以前レビューした、富士通が2017年初頭に発売したノートPC「LIFEBOOK UHシリーズ」の軽量モデル「 LIFEBOOK UH75/B1 」。13.3型のノートPCとして世界最軽量の約761gを実現し(ピクトブラックモデルのみ)、かつ恐ろしく頑丈な、ちょっとやりすぎた感のあるハイスペックモデルに、日本の、いや富士通のものづくりのスゴさに感心したものだ。ここにどんな匠の技が必要だったのだろうかと、工場ではどれだけ複雑で繊細なロボットによる自動製造工程が組み込まれているのだろうかと……。
そんなFMVのノートPCを生産している工場で、夏休みの親子イベントが開催されるというので訪問した。そしたら、なんとそのハイスペックノートPCを子供たちがあっさり自分の手で組み立てているではないか! これがデスクトップPCであれば、親子で自作PCを楽しむという話も聞くのでまだわかるが、ノートPCを、しかも超軽量・薄型のどう考えても精密な作業が必要とされそうなモデルをである。そして組み立てたPCを使ってプログラミング体験までしていた。
プログラミングといえば、小学校の2020年からの「新学習指導要領」に「プログラミングを体験しながら(中略)論理的思考力を身に付ける」という内容が加わり、小学生に対するいわゆる「プログラミング教育」の必修化が正式に決まったことが思い起こされる。就学前の子供をもつ家庭では、今後子供の初めてのPCをどうするべきか、プログラミング学習という観点からも考える必要が出てくるだろう。
その時、子供に最適なPCとは果たしてどういうものになるのか。高性能なデスクトップPCが便利なのだろうか。それともスリムなノートPCがいいのだろうか。今回、子供達によるノートPCの組み立てやプログラミング体験を目にする中で、ハイスペックなスリムノートPCがきっと子供には最適なのかもしれない、と筆者は強く感じたのだった。
総合的な“子供向け性能”も高い「LIFEBOOK UHシリーズ」
子供に最初に使わせたいPCのタイプについては、家庭によって意見は異なるだろう。子供にもストレスなく使えるように可能な限り高性能かつ大画面のデスクトップPCにしたい、あるいは予算の問題で元から自宅にあるPCを共用する形にしたい、など。ビジュアルプログラミングを学ぶだけならタブレットでいいかも、と考える人もいるのではないだろうか。
筆者もこれまでは、子供に最初に触れてもらうPCは、見やすい大画面でフルサイズキーボードの、デスクトップPCや15.6型ディスプレイとかの据え置き型ノートPCが安心ではないか、などと考えていた。親の目の届く範囲で使ってもらうのが前提になるだろうから、移動が容易な小さなノートPCにする必要はない。デスクトップPCや大型ノートPCは、そこそこの性能を、そこそこ安価に手に入れられるのもメリットだ。
ただ、プログラミング教育の必修化と合わせてプログラミング教室にも通うことになるのなら、やはり持ち運びやすさは外せない要素となる。タッチパネルオンリーのタブレットではなく、しっかりしたキーボードがあることも、いずれ本格的にコーディングする際の操作性や、将来的にPCを使い続けることを考えた時には重要なポイントになるはずだ。また、物を乱暴に扱いがちな子供には、その“雑さ”に耐えられる堅牢さも不可欠だろう。
それらの要件を総合的に考えると、「持ち運びしやすくて」「キーボード付きで」「頑丈な」PCということになる。すなわち、デスクトップPCでもタブレットでもなくノートPCであること、そのなかでも軽量・スリムで持ち運びが容易であり、ちょっとやそっとでは壊れない強さをもつこと。結局のところ、大人が真っ先に欲しくなる「LIFEBOOK UHシリーズ」のような高性能モバイルノートPCは子供にも最適なんだな、という結論を出さざるを得ない。
例えば縦横サイズは309×212.5mmで、これはちょうどA4クリアファイルが収まる小さめサイズのランドセルにもすっぽり入る大きさ。重量も冒頭で述べた通り約761g程度で、ノートPC入りのランドセルを背負った時の子供の負担を減らしてくれることは間違いない。
当然ながらキーボードはフルサイズで、一般的なキーピッチとなっている。筐体の厚さ15.5mmという薄型ノートPCにしては少し深めのストロークで、奥まで打ち込んで文字入力していく、しっかりした打鍵感のあるものだ。独立テンキーはないが、それ以外を全て装備した“本物”のキーボードは、早くからキーボード入力に慣れるのにも適している。
