モバイル機器でのテレビ視聴環境が整うにつれ、スマホやタブレットでテレビを視聴したり、HDDレコーダーからネットワーク視聴することが一般的になってきた。そのせいもあってか、以前は隆盛を誇った「テレビパソコン」もジャンルとしては縮小傾向だ。
そんな中で、「PCでテレビを見る」ことの楽しさや便利さをさらに発展させているメーカーのひとつが富士通だ。2015年夏モデルのデスクトップPC「ESPRIMO FH77/UD」も、これまでのESPRIMOシリーズの流れを受け継いで、というか、新モデルのリリースやソフトウェアアップデートを長年に渡って重ねてきたことで、今やかなり充実したテレビ機能を誇っている。
地上デジタル・BS・110度CSデジタル放送を視聴+録画できるデュアルチューナー搭載機(1つは視聴専用)である点は、テレビチューナー付きPCなら今やさほど珍しいことではない。けれど、FH77/UDのテレビ視聴を取り巻くアプリケーションの豊富さや機能を見ると、他のPCや普通のテレビではカバーできない、いろいろな楽しみ方ができることが分かる。今回はそんな「FMVでテレビ視聴」の良さをサクッと紹介してみよう。
PCでテレビを見る利点、それは……
ところで、普通のテレビではなく、PCでテレビを見ることの利点って何だろうか。テレビ番組を小窓で表示しながらWebも見られる? テレビ番組を横目で見ながらTwitterで「バルス!」とか書き込める? あるいはテレビとPCが一体になっているから、テレビ1台分部屋のスペースに余裕ができる?
それはそうなんだけれど、個人的にはあらゆる映像コンテンツの視聴が1台の中で完結するところがキモなんじゃないかと思っている。テレビのリアルタイム視聴と、HDDに保存した録画番組の再生に加えて、動画配信サービス「hulu」や「Xbox Video」による映画鑑賞、YouTubeやニコニコ動画の投稿動画のチェック、Ustreamによるライブ映像の受信、そして自分で撮影したり他の人から受け取ったりした動画ファイルの再生など、マルチソースをある意味統合的に、スムーズに扱えるのは、今のところPCしかないのだ。
もちろん家電メーカー各社も、最新のテレビではネットの動画コンテンツにアクセスできるようにしたり、新しいOSプラットフォームを採用して視聴できるコンテンツの種類やユーザー体験を増やしたりしている。でも、そんな「スマート(的な)テレビ」と同等かそれ以上の機能・性能をすでにPCはもっているし、操作性については基本的にリモコンしかないテレビとは比較にならない。多数の映像コンテンツをスムーズに切り替えながら見ていける、という点においても、PCのメリットは大きいのだ。
視聴と録画以外にも、テレビを面白く快適にする機能がいろいろ
そんな利点がある一方で、FH77/UDのテレビ関連機能に注目してみると、どんなところが便利で、優れていると言えるのか。デュアルチューナーで視聴中の裏番組の録画が可能なこと、録画画質(番組データサイズ)を変えつつ約2TBという大容量の内蔵HDDに保存していけるのは、一般的なテレビやレコーダー専用機とさほど変わらないかもしれない。USB HDDを増設することで録画容量を増やせるのも、同じ。ただ、PCの場合は内蔵HDDをテレビ録画以外の用途で使うことが多いから、やはりHDDを増設してたんまり録画していけるのはありがたいものだ。
画質面では、FH77/UDのディスプレイが多くのテレビと同様フルHD(1920×1080ドット)なので、テレビ放送の映像品質を余すところなく再現できる。また、通常のテレビだと細かく画質設定を行える機種があるが、FH77/UDもディスプレイドライバ側で映像の画質設定を自在にカスタマイズ可能。明るさ、コントラスト、色相、彩度、RGB/CMYの各色要素などを簡単に調整できる。あまりやり過ぎると大胆に画質が変化してしまうので、慎重に調整して自分好みの見た目にしていきたい。
視聴に関連する機能では、当然のごとく字幕やデータ放送に対応しているのと、データ放送については最新の「Hybridcast」にも対応している。これは、現在主流のデータ放送を置き換えるべく開発された次世代のデータ放送技術で、より詳細な情報を、より高度な表現で、高速に閲覧できるようにしたもの。現在対応しているのはNHKの総合、Eテレ、BS1、BSプレミアムに限られているが、最新のテレビにしか搭載されていないHybridcastにもしっかり追随しているのは、ポイントが高いと思う。
次に録画関連の機能を見てみよう。特に注目したいのは、テレビ視聴用アプリケーションである「DigitalTVbox」に用意されている、録画済み番組の編集機能だ。この編集機能は、再生時にどの部分を視聴して、どの部分をスキップするかを細かく設定できるもの。要するに、CMはスキップして番組本編を間断なく見られるようにしたいときに使えるわけだ。
といっても、いちいちCMはここからここまで、本編はここからここまで……というように手動で設定する必要はない。ほとんどの場合は録画時に自動でインデックスが付加され、CMと自動判定された部分はスキップするように設定される。ただし、場合によってはCMの開始と終わりが正確に判定できないこともある。番組本編として正しく判定されていても、気に入らないコーナーは見たくないと思うこともあるだろう。そんなときは編集機能を使って、簡単にスキップしたい部分を追加したり、逆にスキップする部分を減らしたりできる。不要なCMを完全に削除した番組ライブラリーや、自分のお気に入りシーンのみに絞ったオリジナルライブラリーを作り上げる、といったことも可能になるのだ。
リアルタイムリモート視聴に対応。もう絶対に見逃さない
通常のテレビやレコーダーにはあまり見られない、FH77/UDならではの機能といえば、スマートフォンやタブレット、モバイルPCなどとの連携が強化されている部分だろう。もともとFMVでは、直接PC本体でテレビ番組を見る方法だけでなく、モバイル端末を使って視聴できる機能も用意されている。
