●ゲーム株で儲ける必勝法はあるのか
「ゲーム株で儲ける」。何と良い響きであろう。ちょっとゲーム好きで株の知識がある人なら、この言葉を大変魅力的に感じるハズだ。「プレステ2も持ってるし、NINTENDO64も持っている。今は風前の灯火(ともしび)となったドリームキャストだって、徹夜で並んで買ったものだ」。そんなゲームオタクが株を買って、なおかつ儲けることができたら“超ハッピーパラダイス”である。でも意外に、「ゲームのことは詳しくても株のことは全く分からない」とか、「株の知識はそこら辺の証券マンよりたくさん持っているのに、ゲームのことに関するとドラクエの“ド”の字も知らない」という人は非常に多い。
だから、「今度のバーチャファイター4って凄いらしいゼ」といったところで、この“バーチャファイター4”が、どこの会社の製品で、どの位人気があるものなのかスラ知らないのである。余談にはなるが、筆者はこのバーチャファイターをプレイしているときに椅子が飛んできた経験を持っている。そもそも、このバーチャファイターというゲームは、よくゲームセンターなどに置いてある対戦型のゲーム機(10人のキャラクターの中から1人を選び対戦する)で、向かい合ってプレイをするもののお互いの顔が見えない仕組みとなっているのである。
そして対戦の結果勝った人が次のプレイを継続して行う権利を有するが、負けた人はコインをもう1枚追加しなくてはならない、という極めて“過酷なゲーム”なのである。だから、当然負けた人は徐々にアツくなっていく。10連敗もしようものなら、灰皿は飛んでくるわ、椅子は飛んでくるわ、それはもうタイヘンな事態が起こるのである。
つまり、それぐらい人気のある(アツくなる)ゲームであるいうことがお分かり頂けたと思う。「噂で買って、現実で売る」。相場格言の中にこんな表現がある。バーチャファイター4がプレステ2に動員されて、世の中で「バーチャ4が大人気です!」なんて言っているときに慌ててセガ(7964=バーチャファイターシリーズはセガの製品)の株を買いに行っても遅いということである。
また、先日こんな動きがあった。ティーアンドイーソフト(9611)が大暴騰したという話である。そもそもティーアンドイーソフトはゴルフゲームを得意とする老舗のゲームソフト開発会社であり、スクウェア(9620)のオーナー、宮本氏が実質的な経営権を握り会社建て直しを図っていた。株価は昨年末900円付近で推移しており“泣かず飛ばず”の状態が続いていたが、年明けとともに大暴騰し始めたのである。
暴騰の理由ははっきり言って分からなかった。1月15日には高値1590円まで上昇し、理由の分からぬまま上がり続けたのである。しかし、翌1月16日にすべてが明らかになった。米娯楽大手のウォルト・ディズニーグループとの提携が発表されたからである。提携発表と同時に株価は大暴落。1週間後の1月22日には910円と、元の値段まで戻ってしまった。今でこそ、そのディズニーとの提携が再評価され1500円付近で推移しているものの、材料発表と同時に買いにいった人は一瞬「やられた!」と思ったハズだ。「噂で買って現実で売る」。これはゲーム株に限らず、株式市場に参加する人は常に頭の隅に入れておかなければならない法則なのである。
●今後のゲーム業界の行方
「ソニーVs.任天堂Vs.セガ」の構図から、「ソニーVs.任天堂Vs.マイクロソフト」の構図に変化する激動のゲーム業界2001。今後の注目点はやはり、任天堂(7974)の「ゲームキューブ」とマイクロソフトの「Xbox」のでき具合であろう。いまだ中身についてはベールに包まれたままだが、迎え討つソニー(6758)にしてみれば“高見の見物”とはいかないようだ。
特にXboxの場合、ゲームソフトの“作りやすさ”での前評判が高く、そのでき具合によっては、ゲームソフト各社が一斉に“なだれ込む”可能性があるからである。つまり、「ハードを制するものがソフトを制す」という“ハード偏重主義”は終焉を迎えた今、「キラーコンテンツを持つソフト会社をどのように取り込んでいくか」ということが、今後ますます重要になってくるのだ。
具体的に言えば、絶対的な人気を誇るエニックスの“ドラゴンクエストシリーズ”やスクウェアの“ファイナルファンタジーシリーズ”を取り込むことがXboxの運命を分けると言っても過言ではないのである。逆に言えば、その取り込みに失敗に終わった瞬間「ドラクエやFFのないXboxはいらない」という消費者の声が沸き上がり、あっという間に、Xboxはドリームキャストと同じ運命を辿ることになる。
ただ、マイクロソフトの考えていることはソニー、任天堂の考えていることとちょっと違うようである。それは、マイクロソフトが、Xboxに期待するのは、あくまでも“ゲーム”としての役割を担えれば良いと考えているのに対して、ソニーはプレステ2に、“ホームネットワーク内のエンターテインメントの中心”になることを望んでいるのである。
家庭内ネットワークの中心は“プレステ2”というソニーに対して、“パソコン”と言い張るマイクロソフトの戦いと置き換えても良いだろう。また、任天堂も黙ってはいられない。同社は新型携帯型ゲーム“ゲームボーイアドバンス”という他社にはない“最強の武器”を持っており、3月にも発売を予定しているからである。しかし、ゲームボーイシリーズの敵であるバンダイ(7967)の“ワンダースワンカラー”では多少役不足と思われ、むしろ最近普及し始めているPDA(携帯情報端末)の方がライバルになる可能性が高いのである。実際、ナムコ(9752)はシャープ(6753)の“ザウルス”に“パックマン”を提供しており、PDAと携帯ゲーム機との境界線が次第に消滅しつつあるのだ。
●次の時代のリーダーは?
ゲーム業界の次の時代のリーダーを担うのはどの企業か。ソニーか?それとも任天堂か? はたまたマイクロソフトか? 非常に意見が分かれるところだが、先述した通り“ハード偏重主義“が終了した今では、キラーコンテンツを有している企業の動向がハード機メーカーの将来を左右する“売り手市場”に突入しているのだ。そういった意味では、将来最も有望なソフトを開発できる企業が、この業界でリーダーシップを取ることが相応しい思われるのだ。
それでは、その企業とは? ズバリそれはセガであろう。再三このレポートでも指摘した通りセガの技術力は他社の比ではない(個人的にはそう信じている)。今でこそ“ドリキャス撤退”という憂き目に遭ってはいるものの、かつてのソニーだって同じ時代はあったのだ。
つまり、いまだに記憶にも新しい(?)“VHS対ベータ戦争”である。いち早く撤退したソニーの英断が今日のソニーを築き上げたと言っても過言ではないのである。今期でドリームキャストの在庫分はすべて1台当たり1円の評価となる。それと同時にドリームキャスト本体の販売価格を3月1日から一律9,900円に値下げする。
言い換えればセガは来期には、たった1円となったドリームキャストを9,900円で販売することができ、1台当たり単純計算で9,899円の利益が上がる仕組みを確立したのだ。今、全世界にドリームキャストの在庫は200万台あると言われている。もし、来期全台売り切ったとすると約200億円もののお金が転がり込んでくるのだ。当然これはセガが黒字に転換(今期までで4期連続の赤字)する可能性を意味し、今後ドリームキャストが全世界にさらに200万台増えることも意味する。「死んだふり」をしているセガがゾンビのように生き返る日が来るかもしれないのだ。
●筆者から
約半年間でしたが、ご愛読有り難うございました。またいつかお会いできる日を楽しみに待っています。そして、その時はこの呪文を唱えてください。・・・「ザオリク!」
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2001/2/13
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