こどもとIT
ロボットやゲーム&アプリなど、子どもたちのためのものづくりの祭典「ワンダーメイクフェス4」
作品のプレゼンテーションやブース出展、体験コーナーなど盛りだくさん
2017年10月27日 06:00
年長・小学生~高校生を対象にしたロボットやプログラミングなどのものづくり教室「LITALICO ワンダー」を運営するLITALICOは、子どもによる作品の発表会「ワンダーメイクフェス 4」を、2017年10月15日に日本科学未来館にて開催した。
当日は雨にも関わらず4000名以上の親子が来場した。事前申し込みでは5000名上の登録があったというから、プログラミングやロボットへの関心の高さがうかがえる。
LITALICOワンダーでは、「ゲーム&アプリプログラミングコース」、「ロボットクリエイトコース」、「ロボットテクニカルコース」、「デジタルファブリケーションコース」などのカリキュラムを提供している。
「ゲーム&アプリプログラミングコース」では、Scratchを使った単純なプログラミングや、enchant.jsやJavaScriptを使ったブラウザベースのプログラミングを学ぶことができる。「ロボットクリエイトコース」は、レゴ エデュケーションWeDoを使ったロボット作成の基本を、「ロボットテクニカルコース」では教育版レゴ マインドストーム EV3を使って、モーターやセンサーを組み合わせた、より複雑なロボットの作成を学ぶことができる。また、「デジタルファブリケーションコース」では、3Dプリンタやレーザーカッターを使った作品作りを学ぶことができる。
ワンダーメイクフェスは、これらのコースを受講している生徒たちが、プレゼンテーションやブースへの出展、ポスターや動画の展示などで作品を発表する。さらに、体験コーナーや企業ブースなども用意され、親子で最新のテクノロジーに触れたり、プログラミングを使ったゲームやアニメーション作り、マインドストームやWeDoなども体験することもできるようになっている。
子どもならではの自由な発想と大人も顔負けのロボット作品
プレゼンテーションは、ほぼ丸一日をかけ、未来プレゼンホールとイノベーションプレゼンホールの2つの会場を使って、67名の子どもたちが自慢の作品を披露した。発表者は3分の時間を与えられ、自分の作品をプレゼンする。そのあと、質疑応答と観客フィードバック、会場に来席した審査員の講評という流れで進められた。
なかでも面白かったのは、観客フィードバックだ。観客には、あらかじめ「ナイスプレゼン」、「ナイステクニック」、「ナイスアイデア」、「ナイスデザイン」の4つのフィードバック用紙が配られ、プレゼンが終わった後でそれを掲げることで、プレゼンの内容や作品の評価を観客が発表者にフィードバックできる。プレゼンテーションがうまい・わかりやすいときは「ナイスプレゼン」、プログラミングやロボットの技術がすごい・ハイレベルのときは「ナイステクニック」、アイデアや目のつけどころがおもしろい・ユニークなときは「ナイスアイデア」、「作品の見た目がかっこいい・かわいいときは「ナイスデザイン」で発表者にフィードバックする。
発表した子どもの中には、「自分ではプレゼンが良くなかったかな?と思った。でも、ナイスプレゼンが多かったのでうれしい。次回はもっと頑張ろうと思う」といった感想も聞くことができた。観客がプレゼンテーションに参加できるとともに、発表した子どものモチベーションを上げることもできるという素晴らしい取り組みだといえるだろう。
午前中は、未来プレゼンホールで行われた「ロボットクリエイト」、「ロボットテクニカル」コースのプレゼンテーションを聞くことができた。発表者は小学1年生から中学生までと幅が広く、どの作品も単純にロボットが「動く」というだけではなく、さまざまなセンサーからのフィードバックを受けて反応するという、プログラミングが必須のロボットばかりだったのが印象深かった。また、中にはマインドストームのセンサーをコントローラーにして、マインドストームの液晶画面でゲームを作ってしまう子どもや、完全に自律型のロボットを作っている子どももいた。
