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第6回「好きな写真、撮りたい写真」「カフェでスイーツ撮ってる」的なイメージがわりと先行しがちなカメラ女子。でも、本当のところ、カメラ女子はどんな写真を撮りたいと思っていて、そして実際にどんな写真を撮っているのでしょうか。 今回は以前、葵さんと同じカメラ部で活動していたしのちゃんをゲストに招き、そのあたりの話題を語ってみました!
アート系カメラ女子?葵:まず、しのちゃんが普段どんな写真を撮るのか、お見せしていこうか。 しのちゃん:よろしくお願いします! カメラはオリンパスの「E-P3」を使ってます。
葵:カメラを始めてからまだ1年くらいってことだけど、最近はフィルムカメラ体験や表現力を磨く教室とかも行ってるんだよね? しのちゃん:そう! 大判・中判カメラを体験したり、上手に撮るんじゃなくて個性を出して撮るよう教わったよ。そういう風に意識して撮影しているうちに写真の好みが変わってきた気がする。表現方法って色々あるんだな、って気づいたからかな。最近のお気に入りの写真はこれ! しのちゃん:私は前までは、ピンボケ写真は失敗!って思ってたんだけど、でも最近では、こういうのもありかなー、って。 葵:幻想的な写真だねー。私、これ好き! そういえばしのちゃんって、前からよく銅像の写真撮ってたよね? 好きなの? しのちゃん:うん、大好き! これはPENのアートフィルターを「ドラマチックトーン」にして撮ったやつだね。 葵:鎌倉の大仏、なぜか半分(笑)。しのちゃんは、一般的に言われるカメラ女子とは、ちょっと生態が違ってるのかもしれないね。 しのちゃん:生態って(笑)。あ、今回のとっておきはコレ! 銅像の足の間に、スカイツリーが映るようにしたんだ。 葵:これは……ネタ?(笑) しのちゃん:どうだろう? 「あっ、こんなところにツリーがある!」って気づいてもらえると、「よし!」って思ったりする(笑)。 葵:いいねー、個性的な写真の撮り方してるね。1年間カメラを使って、撮り方はどんな風に変わった? しのちゃん:最初の頃はアートフィルターがとにかく楽しくてよく使ってたんだけど、最近はここぞ!ってときだけ使うようになったかな。 葵:なんか、アートフィルターをメインで使ってると、ごまかしてる気がだんだんしてきて、一旦離れる時期が来るよね。 しのちゃん:アートフィルターに頼ってばかりいちゃいけないのかな?って思うようになって一旦離れてみたけど、自分が求めてる表現に近づけたいときに使ってみると、イメージに近づけてやっぱり面白いなって思う。 葵:そうそう! 表現の幅を広げる手段なんだよね、あくまで。一度距離を置いて、しばらくして戻ると、「あ、やっぱいいじゃん」って魅力を再発見する。 しのちゃん:あとは、最近は光源をどこに置くか意識しはじめた。 それと、昔から「丸ボケ」がすごく好きで、それは意識して撮ってるかな。 葵:あ〜。しのちゃん、丸ボケ好きだよね。よく見せてもらった覚えがある しのちゃん:そうなの。カメラを始めたばかりのころ、練習で噴水の銅像を撮ってたらたまたま後ろのイルミネーションが丸ボケになって撮れてすごく感動した! 私の周りのカメラ女子でも丸ボケ好きな人多いかも。あ、ちなみに私の中では銅像が本当の人の脚みたいに見えて、失恋して雨の中立ちつくしてる女性ってイメージ(笑) しのちゃん:これはこの前撮った夜景なんだけど、綺麗に撮るだけじゃちょっとつまらないので、2枚を重ねてみた。加工があった方が面白いな、と。 葵:このフォトブックもアーティスティックな感じだねー。 しのちゃん:フォトブック作成サービスがちょうど無料期間中だったから作ってみたよ。私、足が好きみたいで、気がついたら足ばっかり撮ってて。足写真集(笑)。表紙は、ガラガラ電車の中で撮った自分の足! 葵:これって、電車の中なんだ〜。ホントだ、足がいっぱい……。これがしのちゃんの個性なわけだね(笑)。でもいいね、こういうふうに自分の撮った中からセレクトして、形にできるって。たくさん撮った写真の中から、どれを作品として選ぶのか、何を意識して選んでいくのか、っていうのも個性が出る気がするね。