「AtermWM3800R」とシンセイコーポレーションの「URoad-Aero」の2つのWiMAXモバイルルーターを比べてみたが、どちらもそれぞれに長所があり、良いライバルといった印象だ。
あえて結論を出すとすれば、自分の性格がひとつの目安になるかもしれない。ズボラな性格ならこまめに本体を休止状態にしなくてもバッテリーが持つ「URoad-Aero」がありがたいが、几帳面な性格なら使わないときに手軽に休止させ、すぐに休止からも復帰させることができるAtermWM3800Rの方が性に合うだろう。
とは言え、どちらを選んだとしても、さまざまな場所で、長時間、安心して通信できることは間違いない。今やインターネットに接続できなければ、勉強や仕事に困るという時代だ。新生活の友として、いずれかのモバイルルーターを手に入れておくことをオススメする。
(清水理史)