13.3型で超軽量のモバイルノートPCが富士通から登場した。1月に発表されたばかりの「LIFEBOOK UH75/B1」(以下、UH75/B1)は、CPUにKaby Lake世代のインテル® Core™ i5-7200U プロセッサーを搭載したモバイルノートPCだ。その重量は約777g。それまでのモバイルノートPCから大きく隔たった軽さと、それでいて非常に頑丈なボディ、それでいてキーボードなどの使い勝手を犠牲にしない、唯一無二の特長を持ったモバイルノートPCである。
中身が入っていることを疑うレベルの軽さ。
超軽量13.3型モバイルノートPC
UH75/B1はとにかく軽い。手に持った多くの人は、中身が入っていないモックかも、と感じてしまうと思う。見た目が普通の13.3型のモバイルノートPCなので、その外観から想像する重さと、実際に手に感じる重さとのギャップが凄まじく、さすがの約777g!などと感嘆の声を漏らしてしまうほど。これが、もっとプラスチックのような質感だったり、安っぽいデザインだったりしたのなら感じ方も変わると思うが、ボディの質感もデザインも高級感があるので、余計に軽く感じてしまう。
この軽さ、何か身近なもので重量が近いものはないかと思い、もしかしてと量ってみたら、筆者の春夏物のスーツの上着が約750gでほぼ同じ重さだった。ああ、これは軽く感じて当たり前である。スーツの上着を重いと感じることなんてまずないわけで、ノートPCがそれと同じ重さというのはやはり驚異的と言える。気になったのでほかにも身近なものを測ってみたところ、普段使っている綿100%のトートバッグが約800g、ノートPCなどを持ち歩くときに使っている合成皮革のビジネスバッグが約860gだった。ノートPCよりもバッグが重いというのはちょっと問題だ。先にバッグの軽量化が必要かもしれない。ちなみに、UH75/B1の重さは公称約777gだが、試用した実機を計測したところ、個体差のためか、公称値よりさらに軽い約767gだった。
日本メーカーらしい徹底した軽量化。
しかも人が乗っても壊れない
UH75/B1の軽さの秘密は、日本メーカーらしい徹底した軽量化にある。見た目ですぐに分かるところでは天板の軽量化だ。近くで見ても、触ってみても、何でできているのか分からないような未知の雰囲気が漂うこの天板は、実用金属としては世界最軽量というマグネシウムリチウム合金でできている。
マグネシウムリチウム合金は、軽量ノートPCによく使われているマグネシウム合金と比べて、剛性はほとんど変わらず、より軽いという特長を持つ合金だ。一定の強度を維持したままでさらなる軽量化を行うためには、従来のマグネシウム合金ではほぼ薄さの限界に達してしまっている。そこで採用したのが新素材というわけだ。ただし、このマグネシウムリチウム合金はかなり高価なので、UH75/B1では、そのメリットをもっとも活かせる天板にのみ使用している。それ以外のキーボード面と底面は、薄肉成形で軽量化を行った通常のマグネシウム合金製だ。マグネシウムリチウム合金だけでできた超軽量ノートPCも見てみたいが、買えない価格のノートPCになってしまっては意味がない。ただ、今後のさらなる軽量化の方法が残っているということで、将来的に素材の価格が落ちれば、フルマグネシウムリチウム合金製の買える価格帯のモバイルノートPCが富士通から出てくるかもしれない。
そのほかの見える部分では、液晶の薄型化による軽量化がある。同じ富士通の13.3型のモバイルノートPCに、約1.3kg程度の重さのLIFEBOOK SHシリーズがある。その通常のモバイルノートPCの液晶と比較して、UH75/B1は液晶のガラスを0.25mmから0.2mmに0.05mm薄くし、LEDバックライト(導光板)を0.6mmから0.4mmに0.2mm薄く、反射シートを0.15mmから0.1mmに0.05mm薄型化している。3つで計0.3mm、組み上げた状態で0.4mmの薄型化である。随分と小さな数字だが、液晶は面積があるので、これで約20%の軽量化を達成しているという。なお、そんなに薄くて大丈夫なのかと思うかもしれないが、マグネシウムリチウム合金製の天板の剛性の高さもあり、液晶部分に強度や剛性での不安はまったくない。
もちろん軽量化はこれだけではない。見えない部分での軽量化も徹底して行われている。その1つが基板の軽量化だ。基板は、従来の1mm厚から0.75mm厚に25%の薄型化を行っており、さらに配線が通っていないところに穴を空けるという、ミニ四駆などを彷彿させることまでして軽量化を行っている。この基板の穴には、放熱面でのメリットもあるとのことだ。ほかにはバッテリ周りにも手を入れており、フレーム方式のバッテリにすることで、同じスペックの従来のバッテリと比べて約20%の軽量化を実現している。