(写真家の)土屋勝義先生も、「撮った写真のセレクトは、第2のシャッターチャンス」だって言ってたし、そこで何を、どんな理由で選びとるか、だよね。なんのために写真を撮るのか、っていうのとも関係してくるのかも。 しのちゃん:深い…。 葵:私は仕事の関係上、ポートレート撮影を趣味としている方に会うのが多くて、「モデルさんに喜んで欲しい」っていう声を聞くのね。それが写真を撮る目的のひとつになっているわけだよね。そういう考えの人達がいる一方で、私の場合はモデルさんを撮ることはほとんどないから、やっぱり自分が気に入る写真を撮るために撮影しているんだと思う。 しのちゃん:私も! 写真サイトにアップするとき、とにかく「自分が好きだ!」と思ったものを選ぶようにしてて。他の人にこれは違うって思われたとしても、やっぱり自分が納得したものを選びたいと思って。まずは自分が好きになるかどうかだよね。 葵:もちろん他の人に「いいネ!」って言ってもらえるのは嬉しいんだけどね。 しのちゃん:そう言ってもらえると、撮ってよかったな、って思う。あと、私はそもそも、上手く話せたり、絵が描けたり、物が作れたりとか、何かを表現することは苦手で無縁だったけど、カメラを始めてから写真で色々と自分を表現できるようになった気がする。 葵:えっ、じゃあ写真を撮るようになる前はどうやって生きてたの?(笑) しのちゃん:不器用に生きてました(笑)! なにか形が残るような仕事をしているワケでもないし——。 葵:学生時代もこういう創作行為っていうか、部活とかやってなかったの? 美術部とか……。 しのちゃん:全然やってない! 葵:しのちゃんは美術系出身なのかな、とか勝手に想像しちゃってた(笑)。 しのちゃん:違う違う(笑)。 葵:そういうアートなことをしてみたいなー、とも思わなかった? しのちゃん:まったくなくて。アーティスティックなこと?をする人に憧れてはいたんだけど、自分には縁がないなー、って思ってた。 葵:あ、わかるかも。私は創作活動をしたいとは全く思わず、絵が上手い人に対してコンプレックスを抱くことも一切なく、気づいたら大人になってた(笑)。創作活動をしている人はまわりにたくさんいるんだけど、私はああいう人たちが生み出したものを一方的に享受してこの先も過ごすんだろうな、と考えてて。それが、ある日、カメラを手にして写真を撮ってみたら「ああ!面白い!」ってなって、写真にハマるにつれて、「ハッ! ついに私もあっち側の仲間に!?」って思えてしまった。 しのちゃん:思った! 私もそう思った! 葵:私もしのちゃんも、創作意欲を持たずに生きてきたけど、ひょんなことから写真を楽しむ生活に突入してるわけで、もしかしたら、カメラを持つことでこうやって変われる人って、たくさんいそうじゃない? しのちゃん:うん、いると思う。 葵:今、写真と縁が薄い人にも、とりあえずカメラを手にしてみてほしいな。その中から、私たちみたいに「写真に出会えてよかった!」って人も、きっと出てくるでしょ。そういう人たちが撮った写真を見てみたいって好奇心もある。例えば、しのちゃんの写真を見ても、しのちゃんの「こういうの好き!」っていう感性とか、「こういうのがキレイだよね」っていう美意識がわかって面白いの。この『金魚の写真』とか、金魚じゃない、まったく別のモノにも見えたりもして、素敵だよね。 しのちゃん:キレイなものの捉え方とか価値観とか、人それぞれによって違うんだよね。 葵:写真を通して、しのちゃんの美意識とか審美眼の一端を垣間見て、アートでギラギラ生きてきた人なのかと思ってた(笑)。 しのちゃん:あはははっ、ちがうちがう。とっても平凡な人生を生きてきました。でも、うん、カメラで人生変わったかも。 葵:変わったよねー! 私も変わったと思うもん。楽しい。 しのちゃん:うん、楽しい。毎日が充実してる。 葵:だよね。私は絵が本当に下手で面倒くさがりで、小学校の頃も困ってたけど、でも、カメラならボタンを押すだけで、とりあえずは用紙が埋まるから、さらにその先、自分なりに工夫してみようって気になるじゃん? だから小さい子にも触れて欲しい、って思うんだよね。 しのちゃん:うん、本当にそうだね。 こんな写真が好き!
