最初からこんな発言をしたらドツカレるかもしれませんが、私、今をときめく「タブレット」には、まったくといっていいほど食指が動かない派でした。
いや、カッコいいとは思いますよ? 打ち合わせの席で、スッとしたイケメン兄ちゃんが、まるでタクトを振るように軽やかなフィンガーテクニックで画面をタッチしてる情景などは文句なしに。でも、そもそも私なんて冴えないオッサンだし……というのは置いておくとして、作業効率を求めたらデスクトップPCに愛用のキーボードとマウスというのがいちばん良いし、外出先で使うならスマホが手軽で便利だし、取材先でメモをとるなら昔ながらのノートPCが文字を打ちやすいですし。趣味のゲームや動画を楽しみ倒すなら、PCならではのパフォーマンスが重要なので、タブレットでは力不足ですし。……白状します。私、タブレットに「中途半端」ってイメージを持ってました。アウトドアで大画面が必要っていうシーンでなければ力を発揮できないもんだと思ってました。
そんな頭の固い旧人類の私にとって、今回試用した「ARROWS Tab QH77/M」はまさに黒船襲来級の衝撃。何種類ものPCやモバイルギアを一生懸命に使い分ける必要なんてなくて、これ1台でいいんじゃない!?と、脳内回路が根底からくつがえる優れモノでした。
1台全役。これ、理想的なPCのカタチなのかも!?
そんな劇的意識改革を私にもたらしてくれた「ARROWS Tab QH77/M」はどんなPCなのかというと、「どんな悪条件下でも使い倒せる防水12.5型タブレット」「スリムキーボードとドッキングさせたスリムで使い勝手がいいノートPC」「別売のクレードルにセットし、インテル® Core™ i5 プロセッサーのパフォーマンスを満喫できるデスクトップPC」の1台3役、いや、1台全役のPC、となります。
これ、これです。「3つのスタイルがどれもツカエル!」。これぞQH77/Mの最大のポイント。キーボードやクレードルがタブレットの単なるオマケじゃない!のです。スタイルやシーンに合わせまったく別の魅力的な顔を見せてくれる、それはまるで、とびっきり魅力的で包容力のある美女の誘惑のごとく……とまでは飛躍しすぎですが、とにかく私、惚れちゃったんですね。
まずは基本的なスペックをご紹介しましょう。
品名 | ARROWS Tab QH77/M |
---|---|
CPU | インテル® Core™ i5-4200U プロセッサー (最大2.60GHz) |
OS | Windows 8.1 64ビット版 |
メモリ | 4GB (2GB x 2オンボード) |
ストレージ | SSD 約128GB |
液晶 | 12.5型ワイドフルHD[1920×1080] IPS液晶 フルフラットファインパネル(タッチ/ペン入力対応) |
サイズ | W309.6×D199.3×H11.9mm(タブレット単体) W309.6×D212.7×H20.0mm(スリムキーボード接続時) |
質量 | 約980g(タブレット単体) 約1.67㎏(スリムキーボード接続時) |
駆動時間 | 約16時間(タブレット単体) 約13時間(スリムキーボード接続時) |
付属ソフト | Microsoft Office Home and Business 2013ほか |
う~む、こりゃなかなかのスペックです。CPUは低消費電力とハイパフォーマンスを両立させたインテル® Core™ i5-4200U プロセッサー。メモリも標準で4GB積んでますし、ストレージは約128GBのSSD。ちなみに、富士通の直販サイト WEB MARTで購入できるカスタムメイドモデルでは、さらに高性能なCPUも選べますので、動画のエンコードなどマシンパワーを要求される作業がメインの方にも頼もしいところです。
バッテリー容量に制約があるタブレットですが、本機の搭載CPUは最新のHaswellアーキテクチャ。通常は低消費電力モードで動作するため駆動時間に不安もありません。LEDバックライトの液晶は、クリアで鮮やかな描画を実現しつつ低消費電力。それに、何といっても画面が大きいのがいいですね。8インチあたりのタブレットとは比較にならない広々画面にうっとりです。
使用場所を選ばない「タブレットスタイル」でツカウ!!