今回のFH77/UDで初めて利用可能になったのが、今まさに放送しているテレビ番組をモバイル端末からリアルタイムで視聴する機能だ。Windows/Android/iOS対応アプリ「StationTV」を利用することで、FH77/UDで受信中の番組をiPhoneやAndroidスマートフォン、Windowsタブレットなどでリアルタイム視聴できるほか、有料プラグインを追加することで外出先からのリアルタイム視聴まで可能となる。これさえあれば、放送中のテレビ番組を見たいがために風呂やトイレに入るのをためらったり、出張先で見たかった番組が放送されておらず見るのを諦める、といったこともなくなるだろう。
また、「StationTV」では外出先からリモート録画予約する機能も備えている。これさえあれば、自宅から離れているせいでいつも楽しみにしている番組を見逃すようなことはもうない。家にいても、いなくても、同じようにテレビのある生活を満喫できること間違いなしだ。
もちろん、録画済み番組を楽しむのも簡単だ。FMVなら、上図にある通り、ホームネットワーク内での視聴、外出先からのリモート視聴、外出先への持ち出し視聴に対応している。
ホームネットワーク内から視聴する際には、FMVの「PIXELA Digital MediaServer設定ツール」でコンテンツの共有設定を済ませておけば、iOS/Android版の「My Cloud プレイ」アプリをはじめとするDTCP-IP対応のアプリからFMV内の録画番組に簡単にアクセスできる。
外出先からのリモート視聴機能は、DTCP+という技術を利用したもので、最初だけPCと同じLANでモバイル端末から接続して設定する必要があるが、以降はPCを置いている自宅を離れ、外出先からインターネット経由で自宅PCにアクセスし、録画済み番組を見ることができる。モバイル端末側は、iOS/Andorid版の「My Cloud プレイ」アプリなど、DTCP+対応の視聴アプリをインストールしておこう(※富士通のAndroid製品(13年以降のモデル)にはDTCP+対応のDiXiM Playerがプリインストール済)。自宅のインターネット回線やモバイルネットワークの通信速度によって映像品質が左右されるけれど、iOS/Android版「My Cloud プレイ」上で画質設定を行えるので、場面に応じてベストな設定を選ぼう。
リモート視聴時でも最高の画質でスムーズに再生したいなら、iOS/Android版「My Cloud プレイ」の番組持ち出し機能を利用するのがおすすめ。あまり多くの番組を一度に持ち出そうとすると、モバイル端末のストレージ容量を圧迫してしまうので注意したいが、前日に録画した番組を通勤・通学時の電車内や休憩時に見るとか、その日その日で持ち出す番組を入れ替えつつ楽しむような使い方が良さそうだ。
チューナー内蔵じゃなくても、テレビは見られる!
このように、FH77/UDではテレビ番組の視聴・録画がフツーのテレビ・レコーダーと遜色なくできるうえに、モバイル端末からのリモート視聴も可能になっていて、より幅広いシチュエーションで楽しめることがお分かりいただけたのではないかと思う。
「でもチューナー内蔵のFMVじゃないとダメなんでしょ?」なんて思う人もいるかもしれないけれど、実は、チューナーを内蔵していない一般のPCでもテレビを楽しむ方法がある。それは、「FMV-NTV1」というネットワークテレビチューナーを使う方法だ。
詳しいことは以前の記事をご覧いただきたいが、「FMV-NTV1」さえあれば、今回紹介したようなPC上での番組視聴と録画から、モバイル端末上での視聴、さらにはリモート視聴まで可能。デュアルチューナーではないので、裏番組の視聴やリモートからのリアルタイム視聴は残念ながらできないけれど、それでも十分にテレビを満喫できるのではないだろうか。
繰り返しになってしまうが、以上のようなテレビ視聴にまつわるあれこれのエンタメをPC1台でこなせてしまうのが、FH77/UDのフツーのテレビやレコーダーにはない面白いところ。なにもリビングに置いた大画面テレビにこだわることはない。PCでもっと気軽に、もっと高度に、いろいろな角度からテレビを楽しんでみてはいかが?
品名 | ESPRIMO FH77/UD |
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CPU | インテル® Core™ i7-4712MQ プロセッサー (最大3.30GHz) |
OS | Windows 8.1 Update 64ビット版 |
ディスプレイ | 23型ワイドフルHD[1920×1080] 広視野角 スーパーファインVX液晶 |
メモリ | 8GB/最大16GB |
ストレージ | HDD 約2TB |
光学ドライブ | BDXL対応 Blu-ray Discドライブ(スーパーマルチドライブ機能対応) |
ネットワーク | LAN(1000BASE-T対応)、ワイヤレスLAN(IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠)、Bluetooth ワイヤレステクノロジー Ver.4.0準拠 |
テレビ | 地上・BS・110度CSデジタル(ハイビジョン/視聴専用)+地上・BS・110度CSデジタル(ハイビジョン/録画・リモート視聴専用/AVCREC対応) |
拡張I/F | ダイレクト・メモリースロット(SDXCカード対応)、USB3.0×4/USB2.0×2 |
サイズ(W×D×H)突起部含まず | 544×158×418mm(本体最小傾斜時) 544×229×395mm(本体最大傾斜時) |
主な付属品・ソフト | Office Home & Business Premium プラス Office 365 サービス、ワイヤレスマウス、ワイヤレスキーボード、ACアダプタ、miniB-CASカード、リモコン等 |