トヨタ自動車(7203)が金融事業へのテコ入れを鮮明に打ち出した。金融統括会社と、その傘下の証券会社をこのほど設立。世界での販売金融(オートローン)事業を強化するほか、国内ではインターネットによる投資信託の販売にも乗り出す。ターゲットは、連結営業利益の約3割を金融部門で稼ぎ出すGM(ゼネラル・モーターズ)並みのビジネスモデルだ。
●”トヨタ成長ファンド”の設定も
設立したのは、統括会社のトヨタファイナンシャルサービス(TFS)と、同社が全額出資するトヨタファイナンシャルサービス証券(トヨタFS証券)。TFSは、世界18カ国にある販売金融会社など19社を傘下に置き、資金調達も一括してグローバルにオペレートするなど、収益力を強化する。また、アジアなど販金の未整備地域にも進出、数年内に30カ国に販金ネットを拡充する。
注目されるのは国内での新展開で、来年4月からクレジットカード(トヨタカード)の機能を大幅に拡充してワンストップ型の金融サービスを提供する。新カードはIC化して自前で発行。各種ローンやトヨタのインターネットサイト「Gazoo(ガズー)」でのショッピング決済などは、FS証券の証券総合口座で行う。さらに、ユーザーの資産運用サービスにも乗り出す。自社開発による独自ファンドを含めた投信をFS証券がネット取引などで扱うのだ。
今や、自動車部品でなくIT銘柄として本家を凌駕する株価を誇る豊田合成(7282)など並み居る優良グループ企業を対象にした「トヨタ成長ファンド」などを設定したら、大ヒット請け合いだ。これは冗談でなく、同社筋によると、そうした商品も検討されている。
●GM並みの金融収益目指す
これで貯蓄商品が加われば、まさに”トヨタ銀行”の誕生だが、豊田章一郎名誉会長や奥田碩会長ら首脳は銀行業に手を染めるのを見送った。これを豊田家の家訓と報じるマスメディアもあったが、銀行業態にすれば親会社の「機関銀行」化に対する金融当局のチェックの厳格化など、わずらわしい面もあるし、決済専門では採算が取りづらい。こうした現実路線から、金融事業のテコ入れに迅速に対応できる証券会社での事業強化に乗り出したわけだ。
トヨタの戦略は、世界最大手GMを強く意識している。99年末時点のGMの金融資産は15.7兆円で、連結総資産の約半分を占めた。また、金融部門の連結営業利益は2,637億円で、同様に約3割を占める。
対してトヨタの2000年3月期の連結ベースの金融資産は全体の約3割、金融部門の同営業利益は362億円で、全体にの4.7%に止まっている。目指すのは「GM並みの事業規模」(トヨタ幹部)だ。とりあえず、数年内に金融部門で1,000億円の連結営業利益を確保するのが現実的なターゲットとして掲げられている。それでも、並みの地方銀行ではとても及ばない収益スケール。本業のみならず、金融を加えた総合力でトヨタ独走の構図が見えてくる。
・Gazoo(ガズー)
http://gazoo.com/
・トヨタ自動車
http://www.toyota.co.jp/
池原 照雄
8月04日
|