では、QH77/Mの3つのスタイルは、どこがどれだけ「ツカエル」のでしょうか。私の使用シーン限定の話になってしまいますが、使い倒してみて気付いた点をレポートしましょう。まずは、「タブレットスタイル」でのツカエル度チェックから。
真っ先に持ち出してみたのは、オートキャンプの撮影現場です。アウトドアってのは苦労の連続でして、風が吹けば資料が吹き飛び、雨が降ればメモ用紙はグチャグチャ。陽が落ちれば何にも見えない。ずっと立ちっ放し動きっ放しで荷物置き場は土の上。もうとにかく、ありとあらゆる悪条件が揃ってるわけです。
こんな試練の現場での、QH77/Mのツカエル度はまさに頂点クラス。12.5型のでっかい画面は複数のウインドウを開いての作業でも小さな文字がハッキリ読めるうえ、簡単に呼び出せるメニューからLEDバックライトの輝度を最大にしておけば、陽光燦々の下でも画面の視認性は十分。さらに、IPX5/7/8の防水設計とIP5Xの防塵設計が実に頼もしく、多少の泥はねや水濡れにも耐えられるのです。
IPX8がどのくらいスゴイかというと、水深1.5mのところに30分沈めておいてもビクともしないといいますから、こりゃもう圧倒的タフネス。タッチパネルディスプレイの素材も、キズや汚れ、衝撃をものともせずにはね除ける高強度ガラス「Dragontrail」。ホコリまみれになってもウエスで拭けばピカピカ状態に復活してくれるので、ビビリながら使う必要なんてありません。
あれ? と気付いたのが冷却ファン。インテル® Core™ i5-4200U プロセッサーを搭載するQH77/Mは、ハイパフォーマンスと引き換えにCPUの冷却が必要になります。空気を吸い込んで吐き出して冷やすのに防水? と思って調べてみたら、水中でも使えるモーターと、タブレット内部から独立した冷却風ダクトを使ってるとか。この薄さの中にこだわりの構造を詰め込むってのは、さすが日本のものづくりだなあと感心しました。ちなみにこの冷却ファン、アウトドアではほとんど気付きませんが、インドアだとCPUの負荷に合わせきめ細かに作動していることがわかります。”シュー”というやわらかな音質なので、深夜でも耳障りではないでしょう。
付属のワコム製スタイラスペンでのフリーハンドメモ書きも実に快調。ラフレイアウトや手書きコンテ、撮影スケジュールなどにあれやこれやと殴り書きをしながら撮影するんですが、これが紙での作業以上にスピーディで確実なんです。指につばを付けてページをめくる必要もないですしね。
で、ここで驚いたんですがこのQH77/Mのペン入力、細い線も太い線も筆圧次第、紙への手書きのような表現もスイスイとこなせるんですね。1024階調の筆圧を表現するんだそうですが、ひと昔前のペン入力とは比較にならないほど自然な書き心地と表現力には脱帽です。防滴ペン(IPX2)なので雨の中でも使えるし、いうことなし。手描きしたデータをPCで整理したり他人とメールやソーシャルで共有できるのも、当たり前ですが超便利です。
あと、こりゃいいやと思わせてくれたのは筐体の表面処理。背面の仕上げがパターンテクスチャになってまして、濡れた手で無造作につかんでも滑りにくいんですよね。指紋汚れでベタベタになる不快さも追放。各種操作ボタンの配置が適切なので誤操作も防いでくれます。
アウトドア撮影という悪条件下でもここまで活躍してくれるんですから、一般的なインドアワークなんぞ鼻歌交じりでこなしてくれることでしょう。筐体には指紋認証センサーが搭載され、プライバシー保護やセキュリティ面にも抜かりはありません。
もちろん、ビジネスシーンだけでなく遊びの最前線でも大活躍です。万年床に寝転がり、ニコニコ動画観賞や、ブラウザゲーム「艦これ」に勤しんでみましたが、やっぱり大画面はイイ! 布団の上でゴロゴロしながらネットやゲームを楽しむっていうのは、タブレットの主役的な使い方だと思いますが、QH77/Mの美点は画面がデカいだけじゃありません。フルHDだけあってハイビジョン動画が本当にキレイだし、これだけの薄型ボディにしてはサウンドも頑張ってます。
3Dゲームはさすがにやや重いですが、ブラウザゲーム程度ならパフォーマンスも問題なし。全画面動画や古鷹さん(※注:「艦これ」ゲーム内のキャラ)のお姿などが思う存分堪能できますし、スタイラスペンを本体内に収納したまま、指先だけでの操作もスムーズでした。DTCP-IP対応のブルーレイディスクレコーダーなどと連携させれば、布団のなかでも入浴中でも撮り貯めた深夜アニメなどをフルハイビジョン画質でチェックできます。
取材先で原稿入力スイスイの「ノートPCスタイル」でツカウ!!