なお、これだけの軽量化を行っていてもUH75/B1はかなりタフだ。全面に対する加圧試験は約200kgfをクリアしており、1点に対する加圧試験では約35kgfをクリア、約76cmの高さからの落下試験のクリア(※)など、高い堅牢性を実現している。その堅牢性はどれほどのものなのかという例として、閉じた状態のUH75/B1の上に人が乗り、その後に問題なくPCが起動するというデモを製品発表会で行っていたほどだ。さすがに借りている実機に乗るわけにもいかず、試しに天板の上から強く押してみたり、本体をねじってみたり、手に持って軽く振り回してみたが、とにかく剛性が高く、まるで1枚の板のようだ。その軽さからは想像できないほど、しっかりとしていて安心感がある。
(※) LCD閉状態、本体起動時、底面から垂直落下での落下試験を実施。無破損、無故障を保証するものではありません。落下テストは信頼性データの収集のためであり、製品の耐落下衝撃性能をお約束するものではありません。また、落下した場合は必ず点検・修理(有料)にお出しください。
軽いだけでなく使いやすさも重視。
ユニークな2段階押下圧のキーボードを搭載
UH75/B1は軽いだけでなく、コンパクトで薄い。本体サイズは、底面のゴム足や液晶カバーのラッチを含まない公称値で横幅309mm×奥行き212.5mmと、ほぼA4サイズだ。厚みは15.5mmである。触ったり、持ったり、使ったりした印象は、とても使いやすいということ。重量に関しては極端に軽いが、だからといって他の部分の使い勝手やデザイン性を犠牲にしているわけではない。たとえば、極端な薄型化を行ったノートPCでは、まず液晶を開けるところから開けづらいものもあるが、UH75/B1では液晶カバーのラッチでも、端っこでも、それ以外のところでも、どこを持っても開けやすい。適度な薄さで持ちやすく、鋭角になっている部分や尖っている部分がないのでバッグなどにも引っかかりなく入れやすい。よくできたデザインだ。
無理な小型化をしていないおかげでキーボードも使いやすく、キーピッチはフルサイズの約19mmを実現している。キーストロークは約1.2mm。富士通独自のユニークな仕組みとして、キーを押すときの重さがキーによって異なっており、Enterキー、Shiftキー、Tabキー、Caps Lockキー、Ctrlキー、Spaceキーなど小指で押すキーはタッチが軽くなっている。この2種類の重さ設定によって、文字を入力してから軽いキータッチのSpaceキーでタタンッと軽快に変換したり、同様にEnterキーで気持ちよく決定したりできるなど、リズム感のある軽快な入力が可能になっている。タッチパッドも含めてキーボード面にはスペースに余裕があるので、モバイルノートPCとしてはかなりゆったりとして使える。
UH75/B1の本体カラーは2色あり、この記事で使用しているのが「ピクトブラック」、もう1つが「サテンレッド」だ。サテンレッドは、下地のブラックの上にシルバーを2回重ね、その上に赤を塗装する4層塗装によってかなりの高級感を出している。また、天板だけでなくキーボード部分の側面にも赤を配すことで、スタイリッシュさを増している。
一方のピクトブラックは真っ黒ではなく少し薄めの黒色で、表面に不規則な細かい模様が入っている。手触りはサラサラしていて、前述した通り材質が何であるのか分からないような新素材感にあふれていて独特の質感だ。サラサラ度合いはかなり高く、汗をかいた手で触ってもべと付かないし、指紋も付かないし、汚れも目立たない。一言で言うなら、サラサラノートPCだ。指紋や汚れを気にしなくてよいのでとても快適に使える。
最新のUSB 3.1 Type-Cポートを搭載。
モバイルノートPCでも充実のインターフェース
続いてインターフェース面を見てみる。右側面には、USB 3.0ポートが1ポートと、1000BASE-Tに対応した折り畳み式のLANポートに、SDメモリーカードスロットを搭載している。左側面には、USB 3.1 Type-Cポート(Gen1)が1ポートに、電源がオフのときでも給電を行えるUSB 3.0ポートが1ポート、HDMI出力端子、マイク入力とヘッドホン出力兼用の3.5mmステレオミニジャックがある。