こんなに超軽量・薄型でありながら、約200kgfの重量を加える天板全面加圧試験、約76cmの高さからの落下試験といった各種試験をクリアする堅牢性能を誇る※。転んだり、ランドセルなどのカバンごと乱暴に扱っても、簡単には故障しないと思われる頑丈さを備えるのは、親にとって一番安心できる部分ではないだろうか。
※LCD閉状態、本体起動時、底面から垂直落下での落下試験を実施。落下テストは 信頼性データの収集の為であり、製品の耐落下衝撃性能をお約束するものではありません。
子供が自宅や教室で長く頻繁に使い続けることを思えば、コストのみを重視して製品を選び安物買いの銭失いになるより、最初に少しお金がかかっても品質の高いノートPCを長く使えた方がいい。
組み立てたPCが格安で買える、島根富士通のパソコン組み立て教室
毎年、親子向けのイベントとして富士通が開催する「富士通パソコン組み立て教室」は、富士通PCの国内生産拠点である島根と福島で行われている。今回取材したのは、そのうち島根県出雲市にある島根富士通の工場で、主にLIFEBOOKシリーズのノートPCやタブレットを生産している場所。そのためパソコン組み立て教室で扱う機種も、必然的にノートPCやタブレットになる。毎年話題の機種をセレクトしているということで、今年は「LIFEBOOK UHシリーズ」のカスタムメイドモデルである「WU2/B1」が選ばれた。対象は小学5年生から中学3年生、当日の参加者は19組で、県内に住む人たちが中心に集まった。さすがに筆者のように関東から来ている人はいなかったが、大阪や兵庫から参加した人はいたようだ。
今回の参加費用は9万9900円と決して安くはない。いや、正直に言えばけっこう高いが、組み立てたPCは最終的に自分のものになるから、それも納得だ。というか、「WU2/B1」の直販価格は14万円以上だから、少なくとも3割引の価格で購入できることになる。しかもパソコン組み立て教室のカリキュラムには工場見学やプログラミング体験も含まれているので、かなりおトク感のあるイベントと言えるだろう。
パソコン組み立て教室の具体的な内容は、バラバラに用意されていたパーツ群を使い、講師の指示のもと、島根富士通社員がマンツーマンで補助しながら、子供たち(と保護者の方)が1つ1つ丁寧に組み立てていくというもの。とはいっても、さすがに完全にバラバラな細かい電子部品を1から組み立てるわけではない。実際の工場の生産ラインでは、人の手によって221個もの部品を流れ作業で組み付けていくが、このパソコン組み立て教室ではある程度組み上げられた状態の全部で42個の部品を1つのPCとして作り上げていく。
ハンダ付けなど子供にとって危険のともなう作業はないが、それでも1つ手順を間違えれば故障したりOSが起動しなかったりというトラブルに直結するのは間違いない。なにしろ超軽量・薄型のノートPCなのだ。極限まで小型化された電子部品を手で直接扱うのだから細心の注意を払う必要がある。
だというのに、メイン基板の取り付け、ケーブル類の正しい取り回しと接続、液晶ディスプレイやSSDの装着、ねじ留めなどの作業をさほど迷った様子もなくすべての子供が指示通りにこなし、1時間あまりで完成させた。最後に電源を入れると、SSDにセットアップ済みのWindows 10がすぐに起動。当日の受付時に撮影した家族写真がデスクトップに表示されるという演出もなかなかニクい。
ただし、ここで組み立てたノートPCはそのままの形で子供たち家族に渡されるわけではない。島根富士通として通常の品質基準を保ったメイドインジャパン、メイドイン出雲の製品として完成させるべく、イベント終了後にいったん解体され、再び工場社員の手によって組み立て直されてから各家庭に届けられるという。そのため通常の製品保証も付帯するので安心だ。
組み立てが終わった後は、親子全員でノートPCなどを実際に生産している工場内部を見学する。工場で働いている方が実際に行っている組み立て作業に近い体験が可能な、手の込んだゲーム形式のミニイベントも開催されるのが面白いところ。
この日は、自動ねじ供給機から排出されるねじを電動ドライバーの先端でキャッチし、それをノートPCの背面カバーにねじ込んでいく「ねじしめ競争」と、ノートPCのさまざまな搭載デバイスが正しく動作することを確認する検証作業を模した競争が行われた。
組み立てたPCでプログラミング。軽いから親子のコミュニケーションも活発に!?
