2000年のTV広告市場は、通信やIT関連、外資を中心とした金融などが牽引役となり、収益率の高いスポット収入が伸びたことに加え、各社とも経営体質の改善を進めた結果、売上以上に利益が伸びた。2001年3月期の業績はいずれも過去最高を更新する好決算となる見込みである。しかし、株価については、いわゆるITバブルに翻弄された1年であり、目玉となる新規公開も相場を活性化させる切り札とはならなかった。年末の終値は、ITバブルが始まる頃の99年前半の水準に戻ってしまった。
2001年の放送業界の注目点は、1)デジタル放送、2)ブロードバンドネットワークであり、これらによってTV広告市場の動向や業界の構造がどれだけ変わるのか、また関連企業の業績への影響はどうなるのかである。
少なくとも、2001年においては、民放キー局にとってさしたる脅威ではないと考える。次期CSデジタル放送のサービス開始は2001年末頃であり、BSデジタル放送は視聴可能世帯数が少なく、広告媒体として市民権を得るには時期尚早だからである。ブロードバンドネットワークについては、インフラの整備がやっと始まる年となる。有数のコンテンツホルダーである民放キー局にとっては、コンテンツをマルチユースするための新たなチャネルと位置付けられる。各社とも事業モデルを模索している段階で、2001年はある程度の方向性が見えてくると思われる。2001年は広告市場全体は伸びる見通しだが、放送時間中の広告枠はほぼ一杯であり、民放キー局の業績は、合理化効果による収益率の向上が利益成長の源泉となるだろう。
デジタル放送、ブロードバンド化の流れの中で注目したいのは、制作会社の台頭と新サービスの動向である。多チャンネル化、多メディア化すれば単純にコンテンツが増えることになる。昨年、株式を公開した東映アニメーション(4816
店頭、3,000円)はアニメキャラクターの版権ビジネスを積極的に展開している。吉本興業(9665 東1、905円)ではお笑いバラエティー番組制作を強化していく意向である。クリエイターの派遣・制作請負のクリークアンドリバー社(4763 ナJ、1,500,000円)やプロダクション大手のホリプロ(9667 東2、630円)などにとっても追い風である。ブロードバンド放送サービスを開始するPCCWJ(7954 店頭、679円)やスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(4795 東マ、125,000円)にも注目していきたい。
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