見ての通りモバイルノートPCとしては十分なインターフェース構成で、多くの人はこれで不足を感じるということはないだろう。使用感としては、USB 3.0ポートが左右に1ポートずつあるのが便利である。これがどちらか片側のみへの搭載だと、片側のスペースをいつも空けておかなければならないので結構不便なのだ。
USB関連では最新のUSB 3.1 Type-Cポートも搭載しており、 対応スマートフォンを充電したりできる。当然USB Power Deliveryにも対応しているので、UH75/B1の場合には20V/3Aの給電を行えるモバイルバッテリーなどを使えば本体の充電も可能だ。スマートフォンのように、外出先で充電を行えるというのは大きなメリットである。
USB 3.1 Type-Cポートに市販のHDMI変換アダプタをつないで、さらに左側面にあるHDMI端子も使えば、本体の液晶と合わせて3画面環境だって実現できる。USB 3.1 Type-Cポートは今後どんどん普及していく見込みなので、今は使う予定がなかったとしても、将来的にはあって良かったと思うときが来るだろう。拡張性の面でUH75/B1の大きな利点となっている。
キーボード面の右下には、富士通のPCの代名詞的存在ともいえる指紋センサーを搭載している。指紋を登録しておけば、Windowsのサインインや対応サービスなどのパスワード入力を指紋認証で行うことが可能になる。指紋認証は簡単かつスマートにセキュリティを高めることができるのでスマートフォンやモバイルノートPCへの搭載が進んでいるが、富士通は10年以上前から個人向けPCに指紋センサーを搭載してきた実績がある。
そのほか、液晶の上部には約92万画素のWebカメラとデジタルステレオマイクを搭載している。スピーカーはステレオスピーカーで、搭載場所は底面の手前側の左右だ。オーディオ補正機能として、WavesのMaxxAudioソフトが入っているので、内蔵スピーカーでも比較的低音から高音まで聞きやすい音を鳴らすことができる。ヘッドホン端子からのサウンド出力は192kHz/24bitのハイレゾ音源に対応しており、ハイレゾ対応のスピーカーやヘッドホンを接続すれば高音質なハイレゾサウンドを楽しむことが可能だ。
メモリは4GBで大丈夫なのか? 実使用での性能をチェック
最後に性能面を見ていこう。UH75/B1の基本スペックは以下の表の通りだ。また、上位モデルの「UH90/B1」も存在するほか、富士通の直販サイト「WEB MART」ではスペックをカスタマイズできる カスタムメイドモデル も用意されている。
製品名 | LIFEBOOK UH75/B1 |
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CPU | インテル®︎ Core™ i5-7200U プロセッサー 2.5GHz(最大3.1GHz) 2コア/4スレッド |
OS | Windows 10 Home 64ビット |
メモリ | DDR4 SDRAM 4GB |
グラフィックス機能 | Intel®︎ HD Graphics 620(CPU内蔵) |
ディスプレイ | LEDバックライト付高輝度・高色純度・広視野角 TFTカラーLCD(ノングレア液晶) |
画面サイズ | 13.3型ワイド |
画面解像度 | 1,920×1,080ドット |
ストレージ | SSD 約128GB |
インターフェース | USB 3.1 Type-C×1、 USB 3.0×2、 HDMI×1、 LAN(1000BASE-T)×1、 SDメモリーカードスロット×1、 3.5mmステレオミニジャック×1 |
無線機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN Bluetooth v4.1 |
バッテリ容量 | 内蔵リチウムイオン25Wh |
バッテリ駆動時間 | 約8.3時間 |
本体サイズ | 幅309mm×奥行き212.5mm×厚み15.5mm 突起部含まず |
質量 | ピクトブラック: 約761g サテンレッド:約764g |
CPUには、Kaby Lakeコアで2コア/4スレッドに対応する最大3.1GHz動作のインテル® Core™ i5-7200U プロセッサーを搭載している。メモリはDDR4-2133を4GB搭載し、ストレージは約128GBのSSDだ。液晶は13.3型で解像度は1,920×1,080ドット、画面の表面が完全なノングレアなので明るい場所でもほとんど映り込みがなく見やすい。ブルーライトカット機能も搭載しており、機能をオンにすると画面表示が暖色系の色に変わり、長時間使用時に目に優しい。
