新生活特集2018

物件選びがうまくなる! 知っておきたい賃貸物件の○○

SUUMO編集長に聞く物件探しのテクニックPart.3

これからはじまる新生活。就職や入学で上京する人は新居も決まって、引っ越し準備に追われている人も多いのではないでしょうか。また、年度末ギリギリのタイミングでの転勤や転職などで、これから急ぎの物件探しという人も、新年度がスタートしてひと段落したら引っ越したいという人もいるでしょう。そして、誰もが現在の住まいよりもいい物件に出合いたいはずです。できればあまり手間暇かけずに。そんな人のために、不動産情報サイトNo.1のユーザー評価を獲得しているSUUMO編集長への取材を敢行。とっておきの物件探しのテクニックを全3回にわたってお届けします。最終回となる今回は、賃貸物件を賢く上手に選ぶための意外な事実をご紹介。きっと物件選びがうまくなるはずです。

SUUMO編集長に聞く物件探しのテクニック

・まだまだ間に合う! 繁忙期こそいい物件に出合えるチャンス
・ライフスタイルに合わせて住む街を選ぼう
・知っておきたい賃貸物件の○○&住宅購入前に考えておくこと ← 今回はココ

これまでに繁忙期の物件選びのテクニックや、ライフスタイルに合わせた街選びについて、SUUMO編集長・池本 洋一さんに“住まいのプロ”ならではのテクニックやアドバイスをうかがってきました。最終回となる今回は、以下のテーマに沿って賃貸物件を賢く上手に選ぶポイントなどをご紹介します。

・“本物の”分譲賃貸物件を見極めよう
・GW明けには“おいしい新築”を狙おう
・角部屋や最上階は人気だけど……
・“無料”に飛びつくその前に……
・マイホーム購入前に考えよう

“本物の”分譲賃貸物件を見極めよう

絞り込み方のコツに関してはすでにご紹介したので省略しますが、物件探しをするときには、沿線やエリア、家賃などの大きな項目を選んでいきます。そして、自分好みの物件を探していくわけですが、その際にある程度家賃が高くなっても質を重視するのであれば、分譲賃貸という選択肢も出てきます。

株式会社リクルート住まいカンパニー
SUUMO編集長 池本 洋一さん
1972年滋賀県生まれ。1995年上智大学新聞学科卒業。同年(株)リクルートに入社。住宅情報誌の編集、広告に携わったのち、都心に住む編集長、住宅情報タウンズ編集長、SUUMOマガジン編集長を経て、2011年よりSUUMO編集長(現職)。住まいの専門家としてテレビ・新聞・雑誌などのメディア出演、講演,執筆を行う。リクルート住まい研究所主任研究員(兼務)、国土交通省 既存住宅市場活性化ラウンドテーブル委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 日本版CCRC有識者会議委員、良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業 評価委員

「ひと言で賃貸といっても、賃貸専用につくられている物件と、販売用分譲マンションを賃貸として貸し出す『分譲賃貸』では、かなり性能に差があって住み心地が違います。最近では、分譲賃貸は大人気なので物件選びも激戦です。そのぶん家賃も高くなっています」

編集長によると、SUUMOのサイトで分譲賃貸に絞り込んで検索する人も多いと感じているそうです。“同じ賃貸”であっても家賃が高い分譲賃貸が人気になっているのでしょうか。

「2000年に『住宅性能表示制度』というものが制定されました。耐震等級や省エネルギー性、遮音性などの品質基準を指し示すものですが、分譲マンションや分譲戸建てを取り扱う不動産が信頼のバロメーターとして取得しています。そして、各社がその基準を高くしようとする競争が生まれます。その結果、2000年以降の物件はさらに性能が高まっているため、住み心地も良くなっているのです」