お次は付属のスリムキーボードと組み合わせた「ノートPCスタイル」。クラムシェル(二枚貝の貝殻)PCなんて表現されたりしますが、要するに薄いキーボードをタブレット部にドッキングさせ、開いたり閉じたりさせながらノートPC的に使えるってことです。
私のようなライター稼業にとって、取材先でのメモは必須中の必須作業。ちょっとした覚え書き程度なら大学ノートの裏表紙にでもメモっておけばいいのですが、インタビューとなるとそうは行かず。キーボード入力でなければ仕事にならない、または記録できてもあとで整理に膨大な手間がかかったりします。
QH77/Mのキーボードは、こんな失敗できない場面での文字入力が快適。下敷きか?と驚くくらいに薄い(それでいて強度は十分)キーボードなのに、キーストロークがしっかり取られていて反発力が絶妙、かつキートップの形状が指先にしっくり馴染むんですね。そのうえキー配列がイレギュラーじゃないのも最高。自宅の仕事用PCと遜色のない快適さで軽快にキーを叩けます。
タブレットとのドッキングは、キーボード奥側に設けられたドッキングコネクタにカチッと差し込むだけでロック完了。キーボード底面のパネルを引き出せばどっしりと安定し、乱暴なキータッチで画面がユサユサ揺れて目が回ったり、なんかの拍子にパタンと倒れたりで腹が立つこともありません。
画面がデカい分、タブレット状態では約980g、キーボードと合わせると約1.67kgと重量はそこそこあるものの、キーボードを装着した状態でも文句なくスリムなA4クリアファイルほどのサイズで、筐体のどこを見ても邪魔な出っ張りや引っ掛かりやすい角がないのは予想以上に快適。手持ちのバッグにスッと突っ込めます。小さいより薄い方が持ち運びやすいんですよね。
もう一点、これはタブレットベースなら当たり前のことですが、事前に配付された資料を画面に表示させながら、付属のスタイラスペンで資料に修正やフローを直接書き込めるのも実に便利。単なるノートPCにはできない芸当で、ブレストや議事録取りにも活躍しそうです。
クレードルと接続してパフォーマンス&拡張性強化!なデスクトップスタイルでツカウ!!
QH77/Mを購入するなら、必ず買っておきたいのが別売の「ターボモード用拡張クレードル」。なぜかというとこのクレードル、画面を立てておくだけの充電ホルダーじゃありません。キモになるのは搭載されたインテル® Core™ i5-4200U プロセッサーの機能。このCPUは緻密な消費電力管理機能が特徴でして、タブレットで使う際には自動的に、消費電力(と発熱量)を抑えた動作をしています。クレードルに接続すると、そういったモバイルに必要な制約が外れ、超高速の「ターボモード」が利用できるようになるのです。
負荷が高いゲームや動画のエンコード、デジタルカメラの撮影画像のレタッチなどを試してみましたが、どれもまったくストレスなくこなせます。アーカイブファイルの展開などちょっとした作業にもCPUパワーは効いてくるので、オフィスや書斎に置いて使うなら絶対にお勧め。クレードルにはキーボードやマウス、外部ディスプレイ、USB、有線LANなど各種ポートが設けられ、ディスプレイ一体型のタッチ対応デスクトップPC感覚で使えますし、HDMIケーブルを接続すればAV機器との連携もお手のものです。
目からウロコ! 「中途半端」なんかじゃなかった!
タフで速くて快適で便利。PCに求められる性能を、ビジネスでもプライベートでも、シーンを問わずにいつでも堪能できる。QH77/MはそんなPCでした。Microsoft Office Home and Business 2013、Corel Digital Studio for FUJITSU、F-LINK、筆ぐるめ 20、各種電子辞書など豊富なアプリケーションが標準搭載され、箱から出してすぐ使い倒せるのも富士通らしい親切さですし、富士通の個人向けクラウドサービス「My Cloud」による写真や動画のかんたん取り込み・自動整理や、NFCポートでのスマホ連携など、周辺機器との連携もバッチリ。
オフィスやマイホーム、外出先などあらゆるシーンで活躍できるメインPCが必要なら、是非ARROWS Tab QH77/Mを試してみてください。