CPUやメモリなど、モバイルノートPCとしては十分なスペックで、とくに性能に不足を感じるような部分は見当たらない。ストレージの約128GBも、ノートPC本体に大量の写真を保存しなければならないとか、動画を扱わなければならないといった用途でない限り不足に感じることはないだろう。なお、初期状態のUH75/B1の場合、ストレージの空き容量は128GBの内、約75GBだ。スペック面でほかに気になるとしたらメモリ容量だろうか。Windows 10なら4GBで十分だと思うが、この部分に不安を感じてしまう人は多いかもしれない。
というわけで、実際に使ってみて性能面をチェックしてみた。具体的には、Webブラウザ、Word、Excel、PowerPointの使用、YouTubeなどの動画のストリーミング再生、PDFファイルの閲覧、写真ファイルのraw現像、写真ファイルの画像加工などだ。
まず、WebブラウザやOffice関連のソフトなどは快適そのものでサクサク使えた。想像以上に快適だ。詳細に見ていくと、WebブラウザはMicrosoft Edgeを使い、タブ3つでそれぞれWebサイトを開き、2MBのPDFファイルを開いて、さらにかなり大きめの160MBのPDFファイルを開いて使った。Wordはテキストのみの100KB程度のファイルを開き、Excelは多少図が入っている約1MBのファイルを使用。PowerPointは画像を多用した50ページで20MBほどのファイルを開いた。これらをそれぞれ開きっぱなしで編集などを行ったが、まったく動作がもたつくことはなかった。
続いて、そのままの状態でフリーソフトのUFRawで12MBのrawファイル2つの現像を行い、フリーソフトのGIMPで現像後のjpgファイルを開いてトリミングや漫画効果などの画像処理を加えてサイズ変更をして保存。さらに平均6MBのjpgの画像ファイル4つを開いて同様に加工などを行った。この一連の作業では、それぞれ処理待ちの時間はあるものの、特に遅いと感じる部分はなかった。
そして、最後にMicrosoft EdgeでYouTubeの1080P画質の動画を見てみた。こちらも何の問題もなく、スムーズに再生することができた。ここまで、使用したソフトもファイルも閉じておらず、すべて開いた状態だ。この状態でタスクマネージャーを確認すると、メモリの使用量は2.8GB/72%の表示となっていた。余程激しい使い方をしない限りは、4GBのメモリで十分に足りるようだ。また、CPU性能に関してもモバイルノートPCということを考えると十分以上の性能と言える。なお、バッテリ駆動時間は、それらのテストと原稿を書いたり資料を見たりといった使い方でずっと使い続けて4時間38分動作した。別の日に、動画を2時間ほどと、そのほかテキストエディタやExcelなどを使ったときはちょうど4時間動作した。カタログ値は約8.3時間駆動となっているので、ネット動画視聴などの重い動作をさせなければ、より余裕のある駆動時間を実現できるだろう。
ちなみに前述の通り、富士通のWEB MARTでは カスタムメイドモデル が用意されているが、そちらならメモリは最大約12GB、ストレージは最大約512GB SSDまで搭載できるので、気になる人はぜひチェックしてみよう。
ただ軽いだけじゃなかった。何年も使えそうな安心感がある
UH75/B1の最大の特長は、何と言っても約777gの本体重量だが、十二分な堅牢性や、軽さを追求しただけではない使いやすさなど、最大の特長がオマケに感じてしまうほどの徹底した作り込みが見られる。やろうと思えばもっと薄くできただろうし、もっと小さくもできたと思うのだが、そこは使いやすさを重視して、キーピッチ約19mmのキーボードを搭載したり、使いやすい厚さになっていたりと、あえてそうしていないと思われる部分が多いのだ。
最近は、薄さだけを重視したノートPCや、デザインだけを重視したノートPC、ゲーム用のスペックだけを重視したノートPCなど、使う側のことを考えているとは思えないノートPCが増えている。軽さという最大の武器を持ちながら、それだけでは満足せず、使い手のことを考えてバランス良くほかの部分も重視したモバイルノートPC、それがUH75/B1と言えるだろう。
軽いので持ち歩くことに躊躇を感じないし、頑丈なので外出時も安心して使えるし、性能面でも不足を感じない。モバイルノートPCとしては理想に近いノートPCであり、昔ながらの日本製ノートPCらしい、何年使っても壊れる気がしない職人の逸品的なモバイルノートPCである。