LIFEBOOK TH90/Pは、13.3型WQHD解像度の「IGZO」液晶ディスプレイを搭載したUltrabook™。単なるクラムシェル型の製品ではなく、新設計の2軸ヒンジを搭載。液晶を左右に回転させたり、折りたたんだりすることで、用途に応じて4つのスタイルを使い分けることができる。さらに、1,024段階の筆圧検知に対応した高精度なスタイラスペンを標準搭載しており、簡単に手書きメモなどを残せることも魅力。富士通が長年培ってきたペン×コンバーチブルPCの技術を集大成したモデルとなっている。今回は、LIFEBOOK TH90/Pを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
最新トレンドの「1台2役」を上回る「4スタイル」で利用可能
ノートPCの中でも圧倒的な薄さ・軽さで人気を集めるUltrabook™。常に持ち歩くためのモバイルマシンとしても、家やオフィスの机の上で使うメインマシンとしても実用的に使えるのがポイントだが、最近は1台でノートPCとしてもタブレットとしても利用できるコンバーチブルタイプのUltrabook™が増えてきた。コンバーチブルタイプのUltrabook™は、1台2役をこなす製品であり、シーンに合わせて最適な形状で使えることが魅力だ。
LIFEBOOK TH90/P(以下TH90/P)もコンバーチブルタイプのUltrabook™であるが、新設計の2軸ヒンジの採用によって、4つのスタイルで利用できる。その4つのスタイルとは、通常のノートPCのように使う「ノートPCスタイル」、タブレットとして使える「タブレットスタイル」、動画などの視聴に適した「シアタースタイル」、周囲の人に画面を見せやすい「バリアススタイル」である。このように4 in 1を実現した本製品は、1台4役の万能マシンといえるだろう。
これまでもこうした2軸ヒンジを備えた製品は存在したが、ディスプレイを回転できる方向が左右どちらかのみだったり、ノートPCスタイルで液晶を閉じた時に、後面のヒンジ部にコンバーチブル特有の段差ができてしまっていたが、TH90/Pはディスプレイを左右どちらにも回転できるうえにデザインにもこだわっており、「Shift Hinge」構造により、後面のヒンジ部に段差のない、すっきりとした外観を実現している。
本体のサイズは、320.8×235×17.1~19.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.59kgで、気軽に持ち運べる。
コンバーチブルタイプのノートPCは強度も重要だが、TH90/Pのボディはデザイン性にも優れるうえに堅牢だ。
キーボード側フレームと底面フレームが互いにかみ合い、強固な一枚板となる「超圧縮ソリッドコア」構造により、厚さ19.3mmのスリムなボディながら約200kgfの天板全面加圧試験をクリアするなど、高い強度を誇るため、安心して通勤や通学時に持ち歩ける。
さらに、タッチパネル表面には、旭硝子の高強度ガラス「Dragontrail」を採用。特殊表面処理の「スーパーグライドコーティング」が施されており、滑らかな操作感を実現している。
春から新生活を始める予定でPCの買い換えや新規購入を検討している方の中には「タブレットにしようか、それともノートPCにしようか」と悩む人もいるだろうが、限られた予算の中で「どれかひとつ」となれば、タブレットとノートPCを兼ねるコンバーチブルタイプは有力な選択肢となるはず!