ロボットの作成は、モーターからの動力伝達でスムーズに壊れないように動くようにすることや、センサーからのフィードバックによる外部の認識などといったロボティクスに関する知識に加えて、可動部分を同調して動かすなどのプログラミングに関する知識や高度なテクニックが要求されるのが特徴だ。発表された作品は、どれも子どもならではのアイデアと経験者でも考え付かないようなテクニックを駆使した素晴らしい作品ばかりだった。
ここからは、写真を交えいくつかの作品を紹介しよう。可能であればすべての作品を紹介したいところだが、スペースの都合で一部の作品紹介となるのでご容赦いただきたい。
小学校2年生「モブ」さんの「高いかんらん車」
LITALOCOワンダー池袋、ロボットクリエイトコースの小学校2年生「モブ」さんの作品「高いかんらん車」は、観覧車を長方形にすることで2倍の高さの観覧車を作った。高く回る観覧車を作りたかったとのことだった。円形や四角形の観覧車よりも長方形の方が高くなるだろういう発想が面白い。ただ動くだけではなく、観覧車を順方向と逆方向に回すことができるプログラムを作った。また、ウォームギアを使い、ゆっくり回るようにして、動いているときに観覧車のかごが上下逆さにならないような工夫をしたという。
小学校2年生「ケロッピ」さんの「おえかきロボット」
LITALIOCOワンダー秋葉原、ロボットクリエイトコースの小学校2年生「ケロッピ」さんの作品は「おえかきロボット」だ。ロボットを動かすとペンでキザギザの線を描く。円形と直線のギアを組み合わせてペンを左右に動かしている。モーターが同一方向に回転するだけでは往復運動にはできないため、WeDoのプログラムで制御しているようだ。
小学校3年生「こーし」さんの「戦車ゲーム」
LITALICOワンダー秋葉原、ロボットテクニカルコースの小学校3年生「こーし」さんの作品「戦車ゲーム」は、ロボットではなく、マインドストームのインテリジェントブロックだけを使ったゲームだ。インテリジェントブロックの液晶ディスプレイだけでゲームを作る、センサーをコントローラーにするという発想が斬新だった。次回は、二足歩行のロボットを作りたいとのことだった。
小学校6年生「ひかる」さんの「ルンバみたいなロボット」
LITALICOワンダー 横浜、ロボットテクニカルコースの小学校6年生「ひかる」さんの作品は「ルンバみたいなロボット」。壁を見つけたら、ぶつからないように壁に沿って平行に動作する自律型のロボットだ。超音波センサーと赤外線センサーで壁との距離を測定し、三角関数を使い演算で進行方向を計算。センサーからのフィードバックを使って意思決定を行い、適切なタイミングでモーターを回転して動かすという高度なプログラムを組んでいる。家具のカドなどに引っかかって止まらないように、なるべく丸くなるようにロボットのデザインを工夫したという。将来は、盲導犬のように人を助けるロボットを作りたいと締めくくった。
中学校3年生「PCIe3.0」さんの「ハイパワーブルドーザー」
LITALICOワンダー 川崎、ロボットテクニカルコースの中学校3年生「PCIe3.0」さんの作品、「ハイパワーブルドーザー」。ブルドーザーのプログラムは4つあり、車両の「前進」「後退」のためのモーターを制御する部分と、リフトの「持ち上げ」「積み下ろし」を行う部分だ。また、今は車両の動きとして前進と後退しかできないが、次は、ステアリング機構を付けて曲がれるようにしたいとのことだった。
このプレゼンで心に深く突き刺さったのが、「自分のパーツで完結させること」という言葉。ものづくりにおいては、非常に大切なことだろう。リソースが無尽蔵にあれば、手間さえかければどんなもので作ることができる。限られたリソースと時間で完成させるという姿勢は大切だ。子どものみならず大人も見習ってほしい。
WRO国際大会へ出場する、小4「つぐつぐ」さんと小3「はるはる」さんペア
LITALICOワンダー渋谷、ロボットテクニカルコースの小学校4年生「つぐつぐ」さんと、LITALICOワンダー横浜の小学校3年生「はるはる」さんのペアは「World Robot Olympiad(WRO)」の日本予選を通過しており、11月10日よりコスタリカで開催されるWRO国際大会への出場が決まっているとのことだ。
