霞ヶ関のキャリアが官僚生活に見切りをつけ、民間への転出を図るケースが増えている。接待汚職や金融危機などを経て、エリート官僚たちに蹉跌感が広がっているのが大きな背景だが、退官後に目指すのがITの世界という例が少なくなく、民間から”革命”に関わり国家を変えたいという意欲もうかがえる。
●不本意な異動ルール
通産省のIT政策で中心的な役割を果たしてきた”ミスターIT”の安延申電子政策課長が先に退官、9月から京都市にある米スタンフォード大日本センターの研究部門所長に就任する。役所にとどまっている限り、省内の人事異動ルールの都合で「これ以上続けることができない」(安延氏)IT関連の仕事に引き続き携わりたいという。
「将来の事務次官候補の1人」として1978年入省組のトップを走ってきた安延氏の退官は、早くから噂されていた。しかし、沖縄サミットの「IT憲章」の原案作成に最後まで携わることになったため、退官の時期がサミット後まですれ込んだ。
第2の人生に意欲満々の安延氏は、新天地、スタンフォード大日本センターで研究活動に勤しむ傍ら、天下りの制限期間が明ける2年後をにらんでITベンチャー企業を興すなどの準備を進めているという。
●大蔵省課長もIT企業に
昨年7月、やはり「将来の主税局長」「将来の国税庁長官」などと嘱望されてきた大蔵省の伏見泰治主税局総務課長が退官、新進のIT関連企業に転身した。伏見氏と安延氏。相次ぐエリート官僚の「決断」が後輩たちに影響を与えないはずがない。
汚職事件の続発で、公務員としての行動を異常とも思える厳しさで律する「国家公務員倫理規程」が4月から施行されたが、その”後遺症”で、「公務員を続けていくことに対し、息苦しさや嫌気を募らせている官僚が増えている」(政府筋)ともいわれている。転身先は、成長著しいIT分野。この分野へのエリート官僚の転出は、今後、大きな流になっていくのかもしれない。
野崎 英二
8月23日
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