森政権が掲げる「日本新生プラン」に寄せられた各省庁からの政策要望は、「IT革命推進」「環境対応」「高齢化対応」「都市基盤整備」の4分野合わせて約700項目。これらの要望は、今月末に締め切る2001年度予算案の概算要求に盛り込まれ、同プラン具体化の財源である「日本新生特別枠」を巡って、激しい予算分捕り合戦が展開されることになる。
●羊頭狗肉(?)の200項目
森首相の強い意向で設けられた「日本新生特別枠」は、公共事業・非公共事業合わせて7000億円。政策的な経費に充てる一般歳出(48兆4000億円程度)のわずか1.4%に過ぎないが、主要経費を軒並み前年度と同額またはそれ以下に抑え込む「ゼロシーリング」の制約の中で、例外的に前年度の2倍までの予算要求が認められている。
特に「IT」分野については、首相が来年度予算編成の目玉にと意欲を示していることもあって、200項目を超える政策要望が殺到。下水道に敷設されている光ファイバーを各家庭まで延ばそうという「Fiber to the home事業」(建設省)をはじめ、百家争鳴の様相を呈している。
が、その大半は、単なる看板の付け替えに過ぎず、例によって省庁間のダブりも目立つ。ITの冠をかぶせることができさえすればいい、という安易な発想で予算要求が行われようとしているのである。
ITを”錦の御旗”とする予算要求の悪乗りは、自民党にも広がっている。公共事業抜本見直し検討会が打ち上げた「IT分野も建設国債の対象に」という構想がそうだ。
●主役はあくまでも民間
道路や橋、港湾施設などに限られている建設国債の対象を光ファイバー網の敷設などIT分野にも広げようというわけだが、その突破口となる財政法の改正問題は批判続出で早くも尻すぼみ。今後の焦点は、個別のIT関連事業をどこまで建設国債の対象として認めるかという、財政法の解釈論争に移る。
まさに政官入り乱れてのITフィーバーだが、騒動の原因は何に起因するのか。
IT革命への政府の対応については、沖縄サミットの「IT憲章」でも指摘されているように、「民間部門の生産的な活動を妨げる不当な規制的介入を避け、一貫性のある取り組みをする」ことにある。つまり、IT革命の主役はあくまでも民間、政府は環境整備などの形で側面支援する立場に過ぎないのだ。
なのに、各省庁が限られたパイの中に考えられるだけの要求を詰め込み、政治家がIT財源の拡大に血道を上げるのは、IT革命を推進する上での官民の役割分担が不明確なまま事実上の予算編成作業がスタートしてしまったからだ。
混乱の原因も、本を正せば生煮えの議論にある。今からでも遅くはない、官民の役割分担について最初からきちんと議論し直すことだ。
■関連記事:空しく響く「日本型IT社会」の掛け声
http://www.watch.impress.co.jp/finance/wadai/articles/000728-1.htm
|