Vol.9 撮るたびに幸せになれる 伊藤夏織さん
カメラが自然と入り込んでいる暮らし。カメラを持ち歩く楽しみ。日々キラキラしていることを切り取る喜び。カメラのある生活を楽しんでいる女子に密着します。第9回目は一般企業で働く伊藤夏織さん。
伊藤さんの運営するブログ「moco*moco*camera」には、淡くやさしげで繊細な、女性らしさのあふれる写真が並ぶ。鎌倉や茅ヶ崎で撮影されたものが多い。地元の風景が好きなのかと思いきや、過去記事をさかのぼってみると、ドイツやオーストリアの美しい建物を集めた写真もたっぷり。見る人のきもちをほっこりさせる、温かみのある写真が特徴的。どんな女性が撮影しているのか知りたい。伊藤さんに会ってみたいと思い、今回お話を聞くことができた。
カメラに目覚めたきっかけは「新婚旅行」
昨年7月に開設された伊藤さんのブログ。センスが良くて上手いなと感じさせる写真ばかりだけど、カメラを本格的に始めたのは意外と最近とのこと。「新婚旅行でモルディブへ行ったときに写真を上手く撮れなかったんです。それが悔しくてカメラと真剣に向き合い始めました」と伊藤さん。当時の写真を見直すと、オートで適当に撮ったものばかりで、見れば見るほど「もっといい写真を撮りたい」と思うようになったのだとか。
5年前に手に入れた一眼レフ。これを使いこなすために、カメラ女子として有名なきょんさんの著書を徹底して読み込んだ。それと並行して一昨年5月に撮影会に参加し、写真上手なメンバーに衝撃を受けた。「皆さんのブログを拝見するようになったのですが、刺激を受けました。とにかく勉強になることばかりだったんです」と話す。それ以来、気に入った撮り方を実践するようにもなった。
お出かけすることが多くなった
カメラが趣味になっていくうちに、女性7人ほどの「カメラ仲間」ができた。2ヶ月に1度ほどのペースで撮影会を開催している。ハロウィンパーティーには子どもを仮装させて参加したママもいたのだとか。「やはり7人7色の個性が出るので、皆がブログにアップした写真をあとから見ると、私には撮ることができない1枚だなと感じることもあります。違いを見ることも学びになります」と伊藤さん。
写真を撮るようになってから外へ出かける機会が増えた。これまでは熱中する趣味もなく、家にいることが好きだった。あまり遠出できないときにはどこに行くかという問いに対して、伊藤さんが答えてくれたのは「公園」。「今年の夏の話ですが、家の近くの公園で咲きかけの紫陽花が、ハート型になっているのを発見して思わず撮影しました」と笑顔で語る。数日後に身に行くと丸い形になっていたそう。これまで気に留めなかったことを注意して見るようになり、発見が増えたことに喜びを感じている。
「自分らしい写真」に悩み中
写真ライフを楽しんでいるように見える伊藤さんだけど、それなりに悩みも抱えていた。「壁にぶつかっています」と苦笑する。自分らしい写真が撮れないと落ち込むこともある。写真の上手い仲間に囲まれて、切磋琢磨し合っているからこそ、そんな悩みが生まれるのかも知れない。「自分らしいとは何か」を突き詰めていくのは難しい。伊藤さんにとって「自分にとって満足のいく1枚=自分らしい写真」。そんな写真をたくさん撮りたいと日々願いながらシャッターをきる。
動物を撮影することが好きだという伊藤さん。「どアップ」で撮る動物のやさしい表情をした写真には、伊藤さんらしさが出ているのでは? どアップはかわいく撮るためのコツらしい。他にも寝ているところ、ごはんを食べているところなど、瞬間を狙って撮影する。ペットを飼っていない人にとって、動物を撮影できる場所といえば動物園。「檻をぼかして撮るといいですよ」と教えてくれた。そうすることで余計なものを極力排除した、ふんわりした写真ができるのだとか。
「見たままの景色が撮れる」から嬉しい
伊藤さんが最近特にハマっているのはフィルム写真。ご両親から譲り受けたニコマートt FT2を使っている。ファインダーを覗かせてもらうと世界がレトロに見えた。デジタルとは異なり、1枚1枚じっくり考えながら撮影する。1枚撮るのに5分以上かかるということもザラにある。「その瞬間の味わいを残したい」伊藤さんにとって、目でみたままの1枚が完成するフィルム写真は、撮る度に幸せになれるのだとか。「1枚1枚どんなときに、どういう気持ちで撮ったかも覚えています」と楽しそうに話す。
今後撮り進めたいものは「人」。友人のマタニティフォトを撮影してから、もっと人を撮りたいと思うようになった。ベースには「その瞬間にしか撮れないものを記録したい」という強い思いがある。変化していく人の様子を写真というかたちで残したい。また冬にしか訪れたことのないヨーロッパへ、次回は夏に行ってみたいとも目を輝かせる。特に気になるのはスペインとイギリス。昨年12月にはドイツのクリスマスマーケットの様子を撮影していた伊藤さん。来年は夏の賑わいあふれるヨーロッパの写真を見せてほしい。
写真に関して明確な目標があるわけではないんです、と語る伊藤さん。それでも日々悔しさを感じ、ときにもがき、自分と静かに戦っているのが伝わってきた。写真を撮っている間は無心になれ、カメラだけに熱中していられる——その時間がたまらなく愛おしいと話してくれた笑顔から、写真への愛情を感じたひとときだった。
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