2,560×1,440ドットの高解像度13.3型「IGZO」液晶を採用
ノートPCやタブレットにとって、液晶パネルの重要性は語るまでもないだろう。TH90/Pでは、従来のシリコンではなく、酸化物半導体の一種である「IGZO」を採用した「IGZO」液晶を採用していることが特長だ。
「IGZO」液晶は従来の液晶に比べて開口率が高く、消費電力が低いことがメリットであり、高精細化に有利である。昨年あたりから、Ultrabook™の液晶高解像度化がトレンドとなっており、いわゆるフルHD液晶(1,920×1,080ドット)を搭載した製品が増えてきているが、TH90/Pでは、フルHDを大きく上回る2,560×1,440ドットという超高解像度の13.3型「IGZO」液晶を搭載し、フルHD液晶に比べて一度に表示できる情報量は、約1.78倍にもなる。
解像度が高いと、アイコンなどが小さく表示されてしまうのではないかと、心配する方もいるだろうが、Windows 8.1では、画面精細度に応じてアイコンやボタンなどのサイズを最適化するスケーリング機能が搭載されているので、そうした心配はない。また、複数ウィンドウを整列して並べる「高精細ユーティリティ」がプリインストールされているので、高解像度デスクトップを有効に利用できる。発色やコントラストも優れており、写真や動画も美しく表示される。液晶についても、トップクラスのスペックといえるだろう。
プライベートで写真や動画を美麗に楽しむのはもちろん、仕事などで使う際には高解像度を活かしてExcelのシートを広い範囲で表示したり、Webブラウザーで参考サイトを開きながら資料をまとめる……といったこともやりやすい。エンターテインメント性と生産性を両立できるのが超高解像度ディスプレイだ。
1,024段階の筆圧検知に対応したスタイラスペンを標準装備
TH90/Pは当然、タッチパネルを搭載しており、指でタッチ操作が可能だが、さらにスタイラスペンも標準装備しており、ペン操作ができることもウリだ。
低価格なタブレットではペンが使えるといっても、筆圧検知に対応していないものも多いが、TH90/Pでは、ワコム製デジタイザが搭載されており、1,024段階の筆圧検知に対応していることが魅力だ。他社の製品では、筆圧検知対応でも256段階程度が多く、1,024段階という高精度な筆圧検知に対応した製品はほとんどない。タブレットスタイルでお絵描きをしたいという人や、筆や万年筆を使って紙に書くような感覚でメモを取りたいという人にお勧めだ。
細かいことだが、本体右側面にスタイラスペンの収納スペースが用意されており、非使用時にはスマートに持ち運べるのも嬉しい。収納スペースがない製品では、スタイラスペンをなくしてしまいがちだが、TH90/Pならその心配はない。サイドボタンも用意されており、消しゴム機能などの割り当ても可能だ。実際の書き心地も快適で、筆圧検知対応ソフトなら、線の太さなどを自由にコントロールできる。
学生なら大学の講義ノートをペンで取るのも良さそうだし、ビジネスの現場でも手書きの資料が迅速&表現力に優れる場面は多々ある。特にMicrosoft Officeに入っているノートアプリ「OneNote」は、文章、写真、手書き、スクラップブックなど多用途に使えるので、スタイラスペンとの相性は抜群。広く活用できる装備だ。
基本性能も高く、インターフェースも充実
TH90/Pは、「IGZO」液晶やスタイラスペンの搭載、コンバーチブル設計などが目を惹くが、パソコンとしての基本性能も高い。CPUはインテル® Core™ i5-4200U プロセッサーを搭載。メモリを標準で8GB搭載していることも評価できる。他のUltrabook™と同様にメモリの増設はできないが、標準で8GB搭載していれば、複数のアプリケーションを同時に動かしても快適だ。ストレージとしては、約500GBのハイブリッドHDDが搭載されている。ハイブリッドHDDは、HDDとSSDを一体化したもので、SSDはHDDを高速化するためのキャッシュとして使われる。性能的にはSSDとHDDの中間といったところだが、実際の操作レスポンスはかなり速く、HDD搭載機とは全く異なる快適さだ。ちなみに、富士通直販サイト WEB MARTのカスタムメイドモデルではSSDも搭載できる。
また、液晶の左下には指紋センサーが搭載されており、指紋認識でログオンなどを行えるので、プライバシーを重視する用途にも最適だ(※OS標準の指紋認証は利用できない)。