分譲賃貸が人気となっています

その一方で、賃貸専用につくられている物件の場合は、住宅性能表示を使っていることはほとんどないそうです。制度が制定された2000年以降、賃貸専用と分譲賃貸には大きな性能差が生まれているとのこと。といっても、賃貸専用もきちんとした物件ですが、それ以上に分譲賃貸がどんどん進化しているというわけです。だったら「家賃が少し高くても分譲賃貸に住みたい!」という人も多いと思いますが、検索時には思わぬ落とし穴もあるそうです。

「分譲賃貸にチェックを入れて検索しても、表示される物件すべてが本物の分譲賃貸とは限らないのです。ここが難しいところで、なかには“分譲賃貸もどき”の賃貸専用物件も混ざっています。本物かどうかを確認するためには、『入居中の方はほとんど購入されているんですか?』と聞いてみるのが一番大事だと思います」

賃貸物件を探しているときに、「分譲仕様」という言葉をご覧になった人も多いと思います。ですが、実際には「分譲仕様」という正式な仕様はないとのこと。たとえば、システムキッチンやガスが入っているため「分譲仕様」と謳っていたり、何をもって分譲仕様なのかは不動産会社の判断次第という現状があるそうです。なので、本物の分譲賃貸か見極めたい場合は、物件名称を検索してヒットした物件が、分譲マンションとして販売された実績があればアタリという感じです。よくわからない場合は、編集長のアドバイスのように電話でズバリと聞いてみましょう。

GW明けには“おいしい新築”を狙おう

繁忙期後に引っ越しを考えているならば、やはりゴールデンウィーク明けが穴場だそうです。一年でピークの時期を逃して決まらなかった物件は、大家さんも焦っているので、料金交渉もしやすいメリットがあります。その代わりに「決まらなかった理由」が必ず存在するのも事実なので、しっかりチェックする必要があります。そして、穴場の時期で“一番おいしい”物件について編集長がアドバイスしてくれました。

「一番狙い目なのは、4月末竣工の新築マンションです。天候不良などの理由で工事が延期してしまい、もう入居者が期待できないような状況で、たとえば30戸すべてが空きになるかもしれない、という厳しい現実に直面しています。大家さんとしては、新築なので家賃をいきなり下げるわけにはいかず、かといって一年間収入ゼロというわけにもいきません。そこでフリーレントという選択をとります。最初の1~2カ月間家賃が無料になります」

大家さんにとっては不運な新築マンションは、これからの時期にちょこちょこ出てくるそうです。これから物件探しを始める人は、SUUMOなどの不動産ポータルサイトでも、フリーレントに絞り込んで検索できますし、ぜひ“おいしい物件”を探してみてはいかがでしょうか。また、その際に繁忙期前の2月末竣工で空きがある新築マンションなどがヒットしたら、そこにも「決まらなかった理由」がありますので、じっくりチェックしておきたいですね。

GW明けの新築マンションが狙い目

角部屋や最上階は人気だけど……

物件探しで人気条件の「角部屋」や「最上階」。騒音が比較的少なかったり、窓の数も多いため採光が良かったり、見晴らしが良かったり、上階からの騒音がなかったり、日当たりや風通しが良かったり、それぞれにメリットがあり、家賃もやや高めに設定されています。検索条件でチェックを入れる人も多いのではないでしょうか。しかし、編集長によると、最近の日本の気候を考えると「中住戸(なかじゅうこ)」を選ぶほうがオススメだそうです。

「最近の日本は冬も寒くて夏も猛暑です。現在の日本の気候を考えると、個人的には人気の角部屋や最上階はあまりオススメできません。とくに賃貸物件の場合は、断熱が効いてないためにエアコンを切った瞬間にモワっと暑くなったり、冬場は部屋がなかなか暖まらない“夏は暑く冬も寒い”ような部屋が意外と多いのです。分譲賃貸のほうが少し和らぎますが、それでも角部屋や最上階は暑くて寒いのです。最上階角部屋はもっとも暑い部屋になります。そうした住環境を考えると、中住戸のほうが住みやすいので、個人的にオススメです」

