先週のゲーム株は、ハドソン(4822)、セガ(7964)などが上昇したのに対して、コナミ(9766)やPCCWJ(7954)などが下落した。その中で最も注目度が高かったのが、やはりセガであり、大川功会長兼社長が同社に対して850億円もの私財を投入したことは、市場に対して大きなサプライズとなった。また、コナミは、スポーツクラブの“ピープル”を買収することを発表したが、多角化する会社の経営方針に対して疑問視する声も一部ではあった。
●今、上がる株
先週の値上がり率上位を占めたのは、第1位ハドソン、第2位セガ、第3位KCEO(4729)、第4位バンプレスト(7854)―であった。この結果は、先週の株式相場全体の特徴を非常に良く表わしているものといえよう。つまり“需給の良い銘柄”が買われたのである。最近の株式市場は、継続的に出る“持ち合い解消に伴う売り”NTTドコモ(9437)の公募増資に対する“換金売り”などによる“売り圧力”が非常に大きい。
このような悪い地合いの中では、投資家の銘柄物色の矛先になるのは、どうしても需給の良い(=売り圧力の小さい)銘柄に傾いてしまう。先週1位のハドソンや4位のバンプレストは共に上場して間もない銘柄であり、そういった意味では、非常に“売り圧力が小さい銘柄”であったある。また、セガは信用取引の売り残(通常6カ月以内に買い戻さなければならない)が非常に多く、需給は良好。KCEOも一時期の株価に比べ大きく値下がりしていることから売り圧力は小さいと云える。つまり、“誰も持っていない株ほど上がる相場”になっているのだ。
●金は天下の回りもの
先週も、先々週に引き続き市場の話題は“セガづくし”であった。その中で最もインパクトがあったのが、「大川会長兼社長による私財850億円の贈与」であろう。先日発表したドリームキャストのハード製造中止に伴い、今期約800億円の特別損失を計上する予定であったことからも、セガにとってはこのお金は、のどから手が出るほど欲しかったはずである。セガは今期連結ベースで4期連続赤字となり、手元にあった現預金残高が200億円と非常に厳しい状況であったことからも、その重要性が分かると思う。
つまり、結果論からいってしまえば、もともとドリキャスから撤退する費用すら手元になかったことになり、このウルトラC(大川氏による寄贈)が出るまでは“八方塞り”の状況であったのだ。しかし、個人で850億円も贈与できるこの大川会長は一体いくらくらいの資産を持っているのであろうか。ある試算によるとCSKグループの持ち株を中心に有価証券で約1,000億円、不動産その他も含めると約5,000億円程度になるという。「可愛いセガのために“ポン”と850億円」と非常に気前のいい話だが、セガの大株主は1位がCSK24.6%、2位が大川氏自身で12.7%ということを考えると、「金は天下の回りもの」ということになるのであろうか。ちなみに、CSKは大川氏が筆頭株主である・・・(?)。
●かつての敗者ソニーも今は・・・
最近コナミの下げがきつい。1月29日にマイカルの子会社であるスポーツクラブ最大手“ピープル”を買収すると発表してから、さらに下落に拍車がかかった。老舗であるセガが家庭用ゲーム機から撤退を余儀なくされるなど、ゲーム業界全体に逆風が吹く中、一部で多角化に向う経営方針を危惧する向きもあるようだ。さらに、悪材料は続く。
1月31日には、約5億円の“所得隠し”が判明し、重加算税を含む約3億円を追徴課税されていたことが判明した。しかし、コナミ側はこの件に関し、書類の不備などはあったが、所得を隠そうという意図は全くなかったと国税当局との見解の相違を主張。親会社と子会社の損益を合算して納税する「連結納税制度」の早期実現を希望しているという。
しかし、今後最もコナミに関して注目しなければならないのは、やはり「遊戯王」であると思われる。現在、コナミは遊戯王に対する依存度が非常に高くなっているという現実があり、現行のように、遊戯王が子供から大人まで幅広く愛されるカードゲームとしての位置づけ(トランプや花札のような半永久的な娯楽)がなされれば問題は生じないのだが、もし、人気に陰りが見えたときはこのコナミの“土台をも揺るがしかねない事態”になる可能性は残されているのである。
現在の株価下落は、ピープルや“所得隠し”云々よりも、この遊戯王の人気凋落を先取りしているように見えてならない。そもそも、ゲームソフト開発メーカーに共通していえることだが、ひとつのソフトの成否がその会社の運命を大きく左右するパターンが非常に多い。例えば、エニックス(9684)のドラクエやスクウェア(9620)のファイナルファンタジーなどが良い例である。
そういった意味では、先述したセガの方が安定的な企業であるし、その最高の技術力をもってすれば、他のゲームソフトメーカーは太刀打ちできないハズである。ネットゲームが全盛期を迎えるこれからは、ドリームキャスト発売時にCMで子供たちが発していた「セガってだせえよな~」とは決していえない企業にまで復活する可能性は高いのである。VHS・ベータ戦争で破れ、早々と撤退したソニー(6758)を見れば、今回のセガの英断を評価できるのではないか。
●今週の展望
今週は冒頭でもご指摘した通り“需給が良い銘柄”に注目してみたい。そうなるとやはりハドソンを選ばざるを得ないであろう。先週末に上場来高値を更新し、上値に全く“節目”が存在しないという意味では最高の銘柄であるかもしれない。
よって、今週はナスダック・ジャパン上場銘柄のハドソンに注目し、“買わなきゃハドソン”と密かに念じながら、“銘柄コード4822・1,000株・成行・買い”という注文をすばやく流したいと考えている。
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2001/2/5
■ゲーム関連企業リポート
・コナミ
・スクウェア
・バンダイ
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