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[Vol.6]「子どもの視線」を持って 岡田真由美さんカメラが自然と入り込んでいる暮らし。カメラを持ち歩く楽しみ。日々キラキラしていることを切り取る喜び。カメラのある生活を楽しんでいる女子に密着します。第6回目はショップ店員として働く岡田真由美さん。 とても繊細な感性を持った人。初めてお会いした岡田さんに抱いた第一印象だ。それはハズれていなかったと思う。恵比寿の閑静な場所にある公園のベンチで、岡田さんはごく自然にカメラを手にして、何かを探していた。きっと被写体を探していたのだと思う。楽しそうな横顔が見えた。 この一瞬を撮りたくて、撮りたくて、仕方がなかった——岡田さんの撮る写真を見ると、そんな思いが伝わってくる。ある日偶然、岡田さんの写真ブログと出会った。その写真を1枚1枚眺めていくにつれて、私はなんだか泣きたい気持ちになった。「愛」を超えたパワーが、写真から放出されていたから。 1日100枚撮影していた時期も初めてコンデジを買ったのが5年前。意外とカメラ歴は長くない。それまでは携帯やインスタントカメラで気が向いたときに撮影するくらいだった。もっと本格的に写真を撮りたいと思い立ち、当時は1日100枚以上も撮影していたという。「楽しくて、楽しくて、見たものすべてを撮るくらいの勢いでした」と照れ笑い。しかし次第にそのクオリティに悩み始める。 撮りたい絵にならない。後ろをボカしたい。もっと上手くなりたい。こういった思いから3年前に一眼レフを購入した。キヤノンのEOS Kiss X3だ。お気に入りのカメラを手に入れてからというもの、岡田さんの写真熱はさらにヒートアップする。1日で16Gのメモリーカードがいっぱいになることもあった。「同じものを構図を変えて撮り続けるんです。1つの被写体で50枚近く撮ります」と話す。一緒にいる相手から「早く行こうよ」と苦笑されることも。
写真を撮るときは「子ども化」する1つの花を撮るときに、上や下といったアングルから撮影する人は多いけれど、裏から撮る人はあまりいない。岡田さんは「全方位」から狙い打ちする。だから1つの花を50枚くらい撮ることになる。そこからブログに掲載するための、とっておきの1枚を選ぶことになるのだけれど、満足できるものは1割にも満たないという。「それでもたくさん撮れば撮るだけ当たる確率は高くなる。それを信じて撮影しています」と澄んだ瞳で語ってくれた。 岡田さんは外に出ると挙動不審になるらしい。自分でも自覚している。「今日も撮るものを探しながらここまで来ました。だからやたらキョロキョロしちゃって」と微笑む。初めて目にするものは何でも興味深いと感じて、思わず撮りたくなる。出がけに「今日の空いいな」と思って撮影し始めて、熱中しすぎたあまり、職場へ遅刻しそうになったこともある。ここまでカメラ好きな女性に出会ったのは初めてかも知れない。
ユニークなものを発見する毎日花がとても好きだという岡田さん。確かにブログにアップされている写真も花が多い。花を前にすると「1番キレイな瞬間を記録に残しておきたい」という衝動にかられる。美しいものと向き合ったときに生じる、とても純粋な気持ちだと思う。またかわいいものも好きで、スイーツ写真もたまに撮る。心がけているのは、色温度を上げて、コントラストを下げて、明るく撮ること。まるでプロが撮影したかのような、淡くてやわらかな作風が特徴的だ。
被写体は何気ない日常にもある。前日に撮影したのは「味噌汁のネギ」。意識していないと気付かずに食べてしまいそう。「ねぎがハートマークになっていたんですよ。これはかわいいので、撮らずにはいられませんでした」と岡田さん。他にも「車体に映った空」なども撮影していた。人が見逃しがちな被写体を見つけるとテンションが上がるらしい。どうしたら面白い被写体を見つけられるのかという問いに「童心に返ることですね」と爽やかに返された。なるほど。
カメラとは一心同体の感覚岡田さんのカメラ・写真への愛は並々ならぬものがある。しかし昔は何にも興味がなく、熱意もなかったと振り返る。「目立たない地味な人間でした。それでも『表現したいという葛藤』はありました。小説やイラストなどに取り組んでみたものの、どれも途中で挫折するばかり。最終的に出会えたのがカメラでした」と話す岡田さんからは、今の生活をとても楽しんでいることが伝わってくる。 1週間に1回ペースだが、編集した写真と丁寧な文章でブログを更新する動機となっているのは「表現したい」という強い気持ちだ。コンデジを持ち歩かない日はない。「カメラのない生活は考えられません。なくなったら生きていけません」と話す。今撮りたいものはガーリーな女の子。「女の子は絵になりますよね。キレイな海や明るい緑を背景にして撮ってみたいです」と願いを口にしていた。 ときに「子どもの視点」を持つことで、普通の大人には撮ることのできない1枚ができあがる。岡田さんは子どもの目と大人女性の目を、無意識のうちに切り替えていて、色合いのちがうさまざまな作品を生み出しているのだろうと思った。次の休日には「子どもモード」になって、カメラとともに出かけてみようかな。 (2012/10/12)
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