葵:しのちゃんはだいぶアート寄りの作風だけど、観るときはどう? 好きな写真家さんはいる? しのちゃん:そうだね、このあいだはエリオット=アーウィットの写真展に行ってきた。銀座のシャネルでやってたやつ。あとは、2月に銀座のリングキューブに行って尾黒久美さんの写真見てすごく衝撃受けて。3枚の特大写真しかなかったんだけどこれはいったいなんなんだっ……!! ていう(笑)。ほかには、雑誌で見た鶴巻育子さんのマトリョーシカの写真とか、岡嶋和幸さんの「Shio-sai」シリーズとかも好き。独特の雰囲気やアーティスティックな写真が好きで、自分でも撮りたいなって思う。 葵:なるほど。私は特にこの人が好き!っていう写真家さんは多くはないの。というのは、どんな人の写真を見ても好きなところを見つけて、すぐ影響されちゃうんだよね。単純なのかも(笑)。前からいいなって思ってたのは、百貨店のルミネの広告写真。誰が撮ったのか知らないままに惹かれて、調べたら蜷川実花さんだった。蜷川さんの名前はもちろん知ってたけど、「私はあんまり好きじゃないかも」というイメージを勝手に持ってたのね。だから、調べて驚いた。シーズンごとに変わるルミネの広告、楽しみなんだ。彩度が高くて、でも派手派手しいわけでもなく、エロティックな感じで。女の子はこういうのは好きじゃないかな。 しのちゃん:いい! エロティックー。 葵:私はこういう写真を撮ってみたいな、って思うんだよね。 しのちゃん:確かに、こういうのが自分で撮れたら面白い! 葵:こういう写真をどうやって撮るのか、カメラ雑誌とかで教えてくれたらいいなあ。女子向けカメラ雑誌で写真の撮り方を特集するときも、「カメラ女子ってきっとこういう写真が好きでしょう?」っていうひとつのイメージがあって、それはどちらかというとさわやかなイメージで。こういうエロティックな方向みたいなのは意外と見かけない気がするんだよね。 しのちゃん:とにかく女子は明るい写真、さわやかな写真が好きっていうイメージなのかな? 葵:だと思う。けど、女子はこういうのも好きなんですよっていう例を挙げると、たとえば私は清川あさみさんが好きで。写真に刺繍しちゃう人なんだけど……知ってる? しのちゃん:あ、私も好きです! かなりトキメく! 葵:そう、トキメくんだよ! この「トキメく」っていうキーワードは大事(笑)。『美女採集』シリーズとか、とっても素敵なので、知らない方は是非サイトを見てみてください。あるとき刺繍をテーマにした展覧会に行ったら、そこで見た清川さんの作品がすごくて。写真に刺繍を施してるんだけど、単にぺたっと貼ってるんじゃなくて、直接縫い付けてあるの。写真にも当然穴が開いてて、生々しくてなんだか良かった。……で、影響を受けてしまったのが、この写真なんだけど…。
葵:清川さんの作品は写真を直接加工しているんだけど、未熟な私の場合、写真自体にその加工に対抗できるだけのパワーがないと思って……写真が負けちゃうな、と思ったの。なので、今回は写真を透明パネルにしつらえて、写真の周りの額縁にちょっと加工して。この暗い感じが私好みでしょ(笑)。 しのちゃん:うん、なんか葵ちゃんっぽい(笑)。 葵:清川さんの作品は、エロティックさや、グロテスクな一面も持っているの。コレを見ると「こういう表現方法もあるんだ」、「こういう方向も表現の1つとしてある」って思えるよね。「こういう写真が好きな女子もいますよ〜」って言いたい。 しのちゃん:女子はいつもスイーツの写真ばっかり撮ってるんじゃないんだぞ!って?(笑)。 葵:たしかに、さわやかな写真やかわいい写真も嫌いじゃないけどね。ただ「自分もこんな写真を撮りたい」って思えるような写真とは別かな。しのちゃんは今後、どんな写真を撮ってみたい? しのちゃん:うーん、私はひとひねりある写真が撮れるようになりたいな。例えばみんなで同じ場所に撮影に行っても「あれ?ここって?」とか、風景写真を撮る場合でも何かドラマがおこってる、みたいな、そういう写真を撮ってみたいな。 葵:なるほど。私は今まではローキーな写真が好みだったんだけど、最近オリンパスのXZ-1っていうコンデジを買って、マクロ写真を撮るようになったよ。これ、スーパーマクロモードだと1cmまで寄って撮れるの。今までとは違うことができるようになると、単純に楽しいし、表現の幅が広がったような気分になるんだよね。最近はこういう写真を撮ってます。写真から、こう……妄想するのが好きなんだよね(笑)。この水滴は、妖精の卵っぽいなとか(笑)。
しのちゃん:それは撮ったあとの写真に対してイメージを膨らませるということ? 葵:そうだね。そうやってイメージを膨らませて、タイトルをつけるのが好き! しのちゃん:私も自分の写真にタイトルつける! 葵: 後付けタイトルだけど、私はもう最初からこのタイトルありきで撮りましたー!ってくらいの勢いでつけるよ(笑)! しのちゃん:いいね!私は写真を見てパッとタイトル浮かぶことが多いんだけど撮影後のそういう時間も楽しい。 葵:タイトルっていうのは、写真の魅力を引き立たせるものだと思う。たまに『無題』とかで賞を取ってたりするのがあるけど、若干の物足りなさを感じてしまう。撮り手が唯一言葉を乗せられるのがタイトルだと思うから、「もっと教えて」と思う(笑)。そのタイトル通りに作品を鑑賞するかどうかは、また別の話だけど…。 しのちゃん:タイトルがあると観る人によっていろいろと想像してもらえそうだよね。いろんな人の写真を見て、自分でも撮って、それを見せて、自分の好きな写真をこれからもたくさん撮っていけたらいいな。撮りたい写真のイメージを持って撮るとカメラライフもさらに楽しくなりそう!
葵:しのちゃんは写真を始めた頃から個性的な作品が多かったから、この人は芸術系の学校出身なのかなぁ?って勝手に思ってたんだけど、実はそんなことはないってわかって驚きです。私もしのちゃんも、何かを表現するということとは無縁で生きてきて、ちょっとしたきっかけでカメラに出会い、今は写真を楽しんでいる。世の中にはまだまだ、写真を楽しめる素質を持ちつつも、自分ではそのことに気づいていない人が隠れている気がしますねー。女子カメ Watchを通じて、そういう方たちが少しでもカメラをてにしてみて、それで写真仲間が増えていくと、嬉しいですね。
(2012/6/8)
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