最後のプログラミング体験では、子供たち自身の手で組み立てたPCを使いWebブラウザー上で動作する「スモウルビー」に挑戦した。スモウルビーはプログラミング言語のRubyの構文をわかりやすいGUIで作り上げるビジュアルプログラミング環境だ。
スモウルビー入門者向けのプリントも見ながらビジュアルプログラミングを体験した
今回は島根県松江市でNPO法人Rubyプログラミング少年団を運営する高尾宏治氏を講師として招き、同氏の指導のもとキャラクターが追いかけっこをするゲームを作る。その過程で、プログラミングとはどういうものか、作成していくうえでどういう思考が必要なのかを学ぶ。
完成したものは、ビジュアルエディター上で十数行分という小さなプログラムだったが、教えられた内容に加えて、子供たち自身のアイデアで工夫して肉付けしていくなど、さっそくプログラミングの“キモ”を捉えて広げていく柔軟さに筆者は舌を巻いた。
子供たちの様子を見ていて感じたのは、「LIFEBOOK UHシリーズ」がスリムなノートPCということもあって、まだ華奢な子供にとっても違和感なく扱えているようだったこと。13.3型のフルHD液晶ディスプレイの鮮明さや、Kaby Lake世代のインテル®︎ Core™ iシリーズやSSDによる快適さは、ちょっとせっかちなこともある子供でもストレスなく扱えそうだ。
なにより本体が軽量なので、外出時だけでなく、子供が家のなかを持ち運ぶのにも苦労しないだろうし、あちこち持ち運んで両親と一緒に画面を見ながらプログラミングについて語り合うなど、PCを通じた親子のコミュニケーションが活発になりそうだな、なんて思ったりもした。
子供にもぴったりの、スリムで高性能
パソコン組み立て教室を終えた後、参加した男の子家族に話を伺った。「組み立てが楽しかった」という子供の率直な感想とともに、母親が「集中してプログラミングに取り組んでいる子供の姿が見られた」ことを感慨深げに語っていたのが印象的だった。「本体が軽量で、気軽に使えるので(子供の初めてのPCには)ノートPCが良かった」とも話した。
また、「PCのなかにいろんな技術が使われていることがわかって楽しかった」と別の家族の女の子。組み立てだけでなくプログラミングも体験したくて参加したとのことで、母親は「自宅では共用のデスクトップPCを使わせているが、やはり子供専用の(持ち運びやすい)PCがあると良い。早くからプログラミングを学ぶのも良いと思う」と語っていた。
超軽量・薄型のスリムな本体のおかげで小さな子供でも扱いやすいのは、やはり「LIFEBOOK UHシリーズ」の中でも軽量重視の構成が可能な「UH75/B1」や「WU2/B1」の一番のメリットということだろう。
ただ、いまだ進化が止まらないPC市場だけに、子供の成長と時代の流れの中でスペック的にすぐに取り残されることになってしまわないか、ということが気になる人もいるかもしれない。でも、富士通直販サイトで購入できるカスタムメイドモデル「WU2/B1」であれば、最初に可能な限りのオプションでベース性能を強化しておくこともできる。長く使い続けたいなら機種やカスタマイズは慎重に決めたいが、子供用だからという理由だけで予算やスペックを抑えるのは避けたいものだ。
島根富士通のスタッフの話によれば、2006年の最初の工場見学に来た子供が10年の時を経て、2016年の昨年、同社に入社したという。今回参加した子供たちも組み立て教室で得た経験を糧に、もっと軽い、もっと高性能なPCを作る! というような志をもって、いずれは富士通に入社することもありえるのかも?
製品名 | LIFEBOOK UH75/B1 |
---|---|
CPU | インテル®︎ Core™ i5-7200U プロセッサー 2.5GHz(最大3.1GHz) 2コア/4スレッド |
OS | Windows 10 Home 64ビット |
メモリ | DDR4 SDRAM 4GB |
グラフィックス機能 | Intel®︎ HD Graphics 620(CPU内蔵) |
ディスプレイ | LEDバックライト付高輝度・高色純度・広視野角 TFTカラーLCD(ノングレア液晶) |
画面サイズ | 13.3型ワイド |
画面解像度 | 1,920×1,080ドット |
ストレージ | SSD 約128GB |
インターフェース | USB 3.1 Type-C×1、 USB 3.0×2、 HDMI×1、 LAN(1000BASE-T)×1、 SDメモリーカードスロット×1、 3.5mmステレオミニジャック×1 |
無線機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN Bluetooth v4.1 |
バッテリ容量 | 内蔵リチウムイオン25Wh |
バッテリ駆動時間 | 約8.3時間 |
本体サイズ | 幅309mm×奥行き212.5mm×厚み15.5mm 突起部含まず |
質量 | ピクトブラック: 約761g サテンレッド:約764g |