2人が作ったロボットは海水の海面上昇を防ぐ自律型のロボットだ。氷山を見つけて高さを測るパトロールロボット、海水をくみ上げるロボット、海水を凍らせて氷山に噴射するロボットの3つが連携して海面上昇を改善する仕組みだ。
ロボットを作るにあたっては3つの点を考慮したという。1つ目は完全に自動で動作すること。これにより、人間が入りにくい場所でもロボット自身が判断して動くことができる。2つめのポイントはサスティナブルエネルギーを利用すること。ロボットは風や太陽光で発電した電気で動作することを想定している。3つ目は、南極に住む動物たちを検知して危険を回避する「アニマルフレンドリー」にすることだという。
作品やプレゼンテーションの優劣が審査基準ではない
プレゼンテーションが終了してから、審査員賞2名とワンダー賞1名が発表された。審査員賞は「その子らしい挑戦やオリジナリティがあると思った発表」、ワンダー賞は「会場のみんなに1番ワクワクを届けた発表」が審査基準だ。審査員賞、ワンダー賞ともに、作品やプレゼンテーションの優劣が審査基準ではない点が素晴らしかった。
アクションや3Dゲームから実用的なツールまで、盛りだくさんな作品群
午後からは、同じく未来プレゼンホールで行われた「ゲーム&アプリプログラミング」コースのプレゼンテーションを聞いた。発表者は小学三年生から高校生までの子どもたちで、Scratchを使ったゲーム、enchanat.jsを使ったツールなどさまざまな作品の発表を聞くことができた。発表された作品は総じてプログラミングのレベルが高く、中にはUnityを利用した3Dゲームや、AppStoreやGooglePlayで販売されている無料ゲームよりもクオリティが高いと思えるような作品もあった。
ひとりでゲームを作るためには、ゲームのアイデアやプログラミングのスキルが必要なのはもちろん、キャラクターや背景などゲーム内で使われる素材も必要になってくる。子供たちの作品ではそうした素材を、ありものの素材ではなく、すべて自分で用意しているものが多かった。ゲーム作成では、そういった部分で楽をしようと思えばいくらでも楽ができるが、きちんと作りこんでいる姿勢が見え、非常に好感が持てる内容だった。
小学校3年生「NANA」さんの「大福キャッチャー」
LITALICOワンダー渋谷の小学校3年生「NANA」さんの作品「大福キャッチャー」は、大福ちゃんが上から落ちてくるいちご大福をお盆君でキャッチするゲームだ。ゲームはScratchで作成した。制限時間を設定したり、邪魔なキャラクター(ジュース)を登場させるなど工夫した。また、ゲームの難易度を高くするために、変数を使い、ジュースの落ちる速さを早くするようにした。次は、スペシャルアイテムなどを作りたいと話していた。
中学校2年生「アンダーソン」さんの「Escape from Police」
LITALICOワンダー池袋の中学校2年生「アンダーソン」さんは、カーチェイスがテーマの「Escape from Police」を発表した。パトカーの追跡から逃げて目的地に着くのが目的のゲームで、Unityを使って開発した。
また、コンピュータの思考アルゴリズムも工夫し、パトカーがちゃんと前進しながらプレイヤーを追いかけてくるようにしたという。プレイヤーの車がブレーキをかけるとちゃんとブレーキランプが点灯するなど、細かい部分に配慮しているのも印象的だった。今後は、車のモデリングを変えたり、さまざまなコースを作ってみたいとのことだった。
小学校5年生「Monky」さんの「ケムナスの冒険」
LITALICOワンダー横浜の「Monky」さんは「ケムナスの冒険」という横スクロールタイプのアクションゲームを発表した。自キャラや敵キャラは、エジプトにいる生き物を参考にして、すべて自分で作成したそうだ。ゲームを作り始めたころは動きが遅かったが、パーツを工夫することで、早く動作できるようにしたとのことだ。
敵キャラに接触するとライフが減少し、ライフゲージがすべて赤くなるとゲームオーバーになる、さらにはラスボスも登場するなど、このままスマホアプリとして公開してもいいんじゃなかというくらい、ゲームとしての完成度が非常に高いのが特徴だった。