キーボードは全86キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1mmである。キーピッチ、キーストロークも十分で、キー配列も標準的なので、快適にタイピングが可能だ。キートップがわずかに球面状に凹んでいる球面シリンドリカルキートップを採用しているため、キーが指にフィットして打ちやすい。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドタイプのフラットポイントが搭載されている。パッド部分の面積が広く、こちらの操作性も良好だ。
インターフェースが充実していることも特筆できる。右側面に、有線LANとUSB 3.0、HDMI出力、ヘッドセット端子が用意されており、左側面には、USB 3.0とSDメモリーカードスロットが用意されている。有線LANは、通常のコネクタだと厚みが大きいため、薄さ重視のUltrabook™には搭載されていないことが多いが、TH90/Pでは、引き出し式コネクタを使うことで有線LANの搭載を可能にした。家庭などでは無線LAN環境が整っていることが多いが、出張時に持って行く際など、ホテルの部屋には有線LAN経由でのブロードバンド接続サービスしか用意されていない場合も多い。そうしたときでも、TH90/Pなら、他にアダプタなどを用意せずに、ブロードバンド接続サービスを利用できるので、ビジネス用途にも適している。また、ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth v4.0+HSに対応している。
また、Ultrabook™としては珍しく、バッテリが交換可能な設計になっていることも評価できる。バッテリは45Whで、公称約12.5時間の長時間駆動が可能だ。ACアダプタはスティックタイプで、重量も軽く、携帯性は優秀だ。鞄への収まりもよく、本体と一緒に気軽に持ち歩ける。
有線LAN端子装備は、大学や会社などで有線接続する必要があるときにうれしい。バッテリーは着脱式ということで、予備バッテリーを持ち運べば、外回りの仕事や、遠出の旅行など丸1日以上持ち歩く場合も安心だ。
さまざまな活用が可能であり、学生や新社会人にお勧め
TH90/Pは、富士通がこれまで培ってきたモバイルノートPCに関するノウハウが惜しげもなく注ぎ込まれた、非常に完成度の高い製品といえる。4つのスタイルを使い分けられ、筆圧検知対応のスタイラスペンを備えた本製品は、さまざまなシーンでPCを使いたいという、アクティブな人に向いている。
例えば学生なら、講義中にタブレットスタイルでスタイラスペンを使って講義ノートを取ることができ、家に帰って課題のレポートを書く際は、ノートPCスタイルにすれば、長いレポートでもキーボードを使って快適に書くことができる。さらに、シアタースタイルにすれば、動画配信サービスなどの動画をくつろいだ姿勢で気楽に楽しめる。
絵を描くのが趣味の人なら、1,024段階の筆圧検知に対応したスタイラスペンを使って、タブレットスタイルで絵を描けば、高価な液晶ペンタブレットに負けない快適なお絵描き環境を実現できる。
新社会人なら、タブレットスタイルで会議中に手書きメモをとり、外出先や出張時のメール返信はノートPCスタイルで効率よくこなせる。さらに、対面での営業で顧客に画面を見せたいときには、画面を相手に向けられるバリアススタイルが役に立つ。
また、有線LANを標準搭載しているため、会社のネットワークに接続する場合やホテルの部屋でのブロードバンド接続サービスを利用する場合も、別途LANアダプタなどを用意する必要はない。指紋センサーを搭載しているので、プライバシー面も安心だ。
こうしたシーンに応じた自由度の高さが、TH90/Pの最大の利点である。タブレットだけでも、ノートPCだけでも、あらゆるシーンに対応することはできないが、1台でノートPC+タブレット+αの利便性を実現したTH90/Pなら、あらゆるシーンで活用できるのだ。
さらに、「Microsoft Office Home and Business 2013」がプリインストールされていることも、学生や社会人には嬉しいポイントであろう。Office Home and Businessには、WordやExcelだけでなく、PowerPointやOneNoteも含まれている。
特に、電子ノートソフトのOneNoteは、スタイラスペンに対応したマシンでこそ真価が発揮されるソフトであり、講義ノートや議事録などを取るのに最適だ。Office Home and Business 2013を単体で購入すると、3万2000円前後するため、TH90/Pは、コストパフォーマンス的にも魅力だ。
この春、大学に入学する人や、社会人になる人はもちろん、これまで、Windows VistaやWindows 7を搭載したノートPCを使っていて、性能的に不満があるという人にも自信を持ってお勧めできる製品だ。
さまざまなスタイルで利用でき、使い勝手も良い「LIFEBOOK TH90/P」。特に新社会人や大学生にオススメ!