人気の角部屋や最上階はメリットも多いですが、現在の日本の気候を考えると、すべてが快適というわけにはいかないようです。たとえば、マンションなどで真ん中に位置する「中住戸」は、冬にはまわりの部屋の暖房効果による暖かさが届き、夏も同様にエアコンで冷えた冷気が届きます。窓の設置面が少ないため、温熱環境的にはメリットが多いのです。そのぶん、上下左右からの足音や騒音が多いというデメリットも伴います。どこに重きを置くかは人それぞれですが、家族に高齢者や子ども、小さなペットがいたりすると、部屋の暖かさや寒さは気になるのではないでしょうか。

角部屋は人気ですが、温熱環境的には中住戸がオススメ

また、寒い地方で賃貸を探す場合も注意が必要だそうです。家賃の安さが魅力ではありますが、築古で断熱がしっかりしていない物件だったりすると、光熱費だけで家賃を超えてしまうケースもあるとのこと。「契約前にしっかりチェックしたいこと」もご紹介しましたが、地方によっては夏と冬の光熱費を事前に確認することも大切になります。

“無料”に飛びつくその前に……

物件探しをはじめると、「仲介手数料無料」「敷金・礼金無料」という甘い言葉に心が引かれてしまう人も少なくないと思います。これまでの流れで理解されていると思いますが、そこには「無料にせざるを得ない」理由があります。目の前にある無料に引かれて物件を借りて、退去時にクリーニング代などを払うことになるケースも多いそうなので、できるだけ家賃の安い物件を急いで探していても、まずは冷静に考えましょう。ただし、じっくりと物件を探している時間がないときに、"次にいい物件を見つけるためのステップ”として、初期費用が無料の物件を選ぶという手段もあります。

基本的には初期費用が払えないわけでもなければ、これまでにご紹介してきたテクニックを使って、住みたい物件を探すのが一番だと思います。でも、繁忙期のタイミングで物件に出合えなかった際には、次のシーズンを見据えて短い期間だけ住んで、いち早く動き出すのもいいかもしれませんね。

マイホーム購入前に考えよう

最後にこれからマイホーム購入を考えている人へのアドバイスをもらいました。マイホーム購入に関しては、「一生暮らすのか」「投資を意識して購入するのか」によって明確に物件選びの軸が変わるので、まずはどちらかを決めるのが絶対条件とのこと。

いまは金利が低いこと、共働きの夫婦が増えているのでペアローンで購入しやすいこともあり、マンションが売れているそうです。また、住居としてはもちろんですが、将来的に売却できるように、資産として活かせるように、保険としての意味も含めて「半投半住」で購入する人が増えているそうです。

「結婚や子どもが生まれる予定があったり、ライフステージに変化がありそうな人は、売ったり貸したりできる損をしない物件がオススメです。マンションの場合は、駅近物件を候補に入れるといいでしょう。住みたい人も多く賃料を高めに設定しても貸し出すことができますし、資産価値も下がりにくい傾向にあります」

ちなみにマンション購入費用に対して、賃貸に出した際に家賃収入を高くとれるのが40㎡台なんだそうです。

住宅ローン控除は50㎡以上の広さがないと適用されませんし、50㎡を超えるとマンションの値段もグッと高くなってしまいます。物件自体の価格も高くなるので、それに合わせた家賃収入がないと利回りが落ちてしまうため、もっとも効率がいいのが40㎡台と言われています。無理して広い部屋を選ぶのではなく、コンパクトな物件を選ぶと比較的貸しやすい傾向にあります」

40㎡は一人暮らしにはやや広い感じで二人暮らしも可能な広さ。結婚して子どもが生まれるまではそこに住んで、家族が増えるのに合わせて売却して、広い物件に住み替える人が増えているのかもしれませんね。また、最初はマンションを購入し、子どもが生まれたり、クルマが必要になって駐車場代などのランニングコストを計算して、戸建てに住み替えるという話もよく聞くそうです。

これからライフスタイルが変わり物件探しをはじめるときには、これまでご紹介してきたテクニックを使って、いい物件に巡り合ってください。