特集: ENERGY 2017
【藤山哲人の光熱費見直し対策室】
東京電力がガス料金プラン発表!コスパと修理サービスがスゴイ!!
2017年6月6日 06:00
2017年4月から実施されている(家庭向け小売の)ガス自由化。これまでは、住んでいる地域のガス会社からガスの供給を受けるほかなかった。都市ガスが供給されていない地域では、LPガス(プロパンガス)を利用している家庭もある。
しかし今では、私たちのライフスタイルに合わせて、ガスの購入先を選ぶことができる。5月からは関西や関東で、ガス自由化のテレビCMが流れるようになり、日本のガス自由化がようやく本格的に動き出したという感じだ。
ガス自由化の詳細については、連載第1回「ガス自由化で突入する「光熱費自由化」を参照していただくとして、今回は、ガス自由化の施行後、沈黙し続けていた電力の巨人「東京電力」が5月に発表した料金プランやサービスなどをもとに、光熱費が今後どのように変わるのかを見ていこう。
フツーの家庭なら東京ガスより最大8%お得に!
どうすれば光熱費が安くできるかは、複雑に絡みあうさまざまな要因を考慮しなければならないので理解しにくいので、まずは料金表から見ていこう。
2017年5月末現在の料金表は、次のようになっている。東京電力の料金は「とくとくガスプラン」のものとなっている。
電気の料金は使用量に応じて3段階に区切られているが、ガスの料金はさらに細かく6段階にわけられている。基本料金は、ほとんど使わないA表にあてはまる場合が750円程度と安く、以降は使用量が増えるごとに基本料金も高くなる。使用量が800m³を超えると12,000円とかなり高くなる。
逆に使った分だけ支払う従量料金は、使用量が少ない家庭では高めの140円程度だが、使用量が多い家庭では105円ほどになる。毎月のガス代は、この料金表をもとに基本料+従量料金×使用量で決まるのだ。
この比較から言えるのは、東京ガスから東京電力の「とくとくガスプラン」(現状、他のプランはない)に乗り換えるだけで、およそ3%ガス代を節約できるということだ。
次は月々の平均ガス使用量と、東京電力と東京ガスのガス料金が、年間でいくらになるかを示したもの。その差額、つまり年間に節約できる金額も併記している。
乗り換えから最初の1年は、月々の料金が5%割引になる「スタート割」が適用になる。つまり3%の割引とあわせて最大8%割引になるというわけだ。筆者のように「消費税8%ってかなりの額だよな……」と感じている方にとっては、かなり魅力的な安さだ。
さらに、昨年4月から導入された東京電力の新しい電力プラン(「スタンダード」や「プレミアム」など)をガスとセットにすると、年間1,200円が割引される。
ただし、7月予定のガス販売開始時点で東京電力からガスを購入できるのは、東京都と神奈川県東部の東京ガス管内のみ。その理由の詳細は後述するが、東京電力のガス供給設備が未完成のため、暫定エリアでのスタートとなる。
納得!! 東京電力がガスを安く販売できるカラクリ
さて、東京電力という電力会社が、なぜガスを安売りできるのか腑に落ちない方もいるだろう。詳しくは連載第1回を見ていただきたいが、キーワードは「大量仕入れによるコストダウン」だ。
現在、東京電力の原子力発電所はすべて運転を停止しているため、発電の主力となっているのは火力発電所だ。そのほとんどが、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas、以下LNG)を燃料としている。
東京電力は世界各国からLNGを調達しているため、大量仕入れによるコストダウンが可能になる。その調達量は東京ガスの2倍。日本でのLNG消費量2位の中部電力も、東京ガスより多く仕入れている。加えて東京電力と中部電力の2社は、LNGを共同仕入れしてさらなるコストダウン(サプライチェーンの共有化など)を図っているのだ。
世界のLNG出荷量に占める日本全体のLNG調達量は約36%!!。その量は韓国と欧州と中国の合計とほぼ同じ8,800万トンに及ぶのだ。言うなれば「金も出すが口も出せる」のが日本の立場というわけ。
仕入れたLNGを貯蔵する施設は、東京湾に面するいくつかの火力発電所にある。東京・神奈川・千葉の発電所は、パイプラインを介してLNGを融通しあう施設もある。
東京ガスよりガスを安くできるカラクリは、こんな仕入れ事情があるからなのだ。
実際にどのぐらい安くなる? モデルケース2パターンで試算!