「渋谷1212」さんの「考察ゲーム」
LITALICOワンダー渋谷「渋谷1212」さんの作品は、コンピュータとの対戦ゲームをScratchで作成した「考察ゲーム」だ。複数個のボールの中から、同じ色のボールは3個まで取れるが、違う色のボールは同時に取れないというルールで互いにボールを取って行き、最後のボールを取ったほうが負けという、単純でありながら歯ごたえのあるゲームが印象的だった。人間対人間のゲームではルールをプログラムするだけで十分だが、コンピュータとの対戦ができるように思考アルゴリズムを考えたのは素晴らしい。似たような処理を実行するために関数を定義し、プログラムを簡略化するのを工夫したという。
中学校3年生「三元」さんの「NS Timers」
LITALICOワンダー横浜の中学校3年生「三元」さんは、Enchant.jsを利用したタイマーアプリ「NS Timers」を発表した。時間の管理が苦手なため作ろうと思ったという。数字でカウントされるだけではなく、残り時間のめやすを扇型のグラフィックで表示できるようにしたのが面白い。
会場では子どもスタッフも大活躍
プレゼンテーション会場では、司会の補助、照明や音響、質問者へのマイク回しなど、子どもたちがスタッフとしていろいろな場面で活躍していた。プレゼンテーションの最後には、スタッフの子どもたちに感謝状が贈呈された。
子どもたちが作品をデモするブースでもフィードバックが活躍
エキシビジョンホールでは、126名の子どもたちがブースに自分の作品を持ち込んで、デモンストレーションを行っていた。また、ポスターによる展示もあった。時間の都合でじっくりとは見て回れなかったが、ScratchやUnityを使ったゲーム、マインドストームを使ったロボットなど、実にさまざまな作品が展示されていた。
ここでも、フィードバックが大活躍。テクニック、アイデア、デザインなどのシールで、作品へのフィードバックをすることができる。ブースの子どもたちに話を聞くと「もっとテクニックのシールをもらえると思った。次は頑張ろうと思う」、「思った以上にシールをもらえてうれしい。今度はもっとすごいものを作りたい」というように、子どもたちのモチベーションを上げるのに一役買っていた。
来場した子どもたちがロボットやプログラミングを体験!
プレイグラウンドとテクノロジーゾーンは、ワンダーメイクフェス4に来場した子どもたちが、さまざまなテクノロジーに触れたり、体験ができるブースだ。
プレイグラウンドではWeDoによるロボット作りを体験できるコーナーや、マインドストームで作成されたロボットを操作して遊ぶコーナー、Scratchを使ったプログラミングの体験コーナーなどがあり、どのブースも真剣なまなざしの子どもたちで一杯だった。
マインドストームとプログラミングコーナーのスタッフにお話を聞くと、LITALICOワンダーのたくさんのカリキュラムの中でも、マインドストームを使ったロボット作りはかなり人気だとのこと。
テクノロージーゾーンでは、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン(Unity)、ブラザー工業、GENKI、ソニーなどが自社製品を出品しており、子どもたちがさまざまなテクノロジーに触れることができる。中でも人気があったのが、Unityによるデモンストレーションだ。Unityのブースでは、Unityインターハイの受賞作品が実際に遊べる状態で展示されており、ゲームが大好きな子どもたちが長蛇の列を作っていた。
ワンダーメイクフェス4に参加し、とにかく子どもたちのパワーにあてられっぱなしの1日だった。どの子どもたちも「こんなの作ったんだ! すごいでしょ」、「今度は、みんなをもっとびっくりさせたい」という気持ちが出ていたような気がする。そういえば、自分が高校生のときにプログラミングを始めたころも、「何もないところから作って友達を驚かせたい!」ということが動機だったような気がする。今も昔も「どーだ! すごいだろー!」はクリエイターの合言葉に違いない。