さて料金表や割引率などを見ても、イマイチよくわからないと思うので、ここでモデルケースを例に、いくら安くなるのかを試算してみよう。
・ごく標準的なパターン【例:子ども1人の3人世帯】
まずは、おそらくみなさんが「ああ、こんなもんかな?」と思うケースだ。電気とガスの使用料は、1カ月あたりを示している。
契約アンペア数:40A(従量電灯B)
電力使用量:400kWh(11,100円程度)
ガス使用量:40m³(6,200円程度)
昨年4月の電力自由化以降に料金プランを変更をしていない場合、一般的には従量電灯Bでの契約となる。今回は契約アンペア数が40Aなので、エアコンが2~3台あり、普段はリビングで家族団らんする家庭という感じだ。一方ガスは、一般料金で計算した際の目安となる。
このような家庭で、電気料金を東京電力の新プラン「スタンダードS」に変更し、さらにガスを東京電力に乗り換え「とくとくガスプラン」にしたとしよう。この時点で「ガスセット割」が適用され、電気料金が年間1,200円割引される。ガス料金は東京ガスの一般料金より3%安くなる上に、最初の1年はスタート割として5%の割引が適用される。これらの割引を合算すると月額で700円程度安くなり、1年間で約7,600円の節約になる。
また「スタンダードS」は、電気料金1,000円につき5ポイントもらえる。つまりモデルケースの場合、月額料金の内11,000円分にポイントが付与されることになるため、1年間で660円ほどのポイントが貯まる計算になる。
・両親と同居世帯【例:子ども1人の5人世帯】
次に5人世帯で、電気をかなり使うケースで試算してみよう。
両親と同居すると、エアコンを一日中つけっぱなしにしたり、常に誰かが家にいたりで電気代がかかる場合が多い。
契約アンペア数:50A(従量電灯B)
電力使用料:700kWh(20,400円程度)
ガス使用料:40m³(6,200円程度)
このようなケースでは、電気料金を新プランの「プレミアムS」に変更するのがオススメだ。「スタンダードS」は電気代が月に1万円程度のご家庭向けのプラン、「プレミアムS」はおよそ2万円オーバーでお得になるプランと考えていいだろう。
「プレミアムS」は、「スタンダードS」と同じく毎月のポイント付与や「ガスセット割」が適用されることに加え、新規加入ポイントとして8,000ポイントがもらえる。またガス代は「スタンダードS」と同じく東京ガスの一般料金より3%安くなり、スタート割の対象となる。これにより1年間で19,500円程度もお得になる計算だ。つまり1年で1カ月分の電気代がほぼ浮くというワケだ。
ここまでモデルケースを2つ紹介したが、自分でも料金をシミュレーションしたという方は、ガスと電気代の請求書を用意し「くらしTEPCO 電気・ガス料金プラン試算」ページにアクセスしてみて欲しい。おそらく大半の世帯で光熱費の節約ができるはずだ。
経験者にしかわからない「ガス機器修理サービス」のありがたさ&安心感が魅力!
東京電力の「とくとくガスプラン」の料金ばかりが気になりがちだが、付帯されている「ガス機器修理サービス」を筆者は声を大きくして訴えたい! その内容は、次の通りだ。
- 新品設置から10年以内の機器が対象
- 何台でも、何回でも修理OK
- 最大50万円まで自己負担なし
- 24時間365日修理受付
- 対象機器は、ガスコンロ、ガス給湯器、ガスファンヒーターなど
寒い冬に給湯器が壊れたことがある人(筆者は2年前の12月30日に給湯器が壊れた)なら、料金よりこのサービスに飛びつくはず。なにせ東京電力からガスを買うだけで、修理サービスなどの料金が一切かからない。言うなれば無償サービスなのだ。
東京ガスにも「ガス機器トラブルサポート」というサービスはあるものの、無料なのは「出張費」のみで、ガス給湯器やガスコンロなど機器の修理代は有償となっている。
冬に給湯器が壊れると大変! 食器洗いもままらないし、風呂に入って温まることもできない。修理するには部品を取り寄せるのに時間がかかったり、取り替えるとなると10万円以上の臨時出費の上に従来互換の製品を探すのに一苦労するのだ。
「ガス機器修理サービス」はJIA認証を受けたガス機器(業務用およびTES熱源機を除く)であれば、どこのメーカーでもOK。設置した会社なども関係なし。加入したあとに買った製品という縛りもなく、購入してから10年以内の製品ならすべて保証対象となる。
しかも何回でも何台でもOKで、修理の交換部品や出張工事費など50万円以内なら自己負担金はなし=タダということだ。
しかも連休などに壊れても修理の受付をしてくれるという、夢のような保証だ。このありがたさは、経験しないとわからないサービスだが、そろそろ保証期限の8年や10年を迎えるという場合は、ガス機器修理サービス目当てで乗り換えるのも十分にありだ。
筆者の経験から忠告しておくと、まるでタイマーが仕込まれているかのように、8~10年の間でガスコンロと給湯器は壊れる! 我が家は二世帯住宅なので、各世帯に機器があったが、壊れたタイミングの誤差は数ヶ月だったと付け加えておこう。
まずは4万世帯が目標! 本格稼動の100万軒達成でガス代が安くなる可能性も示唆
東京電力の「とくとくガスプラン」に申し込めるのは、2017年度は東京都と神奈川県東部の東京ガス管内のみと、非常に限定的。世帯数にしておよそ4万軒だという。
その理由は、「熱量調整設備」のキャパシティ不足にある。熱量調整設備は、簡単に言うとLNGを都市ガスに定められた熱量に調整する設備のことだ。
都市ガスには「12A」や「13A」といったいくつかの種類がある。一方ガス機器にもそれぞれに対応したものがある。これはガスの熱量や圧力、成分などで区分されていて、火力発電用のLNGはそのまま都市ガスとして送出できない。よって熱量調整設備で、LNGに他のガスを混ぜるなどして、都市ガスにあった熱量に調整する必要がある。
東京電力では、2019年度中に100万軒以上に対応できるよう、千葉県の姉ヶ崎に自前の熱量調整設備を建設するという。つまり大量に安く仕入れたLNGのメリットは、2017年度内には十分発揮できないとも言える。ひとまず東京ガスよりも3%お得にスタートするが100万軒に対応できるようになると、さらに値下げできるかもしれないと可能性を示唆した。
いよいよ関東でも始まる本格的なガス自由化。そろそろ、電気とガスをどこから買うのかを検討する時期に来ているようだ。
(協力:東京電力エナジーパートナー)